そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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短いです。


取り戻した日常

 旧理科準備室。そこでは、一触即発の空気が流れていた。

 

 

”……テメェ、喧嘩売ってんのか?”

 

 

 その空気を作っているのは、マンハッタンカフェのお友だち。彼女は怒気を孕んだ瞳で睨みつけている。その先にいるのは。

 

 

「ハッ!これだから理解が追いついてない狂犬は困る」

 

 

 ファントム……というよりは、彼女に憑依しているエクリプスだ。2人は互いに睨み合っている。同じ部屋にいるアグネスタキオンは静観、アグネスデジタルは慌て、マンハッタンカフェは無言でことの成り行きを見守っていた。

 2人が睨み合っている原因。それは──

 

 

”カフェの方が可愛いに決まってんだろ!”

 

 

「いーや!ファントムの方が可愛いね!」

 

 

 滅茶苦茶どうでもいいことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧理科準備室。相も変わらず、この2人はなにをやって、いるんでしょうね。

 

 

”テメェ、カフェのこの可愛さが分からねぇのか?人生の半分は損してんぞ?”

 

 

「あ?んなのテメェもそうだろうが。ファントムの可愛さが分からねぇとはな……人生の半分は損してるぜ」

 

 

「合わせて10割だねぇ」

 

 

 タキオンさん、突っ込むとこはそこじゃないかと。ちなみに、ファントムさんは、身体の中で眠りについているそうです。どうも、夜遅くまでゲームをしていたとか。

 

 

”だったら目に焼き付けろ!カフェの可愛さを!”

 

 

 写真を浮かせて?……って!それは!?

 

 

”カフェの寝顔写真だ!どうだ?この可愛さは!まるで汚れを知らない純真無垢な寝顔!まさに至高の一枚だろ!”

 

 

「「ぐはぁっ!?」」

 

 

「いつの間に撮ったんですか!?」

 

 

「デジタル君が血を吐いて倒れたねぇ」

 

 

 早く隠しなさい!というか、そのデータが入ったカメラごと渡しなさい!なんてもの撮ってるんですか!?

 

 

”ククク……いくらテメェでもこれは効くだろ?大人しく認めろ、カフェの可愛さをよぉ”

 

 

 どうでもいいんですよそんなことは!というか、何回もやっておいてよくもまぁ飽きないですねあなた!

 先程まで、倒れそうになっていた、エクリプスさんが、息も絶え絶えに反抗します。なんで、息を切らしてるんですかね?そんな、大ダメージを受けたみたいな、リアクションをして。

 

 

「中々やるじゃねぇか狂犬……だがなぁ、こっちにだって至高の一枚はあるんだよ!」

 

 

”ハッ!だったら見せてもらおうじゃねぇか……テメェの言う、至高の一品とやらをよぉ!”

 

 

 エクリプスさんが懐から取り出したのは……!

 

 

「ハンバーグを口いっぱいに頬張るファントムの写真だ……どうだ?これぞまさに至高の一品!」

 

 

”「グアアァァァァァァァァ!?」”

 

 

「デジタル君がまた血を吐いて倒れたねぇ」

 

 

 エクリプスさんが、見せたのは、ファントムさんの大好物である、ハンバーグを口いっぱいに頬張っている写真です……!ファントムさんは、それはそれは美味しそうに、頬張って……!

 

 

「どうしたぁ?霊障女。そんなもの欲しそうな目をしやがって」

 

 

「ッ!?だ、誰が……!」

 

 

「……フッ」

 

 

 エクリプスさんは、私の肩に手を置いて、何かを握らせて……!

 

 

「特別にくれてやる。感謝しやがれ霊障女」

 

 

「……この恩は、必ず」

 

 

 ファントムさんの、写真をくれました。

 

 

”カフェー!?”

