そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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サニーさんに会いに行くぞー。


探求者と真実の一端

 ファントムさんの、過去を知っている人物、Sun Brigadeさん。私たちは、奇跡的な偶然もあって、彼女へのコンタクトをとることが、できました。

 

 

”いや、まぁ本当に奇跡だったねあれ……。まさかあの子が知ってるなんて誰も思わないって”

 

 

「それには、同意です」

 

 

「一体どこで知り合ったんだろうねぇ……」

 

 

「さ、さぁ?それにしても……時間的にそろそろでしょうか?」

 

 

「その、はずかと」

 

 

 あの時から2日経って。私たちは、Sun Brigadeさんが指定した場所へと、やってきました。しばらく待っていると……、黒いスーツを着た、いかにもSPという感じの、風貌の方々が、こちらへと近づいてきます。もしや。

 

 

「失礼します。アグネスタキオンさん、マンハッタンカフェさん、アグネスデジタルさんで間違いないですね?」

 

 

「あぁそうだ」

 

 

「……はい」

 

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

 

「……では、私についてきてください。ここからはお車で向かいますので。あなた方のご友人もお待ちです」

 

 

 ご友人……?私たち以外にも、誰が?

 そう疑問に思いつつも、私たちは、リムジンへと乗り込みます。しばらく揺られて、車内では無言で過ごして。気づいたら、屋敷へと着いていました。ここに……彼女、Sun Brigadeさんが。

 

 

「着きました」

 

 

「……長いようで短い時間だったねぇ」

 

 

「き、緊張しすぎて何も喋れませんでした……」

 

 

「……」

 

 

”それにしても立派なお屋敷だねぇ。……なんか腹立つな”

 

 

 止めなさい。

 

 

「……み、みんな?」

 

 

「すすす、スズカしゃん!?ど、どうしてここに!?」

 

 

「そ、それが……私にもよく分からなくて。急に黒いスーツの方達にここに連れてこられたの。そこまで時間は取らせないからって」

 

 

「は、ハァ……」

 

 

 待っていたご友人は、どうやらスズカさんのことだったみたいです。それにしても、どうやってここまで……?

 

 

「どうやってスズカ君をここまで連れてきたんだい?」

 

 

「プライベートジェットを使用して、少々。それよりもSun Brigade様がお待ちです」

 

 

 驚きの連続ですが、ここに来た目的を忘れてはいけません。ここに来た目的、ファントムさんの過去に繋がる情報を、手に入れること。それを果たすために、ここに来たのですから。

 屋敷へと案内され、屋敷の中を歩いていきます。道中、色々なことを聞いてみましたが……

 

 

「その質問にはお答えしかねます」

 

 

「Sun Brigade様がお答えしてくれます」

 

 

「私に与えられた命令はあなた方をSun Brigade様の下へお連れすることです」

 

 

 と、教えてはもらえませんでした。

 そこから歩くこと、少し。ついに、目的の部屋へと辿り着いたみたいで。

 

 

「Sun Brigade様。アグネスタキオン様達をお連れしました」

 

 

「そう。入ってちょうだい」

 

 

「失礼します」

 

 

 扉をノックして、入室の許可を取る。私たちは、中へと案内され、そこにいたのは……

 

 

「待っていたわ。アグネスタキオンさん、マンハッタンカフェさん、サイレンススズカさん、アグネスデジタルさん。良く来てくれたわね」

 

 

 栗毛をロングヘアにしたウマ娘。何より特徴的なのは、車椅子に乗っていること。彼女の周りには、SPらしき方達がずらりと並んでいます。おそらく、彼女こそが……かつてファントムさんを救った、Sun Brigadeさん。

 

 

「初めまして、アグネスタキオンだ。……自己紹介は不要かな?」

 

 

「えぇ。あなた達のことは良く知っているもの。トレセン学園の生徒でありあの子の友達。そして……」

 

 

 Sun Brigadeさんは、目を細めます。

 

 

「ファントムのことを嗅ぎまわっている、悪い子達……って、とこかしら?」

 

 

 ッ!もしや、我々は良く思われていないのでしょうか?そう、考えてしまいます。

 

 

「……な~んてね!冗談よ冗談!安心なさいな、あなた達に危害を加えるつもりはないし、あなた達の知りたいことに答えるために呼んだのだから!リラックスしてちょうだい」

 

 

 そう考えた、次の瞬間。Sun Brigadeさんは朗らかな表情に、切り替わります。なんというか……。

 

 

”お茶目?”

