そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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スペちゃんのデビュー戦に向けて


亡霊少女とスピカの練習

 授業も終わって放課後、私はスピカの部室へと向かいます。今日は記念すべきスペちゃんの初トレーニングの日です。加えて、スペちゃんは来週デビュー戦を控えています。ここは先輩として応援してあげるべきでしょう。

 

 

「……楽しみです。そうは思いませんか?私」

 

 

”思わん”

 

 

「……冷たいですね。まぁいいです。今日のお夕飯はなにを食べますか?」

 

 

”肉と野菜。バランス良くだ。絶対に偏らせるな”

 

 

「……分かりました。それではにんじんハンバーグとサラダを数種類で行きましょう」

 

 

 私はもう一人の私と話しながらルンルン気分でスピカの部室へと到着しました。まだ誰もいません。少し早く着きすぎたでしょうか?

 部室で待つこと数分、トレーナーが到着しました。それを皮切りに、他のメンバーも続々と部室へと入ってきます。

 

 

「よーし!じゃあ早速練習場に向かうぞ!」

 

 

 トレーナーの言葉でみんな練習場へと向かいます。さて、トレーナーはどんな練習を考えてきたのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次、スペシャルウィーク。右手青」

 

 

「ふんぐぐぐぐっ」

 

 

 練習場に来てやってること。それはツイスターゲームでした。見てる分には面白いですね。スペちゃんは今必死に青の場所へと右手を伸ばしています。

 

 

「……スペちゃん、ガンバ~」

 

 

 私はスペちゃんに聞こえるように応援します。おぉっ、スペちゃん届きましたね。凄いですよ。

 

 

”成程な。体幹を鍛えるってとこか”

 

 

「……そうだね。レース中、身体がぶつからないとも限らないから。体幹を鍛えるのは、重要」

 

 

”だとしても、なんでコレなんだか。他にもあるだろ色々と”

 

 

「……デビュー戦があるのは、何もスペちゃんだけじゃないから。それに、楽しいって気持ちは大事。コレなら、多少は楽しみながら練習ができる」

 

 

「そうだ。ファントムの言う通り、体幹を鍛えるのは重要だ。レースは格闘技だと思え!」

 

 

 トレーナーの言葉にみんなは不承不承ながらも納得したようです。ゴルシだけは楽しそうに笑っていますが。

 さて、私も自分の練習をするとしましょう。まずはなんでしたっけ?

 

 

”筋トレからだ。まずは基本セットを10本ずつ”

 

 

「……分かった」

 

 

 早速私も練習に取り掛かります。スペちゃん達の練習には混ざらないのかって?私は体幹は十分にありますので。やると言っても基礎トレぐらいしかやることがありません。走ろうにも今日はリギルが使ってますし。スズカも個別の練習してますしね。

 

 

「……何やら視線を感じますね」

 

 

”リギルの方からだ。塵がお前のこと睨みつけてるぞ”

 

 

 私は言われた方を見ます。そこには、私を睨みつけるように立っているブライアンがいました。はて?何かした覚えはないのですが。あ、東条トレーナーに注意されて練習に戻りましたね。

 

 

”大方、テメェに未熟な果実扱いされたことにキレてんじゃねぇのか?”

 

 

「……ルドルフ、私の言葉を一言一句違わずにブライアンに伝えたんですね」

 

 

 そりゃ怒りますよ。お前なんて闘うに値しないって言ってるようなもんですから。ルドルフの方に視線をやると、向こうもこちらに気づきました。そして、私が言いたいことが分かっているのか、それとも先程睨みつけていたブライアンを見ていたのか私の方に向かって悪戯っ子のように舌を出していました。やってくれましたねルドルフ。そんな可愛い仕草をしても無駄ですよ。

 

 

”まぁ、喧嘩を売ってきたところで勝つのは俺様だ”

 

 

「……ルドルフにも言ったけど、まだ、買わないよ。買うにしても、ブライアンがもっと強くなってからじゃないと。そうじゃないと、私も歯ごたえがないでしょ?」

 

 

”同感だな”

 

 

