そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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後編です。


スピカのみんなは暴きたい 後編

 晩ご飯を食べ終わった後、ファントムさんを除いたメンバーはトレーナーさんに集められました。一体なんでしょうか……といっても、大体想像はつきますけど……。

 

 

「さて……。なんで俺がお前らを呼んだか、分かるな?」

 

 

「い、いや~。わ、分からないかな~?」

 

 

「アタシはなんもしてないぜ」

 

 

「よくもまぁぬけぬけとそんなことがいえますわねあなた!?」

 

 

「「うっ……」」

 

 

 私とスズカさんはトレーナーさんから気まずそうに目をそらします。トレーナーさん、やっぱり怒ってます!

 

 

「朝は珍しく早く起きてるなと思ったら……。何を企ててたんだ?」

 

 

 私達は口をつぐみます。多分、心は一緒です。悪いと思っているから無言になっているんだと思います。そんな私達の様子を見て、トレーナーさんは溜息を一つ吐きました。

 

 

「大体想像はつく。ファントムの素顔を見たいとか、そんなんだろ?」

 

 

「「「ッ!」」」

 

 

 ず、図星です!

 

 

「なぁ。なんでそんなにファントムの素顔を見たいんだ?」

 

 

「だってよぉ、気になるだろ?見るなって言われたら見たくなるってのが性だと思うぜ?」

 

 

「ゴールドシップ。それは、本人が嫌がってでもやりたいことか?」

 

 

「それは……ちげぇけどよ……」

 

 

 ゴールドシップさんも今回のことは悪いと思っているのか、強くは言いませんでした。そんな時です。テイオーさんがトレーナーさんに反論しました。

 

 

「だって!気になるじゃんか!なんでファントムが素顔を隠してるのとかさ!」

 

 

「……テイオー。ゴールドシップにも言ったが」

 

 

「そりゃ、悪いとは思ってる!でも、ボク達はファントムのことを何も知らないんだ!ファントムのことを少しでも知りたい!同じチームの仲間なんだから!それは、本当にダメなことなの!?」

 

 

「「「テイオー(さん)……」」」

 

 

 テイオーさんの言葉に、トレーナーさんも思うところがあるのでしょう。少し、考え込むようなそぶりを見せています。

 長いようで短い沈黙。破ったのはトレーナーさんでした。

 

 

「……お前達の言いたいことも分かる。アイツもスピカの仲間だ、そんなアイツのことを少しでも知りたいっていうお前達の気持ちは分かる」

 

 

「じゃあ!」

 

 

「だがな。そんな単純なもんじゃねぇんだ。アイツの素顔は、トレーナーである俺でさえも見せてもらったことはない。というよりも、アイツの素顔を知っているのは理事長と理事長秘書だけなんだ」

 

 

 え!?そ、そんなの初耳です!?

 

 

「トレーナーも見せてもらったことねぇのかよ!?」

 

 

「じゃ、じゃあ!理事長やたづなさんに聞けば!」

 

 

「俺も何度かお願いしたことがある。アイツのトレーナーとして、アイツについて教えてもらいたいと直談判したことがある」

 

 

「……結果は、どうだったんですか?」

 

 

 トレーナーさんは首を横に振ります。

 

 

「教えてもらえなかった。アイツに関することは全て秘匿すると、そう突っぱねられた」

 

 

「そ、そんな……」

 

 

 担当トレーナーなのに教えてもらえないなんて、理事長さん達は何を見たんでしょうか?ファントムさんの素顔に……。

 

 

「疑問。理事長と、たづなさんはなぜそこまで隠すのでしょうか?」

 

 

「分からねぇ。だが、理事長達からすればそれだけ隠したいってことなんだろう」

 

 

 私達の間に、重い沈黙が流れます。なんで、そこまでして隠すんでしょうか……?

