《これほどまでに異様なレースは見たことがないでしょう!向こう正面を半分を過ぎようかとしているところで今度はメジロマックイーンを筆頭としたライスシャワー、モンジュー、エルコンドルパサー、アグネスタキオンの5人が下がっていった!先頭は依然として変わらないエクリプスだエクリプスが先頭だ!》
《このまま独走なるか?……ですが、やはりそうはさせませんね!》
《そしてメジロマックイーン達が下がっていった代わりとばかりに上がってきたのはシンボリルドルフ!シンボリルドルフだ!シンボリルドルフ、トウカイテイオー、ナリタブライアン、グラスワンダーの4人が上がってきた!エクリプスにその牙を突き立てている!その後ろ2バ身離れて先行集団がついています!その先行集団を外からゴールドシップ、スペシャルウィーク、マンハッタンカフェの3人が追い抜いていきます!エクリプスと先頭争いをしていた3人は体力が回復してきたか少しずつ、少しずつ進出を開始している!》
さて、と。マックイーンは無事にエクリプスの
「……クソがぁ!イライラする塵共だなおい!」
「苛立たしいでしょうか?腹立たしいでしょうか?それは……本望ですね」
「必死だなぁオイ!徒党を組まなきゃ俺様にも勝てねぇような雑魚共が!」
「フン。優先順位の問題だ。お前との力比べなどこれからいくらでもできる。だが、今この場においてはお前に勝つということが最優先事項だ」
「……んだと?」
「あなたに土をつけてあげようエクリプス。あなたがいない間にも……我々ウマ娘は進化しているということだ」
「今度はボク達の番だ。ま、そのままボク達が君に勝っちゃうけどね、エクリプス」
ボク達の挑発じみた言葉を聞いてエクリプスは……怒りを見せた。
「……笑わせんじゃねぇよ」
そして、ボク達を喰いつくさんばかりにエクリプスの
「これが……エクリプスの
「……フン。くだらん」
「奇々怪々。まさか本当に他人に影響を及ぼす力だったなんてね」
「徐々にだけど力が抜けていく感覚があるね……!でも!」
エクリプスのスピードはさっきから変わらない!ということは……すでに頭打ちってことでしょ?エクリプス!
「どいつもこいつも変わらねぇんだよ!口では何とでも言える!だが……そうやって結局、俺様に挑むのを止めんだよテメェらは!」
向こう正面も半分を過ぎた。その時に引き出した、エクリプスの……嘆き。多分、これは本心なんだと思う。
エクリプスはボク達の時代に復活しても、ライバルに恵まれなかった。世代の子は挑んでこなくなるし、挙句の果てには一緒に走った子はレースを走るのを止めてしまうぐらいのトラウマを残された。
勿論エクリプスだって悪いかもしれない。エクリプスが自分の
今こうして、ちゃんと彼女に向き合っているからこそ分かる。そして、分かるのはボクだけじゃない……会長も、この場にいるみんなが分かっている。
(エクリプスはただ走りたいだけなんだ。みんなと一緒に、楽しく走りたい。でも、彼女の圧倒的過ぎる力がそれを許さない……)
本当に、本当に悲しいことだと思う。どんなに圧倒的な力を持っていても、どんなに凄い強さだったとしても……それは相手がいて初めて成立するものだ。力を発揮する相手がいなければ、ただの宝の持ち腐れ。それに、ファントムの言葉通りなら……エクリプスの本当の願いの前では、いらないもの。
……考えすぎちゃったか。今はとにかくエクリプスに向き合おう!ボク達の走りを……彼女に見せるために!
「お生憎様だねエクリプス!ボク達は絶対に諦めないよ!たとえ今回負けたって、性懲りもなくキミに挑むからね!」
「うるせぇ……うるせぇ!」
「心が乱れていますよ?もしや……恐れているのですか?私達を」
「笑わせんな塵共!テメェら如きに俺様が恐れを抱くだと?……笑わせんじゃねぇぇぇぇ!」
もうすぐ第3コーナーに入る。
「……みんな、スタミナは大丈夫かい?」
「ボクは問題ないよ。まだまだよゆー……ッ!」
「あまり舐めるなよ皇帝。まだいける」
「……私は、少々きついですね」
「そうか。なら少し休んでいたまえ……ここから先は、私もさらに出力を上げるとしよう」
そんな時だった。会長の圧がさらに増す。……成程、会長もまだ余力を残してたってわけか。
「エクリプス。あなたに見せることはなかったな」
会長の本気の
「あなたに刻んでやろう……皇帝と呼ばれた私の、真の走りを!」
雷鳴が轟いたかのような音が聞こえた気がする。そのまま会長はエクリプスとの勢いをグングン詰めに行った。会長とエクリプスが競り合う。だったら……ボクも!
