そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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ファン感謝祭の予定を決める3人


亡霊少女と親

 夏合宿も終わって新学期も始まりましたよっと。こうやってタキオン達と旧理科準備室でまったり過ごすのも随分久しぶりのように感じますね。

 

 

「……フゥン。またか」

 

 

「……どうしたの?タキオン」

 

 

 なんか携帯の画面を見ながら溜息ついてますけど。なにかあったんですかね?架空請求のメールでも来ました?

 

 

「何。ちゃんとしたご飯は食べてるかだの、変な実験ばっかやっていないかだの。親からの定期連絡さ」

 

 

「……あぁ。そういう」

 

 

「全く。そんな年でもないというのに。心配性な親だよ」

 

 

「なら、普段の生活態度をどうにかしてください」

 

 

 カフェさんの言う通りですよ。あなた絶対1人じゃ生きていけないでしょ。生活能力壊滅的な癖に。

 

 

「ぐっ。ち、ちなみになんだが2人はどうなんだい?親とは仲が良いのかい?」

 

 

 ふむ。親ですか。……秋川理事長かたづなさんが該当するんですかね?私の場合。一応身元引受人ですし。なら仲は良好と言えるのですが。

 

 

「私は、普通ですよ。一般の家庭と、何ら変わりはないかと」

 

 

「……私も。秋川理事長とか、たづなさんとは仲が良いよ。それなりに連絡入れてくれるし」

 

 

 私の答えにカフェさんは目を丸くしていますね。タキオンは……逆に目を細めています。なにかを疑っているのでしょうか?とは言っても、言ってることは事実ですし。

 

 

「……ファントム君。1つ聞きたいのだが、君は秋川理事長とたづなさんが親なのかい?」

 

 

「……世間一般的な親、というよりは身元引受人的な方だけど」

 

 

「まぁさすがにそうか」

 

 

「生んでくれた、親とかは。いらっしゃらないんですか?」

 

 

 生んでくれた親、ですか。う~ん……。

 

 

「……正直なところ、私は小さい頃の記憶がない。だから、生んでくれた親もいるとは思うけど、覚えていない」

 

 

「……え?」

 

 

 カフェさんはさらに目を丸くしましたね。タキオンは……注意深く私を観察しています。そんなに気になりますかね?そんな楽しい話でもないと思いますけど。質問されたら答えられる範囲で答えはしますが。

 

 

「なら、君にとってあの2人は親戚なのかい?」

 

 

「……確か、DNA的な繋がりは一切なかったはず。親戚の人達は、誰も私を引き取らなかったらしいから」

 

 

 この辺はもう一人の私に教えてもらいました。誰も私を引き取らなかったらしいです。理由は想像つきますけど。

 

 

「親はどうしているのか、知ってるのかい?」

 

 

「……さぁ?そもそも、そのことを思い出そうとすると頭が痛むから。考えたことない」

 

 

 現に今も頭が痛くなってきましたし。勘弁してくれませんかねこの頭の痛み。

 

 

「……知りたいとは、思わないのかい?」

 

 

「……別に。頭が痛むってことは、ろくな記憶じゃないだろうし。嫌な記憶は、忘れるに限るから」

 

 

 あ、これはもう一人の私の言葉です。嫌な記憶は忘れるに限る。私はそうやって生きてきたらしい?ですから。小さい頃の記憶ほとんど覚えてないんで知りませんけど。

 

 

「なら、もう一人のファントム君はいつ頃からの付き合いなんだい?」

 

 

「……少なくとも、私が覚えている中で一番古い記憶にはいるよ。トレセン学園に入学する何年か前の記憶だけど。小さい頃から一緒だったかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

 

 

「昔のことを覚えていないことに、何か感じたりはしないかい?昔のことを、思い出したいとは思わないかい?」

 

 

 やけに踏み込んできますねタキオン。もう一人の私の圧が増してきてますよ。カフェさんしか気づきませんけど。

 

