そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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フクキタルのお守りが怪しく光る。


総大将とお守り

 エクリプスさんの件からまたしばらく経って。スピカの部室は重苦しい空気が支配しています。

 

 

「……カフェ先輩、何だって?」

 

 

「……まだ見つかってないみたい」

 

 

「ゴールドシップさんもなんとか探そうとしているみたいですが……成果は芳しくないようで」

 

 

「う~ん……本当にどこいっちゃんだろう?探そうにもボク達じゃ見えないし……」

 

 

「ファントムさぁん……」

 

 

「……それに、エクリプスが不気味だわ。ここまでの間、まさかなんにもしてこないだなんて」

 

 

 スズカさんの呟きの通り、エクリプスさんはあの宣戦布告の後全くと言っていいほど表舞台に顔を出していません。何を考えているのでしょうか?スズカさんは警戒しておいた方が良いって言ってましたけど……。

 

 

「理事長と俺らが、エクリプスになにもさせないようしているのさ」

 

 

「トレーナーさん?」

 

 

 そう答えたのはトレーナーさんです。トレーナーさん達が、エクリプスさんをなにもさせないようにしている?

 

 

「アイツは一応、この学園の生徒って扱いだ。だからこそ、学園の規則の範囲内でアイツを縛っている。そして……お前らのとこにも注意の連絡が来ただろ?安易に併走を受けてはならない、受ける場合は生徒会までって連絡がよ」

 

 

「そう言えば来てたわね。あれってそういう意味だったのね」

 

 

「そう。エクリプスからの併走を受けないようにするための方便だ」

 

 

「あの性格だとルール破りそうなもんだけどね」

 

 

「ルールを破ったら破ったで今度は厳罰処置だ。だからこそ、エクリプスもうかつに動くことができない。厳罰については……なにも話しちゃいないんだからな。何をされるか分からない罰を踏むほど、リスキーな選択を取るヤツじゃない」

 

 

 トレーナーさんはそう締めました。ただ、そのおかげで併走を受けづらくなりましたけど……エクリプスさんの被害が広がるよりはマシかもしれません。

 ですが……ファントムさん探しは難航しています。カフェさんはなんと授業時間ですら探し回っているようですが、どこにも見当たらないみたいでぇ……。

 

 

「ファントムさぁん……」

 

 

「……今日の練習も終わりだ。さっさと帰って、英気を養ってこい。お前らは……あのエクリプスに狙われているわけだからな」

 

 

「「「……はい」」」

 

 

 重苦しい空気の中、スピカは解散します。

 

 

「元気出して?スぺちゃん。テイオーも言っていたでしょう?まだファントムが消えたわけじゃないって」

 

 

「スズカさぁん……でも……」

 

 

「えぇ。……本当に、ファントムはどこに行っちゃったのかしら?」

 

 

「そうっスよね。ここまで探して見つからないなんて……」

 

 

「ファントム先輩……」

 

 

「……大丈夫だよ。きっとファントムは見つかる。案外、ひょっこり出てくるんじゃない?」

 

 

「……そうですわね。あの方のことです、こうしている間にも、わたくし達の姿を遠目に見て笑っているかもしれませんわね」

 

 

「さ、さすがにそれはないでしょマックイーン」

 

 

 みなさん必死に明るい方へと話題を持っていこうとします。ただやっぱり……みなさん心配は収まらないみたいで。

 その後みんな別れて私とスズカさんは寮の事実に戻ってきます。お風呂も入り終わって、思い思いの時間を過ごす。……そう言えば。

 

 

「……あった!」

 

 

「何を探してたの?スぺちゃん」

 

 

「前にフクキタルさんから貰ったお守りです!そう言えば、しまいっぱなしだったので!」

 

 

 なんでも私達にきょーちょー?が迫っているみたいで。その厄除けのお守りみたいなものらしいですけど……なんも書かれてないんですよね。シラオキ様のありがたい力があるみたいですけど。

 私はそれを手に握ります。考えるのは……エクリプスさんのこと。

 

 

「それにしても……エクリプスさん、何をしているんだろう?」

 

 

”どうせエっちゃんのことだから身体でも鍛えてんじゃない?滅茶苦茶態度デカいけどストイックだし”

 

 

 アハハ。普通にありそうですね。

 

 

”というかさー!エっちゃんって本当勝手だよね!せめて乗っ取るにしてもだよ?私に一言ぐらい相談してくれてもいいじゃんね!?エっちゃん本当そういうとこだよ!”

 

 

「そ、そういう問題なんでしょうか?」

 

 

「スぺちゃん?何がかしら?」

 

 

”そりゃ、エっちゃん過去のことがあるから分かるけどさ~。私にも相談してくれないなんて……私は悲しいよ……およよ~”

 

 

「な、泣かないでくださいよ」

 

 

「だからスぺちゃん。何がかしら?私別に泣きそうにもなってないけど」

 

 

 ……ちょっと待ってください?私誰と話してるんですか?なんか流れでそのまま会話してましたけど、どう考えてもスズカさんじゃないですよね?

