そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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いつもの日常的な。


亡霊少女と変わらぬ日常

 自分の身体、そしてトレーナーさんと相談しながら決めた大阪杯への出走。現在はすでに第4コーナーを回ったところです。

 

 

 

 

《第4コーナーを抜けて最後の直線に入りました!先頭メジロマックイーンとの差はおよそ1バ身程!このまま逃げ切ることができるかメジロマックイーン!》

 

 

《調整が不安視されてますからね。果たしてどこまで戻すことができたか?》

 

 

 

 

 ……いけます。問題ありませんわ。これならば、勝利を収めることができるでしょう。ですが、ただの勝利では足りません!春の盾を取り戻すためには、より強い勝利をッ!

 

 

”クスクス、頑張ってる頑張ってる”

 

 

”無駄なのにね”

 

 

 また、聞こえてきましたか!

 

 

(鬱陶しいですわね……!早く消えてくださいまし!これ以上……わたくしを、蝕まないでください!)

 

 

 なんて言われようと、わたくしはあなたの仲間にはなりません!

 

 

”みんなそういう。でも結局はこうなるんだから”

 

 

”だーれもアイツには勝てない。だからさっさと諦めなよ”

 

 

 アイツ?まぁ十中八九ファントムさんの事でしょうけど。

 わたくしを蝕むあの日の領域(ゾーン)。酷い時は走ろうとする度に、そうでなくとも領域(ゾーン)を使おうとすればこの景色が見え始めてきます。なのでわたくしは……領域(ゾーン)を封じられた状態で走ることしかありません。

 

 

(しかし、これほど他者に影響を与えるなど……!ますます考えにくいですわね!ファントムさんがこの領域(ゾーン)を使用するなど!)

 

 

 あれこれ考えても仕方がありません!今はただ……目の前の勝利に向かって走るだけですわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《メジロマックイーン懸命に粘る!メジロマックイーンが懸命に粘っている!そして今、メジロマックイーンが先頭でゴォォォォルイン!大阪杯を制したのはメジロマックイーンだ!》

 

 

《目標である春の天皇賞に向けて弾みをつけることができました。しかし、どうにも彼女らしからぬ走りでしたね》

 

 

《そうですね。やはり調整不足が目立ったでしょうか?しかし、それでもメジロマックイーンは強かった!あの敗北はあれど最強ステイヤーの一角であることは変わらず!このまま春の天皇賞を取り戻すことができるかメジロマックイーン!》

 

 

 

 

 いやぁ、マックイーンは無事大阪杯を勝つことができましたね。一安心ってもんです……普通だったら。

 

 

「……まだ、抜け出せてないみたいだね」

 

 

”当たり前だ。俺様の領域(ゾーン)をそう易々と抜け出せるはずがねぇ。あのマスク娘どもが例外すぎるだけだ”

 

 

 マックイーンはまだ、私の領域(ゾーン)に蝕まれているようで……最後の直線、何かに追われているような様子で走っていました。

 

 

「やったぁ!マックイーンさん勝ちましたよ!」

 

 

「本当!調整できてないんじゃないかって思ったけど……そんなことなかったわね!」

 

 

「……本当にそうだといいがな」

 

 

「どうしたんだよトレーナー?何かあんのか?」

 

 

「……いや、俺の考えすぎだな!とりあえず、マックイーンをお祝いしに行くぞ!」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

「……良かった、マックイーン」

 

 

 さて、マックイーンのお祝いに行きましょうか。

 この後控室でマックイーンのお祝いして、そのままウイニングライブを見て。一日は終わりましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マックイーンの大阪杯も終わった次の日。私は旧理科準備室でカフェさん達とお茶をしています。

 

 

「……そうですか。マックイーンさんは、大阪杯を、勝ちましたか」

 

 

「……うん。無事勝てたけど」

 

 

「けど?どうかしたのかいファントム君」

 

 

「……私のせいとはいえ、やっぱりまだ完全には吹っ切れていないみたい」

 

 

