どうも、またもやインタビューで宣戦布告されたファントムです。現在私はブルボン達との自主トレに励んでいます……が。
「……ハァ」
私は現在溜息を吐きながらやっております。ぷえー。
「ステータス『奇妙』。ファントムさんは何やら溜息を吐いているようですが……」
「そ、そうだね。何かあったのかな?」
「おそらく、先日のURA賞授賞式の際に宣戦布告されたことが原因かと思われます。ブルボン先輩、ライス先輩」
「『納得』。そういえば、そのようなこともありましたね」
「ぶ、ブルボンさんは会場にいたもんね」
えーそうですよ。私が溜息を吐いている原因……それは先日放送されたURA賞授賞式が原因となっております。その番組において、私はマックイーンに宣戦布告されました。誰の影響受けたんですかねぇ全く。聞いてますか?スズカ。
『知らないわよ。私のせいじゃないわ』
……なんかスズカの声が聞こえた気がしましたね。アメリカにいるはずなので絶対気のせいですけど。
しかしまぁなんとも面倒なことをしてくれたもんで。お陰様で関係各所様は大変盛り上がっておりますよ。まるでスクープ現場を押さえたとばかりに大盛り上がりしております。
「しかし、何故そこまで辟易しているのでしょうか?」
「ふ、ファントムさんあまりレースに出たがらないから、それが関係しているのかも?」
「……別に出たがらないわけじゃないよライスちゃん。前もこんなことがあったから、少し呆れてるだけ」
「あ、あ~……」
ライスちゃんは思い当たる節があるのか納得した表情を見せました。ま、あの秋の天皇賞も有名ですからね。そりゃ知ってるでしょう。
ちなみに現在。新聞や雑誌ではすでに私が春の天皇賞に出走するみたいな記事が書かれております。勝手なことしおってからに。まだなんも言ってないでしょうが私。
”言っておくが、喧嘩を売られたからには出る一択だ”
……まぁ、もう一人の私のこの台詞からも分かる通り、春の天皇賞への出走は決定したようなもんですが。秋も似たような現場を目撃しましたね。タイムリープでもしました?私。
「……私としてはあまり出たくないんだけど」
”知るか。喧嘩を売ったのはあっちだ。だったら、二度と喧嘩を売ろうと思えなくなるぐらい徹底的に叩き潰す……その一択だろうが”
「……とは言ってもね」
”それに、テメェは新聞の記事を見たのか?”
まぁ見ましたけども。かなり好き放題言われてましたねぇ。
「見てくださいライスさんグラスさん。【現最強ステイヤーメジロマックイーンの勝ち濃厚。亡霊の不敗神話もこれまでか?】……などと書かれた記事が出ております」
「こっちは……【亡霊VS名優に無敗の2冠ウマ娘トウカイテイオー乱入!春の天皇賞は誰の手に】……もうファントムさんが天皇賞に出走すること確定してるみたいな記事だね」
「やはりファントム先輩の影響力は大きいですから。こちらは【ついに敗れる?亡霊に挑戦状を叩きつけたウマ娘 名優メジロマックイーン】……どこも似たような記事ですね。ファントム先輩の実績を見てこう言えるというのはある種の才能というかなんというか……」
「……それだけ私の負けが望まれてるんでしょ。私のレースって退屈らしいし」
”フン。最初から勝つ奴が決まってるレースなんざつまらんだろ”
もう一人の私はそう言い放ちます。まぁもう一人の私の言葉に加えて、ほぼ全てのレースで大差勝ちですからね。退屈なレースよりも番狂わせが起きて欲しい……そういう気持ちもあるんじゃないでしょうか?知りませんけど。
「……悲嘆。負けを望まれて、悲しくはなりませんか?ファントムさん」
「……うん?」
ブルボンが悲しそうな表情で私を見てますね。それはライスちゃんとグラスも一緒です。どうしてそんな表情を浮かべるんでしょうか?
