授業が終わって放課後。スピカの部室に向かうと……ファントムさんが選んだ15人のメンバーを含めたスピカのみなさんが部室に集まっていました!
「来たか」
「先にお邪魔させてもらっているよ、スペシャルウィーク」
「会長さん!ブライアンさん!」
会長さんにブライアンさん。それに、グラスちゃんにエルちゃんもいる!
「ハーイ!スぺちゃん!教室ぶりデスね!」
「ファントムさんを助けるために……微力ながらお力添えをしたいと思います」
昨日集まったメンバー以外にも。会長さんにブライアンさん、グラスちゃんにエルちゃん、ブルボンさんにライスさん、ツインターボさんにモンジューさん!?
「久しぶりだね、スペシャルウィーク。元気にしていたかい?」
「えっと……はい!も、モンジューさんはどうして?」
「簡単だよ、スペシャルウィーク」
モンジューさんは真剣な表情で答えます。
「私も彼女にリベンジしたい。そのために、また海を渡って日本にやってきた……ということさ」
「……モンジューも、やられたんデスね」
「恥ずかしながらね。だから、そのリベンジのためにも……私も力を発揮しよう」
モンジューさん……!
そしてみなさんがフクキタルさん特製のお守りを握って……ファントムさんを視認しました。みんな驚いた表情を浮かべています。まぁ、ビックリしますよね。急に出てきますし。
「これは……半信半疑だったが、本当に君なのかい?ファントム」
”そうだよルドルフ。今は訳あってゴーストライフを満喫してまーす!”
「アンタそんなキャラだったか?……まぁいい。さっさと本題に移れ」
”あんまりそう急かすもんじゃないよブライアン。ちゃんと話すからさ”
全員が集まっていることを確認して、ファントムさんが話し始めました。
”さてさて、まずは……みんなありがとうね。私のために集まってくれて”
ファントムさんは申し訳なさそうな表情を浮かべています。それはきっと、罪悪感から来るもの。
”先に言っておくけど……このレースは危険なものになる。下手したら、エっちゃんの
ファントムさんの言葉に、みんなが頷きました。
「危険は承知さ、ファントム。我々は……君の力になりたくて集まったのだから」
「それに……かの伝説のウマ娘の力に興味がある。君にもリベンジしないといけないからね」
「アンタにはまだ勝ってないんだ。このまま勝ち逃げなんて……させんぞ」
会長さんとモンジューさん、ブライアンさんが代表してそう言いました。他の人達も理由は違えと、気持ちは同じだと思います。ファントムさんのために……その一心で、この場に集まったんですから!
”……うん。それじゃあ早速話そうか。エっちゃんの
まず話始めたのは……エクリプスさんの
”最初に言っておくと……エっちゃんの
「ケッ!?さ、三女神様の!?」
そ、そんなの初耳です!?
”本当だったら、三女神様の力は祝福として使われるはずだったんだ。でも……エっちゃんはその力を歪めて使っている”
「……具体的にはどのようなものなんだい?」
”他のウマ娘に作用するもの。走ることへの恐怖を増長させて……心をへし折るための
「……成程ねぇ。それがエクリプスの力の正体、加えて……他のウマ娘が走るのを止めてしまった力の正体か」
”そういうこと。エっちゃんの力は呪いとして残り続ける。それが、走るのを止めちゃった子達を蝕んでいるんだ。だから……”
「……エクリプスに、勝つことができれば……解放、される?」
”うん。可能性はあると思う”
学園を辞めちゃった人達が、戻ってくるかもしれないってことですね!
「すまないファントム。走ることへの恐怖を増長させる……それは一体、どのようなものだい?」
”分かりやすい例なら……怪我しやすい子がいるとするでしょ?その子にこのまま走り続ければ怪我するぞ~みたいな感じで精神的に揺さぶり続けるの”
「……ふっつーに嫌デスね、それ」
”後はまぁ……勝たなきゃって思いが強ければ強いほど、相手との力量差を実感すれば実感するほど。エっちゃんの力はより強固に作用する。例外的に効かない子が2人ほどいるけど”
「ほ、本当なの?ファントムさん」
ライスさんの言葉に、ファントムさんは頷きます。
”うん。ターボなんかはその最もたる例だね。ターボはエっちゃんの力が効かなかった子の1人だよ”
「「「えぇっ!?」」」
あまりにも衝撃的な事実で一斉にターボさんの方を見ます!肝心のターボさんは……キョトンとした表情を浮かべていました。
「そーなのか?でも、ターボも変な景色観たぞ?」
”変な景色は見たけど、声は聞こえなかったでしょ?それはつまり、エっちゃんの力が効かなかったってこと”
「さっすがは師匠だね!ニシシ」
「……どうして、ツインターボさんにはエクリプスさんの力が効かなかったのですか?」
マックイーンさんの質問。確かに気になります。どうしてツインターボさんには効かないんでしょう?
