テイオーさんが奇跡の復活を遂げた有マ記念から少しばかり時間は流れて、あれから色々なことがありました。
まずは、マックイーンさんが本格的に復帰することを決めました!本人は諦めそうになっていたそうですが
「ライバルがここまで頑張って奇跡を起こしてくれたんですもの。その期待に応えなければ、メジロ家の名折れですわ」
とのことらしいです!テイオーさんのあのレース凄かったですもんね!私も涙が止まりませんでした!
「よくやったテイオー!お礼にゴルゴル星に連れてってやるからよ!感謝しろよ~?国賓扱いにしてやっからよ!」
「どこさゴルゴル星って?というかゴルシもちゃんとトレーニングしなよ」
「何言ってんだ。アタシはちゃんとトレーニングをやってるぞ」
「……いや、何もやってないじゃん」
「フッ、青いなテイオー……。アタシはな、何もしないをしているんだよ」
「バカなこと言ってないでトレーニングすれば?」
「あ~んテイオーのいけず~」
そんなテイオーさんはちょっぴり精神的に大人になったのか、ゴールドシップさんの言葉も華麗にスルーするようになりました。こういうの……マジレス?って言うんでしたっけ?よく分かんないです。
スカーレットさんとウオッカさんもいつも通り。そして何より!
「よーしっスズカ!今日はスぺと併走だ!気合入れていけよ~?お前がアメリカに遠征している間に、スぺも強くなってるからな!」
「それは……楽しみですね。それじゃ、頑張りましょうか。スぺちゃん」
「はいスズカさん!私、負けませんよ!」
「たとえスぺちゃんであっても、先頭の景色は譲らないわ」
スズカさんもアメリカ遠征から帰ってきました!これでチーム・スピカは完全復活……と、行きたいところなんですけど。
「ところでファントムのヤツはどうした?トレーニングするっていったっきり見かけてねぇが……」
「ファントム?ファントムなら……っ?あら?確かに姿が見えない……」
「ファントム先輩ならあっちにいますよ。でも……なんかボーっとしてます」
スカーレットさんが指さした方向にはファントムさんが立っていました。いつものパーカーとお面をつけていますけど……なんて言えばいいんでしょう?心ここにあらずというか……。
スズカさんがファントムさんに近寄ります。
「ファントム?どうかしたの?」
「……」
「ファントム?ファントムったら!」
「……ッ!び、ビックリした。どうしたの?スズカ」
「どうしたも何も……あなたこそどうしたの?さっきからボーっとしてたみたいだけど」
「……あ、あー……そう?まぁ、そんな時もあるよ。うん」
ファントムさんは曖昧に言葉を濁します。でも、スズカさんはそう思ってないみたいで。
「でも、あなたここ最近ずっとそんな調子じゃない?誰もいないとこでボーっとして……トレーニング中もどこか上の空だし」
「……そ、そう?そんなことないと思うけど」
「いや、ここ最近のファントム先輩ちょっとおかしいっスよ。ボーっとしてる頻度がおかしいっていうか……」
「そうね。なんというか……見かけた時は大体ボーっとしてるっていうか……」
「……たまたまだよ。たまたま見ただけ。ほら、練習するよ」
スズカさんの言葉にスカーレットさんとウオッカさんも同意するように詰め寄りますけど……ファントムさんは曖昧な言葉で濁してトレーニングに戻りました。
……はい、実はファントムさんの様子がここ最近おかしいんです。ここ最近、というよりはテイオーさんの有マが終わってから……でしょうか?なんというか、ファントムさんボーっとするようになったんです。