 

 

「分からない……。でも、敵意はないね」

 

 

「デジたん心臓が止まりかけましたよ。こんなとこで四面楚歌になったら余裕でゲームエンドです」

 

 

「やぁねぇ。そんなことしないわよ!あの子の友達なんだもの。感謝こそすれ、恨むようなことなんて何もないわ」

 

 

「……それで、Sun Brigadeさん?」

 

 

「サニーで構わないわ」

 

 

「サニーさん。早速聞きたいのだが……その前に1つ質問させてほしい」

 

 

 タキオンさんは、私たちを代表して、Sun Brigadeさん……サニーさんに質問をします。

 

 

「あなたのことはスペシャルウィーク君を介してコンタクトをとることができた。しかしなぜ……あなたはスペシャルウィークと接点を持っていたんだ?」

 

 

「そうねぇ……。あの子が悩んでいる時に相談に乗ってあげたのが私だったからよ。丁度あの子のジャパンカップの時だったかしら?その時に知り合って、あの子に私の連絡先を渡したの」

 

 

 成程。そういう接点が。

 

 

「まぁ……私が出会えるように仕組んだってだけだけどね」

 

 

「……それは、何故ですか?」

 

 

「簡単な話よ。ファントム……いえ、あなた達はもう正体も知ってるんだったわね。なら遠慮なく言いましょうか。エクリプスから話を聞いて興味を持ったからよ」

 

 

「……やっぱりサニーさんもファントムの正体を?」

 

 

「……えぇ。勿論知っているわ。あの子に憑りついている亡霊の正体。それが……エクリプスってことに」

 

 

 やはり、この方も知っていた。

 

 

「……さて、早速本題に移りましょうか。あまり横道に逸れるのも良くないわ」

 

 

 サニーさんは、毅然とした態度で私たちに、問いかけます。

 

 

「それで?あなた達はなにを知りたいのかしら?あの子について知っていること……私にできる限りの範囲で教えてあげるわ」

 

 

「……それは重畳。ならばさっそく聞かせてもらおうか」

 

 

 タキオンさんは、私たちに、目配せします。私たちは、それに頷いて、タキオンさんは問いかけます。

 

 

「あなたとファントム君の出会い……イギリスのホテル火災、その時何があったのか……あなたの口から是非教えていただきたい」

 

 

「……えぇ。構わないわ」

 

 

 サニーさんは、ゆっくりと息を吸って、続けます。

 

 

「あなた達の知っての通り、私の前職は消防隊員よ。イギリスの、ね。退職した理由は……まぁこの脚を見たら分かるわね?あの事故で私の脚は動かなくなってしまった。だから退職してこの日本に来た」

 

 

「……」

 

 

「あのホテル火災は色々な意味で有名だもの。あの火事から大きな怪我1つもなく生還した奇跡の少女がいるとして、よくテレビで取り上げられていたわ。私はそんな少女を助けた消防士として紹介された。……本当は、逆なのにね」

 

 

「ぎ、逆?それに、その奇跡の少女というのが……」

 

 

「そう。ファントムのことよ。あの子こそが、火事から怪我1つなく生還した奇跡の少女……そして、動けなかった私を救ってくれた、恩人よ」

 

 

 サニーさんは、当時のことを思い出すように、言葉を紡ぎます。

 

 

「本題に移りましょうか。あの時私は……火災の報せを聞いてファントムが宿泊していたホテルへと出動していたわ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あのホテルの火災は、それはそれはもう酷いものだったわ。周りにも飛び火して、鎮火作業に当たっているけど火の勢いは止まらない。建物の中にはまだ大勢取り残された人々がいる。その人達を助けるために、私達消防隊員は尽力したわ。

