そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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1日遅れの短編。


三大始祖のトレーニング事情

 少し前まで、ファントムさんは凄く不思議なウマ娘さんだな~というのが、私の印象でした。

 お面とフードで徹底的に素顔を隠した正体不明のスピカの先輩。分かることと言えば圧倒的なまでのレースでの強さと、優しいということぐらい。私も、困った時は凄くお世話になりました!

 そんなファントムさんの本当の素顔は……あの伝説のウマ娘さん、エクリプスさんと瓜二つの顔をしたウマ娘だと発覚した時はとても驚きました。しかも、そのファントムさんにはエクリプスさんの幽霊が憑いていて……まぁ色々と目的があったということにもビックリしました。

 

 

「みんなを利用する形になっちゃったのは謝る……だけど、エっちゃんを助けて欲しいんだ」

 

 

 ファントムさんから語られた、エクリプスさんの真実。歴史では語られていない、エクリプスさんの話を聞いて、私達はファントムさんに力を貸すことになりました。そして……私達は力を合わせてエクリプスさんを倒したんです。

 それからまた色々とあって……ファントムさんも帰ってきて!スピカにもいつも通りの日常が返ってきました!新しく入部したキタサンブラックちゃんも加えて、スピカは再始動です!

 ……ちなみになんですけど、帰ってきたファントムさんはというと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備は良い?ゴルゴル!今度こそ届け!私達の気持ち!」

 

 

「オッケー姉御!オラァ答えろ宇宙人!ゴルシちゃんと仲良くなろう……」

 

 

「何をやっているお前ら!他生徒に迷惑だから今すぐ止めろ!」

 

 

「まずいよゴルゴル!鬼の副会長様だ!」

 

 

「やっべぇずらかるぞ姉御!」

 

 

「合点承知の助!すたこらさっさのパンサラッサだよ!」

 

 

「待てこらファントム!ゴールドシップ!」

 

 

 ……なんというか、今までとは別人ってぐらいに変わり果ててますけど。いまだにあれが素の性格だなんて信じられないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オッスオッス!おらファントム!なんやかんやあって今を楽しく生きているウマ娘だよ!

 

 

「楽しく生きすぎだろ。また女帝を怒らせてんじゃねぇか」

 

 

「いいかいエっちゃん?今を楽しく生きれたら問題ないんだよ」

 

 

「お前が楽しそうならそれでいいが、程々にしておけよ」

 

 

「はーい」

 

 

「なにも良くないわこのたわけ!少しは自重しろ!」

 

 

 エっちゃんと代わりばんこに喋っているとエアグルーヴに怒られてしまった。隣には私と同じように悪戯をして捕まったゴルゴルがいる。

 

 

「クソ……!会長から性格が大分変わっているとは聞いていたがここまでとは思わなかったぞ……!」

 

 

「えへへぇ」

 

 

「褒めてないわこのたわけ!……もういい、次はやらないようにしろ」

 

 

「気が向いたらしないよ」

 

 

 私の言葉。そしてゴルゴルの言葉。

 

 

「エアグルーヴ……憧れは止められねぇんだ!」

 

 

「……もういいからさっさといけ」

 

 

 なんかエアグルーヴは頭を痛そうにしている。ま、これ以上悩みの種を作るのもあれだからさすがに自重しておこう。

 

 

「というわけでゴルゴル。今日はスピカの練習の日なわけだけど」

 

 

「んあ?そういやそうだな姉御。どしたよ?」

 

 

「もう始まってるね、練習」

 

 

 私達は揃って時計を確認する。練習は……すでに始まっている時間だった。

 

 

「「……急げー!」」

 

 

 私とゴルゴルは走り出す。それはもうクリアマインドの境地に至れそうな速度で!練習?余裕で遅刻しましたが何か?