何をするわけでもなく、トレーニング中も食事中もボーっとすることが増えてきて……さすがにみなさん心配するようになりました。ただ……
「……」
「……どうしたの?ゴルシ。私の顔に何かついてる?」
「いや?別に何でもねぇぜ姉御。つーか、姉御お面付けてるのに顔に何かつくわけね―じゃん!」
「……それはそう。イッツジョーク」
「「(……イエーイ)イエーイ!」」
「相変わらず仲良いですわねあの2人……」
「まぁスピカの最古参だからね。……でも、本当にどうしたんだろう?ファントム」
ゴールドシップさんだけは、時折ファントムさんを厳しい目で見るようになりました。まるで、何かを警戒しているような……そんな目でファントムさんを見るようになりました。
ただ、ファントムさんはなんでもないというばかりで答えようとしてくれません。というのも……本人も無自覚みたいで。
「……分からないものには答えようがない」
って言ってました。
本当に、どうしたんでしょうか?ファントムさん。何もなければいいですけど……。
とは言ってもそれ以外はいつも通りということで。スズカさんと歩いていると……。
「ややっ!?スズカさんではありませんか!」
「……フクキタル?どうかしたの?」
フクキタルさんと会いました。どうやら1人みたいです。
「いえいえ、特に用があるというわけではありませんが……しかし!ここで待つと良縁アリというお告げは間違っていませんでしたね!」
「そ、そう……」
「それにしても……スズカさん何かお困りなことでも?浮かない表情を浮かべていますが」
「そんな表情してるかしら?まぁ心配なことがあるといえばあるのだけれど」
スズカさんが心配していること……やっぱり、ファントムさんのことでしょうか?
「では!私が占って進ぜましょう!」
「いえ、別に「ささ、遠慮なくどうぞ!」……じゃあ、お願いね」
あぁ!?スズカさんが諦めたような表情してるべ!?ま、まぁ別に何かあるわけでもないですし良いと思いますけど。
フクキタルさんは早速占いを始めようとします。
「……して、スズカさんが心配していることとは?」
「実は……最近ファントムの様子がおかしいの」
「フム。おかしいとは?」
「トレーニング中もどこか上の空だし、なんというか……ボーっとする頻度が増えてきたわね。本人に自覚はないみたいで……」
「ほうほう……確かにファントムさん最近私のところにも占いに来てもらう頻度が増えてきましたからね」
「え?そうなの?……フクキタルなんかの占いに?」
「ちょっとスズカさん!?なんかとは何ですかなんかとは!?ありがた~いシラオキ様のお告げをなんだと心得ておりますか!?」
「だって……ねぇ?」
「あ、アハハ……」
スズカさんは同意を求めるように私の方を見ます。そんな表情で見られても私も困るんですけど……。フクキタルさんの占い利用したことありませんし。
「ま、まぁフクキタルさん。ファントムさん最近フクキタルさんの占いに来る頻度が増えてきたんですよね?なんて相談受けてるんです?」
「……いまいち納得いきませんが……まぁいいでしょう。なんでも最近ボーっとするようになったとか、そんな感じの相談を受けてましたね。なんか憑いてないか?みたいな相談を受けてました」
「……そういうのってカフェさんに聞いた方が良いんじゃないかしら?」
「私もそう言ったんですけど、カフェさんには何も憑いてない……いえ、まぁなにかは憑いてるんですけど増えているようなことはないって言われたみたいで。それで私のところに来るようになったみたいです」
んん?どういうことなんでしょう?ファントムさんになにが付いてるんでしょう?……ご飯粒?