 

 

『それでは!我々は人命救助を最優先で動け!……突入するぞ!』

 

 

『『『はい!』』』

 

 

 私は突入組。ホテルの中に入って、人命救助をする班に割り当てられた。燃え盛るホテルの中を必死に探し回って、私達は人命救助にあたった。

 

 

『我々についてきてください!もう安心ですよ!』

 

 

『あぁ……!ありがとう、ありがとう……!』

 

 

 周りの仲間達と連携を取って、人命救助にあたる。私達ウマ娘の耳は遠くの声まで拾うことができるから、声が上がった場所を探すのは容易だった。

 人命救助のためにホテルに入ってからしばらくして、ある声が聞こえたの。

 

 

『──ッ!』

 

 

『──、──ッ!』

 

 

 なんて言ってるのかは分からなかったわ。でも、多分日本語だったんでしょうね。

 

 

『すいません!私は向こうに行きます!』

 

 

『どうした!サニー!』

 

 

『向こうで声がしました!そちらに急行します!』

 

 

『……分かった。我々もこの方達を送り届けたらすぐに向かう!決して無茶はするなよ!』

 

 

『はい!』

 

 

 私は声のした方へと向かった。そこにいたのは……

 

 

『─、─ッ!』

 

 

『──、──ッ!』

 

 

 青白い髪のウマ娘の少女──ファントムが、両親であろう2人に必死に呼びかけているところだった。両親の方も、ファントムに向かって何かを必死に呼び掛けている。現場をみて、すぐに私は判断した。

 

 

(あの2人は、もう助からない……)

 

 

 ガレキに押しつぶされて、今にも命の灯が消えそうになっている。助かる見込みは……0に等しい。

 なら、せめて残った少女だけでも助けようと思った。私は彼らに近づく。彼らも、私に気がついた。

 

 

『──ッ!?──ッ、──ッ!』

 

 

 言語が違うからなんて言ってるのかは分からなかった。でも……不思議と思いだけは伝わったわ。この子だけは、ファントムだけは助けてほしいって。そう、言っているように聞こえた。私はファントムを抱えて、両親の方を見て頷く。この子は、必ず私が助けてみせる。そう思いながら力強く頷いた。

 

 

『──っ』

 

 

 そうしたら、あの2人は安堵したような表情を浮かべていたわ。自分達の命よりも、ファントムの方を優先したのかもしれない。その真意は分からないけれど……当時の私は、その2人を救えなったことに対する懺悔と、自分達の命がつきようとも、我が子だけでも生きて欲しいというその精神に感激したのを覚えてる。

 ファントムを連れて私はすぐにその場を立ち去った。ファントムは、離れていく両親の姿を見て何度も何度も叫んでいたわ。そんな彼女に謝りながら、私は脱出するためのルートを探し続けた。

 でも、ルートはそんな簡単に見つからなかった。さっきまで使っていたルートは、炎の手が広まっているか、ガレキで塞がってて使えない。なんとか使えるルートを探して、私はホテルの中を走っていた。でも、それにも限界が来そうになっていた。

 

 

『……ヒュー、……ヒュー』

 

 

(ッ不味い!)

 

 

 ファントムに、酸欠の症状が見え始めた。どうにかしないと、そう思った私は自分が装着していた酸素ボンベをファントムに対して使用することを決断した。なんとかしてこの少女の命を助けるために、背に腹は代えられなかった。

 脱出のルートを探す。なんとかホテルの地図を頭に思い浮かべて使えそうなルートを探す。でも、見つからなくて焦りが生まれた。そして……周りへの注意がおろそかになっていた。そんな時。

 

 

『しまった!?きゃあああぁぁぁぁぁ!』

 

 

 私とあの子は、崩れてきた天井の崩落に巻き込まれてしまった。その時のことが原因で、私の脚は完全に使い物にならなくなってしまったわ。

 なんとかファントムが潰れないように守ることはできた。でも……

 

