そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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ターボ師匠再登場。アプリでも早く勝負服着せてあげてぇなぁ……。


亡霊少女と理解不能

 ある日いつものようにブルボン達と自主トレをしていますと……すっごい勢いで見覚えのある青い髪のツインテールがこっちに来てますね。むむむ……!これは、あの子に違いありません!

 

 

”げぇっ!?また来やがったのがアイツ!”

 

 

「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!勝負だー!ファントムー!」

 

 

「……いいよ」

 

 

 ターボが私のところに来ました。そしていつものように勝負を挑んできます。いやぁ、元気があってよろしい。

 

 

「よーし!じゃあ早速練習場にいくぞー!」

 

 

「……うん。じゃあブルボン達も行こうか。ウォーミングアップも終わったし」

 

 

「ステータス『承諾』。同行します」

 

 

「うん。分かった」

 

 

「えぇ。ご同行させていただきます」

 

 

 ブルボン達も連れて、私達は練習場へとつきます。そしてターボとの模擬レースをすることとなりました。

 

 

”クソが……!あのピンク娘だけでも癪なのにコイツにも効かねぇなんて……!おい、さっさと俺様に代われ!この暴走娘を今度こそぶっ潰してやる!”

 

 

「……どうせまた効かないと思うよ?」

 

 

”やかましい!”

 

 

 これ以上あーだこーだ言われるのも嫌なので私はもう一人の私と代わります……

 

 

「よーし、今日こそはファントムに勝つぞー!」

 

 

「……」

 

 

(抜かしやがれ!今日こそテメェをぶっ潰してやる!)

 

 

「それでは。両者位置について、よーい……スタート!」

 

 

 武士娘の合図のもと、俺様と暴走娘は走り出す。スタートダッシュは互角、だが……俺様がハナを取る。普通の塵だったらここで控える。だがこの暴走娘のことだ。絶対に……競り合ってくる!

 

 

「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!負けるかー!」

 

 

「……しゃらくせぇ!」

 

 

 俺様も抜かせないために全力で駆け抜ける。お互いに競り合う状況が続いていた。

 

 

「相変わらず、ファントムさんとターボさんの併走は凄まじいですね」

 

 

「そ、そうだね。とても1600mとは思えないペースで飛ばしてる」

 

 

「まぁ、このペースで持ってるファントム先輩も大概おかしいと思いますが……ターボさんも最近はスタミナがついていますね。やはりこれも、ファントム先輩とのトレーニングの成果でしょうか?」

 

 

 にしてもマジでコイツ……!どこまでも競り合ってきやがるな!考えなしに飛ばしやがって!……あぁクソ!

 

 

「ここいらで潰す……!」

 

 

 残り600m。コイツは少し余裕がある状態だろう。早々に領域(ゾーン)を切って……今度こそ叩きのめす!

 

 

”……まぁがんばえー”

 

 

 何だその気の抜ける応援は!?いや、まぁどうでもいい。とっとと領域(ゾーン)を切っておしまいにしてやる!

 

 

「それにしても……ターボさんと走る時のファントムさんは何というか」

 

 

「うん。楽しそうだよね」

 

 

「やはり、全力を出しても向ってきてくれる相手というのが嬉しいのではないでしょうか?まぁ、併走で全力を出しているのかは分かりませんが……」

 

 

 ……楽しそうだと?笑わせんじゃねぇ!

 

 

『お前は本当に楽しそうに走るなぁエクリプス』

 

 

 ……クソが!余計な記憶が蘇ってきやがる……!

 

 

『あん?あたりめぇだろ!走るのは楽しいし、何より誰かと一緒に競い合うってのが楽しくってしょうがねぇんだ!』

 

 

 消えろ、消えろ!この記憶は……俺様にとって邪魔なものだ!余計な雑音(ノイズ)なんだよ!

 

 

『はは、ならこれからもバンバンレースを組んでいこう。その内、マッチレースも組んでやるさ』

 

 

『お、マジかトレーナー!いやぁ、テメェと組んで良かったわ!』

 

 

 反吐が出るんだよ……!あの最低最悪のクソ野郎(トレーナー)の面を見るだけで……虫唾が走る!