 意見が一致したということで、私は改めてトレーニングに戻ります。スペちゃん達?相変わらずツイスターゲームやってますよ。ゴルシが滅茶苦茶楽しそうにしています。あ、ゴルシがバランス崩して倒れた。スカーレットが下敷きになりましたね。

 

 

「早く……どきなさいよっ!ゴールドシップ!」

 

 

「いやーわりーわりー」

 

 

 ゴルシは全く悪びれていない調子で謝っています。微笑ましいですね。

 

 

”あんな調子で大丈夫なのかね?アイツら”

 

 

「……なんだかんだ心配ですか?」

 

 

”ふざけろ。せめて面白いレースをしてくれねぇと俺様も歯ごたえがねぇだけだ”

 

 

「……同感ですね」

 

 

 そんな会話をしながら私は今日もトレーニングに励みました。……あ、今度はスペちゃんがスカーレットの下敷きになりましたね。スカーレットがスペちゃんに滅茶苦茶謝ってます。この辺は性格の違いが出ますね。

 

 

「よーしっ!じゃあ次はファントム!お前の番だ!」

 

 

「……ゑ?」

 

 

 油断してた。何故に?

 

 

「お前もスピカのメンバーだからな。勿論スズカもやってもらうぞ!」

 

 

”俺様達もかよ。めんどくせぇ”

 

 

「……まぁ、言われたからにはやるしかない」

 

 

 それに自分のトレーニングも終わったのでいいタイミングです。私はツイスターゲームの方に合流しました。

 

 

「よ、よろしくお願いします!ファントムさん!」

 

 

「……うん。よろしく、スペちゃん」

 

 

 どうやら相手はスペちゃんのようです。ここは先輩としていいとこ見せましょうか。

 

 

「よし。まずはファントム!右手赤だ」

 

 

「……ん」

 

 

「スペシャルウィーク、左手黄色」

 

 

「はい!」

 

 

 こうしてツイスターゲームが始まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲームは順調に進みました。私はできるだけスペちゃんがやりやすいようにスペちゃんの近くのマスには手や足を置かないようにしています。それでも限界が来たようで。

 

 

「……う、う~。も、もう無理です~」

 

 

 スペちゃんが私の上に倒れてきました。まぁ、良く持った方でしょう。

 ……ま、私はスペちゃんが倒れてきても体勢を維持しているわけですが。

 

 

「……大丈夫?スペちゃん」

 

 

 私は体勢を崩さずにスペちゃんに声を掛けます。デビュー戦前に怪我でもしたら大変ですからね。ただ、スペちゃんは驚いているような表情をしています。どうしたんでしょうか?……成程。

 

 

「……スペちゃんなら軽いから大丈夫だよ。モーマンタイ」

 

 

「すすすす、すいません!すぐどきます!」

 

 

 スペちゃんは慌てた様子で私から離れました。別に問題はなかったのですが。ゲームは終わりということで私もすぐに立ち上がります。

 ……おや?他のメンバーが私のことを尊敬のまなざしで見ています。なんですか?もっと尊敬してくれてもいいんですよ。

 

 

「か、カッケェー!スペ先輩が倒れ込んできても微動だにしてなかったぜ!?」

 

 

「た、体幹を鍛えるとそんなこともできるんですか!?」

 

 

「……これに体幹は関係ない。筋肉を付ければ、できると思うよ」

 

 

「おっしゃー!アタシもパワーを鍛えるぜ!」

 

 

「……ゴルシは、もう十分だと思う」

 

 

 こうしてちやほやされるのは悪い気分じゃありませんね。もっとちやほやしてくれていいんですよ?

