「楽しみだね、エっちゃん!」
「本当に大丈夫なのかね?」
「ゴルシ、本当に大丈夫なんだろうな?」
「だーい丈夫だって!姉御ならなんとかしてくれる!」
「……まぁいい。精々楽しませてくれよ?お嬢ちゃん」
薄暗い部屋の一室。そこに集まった私達のやることは!
「ポーカーやるのって初めて!楽しみだな~!」
トランプゲームである!
事の発端はゴルゴルから誘われたこと。
「姉御姉御!今からナカヤマと遊ぶんだけど一緒に来ねぇ?」
「いくいくー!」
こんな軽い調子で答えて連れてこられたのが旧校舎の一室。なんでもナカヤマ──ナカヤマフェスタさん達がたむろしている場所らしい。ここでやるのはトランプをやる遊びだとか。
「お嬢ちゃん、ポーカーのルールは知ってるんだろうな?」
「名前だけなら聞いたことあるよ!」
あれでしょ?良く漫画とかで賭けやる時に遊ぶやつ!
「俺様がルールを知っている。教えながらやるから問題ねぇ」
「おっと、今度は亡霊の方が表に出てきているのか。あんたはやらねぇのか?」
ナカヤマさんのルームメイトでもあるシリウス──シリウスシンボリさんは私、というよりはエっちゃんに挑発的な視線を向けているけどエっちゃんは歯牙にもかけない。
「笑わせんな。ガキのお遊びにクビ突っ込むほど暇じゃねぇよ」
「そうかい。噂の亡霊サマも、案外チキンなんだな」
「言ってろ。んな安い挑発に乗らねぇよ」
お、シリウスさん露骨に面白くなさそうな表情してる。そんなに戦いたかったのかな?
そうして始まるポーカー。簡単なルール説明から始まって、参加者は私・ナカヤマさん・シリウスさんの3人。ディーラー役はゴルゴルが務めている。ゴルゴルがトランプのデッキの
私の役は……うん、分かんない!
(エっちゃんこれどうなの?)
(……5のワンペアだな。可もなく不可もない)
「チップは?」
「私は出すぜ」
シリウスさんがチップを数枚出す。え~っと、確か……。
(勝負する時はコールだっけ?)
(そうだ。このチップよりも上乗せして出す場合はレイズを宣言すればいい。今回の手札なら……まぁコールで良いだろ)
「姉御はどうする?」
「コール!」
「なら私もコールだ」
ナカヤマさんも勝負ということで全員が勝負に。ここで手札交換だけど。
(5以外を交換だ)
「じゃあこの3枚を交換で!」
「あいあーい」
ナカヤマさんとシリウスさんも交換して。私の手札はっと。
(これはツーペアってやつ?)
(そうだな。このままコールするぞ)
「レイズ」
シリウスさんは上乗せ。私とナカヤマさんはコールということで勝負になる。結果はッ!
「ツーペア。お嬢ちゃんの勝ちだな」
私の勝ちだ!
「やったやったー!」
「本当にガキみたいなはしゃぎ方するな。あの無口な亡霊とはにわかに信じがたい」
「ま、こっちが姉御の素の性格らしいけどな~。んじゃ、カード回収するぞ~」
こうしてポーカーが始まっていくのだが、ビギナーズラックって奴だろうか?
「わーいわーい!私の連勝ー!」
私は勝ち続けていたのである!もしかして才能なんかあったりして?
(……)
(あり?どうかしたの?エっちゃん)
(んにゃ。なんでもねぇ)
エっちゃんは少し訝しむような態度だったけど、気にしないことにしたらしい。よーし、この調子で勝ち続けるぞー!