 

 

「俺様の記憶から消え失せろ!ゴミがぁぁぁぁぁ!」

 

 

 気づけば、最大出力の領域(ゾーン)で俺様は駆け抜けていた。ゴール地点に設置してあるなんかのパネルをあっという間に過ぎていく。あの暴走娘は……

 

 

「は、はひぃ……はひぃ……。つ、つぎこそは~、か~つ……」

 

 

 変わらねぇ。何も、変わっちゃいなかった。

 

 

(あぁ、クソ……なんでだ……なんで……)

 

 

 苛つくはずなのに、俺様の領域(ゾーン)が効かねぇことが腹立たしいはずなのに……!

 

 

”……私”

 

 

「うるせぇ……」

 

 

 なんで、口角が吊り上がんだよ……!この感情は捨て去ったもんだ、余計なものだ。俺様にとって……必要のねぇものなんだよ。

 

 

『エクリプス!いくら何でもやりすぎだ!』

 

 

『……あ゛ぁ゛?うるせぇよゴミが』

 

 

『なっ!?お、お前自分のトレーナーに向かって……!』

 

 

『トレーナーだと?笑わせんな。レースに出るにはトレーナーが最低条件だから組んでやってるだけだ。俺様のことを理解できねぇくせに……トレーナーぶってんじゃねぇよゴミ』

 

 

 ……ッチ。どうでもいい記憶を思い出して気分が悪いぜ全く。

 

 

”……今日の夜、またいつもの歌えばいい?”

 

 

「……どういう意味だ?」

 

 

”……別に。何となく歌った方が良いかなって。讃美歌”

 

 

「……」

 

 

 俺様の異変を察知したんだろう。そういうとこだけは変に鋭いからなコイツは。

 

 

「頼む。とりあえず代わるぞ」

 

 

”……あいあーい”

 

 

 俺様にとってコイツは目的を達成するための道具だ。道具だった、はずなんだがな……。

 

 

(忘れるな。俺様自身の目的を、憎悪を……それを果たすまで、俺様は……ッ!)

 

 

 変な情を湧かす必要はねぇ。道具だ、コイツは道具なんだと認識しろ……つっても、それができたら苦労はしねぇよ……

 

 

「……さて、とりあえずまた私の勝ちだねターボ」

 

 

「はひぃ、はひぃ」

 

 

 ターボはまだ復活できてないみたいですね。スタミナはついてきたようですが、やはり苦しいものは苦しいですから。さて、とりあえずおぶって……と。

 

 

「ステータス『労い』。お疲れ様でした、ファントムさん」

 

 

「ターボさんもすごいね。着実に強くなってってる」

 

 

「……そうだね。スタミナもついてきたし、この調子ならレースでも結果が出せると思う」

 

 

 なんだかんだターボはあの併走以降私に挑むようになってきましたからね。さすがに頻度はそんなでもないですけど。これで4回目ぐらいでしょうか?

 

 

”チッ。めんどくせぇ”

 

 

「……まぁまぁ。可愛いもんだと思うよ?」

 

 

”……とっとと諦めちまえば楽になるってのに。なんで向かってくるのやら”

 

 

 心底理解できないという風に言ってますね。ん?後ろでターボがもぞもぞしていますね。では降ろしましょうか。

 

 

「よ、よ~し。た、ターボふっか~つ……」

 

 

「ターボさん?あまり無理はなさらない方が。もう少し休憩を取った方が良いですよ?」

 

 

「そ、そうする~」

 

 

 ターボはそのままへたり込みました。

 

 

「……それじゃあ、後は普通に練習しようか」

 

 

 さぁキリキリトレーニングしましょう。時間は待ってはくれませんよ。

 

 

「……ステータス『疑問』。何故ターボさんと同じく並走していたはずのファントムさんはトレーニングをする余裕があるのでしょうか?」

 

 

「わ、分かんない……」

 

 

「私はもうそういうものだと思って理解するのを諦めました」

 

 

 どういう意味ですかねグラス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メジロ家のトレーニングルーム。天皇賞を終えたわたくしはより一層トレーニングに励むようになりました。あの景色は……やはりわたくしを蝕んでいるようで。まだ振り払えていませんわ。

 

 

(ですが……必ず振り払ってみせます。わたくしはメジロマックイーン……誇り高きメジロ家のウマ娘なのですから!)