 

 

「やっぱスゲェよな!ファントム先輩は!いつも変なお面被ってるけど!」

 

 

「そうね!ファントム先輩は凄いわ!年中フード被ってて不気味だけど!」

 

 

「凄いですファントムさん!誰もいないところで会話をする変な先輩ってだけじゃなかったんですね!」

 

 

 あらやだ後輩ちゃん達凄い辛辣。泣きそうです。

 

 

”事実だ。仕方ないとはいえ諦めろ。つか周りの評価なんぞどうでもいいだろ”

 

 

「……私のハートはガラス製。慰めて」

 

 

”鋼鉄どころか毛が生えててもおかしくねぇだろお前のハートは。冗談抜かせ”

 

 

 こっちも辛辣でした。まぁあんまり気にしていないのは確かですが。

 その後もツイスターゲームをしていきましたが、私は補助に回ることとなりました。私が今更体幹鍛えてもしょうがないですしね。

 スピカの練習は充実?したものになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習を終えた私は寮に帰ってきました。その時、寮長であるフジと偶然出会います。

 

 

「やぁファントム。今帰ってきたのかい?」

 

 

「……そう。ただいま、フジ」

 

 

「お帰りファントム。お風呂はいつもの時間、空けてあるからね」

 

 

「……いつも助かってる」

 

 

「なに、可愛いポニーちゃんのためさ」

 

 

 フジはウィンクしながらそう告げます。普通のウマ娘ならキュンキュンしてるとこでしょう。私?あんまりキュンキュンしませんね。残念ながら。そもそも、もう一人の私がすこぶる機嫌を悪くするので。そっちを鎮めるために難儀するぐらいでしょうか?

 フジに一礼をして別れた後、私は自分の部屋へと向かいます。部屋の中に入って、私はごろ寝します。お風呂の時間まで暇ですからね。ごろ寝最高です。

 

 

”おい、俺様”

 

 

「……どうしたの?私。何かあった?」

 

 

”さっき夕飯を食った。やることがあんだろ”

 

 

「……そうですね。別に忘れていたわけじゃありませんよ」

 

 

”なら、何故部屋の中に入ってすぐに寝だした?”

 

 

「……そういう気分だった。ちゃんとやるつもりだったよ?私なら、分かるでしょ?」

 

 

”……チッ。分かってるなら、これ以上俺様から言うことはねぇ。さっさとやるべきことをやれ”

 

 

「……はいはーい」

 

 

 私はごろ寝を止めてトレーニングの準備を始めます。トレーニング、と言っても部屋の中でできる筋トレが主になりますが。

 別に、なんてことはありません。食べたから運動する。それだけのことです。後は汗を流した後に入るお風呂は格別です。最高に気持ちがいいです。

 

 

「……さて、明日からのトレーニングはどうなると思う?」

 

 

”まずあの黒鹿毛は何もかもが足りてねぇ……が、基礎トレを積めばデビュー戦ぐらい余裕で勝てるだけのスペックはある。だから地道な基礎トレになんだろ”

 

 

「……そうだね。後は、ゲートの訓練ぐらい?スペちゃんゲートの訓練もやってないだろうし」

 

 

”ゲートだったら、俺様達の出番はねぇな”

 

 

「……まぁ、私はゲート苦手だしね」

 

 

 私はどうしてもゲートが苦手です。別に入るのはいいんですが、やっぱ狭いとこは落ち着かないですし。嫌いですし。開くタイミングもよく分かりませんし。いつも反応遅れるんですよね。それでも勝ってきましたが。

 トレーニングをしていると扉がノックされました。

 

 

「……どうぞ」

 

 

「失礼するよ。ファントム……トレーニングをしていたのかい?相変わらずストイックだね、君は」

 

 

 入ってきたのは、私の姿を見て苦笑いを浮かべているフジだった。どうかしたのだろうかと思い時計を確認すると……。

 

 

「……お風呂、だね」

 

 

「そう。お風呂が空いたから呼びに来たのさ。誰も入れないようにしてあるから行っておいで」

 

 

「……うん。行ってくる」

 

 

 私はトレーニングを切り上げてお風呂に向かいます。トレーニングで汗を流した後のお風呂……気分が高揚しますね。

 その日のお風呂は最高の気分でした。やっぱ広い浴場は最高ですね。毎度毎度貸し切りで格別です。理事長達には本当に頭が上がりませんよ全く。最高の気分で眠りにつくことができるってもんです。

 

 

「……スペちゃんのデビュー戦、勝てるといいですね」

 

 

 そう呟きながら、私は自分の部屋で眠りにつきました。




マガジンでブルーロックを読んでいるんですが相変わらず面白いです。展開的にも、絵面的にも。
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