「やはり、負けることを望まれていい気はしないのではないでしょうか?勝ってほしい、という気持ちよりも負けることを望まれているというのは……あまりにも悲しいことかと」
「……うーん」
ぶっちゃけあまり深く考えたことはありませんね。だって、負けを望まれる気持ちは分からんでもないですし。
「……私の噂、知ってるでしょ?」
「……ファントムさんと一緒のレースで走った子達は、辞めちゃうって噂?」
「……そうだよライスちゃん。私にもファンはいるけど、多くの人は私というウマ娘を嫌っていると思う。だって、自分の推しがレースで負けたら辞めちゃうんだから。その気持ちは分からないでもないよ」
「で、でも」
「……でもじゃないよ。それが現実。私というウマ娘は負けることを望まれている。だからといって、負けるつもりはサラサラないけど。私は私が走りたいから走る……私の目的のために、走るだけだよ」
”……フン。当たり前だ”
「……けど、ライスちゃん達が私を心配してくれる気持ちは素直に嬉しいよ。ありがとうね」
私は仮面の下で薄く笑います。みんなには見えませんけどね。みんなも納得はいってないようですが、私が気にしていないということでこれ以上深堀するのを止めたみたいです。そうですそうです。こういうのは気にするだけ無駄ですからね。もう一人の私も言ってました。
「……まぁ、ブルボン達も自分のレースがあるからそろそろ練習しようか。確か、スプリングステークスだっけ?」
「そうですね。ライスさんとは初対決です」
「ま、負けないよ!ブルボンさん!」
「……2人とも頑張ってね。グラスも、レースは特にないと思うけど頑張ろうか」
「はい。日々是鍛錬……欠かさずにしていきます」
というわけで今日もファントム道場を開催……「見つけたー!」……なんでしょう?なんかやたらテンション高い声が響きましたが。
「見つけたぞファントム!」
特徴的な青い髪のツインテール……ターボですね。私を見つけてか喜んでいます。
「……私に何か用事でもあった?」
「うん!」
あらやだ元気の良いお返事だこと。一体何でしょうか?
「勝負だファントムー!」
……なんでしょう。最近私に宣戦布告するのが流行ってるんです?
あの後私達ファントム道場の面々はグラウンドに集まりました。私とターボがスタート位置についています。
「え~っと……それでは、お2人とも準備はよろしいでしょうか?」
「ターボはいつでも大丈夫!」
「……私も、大丈夫」
「条件は芝1800m右回りでよろしいですね?」
私とターボは頷きます。
いやはや。まさかターボと走ることになろうとは。まぁテイオーのライバルらしいですし、どれほどの実力者か興味はあります。さてさて、頑張りまっしょい。
”おい、俺様に代われ”
「……珍しい」
”なぁに。どれほどのもんか興味がある。俺様相手に逃げ切ると啖呵を切ったその姿勢……嫌いじゃないぜ?無論、全力でぶっ潰しにかかるが”
……まぁいいでしょう。でも、ちょっとは抑えてくださいね?
”善処してやる”
それやらない奴じゃないですか……
「……それじゃあ、スタートの合図よろしく」
「はい。それでは両者位置について……」
俺様と塵は構える。武士娘の合図を待って……
「……始め!」
一気に駆け出す……ッ!?
「どりゃああああぁぁぁぁ!全力ぜんかぁぁぁぁぁぁい!」
……クハハ!マジか!コイツ、全力で飛ばしに来やがった!面白れぇ……ッ!
「……潰す!」
けど、何人たりとも俺様の前を走る存在は許さねぇ!俺様も、この暴走娘と同じように全力で駆け抜ける!
「負けないぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
「……!」
しかし凄いな。まさかこんな序盤から滅茶苦茶なペースで飛ばすとは……。余程スタミナに自信でもあんのか?ますます興味が湧いてくるじゃねぇか……ッ!
……なんて思っていたのが最初の800mまで。現在は最後のコーナーを曲がろうかというところ。あの暴走娘はというと……。
「ゼェ……ゼェ……は、ハヒィ……ッ」
「……マジかよコイツ」
”……どう見てもバテてるね”
完全にガス欠していた。あぁ……コイツスタミナに自信があるとかそういうんじゃないわ。ただ考えなしに爆走してるだけだわこの暴走娘。
俺様は完全に興味を失った。もういい、糧になるかは分からんが……俺様の餌になってもらうとするか。
「食いつぶしてやる……ッ!」
”ッ!?それまで使うのは聞いてない!”