 

「……特には。今が楽しいから、思い出そうとは思わないかな」

 

 

「……成程。いや悪かったね、思い出したくもないだろうにあれこれ聞いてしまって」

 

 

「……別に。さっきも言ったように、私は覚えてないし。嫌な記憶は、忘れるに限るから」

 

 

 言いながら私は紅茶に手をつけます。やー……美味しいですねぇ。

 

 

「ファントムさん。そちらを飲み終わったら、コーヒーもどうぞ。淹れ立てですよ」

 

 

「……いいね。ホットコーヒーも良き」

 

 

「ぐぬぬ。さりげなくファントム君を紅茶派にしようと考えていたのに……ッ!」

 

 

「……させません。ファントムさんはコーヒー派になってもらうんです」

 

 

 美味けりゃどっちでもいい派はダメですか?……あ、ダメですかそうですか。白黒つけた方がいいんですかねやっぱり。

 

 

「そうだ。そういえばもう少しでファン大感謝祭の日だが……2人はどうするつもりだい?」

 

 

「私は、一応お店を見て回る予定ですが……。そんなに、多くは回らないと思います」

 

 

「……トレーニング」

 

 

 私の答えにタキオンが呆れたような目を向けてますね。

 

 

「せっかくのファン大感謝祭なのに、トレーニングかい?真面目だねぇ君は」

 

 

「……そう言われても、毎年そうしてるし」

 

 

 後、なーんか胸のあたりがチクチクするんですよね。行かなくていい……というよりは、行かない方がいいと警告してるみたいに。何かあったんですかね?何かあった覚えはありませんけど。

 

 

「まぁ過ごし方は自由だ。とやかく言うつもりはないよ」

 

 

「……まぁね。去年も、何も言われなかったし」

 

 

「ただあれだ。私も何かするつもりはないからねぇ。ここにきてくれても構わないよ」

 

 

「……マ?」

 

 

「マジさ」

 

 

 タキオンから後光が見えますよ。なんて優しいんでしょう。拝んどきますか。

 

 

「なら、私もここに来ましょう。いつもと変わらないメンバーで、いつもと変わらない日常。そう過ごすのも、良いかもしれません」

 

 

 か、カフェさん……ッ!なんて良い人達なんでしょう。涙が出そうです。

 

 

「……なら、当日はここに来る。楽しみ」

 

 

「カフェの言う通り、いつもと変わらないがそれもいいだろう。その方が私達らしいかもしれないしねぇ」

 

 

「……フフッ」

 

 

 本当に、良いお友達です。私にはもったいないくらいの。

 ホットコーヒーも飲み終わったので、私はお暇するとしましょう。

 

 

「……それじゃあ、私はこの辺で。スピカに行ってくるよ」

 

 

「もうそんな時間か。また明日だねファントム君」

 

 

「ファントムさん。また、明日」

 

 

 そう言って別れました。扉を開けて外に出ます。

 それにしても、本当に良い友達です。最高の気分で練習に行け……ッ!

 

 

「ウッ……ッ!グ、グゥ……ッ!」

 

 

 あ、頭が……ッ!さっきまで、ズキズキ痛んでいるだけでしたけどッ、ここにきて、一気に痛みが……ッ!

 

 

「ギ、ィ……ッ!い、痛……い……ッ!」

 

 

”おい、しっかりしろ!深呼吸だ!深く息を吸って吐け!気持ちを落ち着かせろ!”

 

 

「う……ッ、う、ん……ッ!ス、スゥ……ハァ……ッ。スゥ……、ハァ……ッ」

 

 

 本当に苛つきますね……ッ!過去のことを思い出そうとしたら、いつもこうです……!でも、タキオンさん達は何も悪くありません。ただ、気になったから聞いただけ。それだけの事。私だって同じことをします。

 うぅ……、頭の痛みが、治まりませんッ。ど、どうしましょうか……ッ!

