”お願い。エっちゃんを負かしてほしい。エっちゃんとレースで走って、エっちゃんに勝ってほしい。そのために……みんなに協力してほしいんだ”
ファントムさんの、本当の目的。それは、エクリプスさんを……倒すということでした。
確かに、エクリプスさんが歪んでしまった原因は孤独になってしまったから。その孤独を埋めるには、エクリプスさんとレースをするのが手っ取り早いのは分かるんです。でも……何故倒す必要が?
「エクリプスが歪んでしまった原因は一緒に走ってくれるヤツがいなくなったことだ。なら、一緒に走ってやればいい……それができねぇ理由でもあるのか?ファントム」
トレーナーさんの言葉に、ファントムさんは表情に影を落とします。
”理由は……単純だよ。エっちゃんの
「……成程な。そりゃ、かなりのプレッシャーがかかるな」
”でも大丈夫。私はエっちゃんの弱点を全部知ってるから。エっちゃんの強みも、弱点も……そして、
エクリプスさんの
「ぎゃふん!?」
”大丈夫?タキオン。今の私は霊体だから触れられないよ?”
「……そんなこと、分かり切ってるでしょうに。何をしているんですか?タキオンさん」
「ぐ、ぐぬぬ……き、気持ちが先走り過ぎてしまったようだねぇ……!」
タキオンさん鼻をさすってる……ま、まぁ結構な勢いで衝突したから仕方ないかもしれませんけど。
「そ、それでファントム君!エクリプスの
”別に教えてもいいけど、もうちょっと待ってよ。みんながいるところで教えてあげたいからさ”
「みんながいるところ?誰だよみんなって?アタシ達以外にも教えておきたいのがいんのか姉御?」
”そうだよゴルシ。そうだね……エっちゃんに対抗するための15人のメンバー。そのメンバーにはまず教えないといけない”
「15人の、メンバー……」
「メンバーは、決まってるんですか?」
スカーレットさんが恐る恐る聞きます。
”うん、決まってるよ。けど……スカーレットとウオッカは入ってない。エっちゃんが歯牙にもかけなかったから”
「……ファントム先輩の、力にはなれねぇってことっスか?」
”そ、そんなことはないよ!あくまで今回の15人のメンバーには選出されなかったってだけ!……それに、2人はまだ本格的なデビューをしてないでしょ?だから、エっちゃんと戦わせるわけにはいかない”
「……エクリプスさんと走らなくて喜ぶべきなのか、ファントム先輩の力になれなくて悔しむべきか、ちょっと分からないです」
”ゴメンね、スカーレット、ウオッカ。2人の気持ちだけでも、私は嬉しいから”
ファントムさんはスカーレットさんとウオッカさんを宥めています。でも、スカーレットさんとウオッカさんの気持ちも、分からなくもないです。ファントムさんには、お世話になったから。お世話になった人が大変な目に遭っているのに、自分達は何もすることはできない……私も、同じ状況になったら2人と同じ反応をすると思います。
それからファントムさんから出走する15人のメンバーを教えてもらって、今日は解散ということになりました。後は各自でその15人のメンバーに声をかけるだけです!ファントムさんは私が持っているこのフクキタルさん特製のお守りに憑依しているみたいで、基本的にはこのお守りから離れることはありません。つまりは、私とスズカさんの部屋に幽霊のファントムさんがいるというわけで……。
”いや~!お邪魔してま~す!これはこれで中々楽しいね!お泊り会だよお泊り会!”
「……本当に、今までのファントムとは凄い違いね」
「そ、そうですね。普段は冷静でたまに茶目っ気があるくらいだったのに」
”……ま、細かいことは気にしな~い気にしな~い。さっきも言ったように、これが私の元の性格だからね~”
ファントムさんはのほほんとそう言いました。なんというか、のんびりしてるなぁ……。割と幽霊生活を満喫しているのかもしれません。
”さて、とりあえず明日からメンバーに声をかけにいこうか。スぺちゃんが声をかけるメンバーは覚えてる?”