この時の私は気づかなかった。
「「……」」
シリウスさんとナカヤマさんが私の様子を見て、あくどい笑みを浮かべていることに。
──目の前の亡霊は、困惑した表情を浮かべている。
「う~ん、どうしようかな~……?」
手札とにらめっこして難しい表情。さっきまでは見せていない、ここ数戦で見せるようになった表情だ。それも当然だろう。今のコイツは
(ま、そりゃそうだろうな)
私とシリウスは目配せして、ゴルシのヤツに合図を送る。ゴルシがそれに頷いて、山札の
……まぁ、つまるところ
(悪いなお嬢ちゃん。ただ、これも勉強だと思うんだな)
最初ゴルシが連れてきた時はどういうことかと思った。この鉄火場に純粋な少女を連れてきて私とシリウスは困惑していた、が。同様に面白い気配を感じていた。この亡霊から感じる、勝負師の気配に……!
(ほらほら、早くしないとあんたのお嬢ちゃんが大変なことになるぜ?)
だからこそ、このまま勝ち続けてもう1人の方を引きずり出す。そのために、イカサマを敢行しているわけだ。
そうして勝ち続けて、そろそろ止めるか?そう考えていた時──ついにヤツが出てきた。
「おい、変われファントム」
「え?どうしたのエっちゃん。だ、大丈夫だよ!次は……」
「安心しろ、お前の負け分取り返してやる」
明らかに雰囲気が変わった……ッ!感じる圧が、圧倒的に違うッ!
「おいおい?ガキのお遊びにはクビを突っ込まないんじゃなかったのか?」
煽るように笑うシリウス。だが、亡霊はそれを一蹴した。
「黙れ。おい奇天烈葦毛、とっととデッキを切りやがれ」
「はいはい。分かりましたよっと」
ゴルシが山札を切って、目配せをする。
(さぁ……ヒリつく勝負をさせてくれよ、亡霊!)
「……さて、私はレイズだ」
「……コール」
「コール」
シリウスのレイズに対して私達はコールを宣言。手札を交換し、二度目もコール宣言。結果は──シリウスの勝ちだった。
「ハッ、私の勝ちだな」
「どうでもいい。さっさと次の勝負に行くぞ」
その後も何度か勝負をするが……アイツは特に何か特別な様子を見せることなく淡々と勝負をしていた。あの様子だと、私達のイカサマにも気づいていない?
(いや、そんなはずはねぇと思うが……)
だがアイツは細かく勝ちを重ねるだけ。どでかい勝負もしなければ、なにかをする様子も見せない。しかも、明らかに負け分の方が大きい。正直言って、ガッカリだ。
「おいおい、そんな細かく勝つだけでいいのか?」
「……」
亡霊は無反応。
「あのお嬢ちゃんの負け分を取り戻すんだったら、もっとどでかく勝負しろよ。それとも、負けるのが怖いのか?」
亡霊はなおも無反応を貫く。その間にもゴルシはデッキを切っていた。
「ハッ、ガッカリだな。私達をガキ扱いする割には、当の本人は勝負を恐れるチキン野郎か。全くお笑い種だ」
「よく回る口だな。そんなにどでかい勝負がしてぇんだったら……やってやろうじゃねぇか」
だが、我慢の限界を迎えたのか。亡霊は手札を見るなり残りのチップを全賭けしてきた。
「レイズだ。俺様は次のゲームで全チップを賭ける」
そう宣言した。成程、やけっぱちになったかそれともよっぽど強い手札だったのか……いや、この場合は強い手札と考えるべきか。さっきまで堅実に細かく賭けていたのに、急にデカい勝負をするようになったってことは、それだけ確実に勝てると踏んでいるということ。
ならば、勝負する必要はない。
「ドロ」
ドロップ。そう言おうとした私を牽制するように、亡霊は小バカにするような笑みを浮かべていた。
「おいおい?俺様を散々煽っておいて、テメェはさっさと勝負を降りるのか?」
「なんとでも言え。ドロップだ」
シリウスもドロップのようだ。どうやら、手札がよろしくなかったらしい。その様子を確認して、亡霊は嗤った。
「ギャハハハ!ありがとよ。お陰様で──ブタで俺様の総取りだ」
「「なっ!?」」
亡霊の手札は、ブタ。役無しである。ど、どういうことだ!?勝てるから勝負したんじゃないのか!?
