時刻は放課後。学園の生徒達はみな練習に励んでいることでしょう。勿論、我々スピカのメンバーも練習をしていますよえぇ。
ですが……今日は今までとは少し違います!なんと!
「お待たせしましたわみなさま」
「「「お帰りー!マックイーン!」」」
マックイーンがリハビリを終えて帰ってきましたよっと。いやぁ良かった良かった。変わりがないようで安心しましたよ。それに……心なしか筋肉もついて前より強くなったんじゃないですか?どう思います?私。
”どうだろうなぁ?確かに筋肉がついて前よりも強くなったかもしれねぇ。だが……内面に関しちゃ、そうでもないかもしれないぜ?”
「……」
”特にスイーツ娘は……あー、メジロ、つったか?その家名を背負うことを誇りにしている節がある。そう言う塵は大抵他の奴に弱みを見せねぇ。だからこそ、外面を取り繕って不安な内面を隠している……そうとも考えられるかもしれねぇなぁ?”
「……まぁ、実際のとこはどうなのか分からないよね」
”ま、そうだな。精々折れてねぇことを祈っとけ……あり得ねぇけどな!ギャハハ!”
はいはい。
あ、マックイーンだけじゃありませんよ。テイオーも前より元気になったみたいです。まだトレーニングはできませんけど、明るい調子が戻ってきました。良きですねぇ。この調子で復帰を目指して頑張ってほしいです。
”……どうだかねぇ”
「……不安なことでもあるの?」
”前に言ったな?あのクソガキのバネは天性の才能。身体のバネに関しちゃ、俺様以上だと”
「……言ってたね」
”だが、クソガキの肉体はそのバネに耐えきれてねぇ。トレーニングを積んで、前よりも身体が丈夫になったにも関わらず、だ。下手すりゃ、クソガキの体質は一生改善されねぇままかもしれねぇな”
「……」
確かに、そうですね。トレーニングを積んで前より身体が丈夫になっているだろうにも関わらず、テイオーは怪我を繰り返しています。ということはつまり……これは、テイオー自身の体質の問題なのかもしれません。
”諦めろ……つっても、テメェは諦めるつもりはねぇんだろ?”
「……よくお分かりで」
”……フン。だが、あのクソガキは体質が治らん限り一生骨折との戦いになる。それだけは頭に入れとけ”
……あいあい。ままならないものですね。持って生まれた才能に身体が追いつけないというのは。
「さて、マックイーンも帰ってきたことだ!チーム・スピカ、今日も全力でトレーニングしてこい!」
「「「はい!」」」
あいあーい。さて、今日も一日トレーニング頑張りますかね……
「ファントムさん、少しよろしいでしょうか?」
「……どうしたの?マックイーン」
トレーニング始めようと思ったらマックイーンが私の方に来ました。おやおや、どうしたんですか?
「いえ、ファントムさんさえよろしければトレーニングメニューを参考にさせてもらえないかと思いまして」
「……私のトレーニングを?」
”あん?俺様のトレーニングを真似て強くなろうとでもしてんのか?このスイーツ娘は”
まぁそんなとこだろうと思います。
「はい。ファントムさんの強さを知るためには、一緒にトレーニングすることこそが一番の近道だと思いましたので。天皇賞での惨敗……忘れたわけではありませんのよ?」
「うっ」
「わたくしはファントムさんの強さを知りたい。なので一緒にトレーニングをしたい……同じチームの後輩の頼み、聞き届けてはいただけないでしょうか?」
マックイーンと私の体格差的に、マックイーンは上目遣いになります。ちょ、ちょっと。止めてくださいよ。受けざるを得なくなるでしょうが。まぁ別にいいんですけど一緒にトレーニングするぐらい。
「……別にいいよ。ただ、特別なトレーニングは何もしてない。基礎的なトレーニングしかしないけど……それでもいい?」
「構いませんわ。それでは、よろしくお願いいたします」
というわけで、マックイーンと一緒にトレーニングすることになりましたとさ。さて、まずは軽めのウォーミングアップから始めましょう。
「……まずは基本的な筋トレをしていこうか」
「はい。復帰明けといえど遠慮はいりません。いつものようにしてくださいまし!」
「……良い気合だね。じゃ、まずはこれから」
頑張りまっしょい。
ファントムさんの強さを知るために、無理を言って同じトレーニングをさせてもらうことになりました。今現在、わたくしはファントムさんのトレーニングメニューをこなしているのですが……確かに基礎的なトレーニングばかりですわね。特別なことは何もありません。ですが……!