「ハッ!成程良い力じゃねぇか……だったら、それも丸ごと俺様の糧にしてやるよ!」
「残念だったねエクリプス……会長だけじゃない」
「私もいるということを忘れないで貰おうか」
ボクとブライアンもエクリプスとの差を詰める。グラスも……負けるわけにはいかないと思ったのだろう。ボク達に並ぶように飛んできた。エクリプスは苛立たしそうな声を上げる。
「……あ゛ぁ゛クソ!マジでイライラするなクソガキ!」
「ボクを名指し?まぁいいけどさ」
ファントムから聞いた。エクリプスは、どうやらボクが怪我した時復帰できるわけないって思っていたらしい。それは多分……
「キミさ、ボクを重ねてたんでしょ?キミの最後の対戦相手になるはずだった相手と重ねて、ボクが復帰できるわけないって思ってた」
「ッ!」
エクリプスは反応する。やっぱ図星か。
「さっきも言ったけど、ボクは諦めるつもりはないよ!確かに折れたかもしれない、立ち止まったかもしれない!だけど……ボクは諦めないことの大切さを学んだ!教えてくれた子がいた!だから、もう二度と諦めたりするもんか!」
「……黙れぇぇぇぇぇぇぇ!」
エクリプスは叫ぶ。叫びながらも
「さ、さすがにきつくなってきた……!」
「ふ、弱音かテイオー?」
「なら、休んでても構わんぞ。後は私が対処するからな」
「冗談……!まだまだいけるよ!それに、会長達だってきついでしょ!?」
言葉にこそしないけど、会長達だってきついはずだ。ボクと同じような状況なんだから。それを証明するように、会長達も少し苦し気な表情をしている。
《第3コーナーを抜けて第4コーナーに入りました!先頭は並んでエクリプス、シンボリルドルフ、ナリタブライアンの3人!トレセン学園においても圧倒的な実力者と呼ばれている3人が先頭だ!その3人から遅れること1バ身の位置にトウカイテイオー、グラスワンダーが控えている!外からはゴールドシップ、スペシャルウィーク、マンハッタンカフェの3人だ!現在先頭との差は3バ身!3バ身からさらに差を詰めようとしているゴールドシップ!そして最後方にはメジロマックイーンを筆頭とした先行集団しかしこちらも上がってきているぞ!》
第4コーナーのカーブ中ほど。それがボク達の……役目が終わるところだった。
「……さて、本当ならもう少しいけるんだがな」
「フフ、そうは言うけど、きついんじゃないかい?ブライアン」
「か、会長こそ……!」
「ですが……後は任せましたよっ」
ボク達はそのままエクリプスに競りかける。けど、少しずつ離されていった。1バ身、2バ身と差が開いていく。そんなボク達を……外から、見覚えのある葦毛が通り過ぎていったのを確認した。
理解できねぇ。なんで、なんでこいつらは立ち向かってきやがる?なんでこの塵共は俺様に勝とうとしてきやがる?それが理解できない。
(捨て駒だと思っていたが……アイツらから感じたのは俺様に勝とうとする気概。それが分からないほど、俺様もバカじゃねぇ)
だが、アイツらは
(期待してんのか?俺様は。アイツらなら……この時代の塵共なら、俺様と一緒に走ってくれるんじゃないかって)
……くだらねぇ。くだらねぇくだらねぇくだらねぇ!
「くだらねぇんだよ!」
そうやって期待して、裏切られたのを忘れたか!?俺様と一緒に走ってくれる奴なんて所詮は幻想だ!どんなに走ったところで、最後には結局俺様の下を離れていく!俺様に挑むのを諦める!
それに、この時代でトゥインクル・シリーズを走った時もそうだったろうが!俺様の
だったら最初から期待しない方がマシだ!俺様は化物だ、化物として生きていくしかねぇんだ!化物として、孤独に……ッ!?
『ずっと一緒だよ?エっちゃん』
「止めろ……ッ!止めろ止めろ!止めろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺様の記憶にまとわりつくものを必死に振り払おうとする。そんな時やってきたのは……。
「オラオラオラぁぁぁぁぁ!黄金船宅急便から日食さんにお届け物だぁぁぁぁぁぁい!」
「……ようやく来たか」
俺様を挑発した奇天烈葦毛。そして、ここにはまだ……あの塵共が来てねぇ!
「オラァ!行ってこいスぺ、カフェ!早く行って……先頭走ってるあのバカの目ぇ覚まさせて来い!」
「はい!任されました!ゴルシさん!」
「……スペシャルウィーク、さん。エクリプスの、
ようやくきたか……!
「棒立ち娘ぇ!狂犬!テメェらを喰らって、このレースを終わりにしてやるよ!」
”エっちゃん……!”
「色々と小細工をしたみてぇだが……結局は無駄だってことを教えてやるよファントム!」
《第4コーナーももうすぐ抜ける!第4コーナーを抜けるかというところで……!先頭エクリプスに並んできたのはスペシャルウィーク、スペシャルウィークだ!マンハッタンカフェもいるぞ!しかし先頭は依然としてエクリプス!エクリプスが先頭です!中山の直線は短いぞ!スペシャルウィーク達はエクリプスを躱すことができるか!?3番手マンハッタンカフェから2バ身遅れてゴールドシップとシンボリルドルフ!そこから1バ身離れて外にナリタブライアン、内にグラスワンダーとトウカイテイオー!そしてそして差を詰めてきましたメジロマックイーン達先行集団と大逃げ組サイレンススズカ達がいます!最後方はツインターボ!やはり逆噴射かツインターボ!》
俺様はさっさとこの勝負に蹴りをつけるために全力を出す。
「恐怖しろ!テメェら塵共じゃ結局勝てねぇってことを……頭に刻みッ!?やが、れ……っ?」
けど、思ったように力を発揮できない。いや、正確にはこれ以上出力が上がらない。それに……恐ろしいほどに息苦しい!?な、なんでだ!?スタミナは残っているはず!2500mぐらい、わけねぇ……ッ!
(待て……俺様は、このレース中……
……いや、次から次へと来る塵共を抜かせないために常に全力に近いペースで走り続けていたはずだ。それこそ、息を入れる暇もないくらいに……ッ!
”ようやく効いてきたね、エっちゃん”
(まさか……まさかコイツ!?)
”エっちゃんの3つ目の弱点。私達を下に見ているから、たとえ分かっていてもこの作戦には乗ってくる。自分なら問題ない、自分なら塵共が相手でも勝てるって”
アイツは……ファントムは。誇らしげに告げた。
”いくらエっちゃんでも……
「……テメェェェェェェェェェェェ!!」
そう叫ぶがもう遅い。最後の直線での勝負に持ち越された。
勝負は最後の直線へ。