 私の言葉にカフェさん達も微妙な表情。ま、仕方ないですよね。マックイーンの不調の原因は私にあるわけですし。そりゃなんも言えませんよ。

 

 

”フン。知ったことか”

 

 

 もう一人の私はこんなですし。元からだからあまり気にしませんけど。

 

 

「けど、本調子じゃなくても勝てるあたりマックイーン君のポテンシャルは相当なものだ。春の天皇賞も、無事に勝てるんじゃないかい?」

 

 

「世間的にも、注目されてますね。ですが、やはり一筋縄では、行かないかと」

 

 

「……そうだね。特に今回の春天は、ライスも出るから」

 

 

 現在春の天皇賞に出走を表明しているのは……マックイーンとライスちゃん。それに有名どころでいえばメジロパーマーでしょうか?後はターボと同じチームのマチカネタンホイザとイクノディクタスとか。

 

 

「ライスさんは、マックイーンさんと同じ、純粋なステイヤーです。特に、菊花賞での勝ちもあるので、現在の評価は、二分されている形になっています」

 

 

「し、新聞の見出しでもしょっちゅう見ますからね。マックイーンさんとライスさん……現・最強ステイヤー〈名優〉と新世代ステイヤー〈黒い刺客〉の頂上対決、なんて言われてますし」

 

 

「ファントム君は最強ステイヤーとは呼ばれていないのかい?前回の勝ち方から考えると呼ばれてそうなものだが」

 

 

 タキオンの言葉にデジタルは言いづらそうにしています……私の方を見ながら。ちょっとちょっと、なんて言われてるんですか私。滅茶苦茶気になるんですけど。

 

 

「ふ、ファントムさんは~……全距離行けるからステイヤーとは言いづらいってのと、あまりにも強すぎるから元から除外されてますぅ……」

 

 

「……ガガーン」

 

 

”……別にがっかりすることでもねぇだろ。それだけ俺様の強さが証明されてるってことだ”

 

 

 だったらそんな寂しそうに言わないでくださいよ。ちょっとは気にしてるでしょあなた……あなた?何言ってるんですかね?私ですよ私。もう一人の私はなんだか寂しそうにそう言いました。ま、あまり深く詮索はしません。誤魔化されますし、不機嫌になりますから。ただでさえカフェさんのお友だちと仲が悪いのにこれ以上不機嫌の種になるようなものは生み出したくないですからね。

 ……でも、珍しくお友だちさんと喧嘩していませんね。というか、お友だちさん側が大人しくしています。いつもだったら喧嘩をおっぱじめそうなものですが。……ま、喧嘩しないに越したことはありません。仲良きことは美しきかなです。

 話が少し横道に逸れましたが、しかしライスちゃんもあの菊花賞以降評価が上がってきましたね。菊花賞前まではヒール的な扱いをされていましたが……。

 

 

「それにしても、ライス君は良かったねぇ。菊花賞以降、彼女も吹っ切れたようだ」

 

 

「そうですね。やはりあの菊花賞で、心を動かされたファンが、大勢いたのでしょう」

 

 

「そりゃあそうですよ!あの直線でのデッドヒート……!あれで心を動かされないウマ娘ちゃんファンはいません!デジタル的ベストバウトにも堂々のランクインを果たしてますよ!」

 

 

「……ブルボンも他の子達も、あれ以降特に何も言われてないみたいだしね」

 

 

 強いていうならあの時ブルボン以上に逃げてた子が批判されてたことがありましたけど……ファンの人達に集中砲火されてましたねあのコメンテーター。

 

 

【あの勝負でそんぐらいの評価しか下せないとか草枯れるわ。何見てたん?】

 

 

【これでコメンテーターとか笑えるわ。小学生の方がまだマシな評価下せるだろ】

 

 

【批判したいだけだろお前。あの名勝負をお前程度が汚すな】

 

 

 なーんて袋叩きにあってました。コメンテーターの人はちょっと可哀そうでしたけど……まぁそれだけあの勝負は凄かったということで1つ。あ、コメンテーターの人は後に謝罪しましたよ。それでファンの人達も矛を収めたそうです。