 

 

 強くあるために、強いわたくしであるためにも克服しなければなりません。これは、わたくしに与えられた……試練のようなものなのですから。

 

 

「マックイーンお嬢様。少し、耳に入れたいことが……」

 

 

「じいや?……もしかして、ファントムさんの事ですか?」

 

 

 トレーニングをしているわたくしのところにじいやがやってきました。封筒を抱えておりますわね。……頼んでいたものの結果が出たのかもしれません。

 

 

「左様でございます。ですが、このようなことは今回限りにしてくださいませ。あまり、褒められた行為ではありませんので」

 

 

「……分かっておりますわ。もとより今回限りにするつもりですから」

 

 

 じいやは頷くと、封筒の中身を取り出します。そして、わたくしに調査の結果を報告しました。

 

 

「まず結論から申し上げますと……ファントムというウマ娘は過去に2人ほど存在しておりました」

 

 

「……2人、ですか」

 

 

「はい。ですが、その内1人はすでに鬼籍となっております。こちらをより詳しく調査したところによると……どうやらイギリスで行方不明になりそれ以降見つかっていないということから死亡扱いになったようです」

 

 

 言いながら、じいやはこちらに1枚の紙を渡してきます。その紙には……おそらく亡くなったであろうファントムさんの方の写真が添えられていました。青白い髪のウマ娘……そして何より、天皇賞であの闇からわたくしを助けてくださった方です。そう確信が持てました。

 

 

「もう一人の方は?」

 

 

「もう一人の方ですが……こちらは、その、なんと申し上げたらよいのか……」

 

 

 じいやは歯切れの悪い返事をするばかりです。何を見たのでしょうか?

 

 

「構いません。話してくださいまし」

 

 

「……その、もう一人のファントム様には生みの親となる人物がいないことが分かりました。戸籍が登録される以前の情報が全く出ておらず……これ以上の結果が望めないということで打ち切りとなりました」

 

 

「……親となる人物が存在しない」

 

 

 じいやはもう1枚の紙をわたくしに手渡します。そこに映っていたのは……丁度先程の亡くなったファントムさんを赤黒い髪にしたウマ娘の姿。その写真が収められていました。

 

 

「ですが、育ての親となる人物は存在しております」

 

 

「……その人物の名前は?」

 

 

「Sun Brigade。調査によると、元イギリスの消防隊員だったウマ娘です。戸籍上の親も、彼女の名前が書かれておりました」

 

 

 Sun Brigade……それがファントムさんの育ての親かもしれない方ですか。

 

 

「彼女にコンタクトは?」

 

 

「難しいかと。Sun Brigade様はかなりの資産家、アポを取るのは相当に厳しいものになると思われます」

 

 

「……そうですか」

 

 

 なら、諦めるしかありませんわね。そもそも、向こうはわたくし達のことを知らないでしょうし、無理に押し掛けたところで門前払いされるのは目に見えてますもの。

 

 

「お嬢様はこの後もトレーニングを?」

 

 

「無論ですわ。春の天皇賞は破れましたが……それでも宝塚記念があります。宝塚記念はテイオーの復帰レースになるでしょうし、なおさら負けるわけにはいきませんもの」

 

 

「……左様ですか。あまりご無理はなさらないよう」

 

 

「分かっていますわ」

 

 

 それにしても……戸籍に登録される以前の情報が見当たらない、ですか。

 

 

(これほどまでに似ているとなると、亡くなったファントムさんと今のファントムさんは同一人物なのでしょうか?それを知りたいのはやまやまですが……真相を知っているであろうSun Brigade氏には連絡を取るのがほぼ絶望的……。どうしようもありませんわね)

 

 

 近くにお知り合いの方がいればよろしいのですが……ファントムさんに聞くのは、止めておいた方が良いでしょう。ファントムさんの口から育ての親の話を聞いたことがありませんし、何より忘れているのですから。忘れているということは、思い出したくない記憶である可能性が高いです。ならば、黙っておいた方が得策。むしろ余計な刺激をしないようにしませんと。迷惑を掛けたいわけじゃありませんから。

 ……後は、テイオーでしょうか。

 

 

「テイオー様は……大丈夫でしょうか?」

 

 

 じいやの心配する気持ちも分かります。今のテイオーは……危うい。少しつつけば、それこそ崩れてしまうような危うさがあります。ですが……。

 

 

「わたくしは信じております。テイオーの強さを……なにより、彼女に諦めは似合いませんから」

 

 

「……左様ですね」

 

 

 わたくしは力をつけて待っております。ですから、逃げずに来てくださいね?テイオー。




焦燥の亡霊。手がかりをつかむマックイーン。なお、その方と知り合ってる子近くにいますよ。それはもう凄く凄い近くに。
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