コイツがなんか言ってるが、もうおせぇ。俺様は……
「うわぁっ!?な、なんだこの景色ッ!?ターボこんな景色知らないぞ!」
初めて見る俺様の
「な、なんだかよく分かんないけど……、ターボエンジンぜんかぁぁぁぁぁぁい……ッ!」
……は?え?ちょ、ちょっと待て。
「ゼェー、ゼェー……ハァ、ハァ……ッ。ま、まだまだぁ……」
俺様は暴走娘を完全に引き離している。何なら、すでに差は14バ身ぐらいは開いているはずだ。とっくにあの景色に飲まれているはずなのに……全然堪えている様子がねぇぞあの暴走娘!?
”……おぉう。これは意外な展開”
いやいやいや!おかしいだろ!?んなバカなことがあってたまるか!まさか、まさかコイツ……ッ!
「え~っと……ファントム先輩が先にゴール……ですね」
「ステータス『憐憫』……ここまで差をつけられると、いっそ可哀想になってきますね」
「が、頑張れー!ターボさーん……!」
最早どんだけ差をつけたか分からねぇぐらいの差をつけられて、暴走娘はようやくゴールインした。だが……その顔はどこか満足げな表情だった。まさか……まさか、コイツ!?
「ゼェー……ゼェー……ひゅー、ひゅー……ヴォエ……」
息も絶え絶えになりながら、暴走娘は俺様に指を突きつけて宣言してきやがった……ッ!
「つ、つぎ、こそ、は……ターボがかーつ……」
コイツ……ッ、ピンク娘と同じ……ッ!
”……良かったね、あなたの
「んなバカなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?お前もかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「うひゃあ!?ど、どうしたのファントムさん!?きゅ、急に膝をついて絶叫しだして!?」
「驚愕。ファントムさんが絶叫している姿……初めて見ました」
「口調も変わって別人のようですね……」
塵共がなんかほざいているがどうでもいい!ふざけんなマジで!なんで効いてねぇんだよ!?おかしいだろ!?
”……ウララちゃんは何となく想像つくけど、ターボの場合は……どうなんだろうね?”
あり得ねぇ……ッ!ピンク娘に効かないだけでも腹立たしいってのに、あの暴走娘にも効かねぇたぁどういうことだ!?あり得ねぇだろ!?
”……とりあえず代わるね”
そう言って、俺様とコイツの意識が代わる……
「……なんとビックリだったね」
”なんで……なんで……”
もう一人の私、目の前の現実を直視できない模様。まぁまさかウララちゃんに続いてターボまでもが効かないとなると仕方がないかもしれません。
「……まぁ元気出して」
”うるせぇ!今日はカロリー気にせず食いまくれ!やけ食いだやけ食い!”
はいはい。分かりましたよ。あ、その後はみんなで一緒に自主トレしていました。The・いつも通りですね。しかし大収穫でしたね。まさかターボにも効かないとは。
ファントムさん達と自主トレをしながら、ライスは考える。世間に負けることを望まれていることに対する、ファントムさんの言葉が、ライスの頭の中に残っていた。
『私というウマ娘は負けることを望まれている。だからといって、負けるつもりはサラサラないけど。私は私が走りたいから走る……私の目的のために、走るだけだよ』
「……やっぱり、強いな。ファントムさんは。ライスが同じ状況になったら……きっと、耐えられない」
負けることが望まれている、ファンの人達が敵に回っている……そんな状況に置かれたら、きっとライスは耐えられない。ライスのことは、ライスが一番よく分かっているから……。
「……どうかしたの?ライスちゃん。私をジッと見てるけど」
「へ?う、ううん!なんでもないよ!」
「……そう?じゃあもう少し頑張ろうか。ライスちゃん身体固いし、もっと柔らかくならないと」
「う、うん……ッ!」
柔軟をしながら、ライスは改めてファントムさんの凄さを感じていました。
天敵が増えたよ!やったね亡霊!