 私は辺りを見渡します。すると……

 

 

”あ?やっと気づいた?はろはろースぺちゃーん!ファントムさんだよ~!”

 

 

 青白い髪をウルフカットにしたウマ娘さんが、半透明の状態で宙に浮いてて……ッ!?

 

 

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?で、出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

「ど、どうしたのスぺちゃん!?」

 

 

”出たとは失礼な!そんな幽霊みたいな扱いしちゃって!おっと、今の私は幽霊なんでした!アハハ!it'sゴーストジョーク!”

 

 

 なんか、どことなくファントムさんっぽい!口調とか全然違うけど!

 それから色々あって……。落ち着いた私は話をしてみることに。

 

 

”あ、スズカにはフクキタルのお守りを握るように言って。そしたらスズカにも見えるようになるからさ”

 

 

「あ、わ、分かりました。スズカさん、フクキタルさんから貰ったお守りを握ってみてください」

 

 

「えぇ……こ、こうかしら?……って、あなた誰!?なんかどこかで見たような顔つきだけど……」

 

 

 どうやらスズカさんにもこの方が見えたみたいです。

 

 

”久しぶりだね~2人とも!私だよ私!……はい!ここでシンキングタイムスタート!私は一体誰でしょうか!ヒントは~……”

 

 

「も、もしかしてファントムさん?」

 

 

「スぺちゃん。それはいくら何でも……」

 

 

”ピンポンピンポ~ン!大正解だよスぺちゃん!私からの好感度が上昇だね!”

 

 

「嘘でしょ!?あなた性格が違い過ぎない!?」

 

 

 私もさっきファントムさんが自分から名乗ってなかったら分からなかったですよ……。

 

 

”まま、詳しい事情は明日話すからさ。スぺちゃんはそのお守りを学園に持っていってくれない?それないと私動くことすらままならなくてさ~”

 

 

「あ、は、はい。分かりました」

 

 

”じゃ!そんな感じでよろしく!”

 

 

 みなさんで必死になって探していたファントムさん。ファントムさんは……滅茶苦茶近くにいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え~っと……本当にファントム?」

 

 

”そうだよ!久しぶりだね~テイオー”

 

 

 そして迎えました次の日です。皆さんをスピカの部室に集めて話すことにしました。議題は勿論……ファントムさんのこと。カフェさん達にも来てもらっています。

 

 

「成程ねぇ……特に事故もなく成長したらこのような姿になるのか。今のエクリプス君と瓜二つとまではいかなくてもそっくりさんではあるな」

 

 

”ドヤ?ドヤ?”

 

 

「なんか性格も変わってません?ですが……それもそれで、デジたん的にはアリ!」

 

 

”変わったというかなんというか。私は元々こんな性格なんだけどね。色々と事情があってあんな話し方してたけど”

 

 

「……ファントム、さん」

 

 

”おぉ!我が竹馬の友カフェさんではないか!また会えて嬉しいよ~!お友だちさんもお久~!”

 

 

”いやはや……全然性格違うね。ファントム”

 

 

”さっきも言ったけど、私は元々こんな性格なんだよね”

 

 

「えぇ……っ!本当、に……良かった……!」

 

 

”……ごめんね。本当は、もうちょっと自由に動けたら良かったんだけど。そういうわけにはいかなくてさ”

 

 

 カフェさんは、泣いてました。ファントムさんが無事?で安心したんだと思います。

 そしてみなさん、気になっていたことをファントムさんに質問していきました。

 

 

「あの時何があったの?エクリプスが身体を乗っ取った時……ファントムの身になにが起こったのさ?」

 

 

”最初はエっちゃんが私の意識をすっごく奥深くまで閉じ込めてたんだけどさ~。私もこなくそっ!って反発してたわけですよ。そしたら身体から弾き出されちゃって!全くもうエっちゃんってば!乗っ取るにしてもせめて一言相談してからにしてよ!”

 

 

「そういう問題なんスかね……?本当にファントム先輩の性格まるっきり変わってんな」

 

 

「……元は、ファントムさんの身体。身体の操作権は、ファントムさんに、あったはずでは?」

 

 

”私もちょっとした理由があってね。精神的に不安定になってたからさ。そこを突かれた感じかな?”

 

 

「じゃあ、乗っ取られる前にボーっとすることが多かったのは……」

 

 

”そ。色々とまぁあったわけですよ私にも”

 

 

 何だろう?ファントムさん自分の身体が乗っ取られたのにあんまり気にしてなさそうな態度をとっています。どうしてでしょうか?