「え~っと……確か、ブルボンさんとライスさんですよね?」
”そうそう!あの2人に声をかけようか!良い返事がもらえるといいな~”
「きっともらえるわ。だって、あの2人もあなたのためなら手を貸してくれるはずよ」
”……ありがたいね。本当”
ファントムさんは顔を俯かせます。……やっぱり、気にしているんでしょうか?お2人を利用するような形になっていること。
「大丈夫です、ファントムさん!」
”な、何が?スぺちゃん”
「確かに、ファントムさんは利用するために近づいたのかもしれません。でも、私達に向けた優しさは……きっと、打算なんかじゃなかったはずです!」
”……え?”
ファントムさんはとぼけたような表情をしてますけど、これはみんなが思っていることだと思います。
「そうよファントム。あなたが利用するために私達に近づいたんだとしても、それでも私達はあなたの力になりたい。そう思っているからこそ、誰もあの場で反対しなかった……それが、みんなの総意よ」
あの後ファントムさんから15人のメンバーを教えてもらいました。そして、その中には……私と、スズカさんも入っていた。後はテイオーさんにマックイーンさん、ゴルシさんにカフェさん。そしてタキオンさんも。その全員が……反対することはありませんでした。ただ、マックイーンさんだけ不安げでしたけど。
「だってファントムさん優しいですから!だからきっと、みなさん協力してくれますよ!」
”……そっか。うん、そうだね”
ファントムさんは、笑顔を浮かべました。
私達はブルボンさんとライスさんの説得。それを、明日やらないといけません。きっと、協力してくれるはずです!
「ステータス『承諾』。無論、協力します」
「え?あ、うん……な、悩まないのね」
「ステータス『当然』。ファントムさんには大変お世話になりました。その恩を返すためにも……私は、そのミッションに喜んで協力いたしましょう」
明けた次の日。ブルボンさんの説得に向かったんですけど……思いの外あっさりと承諾してくれました。なんというか、肩透かしを食らった気分です。
”ば、バカな!?こういう時って基本断られるものじゃないの!?断られて、三顧の礼のごとく通いつめてやれやれ仕方ねぇな、的に承諾される流れでは!?”
「いや、普通に承諾してくれたならいいんじゃないかしら?」
「ですよね。漫画の見過ぎですよファントムさん」
「……ステータス『疑問』。もしや、そこにファントムさんがいらっしゃるのですか?」
あ、そういえばお守りとか握ってないと見えないんでした。
「はい。このお守りを握ってみてください。ファントムさんが見えるようになりますよ」
「了解。ミホノブルボン、お守りを握ります」
すると、ブルボンさんはファントムさんが見えるようになったのか驚いた表情を浮かべています。そして、少しだけ会話をしていました。
「ステータス『当然』。あなたは……私の夢を後押ししてくれました。そして、私のために常に頑張ってくれました。だからこそ……その恩を返したいのです」
ブルボンさんは、優しい表情でファントムさんと会話をしています。今の私には見えないけど……それでも、ファントムさんが本当に良いのかを確認して、ブルボンさんがそれでも協力したいとか、そう言ってるんだと思います。
「マスターは私が説得してみせます。それに、マスターもきっと……私の後押しをしてくださるでしょう。だからファントムさん……あなたの力にならせてください」
それだけ告げて、ブルボンさんは私にお守りを返してくれました。
”……あぁ~!良い子!めっちゃ良い子!本当に良い子!ありがとうねブルボン!”
「ファントムさんはなんと?」
「ブルボンに対してお礼を言っているわ。ブルボンありがとうって」
「ステータス『構わない』。それでは、また詳しいスケジュールをラーニングしてください。合わせますので」
そしてブルボンさんは去っていきました。次は……ライスさんですかね?
「とりあえずライスさんのところに行きましょうスズカさん!」
「えぇ。早速行きましょうかスぺちゃん」
私達はライスさんの教室へと足を運びま……「あ!スピカの2人!」アレは……ツインターボさん?私達を見つけるなりこっちに向かってきましたけどどうしたんでしょうか?後ろからはカノープスのみなさんも来てますし。
「待ちなってターボ!アンタの気持ちも分かるけどさぁ……」
「ねぇ!お願いがあるんだ2人とも!」
「私達に?」
「お願い?」
スズカさんと2人で疑問符を浮かべていると、ツインターボさんが答えました。
「お願い!ターボもファントムを助けるレースで走らせて!」
「「え?」」
”お、丁度良かったじゃん!”
