オッス!オラファントム!……なんて冗談を言っている場合ではない。私はとんでもない修羅場に遭遇しています。
「へぇ?サポートAIとして……ねぇ?」
「……そう。俺達はウマ娘達をサポートするために」
「クハハハハ!お前らが!?笑わせんじゃねぇよ!」
「エクリプス……」
「俺様に何もしてくれなかったテメェらが!俺様を見放したテメェらが!今更塵共のサポートだぁ!?笑えるなぁオイ!お笑いの世界でトップ獲れるんじゃないか?えぇ!?」
「くっ……」
「エっちゃん……」
このメガドリームサポーターの世界にサポートAIとして顕現している三女神様……確か、ダーレーアラビアンさん、ゴドルフィンバルブさん、バイアリータークさんの3人。ただ、3人とも悲痛な表情を浮かべている。目の前にいる私達に、凄く申し訳なさそうな表情をしていた。
対するエっちゃんは……何となくわかる。エっちゃんは、別に心の底から怒ってはいない。長い付き合いだ、何となくわかる。エっちゃん自身、自分の過去のことは過去のことだって割り切っているつもり……って言ってた。でも、いざ自分が苦しむことになった元凶が目の前に現れたとなると、やっぱり冷静ではいられなかった。複雑な感情を抱いているのかもしれない。それが今の態度に現れている。
許すつもりではあった、でも、いくらAIとはいえ本人を前にしたら、感情がぐちゃぐちゃになって……糾弾する形になってしまった。そんな風にエっちゃんは思ってる。
「それで?俺様を前にして何か言うことがあるんじゃねぇの?俺様に与えるだけ与えて、後はポイ捨てした三女神様よぉ」
「聞いてくれエクリプス!俺達は……」
「俺達は?なんだ?言ってみろよカス共」
「……俺達は、好きでお前を苦しめたかったんじゃない!」
3人を代表して、エっちゃんに一番雰囲気が近いダーレーアラビアンさんが答える。
「お前には、ウマ娘達をその走りで導いて欲しかった。誰よりも前を走る才能を与えて、その力を使って子羊君達を導いてくれるような……そんな存在になって欲しかった。だからお前に、その才能を与えた」
「だが現実はこれだ。俺様は世間から排斥され、異端として恐れ崇められた。ただみんなと一緒に走りたかった俺様には……そんなものは不要だったってわけだ」
「それは……悪かったと思っているわ。でも、私達だって何もしなかったわけじゃ……」
「理解者が得られなかった、誰も俺様を理解しようとしなかった、ただ恐れご機嫌取りに終始するだけだった。俺様に敵う塵も……結局は現れなかった。それで何もしなかったわけじゃない?バカも休み休み言え」
「聞け!エクリプス!我らとて……」
「俺様は欲しくなかったんだよ!こんな才能!」
エっちゃんは叫ぶ。
「俺様はただみんなと走りたかっただけだ!だが!テメェらが勝手に与えたこの才能のせいで俺様からはどんどん離れていった!誰も俺様と走ってくれなくなった!テメェらに分かるのか!?1人で走ることの辛さが!走っている時、周りに誰もいないことの孤独が!テメェらに分かるってのかよ!?」
「「「……」」」
エっちゃんの慟哭。それを聞いて三女神様達は、さらに表情を歪めた。凄く、申し訳なさそうな、自分の犯した過ちに、後悔している……そんな表情だった。
「マッチェムとヘロドの野郎が来たが……そこでも俺様は恐れられた。当たり前だ、傲慢に生きてきた俺様に今更近づこうなんて物好きは少数派だったからな。もっとも、その少数派も俺様のことを真に理解しようってやつはいなかった。どこに行っても……俺様は孤独なままだった」
「ごめんなさい……!ごめんなさい……エクリプス……!」
「……
「……え?」
エっちゃんの雰囲気が、急に柔らかいものになる。三女神様達も驚いていた。
「どれだけテメェらに当たり散らしたところで……俺様が失ったものが戻ってくるわけじゃねぇ。それに、テメェらに与えられた
「……エクリプス。あなた」
「それに……テメェらなんだろ?俺様と、
「わわっ」
唐突にエっちゃんに抱き寄せられる。少しびっくりした。
「答えろ。あんな都合よく俺様がコイツを発見できるわけがねぇ……テメェらが一枚噛んでるんだろ?あの土地に縛りつけられていた俺様のところに……俺様の展示物が飾ってあったところに、テメェらが誘導したんだろ?」
三女神様は沈黙の後……頷いた。
「ただ、弁明させてほしい。ファントムが……彼女がイギリスに来たのは本当に偶然なんだ。俺達はそれには関与していない」
「そう。彼女が日本にいるのは知っていた。でも、どう引き合わせようかと考えていた。そんな時……あの火災が起こってしまった」
「……今にして思えば、貴様の運命も我々が歪めてしまったようなものだ。本当に、すまない……ファントム」