 そんなわけでみんなが集まったということでトレーナーさんが集合するように呼びかけます。

 

 

「さて、スピカが全員揃ったところで……改めて自己紹介をしてもらうぞ!我らがスピカに新しい部員が入った!ハイ拍手!」

 

 

「キタサンブラックです!憧れのテイオーさんみたいなウマ娘になれるように、頑張ります!」

 

 

 おぉ!いつぞやのテイオーを尊敬していたウマ娘ちゃんじゃないですか!ちょっと前まで仮入部してたんですけど、正式に入部することになったんですね!これはぜひ可愛がっておかねば!

 

 

「さて、キタサンブラックの教育係だが……せっかく尊敬している相手がいるんだ、テイオーに一任する」

 

 

「はーい!ボクに任せて任せて!キタちゃんをビシバシ鍛えてあげるからね!」

 

 

「はい!よろしくお願いしますテイオーさん!」

 

 

 うーん……美しい師弟愛!良きだね!まぁ。

 

 

「いつの間にかクソガキの身長がお祭り娘に抜かされてるせいでまるで先輩感がねぇけどな。どう考えてもお祭り娘の方が師匠感がある」

 

 

「言っちゃダメだよエっちゃん。世の中には言っちゃいけないこともあるんだって何かで言ってたよ」

 

 

「そいつは悪かったな。だが事実だろ」

 

 

「それはそうだね。うん……あんまり先輩感はないね」

 

 

「聞こえてんだよさっきからさ!?悪かったねチビで!」

 

 

「だ、大丈夫ですテイオーさん!私はテイオーさんを尊敬していますので!」

 

 

 そんな小話を挟みつつトレーニングを始めると……。

 

 

「そう言えば、私ファントムさん……というか、エクリプスさんに聞きたいことがあるんです!」

 

 

「あん?俺様に聞きたいことだと?」

 

 

 スぺちゃんがそんな風に話しかけてきました。どうしたんでしょうね?

 

 

「エクリプスさんって、三女神様の遺志を継いだ三大始祖のウマ娘さんじゃないですか?」

 

 

「あー……まぁ、そうだな」

 

 

 エっちゃんは曖昧に言葉を濁す。まぁエっちゃん三女神様のこと今でもそんなに好きじゃないし仕方ないかもしれないけど。目に見えて嫌悪していた時に比べればマシかな?

 

 

「じゃあじゃあ!きっと特別なトレーニングをしてたんじゃないですか!?」

 

 

「……あ?」

 

 

 スぺちゃんは目をキラッキラさせながら聞いてきた。そしてその言葉はスピカのみんなにも聞こえたみたいで。

 

 

「私もちょっと気になるわね。三大始祖のトレーニング」

 

 

「きっとすっごいトレーニングを積んでたんじゃないかな!」

 

 

「三大始祖のウマ娘達だけができる直伝のトレーニング……くぅ~!カッケェー!」

 

 

「カッコいいかどうかは別として、アタシも気になります!どんなトレーニングをしてたんですか!?」

 

 

「後学のために、わたくしが強くなるために聞かせていただけませんか?」

 

 

「ゴルピッピも興味あるな~なぁ聞かせてくれよエっちゃ~……」

 

 

 ゴルゴルがエっちゃんと言い終わる前に、エっちゃんはゴルゴルを掴んでターフに埋めた。恐ろしく速い行動、私じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

 

「良いか覚えとけ奇天烈葦毛。未来永劫俺様のことをエっちゃんと呼んでいいのはファントムだけだ。それ以外の塵共がエっちゃんなんて呼ぶんじゃねぇ……埋めるぞ」

 

 

「も、もうすでに埋めてんだろ……」

 

 

 凄い。頭から埋まってるのにどうやって喋ってんだろう?