「テイオーから聞いたんだ!ファントム、今すっごくヤバい状況なんでしょ!?それでそれで、みんながファントムを助けるために頑張ってる!だから……ターボも力になりたいんだ!」
あ~……テイオーさん経由で聞いたんですね。納得です。それに丁度「だからダメだってターボ!」あ、あれ?カノープスのみなさんは反対なんでしょうか?
「ターボさんの気持ちも分かります。ですが、相手はあの伝説のウマ娘……エクリプスです。それはターボさんも分かっているでしょう?」
「エクリプスがどんなウマ娘か、ターボだって知ってるでしょ?私達の出る幕はないと思うよ?」
「う、う~……ッ!ヤダヤダ!ターボだってファントムの力になりたい!ターボはファントムに沢山お世話になったもん!だからターボだってファントムの力に「いい加減にしな!ターボ!」ヒッ!?ね、ネイチャ?」
ネイチャさんは険しい表情をしています。
「アンタの気持ちも痛いほど分かるよ……だけどさ、相手はあのテイオー達ですら勝てなかった、会長さん達ですら勝てるかも分からない相手なんだよ!だからあんまりワガママ言うんじゃないの!」
「……でも、でも!ターボだって力になりたいもん!」
「ターボ!いい加減に……「あ、あの~……ちょっと、良いですか?」あぁ、すいません!今すぐターボを説得しますんで!だからこの場はアタシ達に任せてください!」
”こんな修羅場の中言うのはちょっと憚られるねぇ”
い、いえ。そんなお取込み中のところ悪いんですけどぉ……。
「あの、ターボさんも頭数に入ってます。15人のメンバーの中に……」
「「「……え?」」」
「本当!?ターボも走れるの!?」
呆気にとられた表情のカノープスのみなさんを尻目にターボさんは嬉しそうな表情を浮かべています。
えぇと、はい。ターボさんも15人のメンバーの中に入ってるんですよね。最初教えられた時はみなさん頭に疑問符を浮かべてましたけど……いや、テイオーさんだけは納得してましたね。「まぁ師匠なら当然だよね~」みたいなこと言ってました。
「だから、ターボさんさえよければお誘いするところだったんですけど……どうですか?」
「勿論参加する!よ~っし!ターボ気合入れて頑張るぞー!」
そのままターボさんは嵐のように去っていきました。カノープスのみなさんはまだ呆然としています。
「あの~……本当に良いんですか?」
「は、はい。他の人達も、理由を聞いて納得してました」
「あ~……ネイチャさん達の取り越し苦労だったか~……」
「なんか……その……ごめんなさいね?」
「いえ。むしろ良かったかもしれません。ターボさん……テイオーから話を聞いて飛び出していきましたから」
「それだけ、ファントムさんの力になりたかったのかもしれないね~。ま、何にせよ良かったよ~」
ツインターボさんも、ファントムさんのお世話になったのかもしれません。だから力になりたいって自分からお願いしに来た。
”ありがたいね。本当”
「あなたが向けた優しさが、あなたに返ってきた。例え打算だとしても、それでもみんなからすれば凄く助かったことだった。こうして、あなたの力になりたいって直談判しに来るぐらいには……ね」
”……本当に、本当にありがとう”
ファントムさんちょっと涙ぐんでます。きっと、嬉しいんだと思います!ジーンってきますよね!
この後ライスさんのところにもお願いに行きましたが……ライスさんも快諾してくれました!
「ファントムさんには凄くお世話になった。だから、ライスもファントムさんの力になりたい。危険かもしれないけど……ライス、頑張るよ!」
これで私達が声をかけるメンバーは揃いました!部室に戻りましょう!みなさんも待っているはずです!
メンバー集めは順調に。