三女神様に頭を下げられた……けど。う~ん……。
「君には俺達を糾弾する権利がある。好きなように罵ってくれて構わない……それだけのことを、俺達はしてしまった」
「あの、私別に怒ってないですけど?」
「……私達に気を使わなくていいのよ?あなたはもっと私達に怒りをぶつけても良い。私達はそれだけのことをしたのだから」
「う~ん……じゃあ、1つだけ。あの火災を起こしたのは三女神様?」
「それは断じてない。出火の原因は、とある阿呆のタバコの火の不始末が原因だ。我々は関与していない」
「じゃあ、別に三女神様に怒る理由はないかな~?」
少し呆けている三女神様達に、私は続ける。
「別に私が死にかけた原因は三女神様にはないんでしょ?だったら別に怒る必要はないかなって。それに……えいっ!」
「うおっ!?なんだファントム?」
「エっちゃんと会わせてくれたんだから、むしろ感謝したいぐらいだね!」
エっちゃんに抱き着きながら答える。これが私の答えだ。
「別に私達は三女神様を恨んでないよ。確かに色々なことはあったけど……その道を選んだのは私達なんだから。だから、三女神様に対する恨みはないって言ってもいいね!」
「……そっか。うん?私“達”?」
「……俺様も、別にもうテメェらを恨んじゃいねぇよ。許すことはできねぇがな」
「……それでいいわ。それだけのことを私達はやったんだもの」
「それでいいだろ俺様達は。許すことはできねぇが恨んじゃいねぇ、今をコイツと生きることができる……それだけで俺様は十分だ」
「丸くなったな、エクリプス。ヘロドやマッチェムが今の貴様を見たら、驚くんじゃないか?」
「どうだかね?つーか、アイツらもこのVRの世界にいるのか?」
「いないことはないんじゃないかな?データとしてはあるわけだし。それに、俺達がこうしているんだ。あの子達がいてもおかしくはないさ」
おぉ!それは会う時が楽しみだね!記憶では知っているけど、実際に会ったことはないし!
そう思っていると、エっちゃんはベンチに座った。三女神様にも座るように促す。
「まぁ座れよ……教えてくれ、テメェらのこと」
「えっ?」
「なにを思って俺様にあんな力を寄越したのか、テメェらが具体的にどうしようとしてたのか……それを、教えてくれ。こうして会えたわけだしな」
エっちゃんは照れ臭そうに頬を搔いている。素直に三女神様と話したいって言えばいいのに。やっぱエっちゃんはツンデレだな~。
エっちゃんの言葉に、三女神様は一瞬呆けた後、笑顔を見せた。
「あぁ!ゆっくりと語らおうか、エクリプス!」
「えぇ。時間はたっぷりとあるもの。お話、しましょうか?」
「……フッ、良いだろう。我々のこと、教えておこうか」
「私も聞きた~い!教えて教えて!」
──こうして、エっちゃんと三女神様とのわだかまりは無くなった。完全に無くなったわけじゃないけど……それでも、恨むだけだったあの日からは進むことができた。そんな気がする。私達は、笑顔で会話を交わした。
「それじゃあファントム!俺達が君をサポートしてあげよう!」
「え?いいの!?」
「勿論。私達はサポートAIだもの。あなた達のサポートが、私達の仕事よ」
「エクリプスを継承したとはいえ、ぬるくいくつもりはないがな」
おぉ!三女神様直々のサポート「ちょっと待ちやがれ」あり?どうしたんだろエっちゃん?
「こいつにテメェらのサポートなんざ必要ねぇ……俺様1人で十分だ」
「お?なんだいエクリプス?嫉妬かい?」
「ほざけクソ女神共。テメェらのサポートよりも俺様のサポートの方がこいつには合ってんだよ」
「あらあら。微笑ましいわね。心配しなくても、ファントムは取らないわよ」
「んな当たり前の心配なんざするかよ」
「え~?でもエっちゃん、私三女神様のサポートがどんなものか気になるな~?」
「……ちょっとだけなら許してやる」
「……貴様本当に変わったな。ファントムに対して甘すぎるだろ」
三女神様のサポートか~。どんなものなんだろ?気になるな!
「……あ!見つけた!ファントムだよ!」
「なんてことですの……!すでに三女神様と一緒に……?」
「あ!みんなだ!お~い!」
「な、なんというか……あはは」
「ファントム先輩、楽しそうね……?」
「チッ。やっと来やがったか。待ちくたびれたぜ」
「心配すること、なかったわね」
「そ、そうですね。それにしても……あの方々が三女神様……!オーラが凄い!」
「お?新たな子羊君達かな?」
「賑やかになって来たわね」
「騒々しいとも言うがな」
「よーし!みんなでこの世界を満喫しよー!」
こうして、スピカのみんなと合流して。この世界を満喫することにしましたとさ。
禍根を残すことなく和解。もしかしたら、このVRの世界でマッチェムとヘロドが出る可能性も?