なんやかんやあって合宿も最終日ですよ最終日。私はブルボンのトレーニングを受け持っています。私のトレーニングは午後に回す予定です。
「……頑張れブルボン。根性だよ」
「は、はい……ッ!」
古典的ですがタイヤ引きです。タイヤ引きといっても、めちゃくちゃでかいですけど。どこにこんなタイヤ売ってるんでしょうね?特注品なんでしょうか?
そんなタイヤを引かせつつ、他のメンバーの様子を見ます。他のメンバーは各々好きなトレーニングメニューを組んでやっているようです。スカーレットとウオッカは……お互いに筋トレしてますね。煽り合いながら。仲が良いのか悪いのか。喧嘩するほど仲が良いといいますし、多分仲良しでしょう。良きことです。
「お前にはぜってぇ負けねぇ!」
「こっちのセリフよ!」
次にマックイーンとスズカ。こっちはスタミナ強化のためか遠泳をしていますね。マックイーンの目標は天皇賞制覇でしたし、スタミナ強化は妥当でしょう。スズカも、今以上にスタミナを強化すればいずれは長距離を走れるようになるかもしれませんし、楽しみですね。
”あの塵はいいな。喰いがいがある”
「……そうだね。スズカは、丁度いい感じかな?」
着々とメンバーがそろいつつありますね。ルドルフにスズカ……2人と走る時が楽しみです。ですがもっともっと増やさなければ。
”おい。ぱっつん緑と走らせろ”
「……それは、模擬レース的な意味で?それとも、本番のレースで?」
”本番のレースに決まってんだろうが。どのレースに出走するか、決めてあんだろ?”
「……ふむ」
スズカの出走するレースはトレーナーから聞いてますからね。それにスズカは海外遠征をするっぽいですし、今のうちに一緒に走っておくのが得策かもしれません。となると出走するレースですが……。
”言っとくが、G1に出走させろ。必ずだ”
「……理由は?」
”ぱっつん緑と走っても、他が塵だったら張り合いがねぇからだよ。同じ塵でも、まともな奴と走らせろ”
「……分かった。考えとく」
大体決まってはいますので後はトレーナーに話すだけですが。さてさて。他の子はどうなってるかなっと。
スぺちゃんとテイオーはイメージトレーニング?をしているのか砂浜で座禅を組んでいますね。テイオーは……順調そうですがスぺちゃんはあまり芳しくないようです。唸り声をあげています。
「黄金式……黄金式……っ。むむむ~っ、難しいです~」
「大丈夫?スぺちゃん。ファントムの言う通りさ、あくまで
「それはそうですけど……。でも、もうちょっと頑張ってみます!」
「そう?じゃあもう少し一緒に頑張ろうか!」
「はい!」
う~ん青春ですね。知りませんけど。多分青春です。私がそう決めました。
ブルボンは調子よくタイヤを引いています。良い感じですね。さて後はゴルシですが……。
「らっしゃーせー!今ならアイスが安いよー!」
海の家で売り子してますね。いつも通りです。
”いつも通りで済ませていいのかあれは?”
「……良いんじゃない?絶対トレーニングじゃないけど、ゴルシはやる時はやる子だから」
”よかねぇだろ絶対”
ツッコむだけ野暮ってもんですよ。ゴルシも夏合宿中は一部を除いて真面目にトレーニングしてましたし、ガス抜きも必要でしょうから。
しかしこのタイヤ引き、欠点がありますね。私がタイヤの上でブルボンを監視するという都合上私がトレーニングできません。次からは別の誰かにやってもらいましょう。おっと。もう合宿最終日でした。ただこのタイヤトレーニングは活かせるかもしれないので学園に戻ってからも要検討ですね。
「よーし!そろそろ昼飯だ!お前ら集まれー!」
もうお昼ですか。では我々も引き上げますか。
「……ブルボン。お昼だから引き上げるよ」
「了解しました。……ステータス『空腹』を確認。直ちに補給することを推奨します」
「……オッケー。じゃあ早く行こうか」
ブルボンもお腹空いてるみたいですし早くいきましょう。
ご飯も食べ終わって休憩も取って。早速練習に取り掛かりますよ。さぁ頑張るぞー。
「んじゃ、昼飯も食い終わったことだし学園に引き上げるぞー」
「……What's?」
「当たり前だろ。夏合宿は午前中までだぞ?」
「……」
そういえばそんなこと言ってましたね。ふっつうに忘れてました。でもそれだと困ります。私今日なんの練習もできてないじゃないですか。
”また走って帰ればいいだろ”
「……名案。そうしよう」
「なにが名案かは知らんが、帰りの車は全員乗れるサイズのを借りてきた。だから走って帰るだなんてバカなこと言いだすなよ?」
クソが!
……いや、車のドア側に陣取って抜け出せばあるいは……!