 

『ひゅー……っ、ひゅー……』

 

 

 あの子の命は、限界を迎えそうになっていた。

 

 

『ダ、ダメだ……ッ!気を、気をしっかり持って!』

 

 

 必死にそう呼びかけるけど、あの子の命は風前の灯火。加えて、私はこのガレキをどかすだけの力も出せなければ、脚も動かせなかった。その間にも、火の手はどんどん迫ってきている。……状況は、まさに絶体絶命だった。

 ファントムを生かすために、私は試行錯誤を繰り返す。そうしているうちに、私も限界を迎えそうになっていた。当たり前だ。自分が使っている酸素ボンベはファントムに使わせている、身動きも取れない。加えて、なんとか救助を呼び込もうと大声を上げ続けていたのだから。だけど、その努力が実ることはなかった。

 

 

(なんとか……なんとかしないと……!誰か、誰でもいい!私は、どうなってもいいから……!どうか、どうかこの子だけでも……!)

 

 

『神様……!どうか、この子だけでもお救いください……ッ!』

 

 

 全てを諦めそうになった、その時。

 

 

『あ、ぐ、ぐ……あああああああぁぁぁぁぁぁぁああああ!』

 

 

 あの子が、突然苦しみだした。

 

 

『な、何で!?どうしたの、しっかりして……ッ!?』

 

 

 あの子が苦しみだしたのと同時。私は信じがたい光景を目にした。

 

 

『髪色が……変わっていく……ッ!?』

 

 

 青白い髪をしたあの子の髪が、どんどん赤黒く染まっていく光景だった。ファントムの髪はどんどん赤黒く染まっていって……やがて、尻尾まで赤黒く染まった頃、私の身体を押しのけてガレキの中から脱出した。

 

 

『……フン。ようやく俺様のお眼鏡にかなう塵が現れたか。偶然にしちゃ出来過ぎな気もするが……まぁいい』

 

 

(い、一体……何が起こっているの!?)

 

 

 でも、これでファントムは助かるんじゃないか?そう思ったら、私は安心感から意識を手放しそうになった。

 

 

『……そういや、コイツを助けるのが約束だったな。別に無視してもいいんだが……まぁいい。助けてやるとするか』

 

 

 赤黒い髪のファントム……いえ、ファントムに憑依したエクリプスは。私を圧し潰していたガレキから私を引っ張り出した。とても子供とは思えない、凄まじい力で。

 

 

『さて、脱出のルートは……っと。こっちだな』

 

 

 そしてホテルの中を私を抱えながら走って……とある壁に行きついた。その壁には、窓がある。エクリプスは窓を蹴破った。

 

 

『おい、しっかり掴まってろよ』

 

 

『……え?ッ!?きゃあああぁぁぁぁぁ!?』

 

 

 推定3階ぐらいの高さから、私と一緒に飛び降りたわ。いや、正確には私は飛び降りさせられたのだけれど。でも、下にクッションがあったから大事には至らなかった。

 

 

『おわぁっ!?さ、サニー!どこからきて……ッ!そ、それよりも!お前無事だったんだな!?』

 

 

『た、隊長……』

 

 

『心配してたんだぞ……ッ!お前のとこに向かおうにも道は塞がってるし、なんとかルートを探してたんだが……とにかく無事でよかった!……その子は』

 

 

『こ、この子は……』

 

 

 私は、事の経緯を説明しようとする。でも、助かったということから緊張の糸が切れたのか、私は気を失った。

 

 

『あ!お、おい!?サニー!しっかりしろ!おい!』

 

 

『……』

 

 

『……ッ!?サニー、お前脚が!?こんな怪我で良く……ッ!と、とにかく救急車だ!』

 

 

 最後に聞いたのは、あの子……ファントムに憑りついたであろう、エクリプスの声。

 

 

『精々俺様の役に立ってもらうぜぇ?この塵も……テメェもな』

 

 

 悪いことを企んでいるような、そんな声を聞いた。




地味に帰国してるスズカさん。
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