そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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病み上がり?でトレーニングする主人公。


亡霊少女とサイボーグ

 気がついたら朝が来てました、ファントムです。カフェさん達と飲んだ後の記憶がないんですけど何があったんですかね?……酒飲んだ人みたいになってるけどお茶会ですよえぇ。会話の内容もほとんど覚えていません。唯一憶えているのは感謝祭の日は理科準備室で過ごそうみたいなことだけですね。何話してましたっけ?まぁ覚えてないということは他愛もない会話だということでしょう。

 起きたらなんかご飯が作られてましたし。初見だったら不気味なことこの上ないですね。何度か同じようなことがあったので驚きはしませんが。

 そんな私ですが。今はブルボンと一緒にトレーニングを積んでいます。そして、昨日はどうやら練習していなかったようなので練習量は倍です。当たり前ですね。昨日の私何やってんですかね?

 

 

”大分スタミナついてきたなサイボーグ娘も”

 

 

「……そうだね。ブルボンも、大分スタミナがついてきたね」

 

 

「はい。ステータスが上昇していることを確認。日々の努力、それとファントムさんのおかげです」

 

 

 嬉しいこと言ってくれるじゃありませんか。でも、気を緩めないように釘を刺しておきましょう。

 

 

「……だけど、ブルボンの目標である3冠ウマ娘。その最後のレースである菊花賞を走り切るには、まだまだ足りない。もっともっと努力しないとね」

 

 

「無論です。ステータス『向上心』を感知。この調子でミホノブルボン、努力を重ねます」

 

 

 釘は刺しますがそれはそれとして頭を撫でてあげましょう。ブルボンの耳と尻尾が忙しなく動いています。気持ちは分かりますよ。良いですよね頭を撫でる行為。たづなさんも、たまに私の頭を撫でてくれます。身長差的に私が屈まないといけませんけど。でも、撫でられて悪い気はしません。理由は分からないですけど、私は頭を撫でられるのが好きです。している時も、されている時も不思議と心が温かくなります。

 話題が横道に逸れましたが。ブルボンと私はトレーニングを続けます。

 

 

「疑問を提起。よろしいでしょうか?ファントムさん」

 

 

「……うん。いいよ」

 

 

 ブルボンがそう切り出してきました。どうしたんでしょうね?まぁきっと単純な疑問……

 

 

「ファントムさんは、なぜ強さを求めるのですか?」

 

 

 大分深いことを聞いてきましたねこの子。なして?

 

 

「……なんで?」

 

 

「当然の疑問です。ファントムさんは、トゥインクル・シリーズにおいて最強……ドリームトロフィーに移籍しても最強との呼び声が高いウマ娘です。現に、私もそう思っています」

 

 

 そんなこと言われてるんですか私。初耳なんですけど。

 

 

「それ以上強さを求めてどうするおつもりなのかと。疑問を検知しました」

 

 

「……ふむ」

 

 

”答えなんて一つだろうがバカバカしい”

 

 

「……そうだけどね。でも、疑問には答えてあげないと」

 

 

 これの答えはぶっちゃけ簡単なんですけどね。多分、みんなと同じですよ。

 

 

「……誰だって、誰よりも速くなりたい、強くなりたいっていう欲求はあるでしょ?それと同じだよ」

 

 

「成程。確かに、私の中にもそのようなステータスは存在しています」

 

 

「……後は、私が最強であることを証明し続けるためだね」

 

 

「自分こそが最強だと証明し続けるため……ですか」

 

 

”ま、当たり前だな。今も昔も、どんな奴だろうと変わらん”

 

 

 そうですね。何故鍛えるか、と言われたら自分が最強だと、一番だと言わせるためというのが普通ですから。

 

 

「疑問を解消。ありがとうございます」

 

 

「……いいよ。疑問に答えてあげるのも師匠の役目」

 

 

 ではここで師匠からも弟子に質問を飛ばしましょう。気になってたことがあるんですよね。

 

 

「……ところで、ブルボンはトレーナー探しはどう?ブルボンの夢を後押ししてくれるトレーナー、いた?」

 

 

 夏合宿の時にはまだいなかったっぽいですから。良いトレーナーに巡り合えましたかね?

 

 

「そうですね。1人、私の夢を聞いて真面目に検討してくださるトレーナーに会えました」

 

 

「……おぉ。いいね」

 

 

「その方は、ファントムさんと同じように。私の夢を聞いても無理だとはおっしゃらず、むしろ前向きに検討してくださる方でした。なので、その人が受け持っているチームと契約を交わそうかと」

 

 

”ほぉ?ちったぁマシな凡愚もいるようだな”

 

 

 良いですね。素晴らしい巡り合わせです。

 

 

「……なんて名前?」

 

 

「黒沼トレーナーと。そう仰っていました」

 

 

”……誰だ?”

 

 

「……知らない。トレーナーの名前とか、あんまり興味はないし」

 

 

 名前聞いてもピンときませんね。トレーナー辺りから聞いてみますか。

 

 

「ですので、今後私はその人の下で師事を受けようかと思っています。このような時間も取れなくなってくるでしょう。ですが……」

 

 

「……ですが?」

 

 

 なんか言いにくそうにもじもじしてますけど。可愛いですね。どうしたんでしょうか?

 

 

「その、たまにでもいいので……。暇ができた時は、またこうしてトレーニングをつけていただけないでしょうか?」

 

 

 何だそんなことですか。

 

 

「……いいよ。断る理由もないし、ブルボンが来たい時に来ればいい。私は、拒まないよ」

 

 

 そう答えると嬉しそうに耳と尻尾をぶんぶんさせてますね。犬みたいです。ワンコブルボン……アリかもしれませんね。

 

 

「では、そのように。これからもよろしくお願いします。ファントムさん」

 

 

「……うん。黒沼?トレーナーのところに行っても元気でね」

 

 

「はい」

 

 

 話も一段落したところでトレーニングですよトレーニング。倍こなさなきゃいけないからとにかく時間がありません。本当に昨日の私何してくれてんですかね。恨みますよ私。

 

 

”……”

 

 

 なんで無言なんですかもう一人の私。どうかしましたか?