「ふっ、ぐ……!な、中々にキツいですわね……ッ!」
「……まぁ普段は使わない筋肉を意識して動かしてるからね。体勢、崩れてきてるよ」
「わ、分かっていますわ……ッ!」
リハビリをしていたので、体力は戻ってきておりますが……!それでもキツいことには変わりません!ですが、これも強くなるため……強くなるために頑張らねば!
あの景色を払拭するためには、きっとファントムさんに勝たなければなりません。ファントムさんに勝たなければ……、あの、悍ましい景色はわたくしを蝕み続けるでしょう。
『これであなたもなかまだよ?わたしたちとなかよくしましょ?』
(ッ!い、今でも脳裏に浮かんできますわね……!)
「……どうかしたの?身体が震えたけど」
「い、いえ!大丈夫ですわ!全く問題ありません!」
「……怪我明けなんだから、あまり無茶しないでね?」
「お心遣い、感謝いたします。ですが本当に大丈夫ですので」
「……そう」
ファントムさんはそれだけ言ってまたわたくしとのトレーニングに励みます。お面とフードを被っているので分かりませんが……きっと、心配そうな表情を浮かべていたのでしょう。ファントムさんは優しいですから。
……ですが、だからこそ疑問なのです。ファントムさんは優しい。それは、ファントムさんに関わったことがある方々ならば周知の事実。それが時に誰かを傷つけることがありますが……ファントムさんの善意からくるものだということはなんとなく分かります。そのような方の
(ですが、だとしたら夏合宿の時に口をつぐんだのも納得がいきます。あのような
……少し、詳しく聞いてみましょうか。
「ファントムさん、少しよろしいでしょうか?」
「……どうしたの?マックイーン」
「いえ、少し
わたくしが
「ファントムさんは、
「……まぁそうだね」
ふむ。ということは……ファントムさんにとって、あの景色が一番強さを発揮できる舞台?……分からないですわね。あのような亡者の集まりに追われることがファントムさんにとって最も強さを発揮する舞台だとは到底思えませんが……。
「……聞きたいことはそれだけ?」
「え?えぇ。それだけですわ。申し訳ありません、トレーニングの最中に」
「……まぁいいよ。それぐらいだったらいつでも答える」
それからファントムさんはトレーニングに集中し始めました。わたくしも同じトレーニングをしながら、頭では別のことを考えます。
(あの亡者からは走るものに対しての怨念のようなものを感じました。走ることができるわたくしが羨ましい、わたくしを仲間に引き入れる……そのような幻聴も、確かに耳にしました。そのことから推測するに、あれはファントムさんに敗れ去っていったウマ娘達の怨念……なのでしょうか?)
だとしたら……おかしい点があります。いくら何でも数が多すぎるという点ですわ。ファントムさんが出走したレースは天皇賞含めて19戦。その内辞めていったウマ娘は20人前後でしょう。ですがわたくしが感じた怨念の数は……それ以上に感じられました。
(ファントムさんは確か……スペシャルウィークさんと同じ編入組でしたわね。ならば、学園入学前にも似たような事例が?)
……あり得ませんわね。もしそのようなことがあれば、もっと大きな騒ぎになっているでしょうから。都市伝説にすらなっていないというのは、少々疑問が残ります。
それに何故生きているはずのウマ娘が怨念として出てきているのでしょうか?これに関してはまぁ……ファントムさんがそういう
(走れなくなった彼女達の分まで走っている?……それはないでしょう。ならば
(悔恨……そのような念を抱いているからこそ、あのような
思いつく限りでは、これぐらいでしょうか。
……なんにせよ、ファントムさんには謎が多い。例えばレース中。普段の併走はいつも通りのファントムさんでしたが……天皇賞ではファントムさんらしからぬ言動が散見されました。
(鏖……蹂躙してやるよ塵共……そして、一人称も変わっておりました。確か……俺様、でしたか?)
レース中のファントムさんの言動は、どこかおかしかった。それこそ……違う人物かのようにわたくしは感じました。
思えば、ファントムさんの経歴は一切不明……でしたわね。……。
(調べてみる必要があるかもしれません……。ファントムさんの過去を、この方の身に、一体何が起こったのかを)
まずはじいやに頼んでみましょう。そして、メジロ家の情報網を頼りにファントムさんの過去を洗い出す。時間はかかるでしょうが……調べてみる価値はあるかもしれません。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか……)
「……マックイーン?どうかしたの?」
「へ?」
「……私の方じーっと見てたけど。顔に何かついている?」
「い、いえ!何もついてませんわ!?」
というか、お面をつけているから何かついてるにしてもお面でしょうに!?
「……まぁお面つけてるから何かついてるとしたらお面だよね。イッツジョーク」
って、自分でも分かってるじゃありませんの!
今月末もCD出るから買いですね。