”理屈としては、恐怖よりもさらに強い信念を持っているから。絶対に諦めない心を持っているからこそ、ターボにはエっちゃんの力が効かなかった。私はそう思っているよ。だから、今のテイオーなんかにも効かないんじゃないかな?”
「絶対に、諦めない心……」
”……マックイーンなら、きっと乗り越えられる。だから、自分を信じてあげてマックイーン。無責任に聞こえちゃうかもしれないけど、私はマックイーンなら大丈夫だって信じてるよ”
「……分かって、いますわ」
マックイーンさんの身体は震えている。きっと……春の天皇賞のエクリプスさんの爪痕が、まだ残っているんだと思います。
「もう1つ聞きたいんだが。効かない後1人って言うのは誰だ?強力な
ブライアンさんの言葉に、ファントムさんはあっけらかんとした様子で答えます。
”ウララちゃん。理由なんて分かるでしょ?”
「「「あ~……」」」
確かに、走ること自体を楽しんでいるウララちゃんには効かなそうですね。エクリプスさんの
”エっちゃんの
誰も口を開きません。質問はないということで、ファントムさんは次の話に移りました。
”さてさて!それじゃあ実際のとこエっちゃんをどう攻略しようって話になるんだけど……ここでエっちゃんの基本スペックについて話していこうか”
「エクリプスの……スペック」
「……心構えはできている。お願いできるかな?」
モンジューさんに促されるまま、ファントムさんは説明を始めます。
”まずエっちゃんの最大の武器は……スピードの持続力。並外れたスタミナと頑丈さが両立することで可能になる、一定のペースでラップタイムを刻んで走り続けることができるんだ。後は、普通に他の能力値もぶっ飛んでるね。スペック的には穴がないよ”
「……エクリプスは、どのくらいの距離まで走ることができるのですか?ファントム先輩」
”そうだね……ざっと12,800mはいけるよ”
「い、いちまんにせん……」
「あぁ!?スぺちゃんがオーバーヒートしました!?」
「気持ちは分からなくもないよ。オーバースペック過ぎでしょ、エクリプス」
”まぁそうなる気持ちも分かるけどさ。でも仕方ないじゃん。エっちゃん4マイルのヒート走を1日に2回も走ってるんだよ?それぐらいは普通に走れるよ”
た、確かにあの時代なら仕方ないかもしれませんけどぉ……それじゃあほぼスタミナ切れを狙うの無理じゃないですか!?
”で、こうなるとスタミナ切れは狙えないってなるかもしれないけど……実はそうでもないんだよね~これが”
「……どういうことだい?ファントム」
”これはエっちゃんの
それから私達はエクリプスさんの弱点を教えてもらいます。それは私達を納得させるもので……ここに、私達は光を見出しました。エクリプスさんに勝つための道筋を。
「成程成程……確かに、この弱点があれば……プランEは完成する!」
”プランE?タキオンそんなの作ってたの?”
「無論だ。ファントム君のことを調査する過程で、私は亡霊の正体に気づくことができた。その時から考えていたものさ」
タキオンさんの言葉にファントムさんは驚いています。この反応からするに……知らなかったみたいですね。
”タキオン達たま~に私を仲間外れにしてると思ったらそんなことしてたんだ!言えば教えてあげたのに~……おっと!私は記憶喪失だったんでした!アッハッハ~!”
「「「……」」」
”はい、申し訳ございませんでした”
いや、なんていうかリアクションしづらいんですよ!?本当のことだし、デリケートな問題ですから弄って良いのか分かりませんし!
「しかし問題は……プランEが完成してもどうにもならないということか……」
「そりゃどーしてだよ?タキオン」
「まず、圧倒的に時間が足りない。プランEが完成したとしても、それを実行できるだけの者がいないということさ」
タキオンさんは肩を落とします。でも……ファントムさんは明るい調子でした。
”だったらさ、みんなで実行するってのはどうかな?”