「おい奇天烈葦毛。さっさとデッキを切れ。次の勝負に行くぞ」
「あいあーい。ゴルシちゃん使いが荒いわね~あなた」
チッ、私としたことが……日和ったか。まぁいい。次は勝つ。
私の手札は──ストレート。そこそこだな。シリウスの方は──ストレートフラッシュ。
「さて、私はコールだ。テメェはどうする?」
シリウスの宣言。それに対しヤツは。
「
「……なに?」
「
ヤツは、またもチップを全賭けしてきた。一体、どういう意図がある?
(……とにかく、シリウスの手が分かっている以上私が勝負をする必要はない)
「私はドロップだ」
「ハッ、チキンが。ま?
「ッ!?」
亡霊の言葉。弾かれるように反応する。ど、どういうことだ?まさかアイツ!
(最初っから私達のイカサマを見抜いていたのか!?)
しかし亡霊は嗤うだけだ。それを追及したり、なにかをするつもりはないらしい。
「それで?テメェはどうする?」
「……レイズだ」
「そうかい。となると……俺様のコインが足りねぇな。ならしょうがねぇ」
そういうやいなや。亡霊は1つ提案をしてきた。
「俺様が負けたら、1日テメェらに絶対服従ってのはどうだ?」
「……ほう?」
よっぽどの自信があるのか、亡霊は笑いながら告げた。だが、こっちの手札はストレートフラッシュ。ヤツの手札は未知数にしても、これを超える役はまず不可能!
「シリウスはどうすんだ?」
「……良いだろう。乗ってやるよその勝負」
「なら成立だ。俺様は──手札を全て交換する」
ここにきて手札を全替えだと!?勝てると踏んだから勝負したんじゃないのか!?クソ、良く分からん。だが……!
(中々スリルのあることしてくれるじゃねぇか……!)
この勝負の行く末を見守る。亡霊はゴルシから新しいカードを貰い、それを見て──さらに深い笑みを浮かべた。
「「コール」」
お互いのコール宣言。そして、手札を公開する。シリウスはやはりストレートフラッシュ。対して亡霊は……は?
「ツキが来たなぁ?ロイヤルストレートフラッシュ。俺様の勝ちだ」
ヤツの手札はロイヤルストレートフラッシュだと!?どうなってやがる!?
「ゴルシ!」
「し、知らねーって!?」
「おいおいどうした?配ったディーラーに罪はねぇだろ」
小バカにした笑みを浮かべる亡霊。ありえねぇ、あり得るはずがねぇ!
(ロイヤルストレートフラッシュが揃う確率はどんなもんだと思っていやがる!?普通揃うわけねぇだろ!?)
「さて、俺様は用事があるからこの辺で帰るぞ」
「ッ!待ちやがれ亡霊!まだ勝負はッ!」
「黙れ。もう種は割れてるし、そんな相手と勝負してもつまらん。泳がせておいたが、もう飽きたしな」
あぁそれと。そう前置きして、亡霊は。
「
言いながらヤツは制服の袖から何かを取り出して。こちらに投げてきてッ!?
「これ、アタシらが使ってたトランプじゃねーか!?いつの間に!?」
まさか、アイツもイカサマを!?いつの間に!?そんな素振りすら見せなかっただろ!?そう考えて扉を見るが、すでに去った後だった。
「凄い凄いエっちゃん!みんな全然気づいていなかったね!」
「あたりめーだ。俺様をその辺の三流と一緒にすんじゃねぇ」
エっちゃんのイカサマはそれはそれはもう凄かった!袖にカードを隠して、ずっと勝負の機会を窺っていたんだから!普通はバレそうなもんなのに、誰一人として気づかなかったんだもん!凄い手際の良さだった!それにしても、エっちゃんやたら手馴れていたけど。
「エっちゃんそういう経験でもあるの?凄い手馴れてたけど」
「俺様の親父だ。昔教えてもらったもんだよ」
「あ~、そゆこと」
にしても楽しかったな~!またお呼ばれしないかな!
エっちゃんの秘密①
実は、ギャンブルが滅茶苦茶強い