 

 

「話を戻すぞ。お前達はそんなアイツの素顔を暴こうとしたんだ。理由については一旦置いておくにしても、褒められた行動じゃない。それは分かってるな?」

 

 

「「「……ごめんなさい」」」

 

 

「謝るのは俺じゃない。ファントムに謝ってこい。今ならアイツも部屋にいるだろう」

 

 

 そういってトレーナーさんはファントムさんの部屋に行くように促します。私も、決意を固めてファントムさんの部屋に行くことにしました。

 そうしてたどり着いたファントムさんの部屋の前。スズカさんが代表してドアをノックします。き、緊張

します……!

 

 

「ファントム。今、ちょっといいかしら?」

 

 

「……どうぞ」

 

 

 ファントムさんの部屋の中に入ります。もちろん、みなさん正座でファントムさんに向かい合うように座りました。

 

 

「……待ってた」

 

 

「ッ!」

 

 

「や、やっぱりバレてたのかな?」

 

 

「あれだけ露骨にやってたんですもの。バレてもおかしくないですわ……」

 

 

 私達は小声でそう会話をします。ただ、ファントムさんは後ろのバッグを漁っています。ど、どうしたんでしょうか?

 

 

「ま、まさか……ッ!ヤキ入れ!?」

 

 

「ファントム先輩がそんなことするわけないでしょ!」

 

 

「分かりません。それだけ怒り狂っている可能性があります」

 

 

「不安になるようなこと言わないでよブルボン!」

 

 

「……何の話?」

 

 

 ファントムさんがバックを私達の前に置きました。そして、バックをひっくり返します。中から出てきたのは……

 

 

「と、トランプ?」

 

 

「将棋盤やリバーシもあるわ」

 

 

「あ、ゲーム機もある」

 

 

「ど、どうしたんですの?ファントムさん」

 

 

 マックイーンさんがそう尋ねると、どこか楽しそうな様子でファントムさんが答えました。

 

 

「……決まってる。みんなと遊ぶために、いろいろと持ってきた。みんなも、そのために来たんでしょ?」

 

 

「「「へ?」」」

 

 

「……ごまかそうとしても無駄。朝から私の部屋にやってきたのも、練習中にちょっかいかけてきたのも、私と遊びたかったんでしょ?でも、練習中はさすがに遊ぶわけにはいかなかったから、こうやって夜に遊ぼうと思っていろいろと準備した」

 

 

 ふぁ、ファントムさんの言葉に私達は何も言えずにいました。も、もしかしてファントムさん、私達が遊んできたように見えてたんですか!?

 

 

「……いいや、きっとみんな遊びたかったはず。だからこうやって準備した。……じゃあみんな、何して遊ぶ?」

 

 

 も、もういたたまれなくなりました!せめて私だけでも誠意を込めて謝ります!

 

 

「「「ごめんなさい!」」」

 

 

 私達の謝罪の声がハモりました。考えること、一緒だったみたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとまず困惑?しているファントムさんのために説明することにしました。

 

 

「……つまり、私のお面を外そうと、顔を見ようとしてたってこと?」

 

 

「そ、そうなりますわね」

 

 

「……」

 

 

 ファントムさん、黙り込んじゃいました。やっぱり、怒ってるんでしょうか?でも、次にファントムさんが放った言葉は、意外なものでした。

 

 

「……そんなに気になるなら、外してみる?このお面」

 

 

「「「!?」」」

 

 

 え!?そんな簡単にいいんですか!?

 

 

「いいの!?ファントム!」

 

 

「……いいよ。そんなに気になるなら、このお面、外してみれば?」

 

 

「で、でも誰が……」

 

 

「わ、私が外してもいいですか!?」

 

 

「スぺちゃん!?」

 

 

 だって気になりますし!

 

 

「……別にいいよ。誰でも」

 

 

 私はファントムさんの目の前に立ってお面に手をかけます。なんかちょっと違和感ありますけど、些細なことです。

 

 

「で、では!失礼します……ッ!」

 

 

 き、緊張します!期末テストを返却された時以来のドキドキです……ッ!誰かののどを鳴らす音も聞こえます。ゆっくりと、ゆっくりとファントムさんのお面を外します……ッ!