 そんなライスちゃんですが。有マ記念は……あれでしたね。思わずブルボンからも睨まれてましたよ。その時の会話は今でも思い出せます。

 

 

『……ステータス『プッツン』。ライスさん、あの有マは何ですか?』

 

 

『え、え~っとぉ……』

 

 

『……』

 

 

『ご、ごめんなさ~い!?』

 

 

 ライスちゃん、まさかの8着。ブルボン、静かにキレる。まぁその後の目黒記念を2着、日経賞を勝利で飾ったので調整は順調といったところでしょうか。

 

 

「まぁ、あの有マを考えれば仕方ないかと。パーマーさんとヘリオスさんの爆逃げコンビにまんまと逃げさせてしまったわけですから」

 

 

「……あれは凄かったね。見事なコンビ逃げだった」

 

 

「あのような、レースは、やってる側からすれば、勘弁してほしい、ですけどね」

 

 

 ペースを狂わされるからたまったもんじゃないでしょう。私?その2人よりも前に出て走るので多分さらにペース上がりますよ。コンビ逃げがトリオ逃げになるだけです。

 

 

”何がトリオだふざけんじゃねぇ。俺様が先頭に決まってんだろ”

 

 

「……はいはい」

 

 

 とにもかくにも、ライスちゃんも順調に調整が進んでいます。他の子達もおそらく順調にいっていることでしょう……マックイーンを除いては。

 今のマックイーンは精神的に不安定な状態にあります。領域(ゾーン)を使えない・封じられた状態でライスちゃんに勝つのは……厳しいと言わざるを得ません。どう転ぶのやら。

 

 

「そう言えば、ブルボン君はどうなんだい?確か、菊花賞以降の練習で怪我をしたそうじゃないか」

 

 

 ブルボンですか。ブルボンもリハビリは順調にいってるみたいですね。

 

 

「……すこぶる順調だよ。宝塚記念には間に合わないけど、夏のレースで復帰予定だって。今はもうギプスも取れてトレーニングを再開しているみたい」

 

 

「良かった、ですね。ブルボンさんも、また走れるようになって、師匠として、嬉しいんじゃないですか?」

 

 

「……そうだね。嬉しいよ」

 

 

”ま、これで欠員も出なかったわけだ。俺様としても万々歳だな”

 

 

”……チッ。やっぱよく分からないね、こいつは”

 

 

”あん?なんか言ったか狂犬。喧嘩を売るなら買ってやるぜぇ?”

 

 

”冗談抜かせ。カフェに怒られたくないし……お前に売る喧嘩もない”

 

 

”ハッ!随分弱腰になったなぁオイ!牙でも抜かれたか!?それとも……あの時のレースで俺様に勝てねぇって悟ったか?ギャハハ!”

 

 

”……”

 

 

”……チッ、張り合いがねぇ”

 

 

 あ、あっぶないですね。というか、喧嘩を売らないでくださいよ。めんどくさいことになるので。喧嘩にならなくてよかったですよ本当に。……それにしても、お友だちさんもいつもだったら喧嘩になりそうなものなのに……どういう心変わりなのでしょうか?それに、なんというか……もう一人の私を、憐れむような眼差しで見てませんでした?

 

 

”あぁ全くだ……クソほど不愉快な視線だぜ……!”

 

 

「……どうどう」

 

 

”ケッ!”

 

 

 それっきりもう一人の私が口を開くことはありませんでした。一件落着……とはいきませんけど。

 後はカフェさん達とお茶をして一日を過ごしました。……それにしても、何かの写真があったので覗き込もうとしたら必死に止められましたね。何が映ってたんです?もしかしてお化けでも映ってました?心霊写真……気になりますけど滅茶苦茶に隠されたので深くは突っ込まないでおきましょうか。




天皇賞は多分サクッと終わります。ライスも菊花賞のことがあるので精神的に強くなってるのと、マックイーンの天皇賞3連覇は掛かってないので。
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