 

 

”……別に。ただ、あんま自分を責めんのも良くねぇってこった。そんな無駄なことしてる暇があったら、トレーニングに思考を割け”

 

 

 まぁそれもそうですね。トレーニングトレーニングっと。

 

 

”……これでいい。これでいいはずだ”

 

 

 なんか良心の呵責に苛まれているようなこと言ってますけど。珍しいですね?今夜はお肉でも食べましょうか。なんかもう一人の私の様子が変ですし。そんな時は好物を食べるに限ります。好きなものを食べて嫌な記憶は忘れましょうそうしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら昨日の私は突然休みの連絡だけ入れてスピカの練習を休んだようで。部室に顔を出したらえらい剣幕で心配されましたよ。

 

 

「体調は大丈夫ですか!?ファントム先輩!」

 

 

「まだ具合悪いなら無理しなくても大丈夫っすよ!」

 

 

「……大丈夫。今朝は調子が良かったから」

 

 

「でも、無理は禁物よ?病み上がりなんだから、トレーニングは控えめにね?」

 

 

「そうだよ!いつもみたいな量は、今日は禁止ね!ファントム!」

 

 

「そうですわね。控えめにいきましょうファントムさん」

 

 

 すいません。もう結構な量の練習してます。まぁ、言わなきゃバレないですし良いですよね。それにしてもこんなに心配されるとは。素直に嬉しいですね。

 そしてスピカのトレーニングですが。まぁ言われた通り軽めの練習しかしませんでしたよ。というか、練習中徹底的に監視されてたので無茶なトレーニングはできませんでしたし。ぐぬぬ。あまりにも信用がない。

 監視されて無茶もできない。あまりにも暇なのでトレーナーに聞いてみますか。黒沼トレーナーなる人物のことを。

 

 

「……そうだ、トレーナー。ちょっといい?」

 

 

「おう。どうした?ファントム」

 

 

「……黒沼トレーナーって、知ってる?」

 

 

 私の言葉にトレーナーと、近くにいたスズカも驚いたような表情を見せました。え?なんですかその反応?もしかして黒沼トレーナーって有名人?

 

 

「あー……そうだなぁ。簡単にいやぁ、鬼教官だ」

 

 

「……へぇ」

 

 

「そうね。凄いスパルタで有名よ。だけど、ちゃんと実績も出してるし良いトレーナーだと思うわ」

 

 

「……そうなんだ」

 

 

 じゃあブルボンとは相性良いかもしれませんね。ちょっとぐらい鬼じゃないとブルボンの夢は叶いそうにありませんし。それにブルボン自身かなりストイックな方ですから。

 

 

「いきなりどうしたんだ?黒沼トレーナーのこと聞き出して。なんかあったのか?」

 

 

「……ブルボンのトレーナー、黒沼トレーナーに決まりそうだって」

 

 

「そう……。でも、案外ブルボンとの相性は悪くなさそうね」

 

 

「……それに、ブルボンの夢は3冠ウマ娘だから。厳しいトレーナーの方がいいと思う」

 

 

「そうだな。3冠ウマ娘ってのは、そう簡単に取れるもんじゃねぇ。特に、ブルボンの適性はスプリンター寄りだ。ファントムの教えと夏合宿でスタミナを重点的に強化してはいるが、それでも厳しいことには違いねぇからな」

 

 

 その通りですね。しかし厳しいことで有名なトレーナーだったんですね。全く知りませんでしたよ。一体どんな人なんでしょうね?やっぱりこう、見た目からして圧が凄いんでしょうか?

 

 

「……見た目はどんな人なの?」

 

 

「見た目だけならまず教職に携わっているようには見えん」

 

 

「否定したいけど……そうね。ちょっと怖そうな見た目をしているわ」

 

 

 急に心配になりましたね。大丈夫でしょうかブルボン。……まぁ仮にもトレーナー、ヤバいことはしないはずです。多分。

 黒沼トレーナーの話を聞いて。後はただ軽めのトレーニングをして。スピカの練習も終わりました。では、晩ご飯を食べた後はまたトレーニングです。監視もないからやり放題です。ひゃっほい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自室でのトレーニングも終わり。お風呂にも入って後は寝るだけです……が。携帯にメッセ来てますね。誰ですか?

 

 

「……珍しい。ルドルフから」

 

 

”何の用だよ”

 

 

「……今、見てみる」

 

 

 さてさて、どんな内容かなっと。……ふむ。ファン感謝祭、是非リギルの喫茶店に来てくれ、というお誘いのメッセですね。

 

 

【君はリギルの喫茶に一度も来たことがないだろう?是非、来てはくれないだろうか?】

 

 

 一度もいったことないんですね私。まぁトレーニングしてた記憶しかないから当たり前ですけど。しかしどうしましょうか?1人で行くのも味気ないですしね。

 

 

「……せっかくだし、タキオン達も一緒に行ってみようか?」

 

 

”いいんじゃねぇの?別に1人で来いとは言われてねぇんだし。言っとくが、感謝祭の日練習できねぇんだから別の日の練習増やせよ?”

 

 

「……うん。分かった」

 

 

 しかし楽しみですね。感謝祭の日でトレーニング以外のことをするなんて。多分初めての経験ですよ。うん、多分そうです。ワクワクドキドキですね。




ブルボンのトレーナーが決まったよ。やったねブルボン。

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