私は今、他のウマ娘と併走をしている。
「っよし、この辺で……飛ばしますかっ!」
残り少なくなってきたところで私は……
「っ!これが……
「そうそう!その調子で頑張って!」
「はいっ!ファントムさん!」
併走相手の子は心折れることなく走ってくれる。
併走が終わって、相手の子と反省会をする。良かったところで悪かったところ。どこを改善すべきかを事細かに教えていた。
「……と、まぁこんなとこかな?他に何か聞きたいことはある?」
「あ、あの……」
「どうしたの?私でよければ答えるよ!」
併走相手の子は、意を決したように聞いてきた。それは、少し答えいにくいことで……。
「わ、私も
「あ~……」
どうしよう。下手なことを言いづらい。誤魔化しても下手な慰めになっちゃうし、そうしたら現実に直面した時が……。
「結論から言えば無理だ。
私が言い淀んでいると、私の身体を使ってエっちゃんが現実を突きつけるように淡々と告げた。併走相手の子は目に見えてしょんぼりしてる!?
「そう……ですよね。私に、そこまでの才能は……」
(ちょっとどうするのさエっちゃん!目に見えて落ち込んでるよ!)
(黙ってみてろ)
エっちゃんは凄く自信満々というか、何も心配していないような態度で?
「だが、そもそも
「……え?」
「覚えとけ塵。
併走相手の子はエっちゃんの話を熱心に聞いている。そんな様子を見て、エっちゃんは丁寧に教えていた。
「テメェの武器は……一瞬の末脚だな。なら判断を誤るな。例え他の塵共がスパートを掛け始めても、テメェだけはジッと気を窺え」
「で、でも。そしたら置いていかれちゃうんじゃ……」
「テメェの末脚なら離されても追いつける。見たところテメェの末脚は瞬発力があるタイプだ。トップスピードに至るまでがはえぇ。だが、逆に持久力……長く持続する脚が使えない。だったら、限界ギリギリまで我慢して一瞬の勝負に賭ける方がテメェに合っている」
「な、なるほど……」
「テメェの凡愚……トレーナーはどこだ?」
「と、トレーナーさんならあそこに……」
エっちゃんはその子が指を指した方向にいる人物……彼女のトレーナーのところへと足を運ぶ。メモ用紙にさらさら~っと書いて渡した。
「トレーニングメニューに関するアドバイスだ。使う使わないはテメェの自由……好きにしろ」
「あ、あぁ……」
トレーナーは怯えの混じった目でエっちゃんを見ている。……まぁ色々とやらかした過去があるからそりゃ怖いよね。何企んでるんだ~!って話になるし。
「これで俺様との併走は終わりだ。またやりたきゃ呼べ。あばよ」
手をひらひらさせて私達は去る。帰り際……。
「「あ、あのっ!」」
併走してた子と、彼女のトレーナーがこっちを見ていた。2人とも、頭を深々と下げている。
「あ、アドバイス!ありがとうございます!私、強くなってみせますから!」
「私からも、ありがとう!次の未勝利戦、きっと勝利を掴んでみせる!」
2人のお礼の言葉に、エっちゃんは手をひらひらさせて去っていく。
「……フン」
「照れてる?」
私がからかうように言うと、エっちゃんは鼻を鳴らした。
「ケッ、俺様が教えたのに勝ってもらわないと困るだけだ。それ以上の感情はねぇよ」
「ふ~~~~ん?」
「……なんだ?その何か言いたげな声色は?」
「べっつに~?そう言うことにしといてあげるよ」
身体の主導権が私に移る。さてさて、次の予定は……特にないからこのままダラダラ歩いてようかな?
あの日食杯以降。エっちゃんの
なんと、三女神様の祝福も正常に作用するようになったのだ。なので、私達の
なので、私達は良くこうやって他の子の併走に付き合っている。最初はまぁ……閑古鳥が鳴く始末だったけど。
「また走れなくなったらどうしよう?」
「あの光景を見せられるんじゃないか?」
「ろくな目に遭わないだろう」
そんな風に噂されていた。それも仕方のないことだし、むしろ面と向かって罵倒されなかっただけマシだと考えている。そんな中、ウララちゃんには感謝だね。あの子が私と楽しそうに併走している姿を見た子が多かったおかげで、徐々に徐々に増えてきたんだから。
「……まぁ、甚だ不本意ではあるが確かにピンク娘のおかげではあるな」
「でしょでしょ?つまりウララちゃんは天使なんだよ!」
「どういうことだよ」
そんなわけで。今となってはよく併走の依頼が舞い込んでくるようになった。特に伸び悩んでいる子、レース前の調整の時が多いかな?私は基本的に断らないようにしている。本当に大事な用事があった時は断るけど。
「それにしてもさ、記憶のエっちゃんってろくに教えなかった気がするんだけど?教えるの上手いよね」
「あん?そりゃ聞く前に逃げんだから教えようがねぇだろうが。少なくとも、脳筋のヘロドや感覚派のマッチェムよか上手く教える自信はある」
「ふ~ん。まぁ確かに、物怖じせずに話しかけに来た子には丁寧に教えてたね」
「そういうこった……にしても、アイツは元気にやってたのかね?」
アイツ……というと。
「あのポテトポテトうるさかった子?」
「そうだ。口を開けばポテトを食べましょう!ポテトは全てを解決してくれます!ってうるさかった奴だ」
「あの子はエっちゃんをよく慕ってたよねぇ」
「あのポテト狂いさえなければ普通に接したんだがな……」
あの子は名前もかなりユニークだった。少なくとも一度聞いたら忘れられないインパクトがある。
「ありゃ、気づけばスピカの部室だね」
「丁度いい、このまま練習して帰るぞ」
「合点承知の助!」
扉を開けて中に入る。部室の中にはみんながいた。
「あ、おはようございます!ファントム先輩!」
「今日も一日、頑張りましょうね。ファントム」
「ファントム!今日も勝負だ~!」
「お、今日も敗北記録を伸ばすのか?テイオー」
「そんなことありませんよゴールドシップさん!今度こそテイオーさんは勝ちます!」
「相も変わらず元気ですわね、テイオーは」
扉を開けて、まずは挨拶!
「おっはようみんな!今日も一日、頑張ろうか!」
スピカのトレーニングが始まる。
実は教えるのは上手いエっちゃんである。なお大抵は怖がられてまともに教えられなかった模様。