戦争遊戯は終わり、各々遺恨は残れども両陣営は、この時だけは互いに背を合わせて散っていった者達への弔いを捧げる。
これを無常というのだろうか、あれ程の大規模な抗争があったというのにオラリオの通りを行き交う人々の群、賑やかな声、朝日が昇るといつもと変わらぬ明日は訪れる。
だが、あの日背中を合わせ共に戦った者達は彼等の勇士を決して忘れない。もう会う事は叶わぬとしても心の中では生き続けると。
そうして生き残った者たちは当たり前という生を無自覚ながらも実感し、太陽もまた沈み昇るを繰り返した。
さて、戦争遊戯から程なくして所変わって場所はミラの自室に移り変わる。相部屋のもう1人の部屋主であるはずのメーテリアの姿はそこには見えず、そのメーテリアと言えば最初こそその場に居たが、今回やってきた来訪者による執拗な粘着プレイで速攻部屋から退散した。
部屋に居るのは来訪者とミラの一対一のマンツーマンというわけだ。
アポも無しの来訪理由はお話をしにきたと当の本人は言ってはいるものの、その顔は馴染み深い。
それもそのはず彼女とは最近複数回に渡り会ったばかりであった。
しかしその会話については神にも二言は無いのかは知らないが理由の通り、何やらチラチラと見せる邪な視線を除いては誰もが普段する様な至極普通な内容の会話が部屋では続いていた。
手土産として持参した菓子折りを机の皿に並べては紅茶を嗜む光景は淑女達のいわゆる女子会というやつであろう。
と絵的には思われるのだが、、、あのメーテリアが目の前の甘味を置いて逃げ出した。そんな異常事態を聞けば、何となくその来客者が一癖も二癖もある曲者だということは彼女の素性をあまり知らなかったとしても現場に散りばめられた状況証拠で何となく察せた。
すると程なくしてお茶の場にはふさわしくないバタバタと走る音が外から聞こえれば、バタン!!と勢いよく部屋の扉が開かれるとそこに立っていたのは我らが主神ヘラ。来訪して早々に顔をピクピクと引き攣らせながら2人の内の1人に鋭い視線を向ける。
「ど〜のツラ下げてやってきたのかしら〜このアバズレ女」
嫌味と怨念と怒りとその他色々が一緒に投下されグチャグチャに混ぜられ煮詰まったような形相。
即ち心底嫌そうな顔で外敵へと言い放つが当の本人はどこ吹く風とばかり紅茶を一口嗜むとニッコリと微笑み返すとそれにはヘラも思わずキィー!!と癇癪を引き起こしその身から放たれる重圧に磨きが掛かる。ヘラはランクアップを果たしたようだ。
そんな神々の戦いを横目にミラは何も言わずマカロンを手に取り眺めるとそれを口に含む。こう言う時は何も言わずにやり過ごした方がいい。このファミリアで学んだ事だ。
「ミラもミラだわ。いつも言い聞かせてるわよね?コイツと関わると楽なことがないって」
ビシッ!!と効果音が聞こえてきそうな勢いでソイツを指差しながら今度は無視を決め込んでいたもう1人がターゲットになる。
「ミラ。貴方の所の女王様はよほど暇なみたいね。せっかくわざわざやって来た事だし混ぜてあげる?」
「あぁん?私のコ・ト・バが聞こえなかったの?命は見逃してあげるから帰れっていってるの」
ブチっと血管が切れる音が聞こえた気がした。
そして合わせるように後に続くのはドスの聞いた声。
人、神問わずオラリオの人々が。いやオラリオに住むからこそ裸足で逃げ出す歩く天災の嵐が今にも爆発しそうな雰囲気。だというのに真正面からそれを心地よい風だと涼しげに微笑む顔を変えず受け流すのは彼女も女神だからだろうか。
「確か私の眷属に聞いた話だけど、下界には怒りっぽい人って顔のシワが出来やすいって話だったかしら?」
いや、その微笑みの裏に隠された内はこちらもまた嵐であった。
売り言葉に買い言葉。
今は静と動の両者であるが、目から走る閃光の熱量は同等でそれがひたすらにぶつかり合う。