 

 

「大丈夫ですか!?ファントムさん!」

 

 

 誰かの声が、聞こえます。だれ、でしょうか?

 

 

「しっかりしてくださいファントムさん!今寮にお連れいたしますね!」

 

 

 みどりの、ぼうし。たづな……さん?あ、むりです。いしきが……もち……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……チッ。やっぱりこうなったか。また、封じ込めないとダメか。

 アイツの意識がなくなったことで、俺様は表に出る。俺様はアイツの意識がない状態でもこの身体を動かすことができる。ただ、あくまで身体の所有権みたいなものはアイツにあるからアイツの意識があるうちは乗っ取るみたいなことはできねぇ。今はな。

 

 

「大丈夫ですか!?ファントムさん!ファントムさん!」

 

 

 ……その前に、起き上がるか。この声がうるせぇし。

 

 

「……」

 

 

「あ、良かった……ッ!大丈夫だったんですね、ファントムさん」

 

 

「……うん」

 

 

 俺様は、とりあえず返事をする。いつも通り、アイツのふりをしながら。

 

 

「心配しましたよ……。たまたま通りかかったら、ファントムさんが頭を抱えてうずくまっていたので……ッ!」

 

 

「心配かけた」

 

 

「何があったんですか?ファントムさん」

 

 

「いつもの発作。頭痛」

 

 

「そうですか……。とにかく、今日のところはもう寮に戻って休みましょう。こんな状態で練習は、ダメですからね?」

 

 

 正直、聞いてやる義理はねぇが……。今日のところは練習は無理だろう。コイツの記憶をまた封じ込めなきゃいかんしな。時間がねぇ。代わりに明日の練習を倍にすりゃあいい話だ。

 とりあえず、コイツと別れて俺様は寮へと歩いていく。あぁでも、練習休みの連絡も入れねぇといけねぇのか。チッ、めんどくせぇ。便利になったとはいえ、なんで俺様がそんなことを……ッ!

 ……キレたところでどうしようもねぇ。適当に連絡だけ入れて、とっとと帰ることにするか。

 

 

「体調不良により練習休みます……っと。後は……こいつの記憶処理か」

 

 

 まためんどくせぇことになったもんだ。これも全部あのマッド野郎と霊障女のせいだ。後霊障女のつき纏い。直接関係はねぇけど、何となく苛つくからアイツも道連れだ。

 コイツ自身こうなったのは初めてじゃねぇ。昔のことを思い出そうとする度にこうなるし、記憶処理をすんのにも慣れたもんだ。嫌なこと、思い出さなくても良いことなんかは俺様が全部思い出さないように記憶の奥底に封印するようにしている。それは、俺様だけにできることだ。嫌な記憶は忘れるに限るからな。アイツにとっても、俺様にとっても。

 コイツにはまだまだ頑張ってもらわねぇと困る。俺様の目的のために、来るべき時のためにコイツに倒れてもらっちゃあ困る。余計なことを思い出さないように、厳重に封印する必要があるだろう。そもそも、コイツがいねぇと俺様はここに留まることができん。また向こうで適性のある塵を探すことになる。そんなことは絶対にゴメンだ。

 しかし、大体あの塵共の考えていることは予想がつく。大方、俺様のことを調べようとしてるんだろう。

 

 

「まぁ……調べたところで俺様には何の問題にもならん」

 

 

 真実にたどり着いたところで、俺様の計画には何の支障もねぇ。止めようがねぇんだからな。

 

 

「その前に……適当に飯でも作っとくか。起きた時に腹が減ってんのもアレだしな」

 

 

 頭を掻き……そういやフード被ってたわ俺様。めんどくせぇ。パーカーのポケットに手を突っ込みながら寮へと戻る。これからのことを考えながら。




実は身体の操作権があるもう一人のファントム。ファントムの意識がない時やファントムが操作権のようなものを譲渡したらもう一人のファントムの意識が表面化する感じです。その間はファントムの方が浮遊霊よろしく浮いてます。
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