「そうだファントム。お前は一番後ろの真ん中な」
「……Why?」
「なんで英語なんですかファントム先輩……」
「当たり前だろ。お前のことだからドア側に陣取って抜け出そうなんて考えてるだろうからな」
あらやだ私の企み全部バレてるじゃないですか。余計な知恵を働かせるんじゃありませんよ全く。
駄々をこねても変わることはないでしょう。大人しく荷物を持ってきて車に詰め込みます。全員分の荷物を詰め入れて、もう少ししたら出発です。
「……」
「ふぁ、ファントムが目に見えてしょんぼりしてるわ」
「ファントム、午前中はブルボンに付きっきりで自分の練習できなかったからねー」
「でも、仕方ないんじゃありませんか?ファントムさんを扉側に座らせたら抜け出すでしょうし」
「ステータス『申し訳ない』を感知。すいませんでした、ファントムさん。私のために」
「……ブルボンのせいじゃないよ。タイヤの上でもできるトレーニングを考案できなかった、私のせい」
「あのタイヤの上でできるトレーニングないと思うっすよファントム先輩……」
「相変わらずトレーニングの鬼ね、ファントム先輩」
「す、凄いですね。ストイックです」
みんなからの慰め?の言葉を受けながら私は車に座ります……が。ここで名案を思い付きました。ですが、まだ大人しくしておきます。タイミングは、全員が乗り込んだ瞬間です。
「よーし全員乗ったな?じゃあ出発……」
「……ゴメントレーナー。お手洗いに行きたくなった」
「何ぃ?仕方ねぇな。早く行ってこい」
私は隣に座っているブルボンに断って車から降ります。そして、入念にストレッチを始めます。……フッフッフ。
「あ、あの。ファントムさん?なぜストレッチをしていらっしゃるのですか?」
「……」
「なんで無言なのさファントム。早くトイレ行ってきなよ」
「……大丈夫。ちゃんと行くよテイオー。もっとも」
ここのトイレじゃありませんけどね。私は思いっきり走り出します。逃げるんだよぉ!
「あー!?ファントムさんが逃げ出しだべ!?」
「なんだとォ!?クソ、誰か連れ戻……いやアイツはえぇな!?」
へへーんだ!騙されましたねバーカバーカ!だーれが大人しく車になんか乗りますか!私は走って帰りますよ!
「クソォ!アイツに騙された!早く追いかける……おい待てスズカ。なんでお前も車から出ようとしている?」
「トレーナーさん。私も走って帰っていいですか?」
「ダメに決まってんだろ!?大人しく車に乗っとけ!」
「……」
「そんな頬を膨らませて抗議してもダメだ!畜生!こうしてる間にもファントムの奴どんどん先に行ってやがる!」
「いやマジではえぇなファントム先輩!?どんだけ乗るのが嫌だったんだよ!?」
「ちょっと!?そんなことよりもゴルシを抑えるのを手伝ってよウオッカ!さっきからこっちも脱走しようとしてるのよ!?」
「やっぱ姉御面白れぇな!アタシも混ぜてくれー!」
「周りの状態『賑やか』を検知。成程、これも合宿の醍醐味ですか」
「絶対違うから!?ブルボンもゴルシとスズカを抑えるの手伝って!」
後ろからそんな会話が聞こえますが関係ありません!私は自由です!さぁ帰りますよもう一人の私!
”よくやった俺様!よっしゃあ!このまま逃げ切るぞ!”
「……もち!」
そのまま私は走って学園まで戻りました。戻った後?こっぴどく叱られましたよえぇ。ですが関係ありません。練習にはなりましたから。
合宿から帰ってきて寮の自室。片付けが終わった後いつものトレーニングをします。ご飯も食べ終わりましたし、後はお風呂に入るだけですからね。
それにしても、この夏合宿はみんな頑張ってましたね。みんな成長できたはずです。スぺちゃんも次のステップに進むために頑張っていますし、スズカも熟し始めてきました。計画も、滞りなく進んでいます。喜ばしいことですね。
「……98、……99、……100。これで3セット目だね」
”残り2セットだ。ペース乱すんじゃねぇぞ”
「……うん」
特に息を乱すことなく私は筋トレを続けます。ここから秋のG1戦線が始まります。スぺちゃんはクラシック最後のレース、菊花賞が控えていますし、スズカは秋の天皇賞が控えています。2人ともステップレースを使うでしょうから、次はそのレースですね。そこで合宿の成果を見るとしましょう。
ここで気になるのは他の子です。他の子も、勿論この夏で一皮むけているでしょうから。一筋縄ではいかないはずです。さてさて、どれだけ強くなっているか……楽しみですね。
あぁでも。その前に秋のファン大感謝祭がありましたか。とはいっても、私はその日学園にいない予定ですが。私がいるとファンの人怖がらせちゃいますからね。悲しいですけど、仕方のないことです。それにしてもなんで怖がるんでしょうか?……まぁ100%見た目ですね。間違いありません。
「……やっぱり、ファンシーなお面をつけるのが正解でしょうか?」
”それやっても効果なかったろうが”
「……そうでした」
こんなこと考えても時間の無駄ですね。トレーニングに割きましょうそうしましょう。
ファントムは 逃げ出した ! ▼うまく 逃げ切れた ! ▼