リングの上で対戦相手と向かい合い試合開始を今か今かと待つボクサーの様に。きっとこの場で戦いのゴングが鳴りさえすればどちらともなく殴りかかることだろう。そう感じるくらいに拳以外で両者はひたすらにぶつかり合っていた。
「・・・・はぁ〜」
ミラとて自分の部屋がキャットファイトの現場になるなどたまったものではない。そんなことになれば家具がメチャクチャになるのは最低限として被害が何処まで及ぶかわからない。
ただ単に肉体的には止める事は容易だ。
神というのは見た目通りの力しか持っていないのだから冒険者であればそれを止めることなど造作もない。それにミラは今でこそダンジョンに潜る事が少なくなり話題に上がることも無くなったが、こう見えてもまだ一級冒険者の末席に座れるくらいにはある。それこそこの2人を赤子の手をひねる様に簡単に鎮圧する事は可能だろう。
だが、人類というのはそしてそれに習い生きている神は森で暮らす動物達と違って非常に複雑である。
彼等なら圧倒的な力を見せつければ尻尾を振って上位者と認めた相手にしたがってくれるのに自然のルールが通用しない人類にはそうはいかない。赤子をあやすのは別問題。
「ルール違反だわ!!ルール違反よ。戦争遊戯で決まった約定を無視するなんて自分の顔に泥を塗る蛮行だわ!!」
ヘラの言う通り客人として客人として?招いたつもりのない勝手にやってきたフレイヤは少し前に戦争遊戯で負けた事によって二つの制限がなされた。
一つ。
フレイヤは今後一才のオラリオの外に出ることを禁じること。
二つ。
ヘラファミリアの眷属に干渉しないこと。
それを踏まえてこの状況を見てみれば明らかなルール違反をしているのは静かな物腰で微笑むだけのフレイヤである。急に人の部屋にやってきてプンスカ怒っているヘラが悪く見えてかもしれないがヘラにも怒る正当性はちゃんとあるのだ。いつもそうなのかと言えば・・・返答に困るのでその意見は控えて欲しい。
しかしフレイヤの表情は微塵も崩れる事はなかった。
「そう。なら何も問題ないわ。私はただ友達に会いに来ただけだもの」
それを聞いたヘラの顔は一瞬に無になった。
あれだけ私は怒っているぞと撒き散らしていた感情が飛散した。
怒りが治まった訳ではない。
ヘラの顔を見れば分かる。
ヘラは何を言ってるんだコイツと言いたげた表情をしていた。
「何を言ってるんだコイツは」
いや我慢できずに思った事が口から吐き出されていた。
「ヘラ。アナタはあの時、女神フレイヤに言ったわ。オラリオからの外出とアナタの子達との関わりを」
思い出される光景に虫唾が走るがそれは置いておく。
「ええ。それに従わなければならないのなら私は外に行く事は叶わないわ。ええそうね。その点は認めてあげる。どんな企みがあるかは知らないけど、それは非常に女神フレイヤに対しては効果的。
私の旅の目的は私の隣に立つに相応しい者を探す事だった。それが女神フレイヤにとっては何よりも大切な事だから」
・・・まあそんな必要ももう無くなったのだけれど。
そう呟いた直後ミラは寒気を感じて思わず身を震わせる。
まだ寒い時期ではないはずなのにと不思議そうに腕を擦るそんな彼女にフレイヤはヘラを見つめる時の静かな笑みとは別の微笑ましいものを見る優しげな笑みを浮かべる。
「で?何が言いたいわけ?」
「だから言ってるでしょ?私は友達に会いに来たの。女神フレイヤとしてではなく地上で生まれ変わった1人の女フレイヤとして。そうよねミラ?」
「・・・確かに遊びに来たと言っていたね」
遊びに来ちゃった。
呼び出しをくらったかと思えばその来訪者のおかげで野次馬が集まり若干騒がしくなってしまった玄関で周りを気にする事なく、自身がそこにいるのがさも当然の如く堂々と佇んでいたフレイヤはミラを認識すると彼女だけに笑顔を振り撒きつつミラに向かってそう言った。
ミラもフレイヤが自身を訪ねてきた理由を今の今まで聞いては無かったので今この場でフレイヤの口からようやく知った。