「……それで、フクキタルはなにか分かったの?」
「う、う~ん……ファントムさん個人のことですからあんまり話したくはないんですけどぉ……」
渋るフクキタルさんの肩をスズカさんが力強く掴みます。そんなにご飯粒が気になるんでしょうか?スズカさん。
「お願い、教えてフクキタル」
「う~ん……じ、じゃあ。今から言うことは内緒ですよ?誰にも話してない、それこそファントムさんにも教えてないトップシークレットなんですから」
「……ファントムにも教えてない?どういうこと?」
「ファントムさんを前に、もう一人のファントムさんのことについて言及するのは憚られまして……あんまりいいお話でもありませんから」
もう一人のファントムさん……あ!もしかしてついてるって幽霊が憑いてるとかそっちの方!?は、恥ずかしい勘違いしてたべ……。
「それで。フクキタルの占いではなんて出たの?」
「……ファントムさんに凶兆の相が出ていました。近々ファントムさんの身に何か良くないことが起きるはずです。これはファントムさんにもお伝えした情報。そして……ここからがファントムさんにも伝えていない情報です」
私とスズカさんは固唾を飲んで待機します。
「その原因となるのは……もう一人のファントムさんです。もう一人のファントムさんの力が、増しているように感じられると!シラオキ様が言うので間違いありません!」
「もう一人の……ファントムの力が……ッ!」
え?スズカさんなしてそんなに怒ってるんでしょうか?う~ん……さっぱり分かりません。そんなに悪い人なんでしょうか?もう一人のファントムさん。
「そして凶兆は……スズカさんとスぺさんにも出ています!これは一刻の猶予も許さない状況!というわけでこれを進呈しましょう!」
「……フクキタル。何かしら?コレ」
フクキタルさんから渡されたのは……何かのお守りです。何のお守りなんでしょうか?
「シラオキ様のありがた~い力が盛り込まれた……というのもありますが。私の実家のお守りです!効果は絶大ですよ~!」
「そ、そう。まぁ一応受け取っておくわね」
「あぁそれと!」
「まだ何かあるの?」
ちょっと呆れ気味のスズカさんとは対称的に、フクキタルさんは真面目な表情です。
「スピカのメンバー……ゴールドシップさんにテイオーさん、マックイーンさんにも同じように凶兆の相が出ています!注意しておくように伝えておいてください!それでは私はこれで!」
「そ、そう……。まぁ分かったわ。伝えておくわね」
ではまたー!と、大きく手を振ってフクキタルさんは去っていきました。……それにしても。
「このお守り、どうしましょうか?」
「……まぁ、何かあるわけでもないし一応持っておいていいんじゃないかしら?何かを要求されるわけでもなかったし」
「スズカさんがそう言うなら……」
それにしても……何も書かれてませんねこのお守り。交通安全とか、そういう文字が刺繍されているわけでもないです。
というか、あの会話の中で気になってたことがあるんですけど。
「スズカさん、もう一人のファントムさんってどんな方なんですか?」
「え?」
「いえ、多分ですけど……ファントムさんが虚空に向かって会話してるのってそのもう一人のファントムさんと話してる時なんですよね?」
「ま、まぁそうね」
「そんなに悪い方なんですか?私はいまいちわからないっていうか」
「う、う~ん……私もよく分からないというか」
えぇ!?じゃあなんであんなに怒ったような表情浮かべてたんですか!?そう思っているとスズカさんは気を引き締めたように真面目な表情に変わりました。
「ただ、もう一人のファントムはファントムの身体を乗っ取ろうとしているって話よ。だから、警戒しておくにこしたことはないわ」
「へ~ファントムさんの身体を乗っ取ろうと……ファントムさんの身体を!?それって大問題じゃないですか!?」
悪い幽霊どころの騒ぎじゃないですよ!?
「そう。だから警戒しておく必要があるわ。多分……もう一人のファントムはファントムの身体を狙っている。だから、注意深く観察しておくようカフェさんに教えておきましょう。私達じゃ、姿を見ることもできないから」
「そ、そうですね。カフェさんそういうのに詳しいですし」
「なら、早速行きましょうかスぺちゃん」
「へ?行くってどこに……ってスズカさん早ッ!?ま、待ってくださいよ~!」
私達はその後カフェさんにも警戒を強めておくように伝えました。カフェさんもそれに了承し、その日一日を終えました。寮で私はフクキタルさんに貰ったお守りを見つめます。
「う~ん……本当に何の効果があるんだろう?このお守り」
「スぺちゃん?早く寝るわよ」
「あ、はーい!」
ま、考えるのは後でもいいよね!明日はどうなるかな~。スピカのメンバーも全員戻ってきましたし、楽しみです!
忍び寄る不穏な影。