 お面の下から出てきたのは……ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お面の下には、またお面。騙されたね」

 

 

 鬼のお面が出てきました……って、えぇ!?

 

 

「なんだよそれ!緊張し損じゃんか!」

 

 

「ウソでしょ……」

 

 

「俺達の緊張返してくださいよ!」

 

 

「そうですよファントム先輩!」

 

 

「クッソー!姉御に一本取られた!」

 

 

「ステータス『緊張』から『驚愕』へ。お見事ですファントムさん」

 

 

「な、なんですのこれは……」

 

 

「……私は、お面を外していいとは言ったけど、素顔を見せるとは言ってないよ」

 

 

 確かにそうですけど!でも、緊張していた空気が一変して笑いに包まれました。

 

 

「もー!ほんとになんなのさー!こうなったらヤケだ!ボクおかし持ってくるね!」

 

 

「じゃあアタシは飲み物持ってくるわ!こうなったら、ファントム先輩の部屋で遊び明かしましょう!」

 

 

「そうだそうだ!なんか深く考え込んでたのがバカらしくなってきたぜ!」

 

 

「なぁなぁ姉御、とりあえず将棋で遊ぼうぜ」

 

 

「……いいよ」

 

 

「よっしゃあ!ゴルシちゃんにかかればチェックメイトなんて余裕だぜ!」

 

 

「それはチェスですわ!?」

 

 

「ファントムさん。ゲーム機に触ったら壊れました」

 

 

「……整備不良じゃない?……買ったばかりだからそれはない?なら、初期不良かもしれない」

 

 

 さっきの重苦しい空気から一変して、楽しい雰囲気が流れています。

 

 

「……確かにファントムの素顔は気になるけど、これでいいのかもしれないわね」

 

 

「スズカさん……」

 

 

「確かに私達はファントムのことを何も知らないわ。でも、何も知らなくてもファントムは私達の大切な仲間。それで、いいのかもしれないわね」

 

 

「……そうですね!それに、いつか話してくれる日が来ますよ!きっと!」

 

 

「そうね。その時を、気長に待ちましょうか」

 

 

「私達も混ぜてくださ~い!」

 

 

 その後は、ファントムさんの部屋で夜遅くまで遊びました!すごく楽しかったです!みんなでトランプをしたり、誰が一番将棋で強いかを競ったり、とにかくいろんなことをして疲れ果てて寝るまで遊びました!

 翌日は、トレーナーさんが呆れたような表情で起こしに来ましたけど、お咎めなしでした。ファントムさんはまたトレーニングに行ったのか朝起きた時にはいませんでしたけど……。私達と同じくらい遊んでたのに凄い体力です……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みんなを起こさないように私は抜け出します。そして、まだ日が完全に登り切っていない早朝、トレーニングをします。合宿ではこの時間でもトレーニングできるのが強みですね。

 それにしても遊びました。凄く楽しい時間でしたよ。そうは思いませんか?私。

 

 

”知るか。食後のトレーニングを急遽休みたいと言い出したかと思えば……塵共と遊ぶだと?ふざけやがって”

 

 

「……でも、代わりにこっちのトレーニングの時間を増やした。それで手打ちにしたはずだよ」

 

 

”……まぁいい。俺様の目的さえ忘れてさえなければな”

 

 

「……ちゃんと覚えてるよ。だからこそ、スぺちゃん達に成長を促してるわけなんだから」

 

 

”俺様は確かに待つといった。だが、気が長い方じゃねぇってことを忘れんじゃねぇぞ”

 

 

 分かってますよ。ちゃんとね。




ウッキウキ気分でブルーロックのアニメ待機してたら今週の放送は休みと知って速攻寝ました。ついでに言えば仮面ライダーも放送ないと知ってさらにテンション落ちました。

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