断じてフレイヤが手に下げていた紙袋から出てきたスイーツにつられて夢中になってしまったからではないのだ。
聞く必要性を感じなかっただけなのである。
・・・例えスイーツに集中していたのが本当だとしてもフレイヤに敵意がないことにミラが最初から気づいていたことは事実。
それによって彼女の訪問理由が両陣営で行われた戦争遊戯の件に関することではないと、血生臭い話ではないだろうと判断したミラは自分に用があると迫ってきたフレイヤを外敵ではないとし、特に気にする事なく自室に迎え入れることにしたのだから。
それにしても敵意はともかく他の主神のファミリアに主神が単身で乗り込んでくるなど、熱も冷め切らぬ時期も時期。どちらにも浅はかない因縁が残っているだろうに。
でも何度も言うがフレイヤにはその気配は無かった。
だからファミリア内に入れることにし、そして大人しくしていたフレイヤ。
神はどこまでも自由なのだなとその立ち振る舞いに親近感に近い好感を覚えつつも外野では会話はまだ続いていた。
「ではなにか?今のお前は女神フレイヤではないとそう言いたい訳?」
「あら、やっと理解してくれたのね助かるわ。それじゃあもうお話はいいかしら?」
それはきっと言葉遊びという類なのかもしれない。
でもその発言に違わず、いつもなら吐き気を催す神気を撒き散らし男を侍らせるフレイヤも今回は極限まで抑えている。彼女を知る人からすればその行為は彼女の真意を計りかねるある種の矛盾。
女神フレイヤから人の身へと落ちた今のフレイヤも見方を変えれば同じく地上の人間とも呼べなくはないかもしれない。めちゃくちゃな言い分ではあるが、全面的に否定する気分にはヘラはならなかった。
なにより自分達は神という大部分を捨て去ってまで地上に降り立った。
見るに耐えない残りカスに成りながらもそれぞれに理由はあれど新しい自分を求めたという点においては全ての神に共通する。
そうして神達は今の自分に満足し地上での生活を謳歌している。
癪ではあるがヘラにもフレイヤのその気持ちは理解できた。
ヘラはしばらくう〜むとその言葉を自分の秤にかけると結論を出す。
その結果は白。
「・・・そうね。今日のところは見逃してあげるわ。寛大な私に感謝しなさい」
なんだか負けた気分にはなりつつ、そこは神としての度量を見せて自分が見逃したことと捉えればヘラの自尊心は大いに満たされた。ならばもう目的は無くなりここに用は無くなった。
そして気が済んだら帰りなさいと去り際の言葉を残すとヘラは退出する。認めはしたがヘラにとっていけすかない奴であることには変わりないからだ。
「あらご一緒しないの?」
「どの口が言ってるのかしら。取り繕っても心が読めなくてもその目を見ればそれくらいの事は同性としてわかるわよ。手鏡を勧めるわ」
邪魔者の私は用事を思い出したからと去るその時のヘラはいつもの尊大な彼女ではなく、1人の女性の様な気がして。
「たまに見せるああいう所が流石女神の女王と謳われる所以なのかしらね・・・
普段からあの調子ならこっちも敬意を見せてもいいのだけれど」
去った扉を見つめながらフレイヤは意味深な表情で呟くと紅茶をまた一つ口にしてほっと一息つく。ヘラも去ってまた2人きりになってしまった。
「さて、そろそろ本題に・・・いえ、語弊ね。話題の一つとして友人として聞かせてもらいたいのだけど」
「何かしら?私はフレイヤから教えてもらうばかりだから。私に答えられることは少ないと思うよ」
「三大クエストの進行状況について」
目に宿るは好奇心か、その中にお伽話に憧れに向ける純情な少女の眩しいくらいの視線。
そうまでしてじっと見つめられては例え自分に向けられたものではないと分かりりつつも、そうも今か今かと続けらられると痒くなってくる。
三大クエスト。