「みんなで……」
「実行?」
”うん。実はエっちゃんに絶対勝つための作戦があるんだけど……”
私達の疑問にファントムさんが自分が考えたというとっておきの作戦を教えてくれます。
「……成程」
「確かに、この作戦ならいけるかもしれませんね」
”正直、犠牲にするようなものだからあまり気は進まないんだけどさ……”
バツが悪そうにしているファントムさんに、みなさん心配させないようにと明るく答えました。
「フン。悪いと思っているなら、身体が戻った時に併走でもしてもらおうか。無論、私の気が済むまでな」
”……もっちろん!いくらでも併走しちゃうよ?”
「なら私は、今度遊びに付き合ってもらおうか」
”お?デートのお誘いってやつ?いいよいいよ!”
「それじゃあボクははちみー!はちみー奢って!」
「ならライスは……」
「私も……」
「エルも!エルもデース!」
みんながファントムさんに詰め寄って、ファントムさんの身体が戻った時のことを話しています。そんな時、モンジューさんが私の方に近づいてきました。
「慕われているんだね。ファントムは」
「モンジューさん!……はい、みんな、ファントムさんのことが大好きですから!」
「……フフッ。きっと、彼女は素晴らしいウマ娘なのだろう。皆の表情を見れば分かる。これはますます、あの時の言葉を訂正しなければならないね」
モンジューさんが冗談めかして言います。
そんな時、扉を開けて誰かが入ってきて……り、理事長さん!?
「至急ッ!君達の耳に入れておきたいことがあってここに来た!」
「……秋川理事長。一体、どのようなご用件でしょうか?」
会長さんの言葉に、理事長さんは神妙な顔つきで答えます。
「うむ!実はだな……開催ッ!日食杯!そのメンバーに、君達が選ばれた……否!選ばれてしまった!」
日食杯……日食ということは!
”エっちゃん……!”
「……それは、いつ開かれるのですか?」
「1ヶ月後!1ヶ月後に開催されることとなった!……すまない、私では、彼女を止めることができなかった……!」
理事長さんは、凄く申し訳なさそうに顔を俯かせています。そんな理事長さんに、私達は安心させるように答えます!
「大丈夫です!理事長さん!」
「……スペシャルウィーク」
「私達、絶対に勝ちます!勝って……みんなを解放してみせます!だから、安心して待っててください!」
私の言葉にみなさんも頷きます!思いは1つ……打倒!エクリプスです!
Sun Brigade……サニーの屋敷。そこでは、サニーとエクリプスが対峙していた。
「よくやったなぁサニー。これで……全ての準備が整った」
「……あなたは、その道を選択したのね」
サニーの言葉に、エクリプスは苛立たしそうに返す。
「選択も何も、これはもともと決めてたことだ。クソ共が愛するウマ娘どもを潰し……俺様が頂点として君臨するための道に過ぎねぇ」
「……そう。私は、何も言わないわ」
「……フン」
エクリプスは部屋を出る。
部屋を出たエクリプスは、空を見上げる。すっかり暗くなって月が見えていた。月を見て……エクリプスは思い出す。彼女……ファントムのことを。
「……クソッ!」
(アイツの顔がチラつく……!どこに行ったんだよ、アイツは!?)
心の奥底に留めていたはずなのに、暴れまわったと思ったらどこかへと行ってしまった。そんなファントムのことを、エクリプスは心配する。
「……だが、これでいい……これで良いんだ。俺様の目的のためには……これがッ!?」
そう自分に言い聞かせるエクリプスの脳裏によぎるのは……ファントムとの思い出だった。
『……分かってるよ。私はもう1人の私のために行動する。それはいつだって変わらないから……ね』
『エっちゃん。どんな時でも、私はエっちゃんの味方だからね?』
『ずっと一緒だよ?エっちゃん』
『エっちゃん。私は……あなたを──』
「……あ゛ぁ゛!クソが!止めろ!俺様の記憶にまとわりつくな!消えろ、消えろ!」
エクリプスはなんとか考えないようにする。代わりに、今度のレースのことについて考えることにして、何とか心を落ち着かせた。
「あの塵共を喰らうための土台は整った……。精々俺様の餌になってもらおうか、塵共!」
エクリプスは月を睨む。己の目的のために……エクリプスはもう、止まるわけにはいかなかった。
刻一刻と迫る時。