 

 

「ファントム先輩。身体乗っ取られたんですよね?」

 

 

”ん?まぁそうだね。いやぁ本当……”

 

 

「じゃあ!なんでそんなに楽観的なんですか!?もっとエクリプスさんに対して怒ってもいいんじゃないですか!?」

 

 

 スカーレットさんの言葉。ファントムさんは苦笑いを浮かべていました。

 

 

”う~ん……そう言われるとちょっと痛いというか……。乗っ取られたことは別にそこまで気にしてないというか……”

 

 

「え?そうなの?」

 

 

「じ、自分の身体ですのよ?もうちょっとこう……なにかありませんの!?」

 

 

「言いたいこと纏まってねぇなら無理に言わなくていいんじゃねぇのマックイーン?」

 

 

「あなたは黙っておいてくださいまし!」

 

 

 ファントムさんの言葉にトレーナーさんが代表して聞きます。

 

 

「さて、ファントム。お前さんに言いたいことは沢山あるが……身体を乗っ取られたっていうのに、気にしないってのはどういうことだ?」

 

 

”おやトレーナーさん。まぁ言葉通りの意味ですよ。エっちゃんが私に相談さえしてくれれば、私はいつでも身体を貸してあげましたよって話です”

 

 

「……エクリプスが、あの性格なのにか?」

 

 

”あ~……そっか。みんなエっちゃんのこと知らないのか。完全に失念してたね”

 

 

 やってしまった、という顔のファントムさんが今度は明るい調子で続けました。

 

 

”まぁ色々あってさ。みんなに集まってもらったのも、その話をするためなんだよね!とりま、みんなには2つほど選択肢を用意しました!いえーい!パチパチー!”

 

 

「「「……」」」

 

 

”そんな空気じゃありませんでしたねはいすいませんでした”

 

 

 す、凄いです。ファントムさん空中で器用に土下座してる。

 

 

「それで、2つの選択肢、というのは?」

 

 

”1つは私の過去について。ま、こっちから話そうか。カフェさん達はサニーさん経由で大まかな事情は知ってるだろうけど、私視点で何があったかは知らないでしょ?だからそのことを話そうかなって”

 

 

「確かにそうだねぇ。思えば、サニーさんとの会話にも気になる言葉が節々にあった。その事情を……ファントム君なら知っている」

 

 

”そ!例えば、私とエっちゃんが交わした契約とか……ね?”

 

 

 ファントムさんとエクリプスさんが交わした……契約?

 

 

”んじゃ!早速話していこうか。どうして私がエクリプスと出会ったのか。その発端から色々とさ”

 

 

 ファントムさんは少し間をおいてから話を始めます。

 

 

”私は元々、どこにでもいる普通のウマ娘だった──”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特に何か秀でているわけでもなかった。家も名門だとか、そんなことは別にない普通の一般家庭。

 

 

『ファントム~!』

 

 

『パパ!ママ!』

 

 

 私は親からの愛情を一身に受けて育てられた。

 

 

『パパ、ママ!わたしね、かけっこで1ちゃくとったよ!』

 

 

『お!それは良いな!じゃあ今夜はお祝いだ!』

 

 

『なら、ファントムの大好きなにんじんハンバーグを作ってあげなきゃね』

 

 

『ほんとう!?パパママだいすき!』

 

 

『パパもファントムが大好きだぞ~!うりうり~!』

 

 

『パパおひげいたいよ~!』

 

 

『ほらほらあなた?あなたも手伝ってちょうだい。それに……ママもファントムのこと、大好きよ』

 

 

 どこにでもいる仲の良い家族。私はパパとママが大好きだったし、パパとママも私が大好きだった。そんなパパとママは昔から、人のためになることが好きだった。ボランティアもその一環。

 

 

『おぉ○○さん!今日もありがとうございます。おかげでここらも随分綺麗になりました』

 

 

『いえいえ。好きでやっていることですから』

 

 

『ファントムちゃんも偉いね~。パパとママのお手伝いかい?』

 

 

『うん!わたしもねーパパとママみたいにみんなのえがおがみたいんだー!』

 

 

『いいお子さんですね~!ウチの子も見習ってほしいもんです!』

 

 

『アハハ!まだ遊びたい盛りの年頃じゃないですか!ほらファントム?ファントムもみんなと一緒に遊んできなさい?』

 

 

『わかったー!』

 

 

 みんなのために頑張っていた。

 

 

 別に見返りが欲しいわけじゃない、みんなが笑顔になる為に頑張りたいだけだ

 

 

 パパとママは常日頃からそう言っていた。

 

 

『ファントムも、気を付けるんだよ?誰かを思いやれる、誰かのために行動できる。そんな子になりなさい』

 

 

 パパは私にそう言い聞かせていた。凄く優しくて、ダメな時はダメと叱ってくれる。私はそんなパパとママのことを凄く尊敬していた。……まぁ、後にこれを忘れちゃってたせいで痛い目を見るんだけど。

 そんなある時、パパが嬉しそうに私とママに提案してきた。

 

 

『実はさ、福引でイギリス旅行の券が当たったんだよ!今度有給取るからさ、みんなでいかないか?』

 

 

『いぎりすー?』

 

 

『すっごく遠い所よファントム』

 

 

『とおいところー?わたしいきたいいきたい!』

 

 

『ファントムは行きたいみたいね。じゃあ私も賛成かしら?』

 

 

『よしっ!決まりだな!じゃあ今度の休みはイギリスに旅行だ!』

 

 

『わーい!たのしみー!』

 

 

 ──これが、全ての始まりだった。




ファントム視点での火災の話。
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