今日一番の期待をミラは小さな身体で一身に受けつつ、話にあがったその言葉はミラも少し前から仲間や主神から聞くようになり最近ではファミリア内でよく語られる今一番注目を集めるホットな話題。
少し前にファミリアの方針を決める幹部会でゼウス・ファミリアと共同で進める運びとなった出来立てなそれはなんでも救界の為に是非とも成し遂げなければならない悲願だとかなんとか。
悲願とはよく言ったものである。
天と地をワカツモノ。
過去が生み出した負債。
ならば過ちを繰り返さぬ為に過去を清算しなければならない。
だからこそ人類が乗り越えなければならない試練。
世界は望み。
だから私も望んでいる。
他の二つは知らないがそれらも前座としては十分か
ようやくパーツを得て回り始めた歯車。
人々がどのようにその道行を歩むのか興味こそあれどもそれは彼らが成すべきことだろうと流石に自重した。まあしかし泣きつかれたら助言の一つくらいは家族のよしみであるそれくらいは許されるだろう。強く儚く故に愛おしい。
だが時にかわいいからこそ抱き止めた腕を離さなければならない。生きる術を自ら導き出し考え生きながらえるのもまた成長だからだ。
それにアルフィアに後釜も席次も譲ったミラには関係の無い事、幹部会は勝手にやって決まったら教えて。と部外者は部外者らしく一般団員として自室で寝ていた所をご意見版という形でヘラに叩き起こされ引きずられてその隣に同席させられた。
ご意見版と言ってもそこに揃う幹部連中と違って特別やることなんてないらしく、ヘラの気まぐれ発言で突如出来たまさに形だけの役職。
ミラもミラで眠たい頭で皆が話し合うのをぼーと眺めていただけであるし、話し合いが終わるまで自分は何をしていたかと聞かれてもヘラから口に差し出される甘くて美味しいケーキを食べさせてもらったとしか言えず、、、でも当事者と言われたらそうとも呼べる微妙な立ち位置。
さて、何処から嗅ぎつけたのか。
いや人から人へと広がるのは自然的なことで、それに遅かれ早かれ結果は顕になりオラリオ中に知れ渡ることになる。
そもそもトップファミリアの主戦力が遠征装備を整えて郊外に出て行ったのだから注目されないという方がおかしいだろうか。
アルフィアも丁度その三大クエストとやらの踏破チームに編成されて出払っている。場所は確かロログ湖と言ったか?選ばれたメンバーからはミラに同行を求める声もあったが超えてはならない一線は弁えている。ミラは断りこうしてファミリアで居残り組の一員として手薄になったファミリアの番をしているのだ。
何もせずに食って寝てを繰り返す自堕落な生活をしている様にみえるかもしれないが彼女なりの役割は持ってここに居るのだ。
それにあれも人類の試練の一つというのならば。そこへ至るための道に助言を貸すことはあっても切り開き進むのは彼らでなければならないのは当然の答え。
「海を割る海竜、、、リヴァイアサンといったかな?それの討伐にヘラ・ファミリアのメンバーを中心に。陸の大陸ベヒーモスの討伐はゼウス・ファミリアが中心となって二つのファミリアが共同戦線を張る運びになったわ」
「隻眼の黒龍については?」
「黒龍に関しては未定。まず目先二つの成果を持って方針を定めるとの旨。ベヒーモスとリヴァイアサン両方の討伐に失敗したとしたら正直言って現実的では無いだろうし」
「ふ〜ん。まるで見てきたみたいな言い方ね」
「黒龍に関しては他の二つと違って遥か昔から伝記として残されるくらいに強大な存在。かの英雄でさえ退けるのがやっとの生ける伝説、それを同じ尺度で測る方が間違いだと思うわ」
フレイヤとてかの黒龍がどれほど強大な存在かは知っている。かのモンスターは神である自身の想定さえも上回るであろうと。
その気持ちは正しくは考えられない。
ある日、空から降り注ぐ隕石を目にした地上の人間の様に。それはおおよそ自分の想像の範疇を超えた理解出来ないモノに対する解答であった。