 

 

「ま?これも分かり切っていた結果だがな?」

 

 

「そりゃ自分の寝顔写真なんて欲しがる子はいないだろうからねぇ。私達しかいないという現状、こうなるのは必然というか毎回この結末になっているからねぇ」

 

 

 ふふっ、良いものを手に入れました。早速、保存しておきましょう。

 そうやって、お友だちと、エクリプスさんが騒いでいると。唐突に、エクリプスさんの雰囲気を柔らかくなりました。ということは。

 

 

「あ~良く寝た!……およ?カフェさんにタキオンにデジタル!何の話してたの?」

 

 

「やぁファントム君。なぁに、とりとめのない会話さ」

 

 

「その割にはデジタルが嬉しそうな顔しながら血に沈んでるけど。大丈夫なの?コレ」

 

 

”大丈夫でしょ。割といつものことだし”

 

 

「まぁそうなんだけどね。カフェさーん!いつものー!」

 

 

「分かり、ました。お淹れしますね」

 

 

 私は、ファントムさんのために、コーヒーを淹れます。その最中に。

 

 

「……ハッ!?お、おばあちゃんはどこに!?」

 

 

「やぁデジタル君。気を取り戻したようで何よりだ」

 

 

「そっちに、逝かなかったようで、何よりです」

 

 

「おっはよーデジタル!今日もデジってんね~!」

 

 

「で、デジってるとは?けど、細かいことはヨシッ!」

 

 

 皆さんが飲み物を用意して、他愛もない会話をします。

 

 

「さてさて、それじゃあ早速実験をしようじゃないかファントム君」

 

 

「いいよ!何するの?」

 

 

「おい、今度はこいつになにをやらせる気だマッド野郎。事と次第によっちゃあ……」

 

 

「いや、危険な実験はさせてないだろう?心配性だねぇエクリプス君は」

 

 

「そうだよエっちゃん。もうちょっとタキオンを信じてあげなきゃ!」

 

 

”いや、身体が発光するような薬を飲ませられてるのに危険な実験じゃないって言えるのかい?”

 

 

「……大丈夫です。いざとなったら、私もエクリプスさんに、加勢しますので」

 

 

「えーっ!?私の味方は誰もいないのかい!?」

 

 

「は~眼福眼福。今日もウマ娘ちゃん達が尊くてデジたんは満足ですよ~」

 

 

「デジタルはそんなとこにいないで!ほら、こっちで一緒にお話ししよ!」

 

 

「キィィィィィエエエエアアァァァァァァ!?ふ、ファントムさんのおててがぁぁぁぁぁぁぁ!?あ、柔らかい、いい匂いする。しゅきぃ……」

 

 

「デジタル君がまた倒れたねぇ」

 

 

「わ、私なんかやっちゃった?」

 

 

 大丈夫です、ファントムさん。通常運転なので。

 旧理科準備室の扉を開けて、誰かが入ってくる。

 

 

「今日も楽しそうね、みんな」

 

 

「あ、スズカ!やっほー!」

 

 

「これで、揃いましたね」

 

 

「さぁて、今日も楽しく過ごそうじゃないか!」

 

 

 スズカさんを加えて、旧理科準備室出他愛もない話をする。少し前までは、当たり前で。少しの間、失ってしまったもの。だけど、今こうしてここにある、大切な日常。

 

 

「……良いですね。はい、この日常を、大切にしましょう」

 

 

”そうだね、カフェ。だけど、最カワの座はカフェだってのは譲らな……”

 

 

「あなたは、あの写真をいつ撮ったか、キリキリ吐いてもらう」

 

 

”……逃げる!”

 

 

「……逃げ、られるとでも?」

 

 

”……ゴメン、カフェ!つい出来心でぇ……許して!この通り!”

 

 

 お友だちは、綺麗な土下座を、している。だけど!

 

 

「……今すぐ消して!」

 

 

 私は、そう一喝します。

 お友だちは、渋々ながらデータを消す。これで、一安心ですね。

 こうして、私達の他愛もない日常は、今日も過ぎていく。




お友だちとエクリプスの仁義なき戦い。
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