 それにしても……ヘロドさんとマッチェムさんのトレーニングか……。確か、エっちゃんの記憶にもあったな。確か……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case1.マッチェムの場合

 

 

「マッチェム様!どうやったら強くなれますか?」

 

 

「そうですね……まずは、気を落ち着かせましょう」

 

 

「はい!……それで、次は?」

 

 

「そしたら、三女神様の声が聞こえてくるはずです」

 

 

「はい!……え?」

 

 

「大地の声を聞き、空の声を聞き、母なる海の声を聞くのです。そうすれば……自ずと強くなれるでしょう」

 

 

「あ、あの……なにも聞こえてこないんですけど……」

 

 

「……はて?私はいつもこのようにしているのですが……それではひたすらに鍛えるしかありませんね」

 

 

「い、いや、それだと限界が……」

 

 

「大丈夫です。三女神様は……平等に微笑んでくださりますよ」

 

 

「いや笑顔を浮かべながら言われてもー!?」

 

 

結論 三女神の声を聞け

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case.2ヘロドの場合

 

 

「へ、ヘロド様!強くなるためにはどうしたらいいんでしょうか?」

 

 

「そうか、貴様は強くなりたいか……」

 

 

「は、はい」

 

 

「ならば……鍛えろ!まずはレース場を100程走ってこい!」

 

 

「え!?ちょ!?さすがに多すぎませんか!?」

 

 

「なんだ貴様?強くなりたいというのに……できないというのか?」

 

 

「い、いやそういうわけじゃ……」

 

 

「軟弱者が!今すぐ来い!その腐った性根を叩き直してやる!」

 

 

「ちょっと待って!?嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

「安心しろ!気絶するまでトレーニングを繰り返し、鍛えれば必ず結果はついてくる!そのためにも……まずは走れ!気絶するまで走れ!」

 

 

「ゼヒュー……コヒュー……も、もう無理……」

 

 

「なんだもうへばったのか!?まだたったの30周だぞ!1周1500程だったから……まだまだいけるだろうが!死ぬ気で走れ!」

 

 

「ま、マジで死んじゃう……」

 

 

結論 ひたすらに鍛えろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case.3エクリプスの場合

 

 

「……」

 

 

「なんだカスが。俺様に聞きたいことがあんだろ?さっさと用件を話せ」

 

 

「あ、あの……つ、強くなりたいんですけど……」

 

 

「あ゛ぁ゛?」

 

 

「ヒィ!?な、なんでもありません!失礼しましたぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

 

「……なんだアイツ?まぁいい、俺様もトレーニング行くか」

 

 

結論 怖がられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

「ねぇねぇ!三大始祖様ってどんなトレーニングしてたの?教えてよファントム!」

 

 

「あたしも気になります!教えてくださいファントム先輩!」

 

 

 とりあえず、私は重い口を開く。

 

 

「そ、それはもうすっごいトレーニングをしてたよ!」

 

 

「「「おぉ~!」」」

 

 

「で、でも!流石にみんなには教えられないかな~?ちょっと特殊なトレーニングだからね!うんうん!そう易々とは教えられないってことだよ!」

 

 

 私の言葉に、みんなはさらに目を輝かせる。

 

 

「すっげぇ!一子相伝のトレーニングってことか……!」

 

 

「ウオッカじゃないけど……確かにカッコいいわね」

 

 

「メジロ家秘伝のトレーニングと似たようなものでしょうか。やはり、そう易々とは教えられないトレーニング……うぅ、興味が止まりませんわ!」

 

 

「きっとすっげぇトレーニングしてたんだろうな~。ちくわ加えながら後ろ向きにバスケのドリブルをしてたのかもしれねぇ!」

 

 

「あの時代にバスケってあるの?それはともかく興味があるな~どんなトレーニングしてたんだろ?」

 

 

「スズカさんはどう思いますか?きっと凄いトレーニングだと思うんですけど!」

 

 

「そうね。なんてったって三女神様直々に選ばれた、三大始祖様のトレーニングだもの。その効果はファントムで実践済み、きっと凄いトレーニングに違いないわ」

 

 

「き、気になる~!ダイヤちゃんにも話してみよっと!」

 

 

 ……うん。みんなすっごい勘違いしてくれてる。これでよかったのかな?

 パパ、ママ。私は嘘をついてしまいました。でも、仕方ないよね。三大始祖のイメージを崩さないためだから。うん、仕方のない嘘なんだよこれは。




そら、話せないね。
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