「遥か昔。私たち神という存在が生まれるよりも昔、現在よりも高度に繁栄を極めたヒューマンの国を一夜にして滅ぼした龍」
知らない者はいない。
地上で暮らせばイヤでも耳にする物語。
しかしフレイヤがそれをこの場で語る事に興味が湧くとフレイヤもミラの視線に気づく。
「世界をあちこち旅していた時に聞いた話よ。その国の王様が聞いてもないのにベラベラと勝手に喋り出したけど、でも実に興味深い話だったわね」
「そういうことか。フレイヤがその話と繋がりを知ってある事に少し、いやだいぶ驚かされた。それは地上から忘れられて久しくないから」
ミラの反応を見るに彼女もまた自分の知っている事は承知なのだろうとフレイヤは判断した。それもそうミラは数千年を容易く生きるエルフ種である。
エルフが世代を交代する時には人種は数十数百と世代が変わっている。ならば、歴史の忘却も人種と比べても遥かにマシであろうし、エルフの中で知っている者がいたとしてもそう珍しくもない事だろうと判断したからだ。新しいものに弱く古い物に強いそれがエルフ種の特徴ともいえるだろう。
ならここは自分の知識を披露してよければ補足して貰えれば見解も深まる。
「隻眼の黒龍シズ。それは本当の名ではなく、アルゴノゥト。後の英雄譚によって後発的に付いた名前。かの龍の名はミラボレアス。黒龍ミラボレアス」
どうだ?と視線でミラに訴える。
「そうね。フレイヤの考察は合っているといえるね。でも一つ私から言うことがあるとすればミラボレアスの名前というのは、何もある一つの事柄を指す言葉ではない」
「空から降り注ぐ雷。山から噴き出る焔を、荒れ狂う大海が。一夜にして国が滅んだ天災を。それを見た彼等は名前を付けた。畏怖と畏敬を込めて、自分達で理解出来ない事象を定義しこう名付けたミラボレアスと」
そう名付けられたモノはどれもこれもあり得ないと否定してしまいそうな逸話ばかり。でもその全てを眉唾物だと否定する事は叶わない。
自分達が永遠を生きる神だからこそ種を繋ぐ人類と違ってハッキリと分かることがあるからだ。
「そう考えるならば・・・もしかすると神様というのはそう名付けられた黒龍をなんとかする為に世界が生んだ存在なのかしら?」
ミラの疑問にフレイヤはどうしたものかと苦笑する。フレイヤの考えではどちらともとれるだろうと判断がつかないからだ。
なにしろ黒龍を倒す事に一つの存在意義のような使命感を持っている。それもフレイヤが自分をフレイヤだと認識したその時からであり、それは他の神々も一緒であろう。
しかし自分達の生まれた意味を世界の真理を量るなどは神の範疇すらも超えている。だから答えは出ない。袋小路である。
「私から伝えられるのはこれくらい。後は時間が教えてくれるから」
「ありがとう。これで楽しみがまた一つ増えたわ」
すっかり上機嫌になったフレイヤの姿はまるで物語に夢見る少女。
「嬉しそうねフレイヤ」
「あら、当然でしょ。英雄譚って言うのはいつの時代でも恋焦がれ憧れるものなのだから」
かくしてオラリオに歴史的知らせが舞い込む。
ヘラ・ファミリアによるリヴァイアサンの討伐。
そしてゼウス・ファミリアによるベヒーモスの討伐の知らせである。
決して少なく無い犠牲を両陣営は払いながらもついぞ果たされることのなかった最高難度のクエストの2格が同時に踏破された。
雲一つない晴れ渡る空。
屋根の上で眩しいくらいの太陽に照らされて、それは世界が偉業を成した者達を讃えているようで、オラリオの至る所から歓声は鳴り響き急遽として開かれた祝いのお祭りに住民達も浮かれている。
そして少女も彼らと同じくその知らせに歓喜で心を震わせる。
「ねえ、聞いて。ようやくやってきたかもしれないの。永く永く永遠に近い私達の役目の終わり、、、アナタは満足してくれるかしら?」
何もいないはずの空を見上げ読み聞かせるかのように語ると誰の耳にも入らないその言葉は風と共に空へと消えていった。
ワイルズが神ゲーと信じて