そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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今回はちょっと胸糞注意。


亡霊少女とお参り

 さぁさぁ神社に来てお参りでござい。防寒もしっかりとして準備は万端ですよ。私普段からパーカー羽織っているので年中冬みたいな格好してますけどね。いや、さすがに夏とかは通風性抜群の素材でできたパーカー来てますよ?さすがに冬に使うのをそのまま着てたら暑さにやられますから。

 スピカのメンバーは別行動中です。テイオーが甘酒を飲んでいたり、マックイーンがおみくじを引いて残念そうな表情を浮かべているのが見えますね。多分良くない結果だったんでしょう。

 適当にぶらついた後は、全員でお参りを済ませます。とは言っても、私は手短に済ませます。理由は1つ、もう一人の私が気分を悪くするからです。もう一人の私は、どうにも神頼みといった類が嫌いなようで。ついでに、もう一人の私は三女神様さえも嫌っていますから。理由は知りませんし、聞こうとも思いませんけど。

 

 

「……お参り済ませたし、適当にぶらつこうか」

 

 

”……ッチ、全く面倒な文化だな。わざわざこんなとこまで来て神頼みとは”

 

 

「……まぁ、こういうのは大事だよ」

 

 

”くだらねぇ”

 

 

 もう一人の私との会話もそこそこに、私は適当に屋台をぶらつくことにしました。焼トウモロコシでも買って座って食べてましょう。

 

 

「……ねぇ、あの子って秋の天皇賞の」

 

 

「……あの子のせいでサイレンススズカが怪我をしたって本当かしら?」

 

 

「……亡霊の噂を考えたらありえそー」

 

 

 焼トウモロコシうまうま。お祭りとか屋台の食べ物って不思議と美味しく感じますよね。そう思いませんか?私。

 

 

”実際、雰囲気で美味しく感じるってのはあるらしいからな。食ってるもんは変わらんが、食う場所によって美味しくなったように感じるってのはあり得ない話じゃねぇ”

 

 

「……そうだね。実際、美味しいように感じる」

 

 

”あんまり来ねぇからな。こういう場所は”

 

 

「……まぁね」

 

 

 暇な時間は基本トレーニングに充ててますし。私って基本1人で行動することが多いのでこういう場所にはこようとも思いませんでした。

 

 

「……ねぇ、1人で話してるわよ」

 

 

「……うーん、ミステリアス。でもそこがいい!」

 

 

「……はいはい。アンタは本当にファントムが好きね。なら声を掛けてくれば?」

 

 

「……嫌よ!私は推しにはノータッチ主義なの!」

 

 

 別に話しかけに来てくれてもいいんですよ?私、大歓迎。

 

 

”今日の鍋のことだが……お前あんまり食べてなかったろ?今日取る分の栄養が足りてねぇからどっかで不足分を補え”

 

 

「……足りなかった?うーん、他の子達を優先させすぎて自分の分を忘れてたかな」

 

 

”24時間のコンビニ……あんま利用したくはねぇがそうも言ってられねぇ。大きく偏らせない程度に買うぞ”

 

 

「……分かった。メニューはよろしく」

 

 

 帰りにコンビニによることが確定しました。まぁいいでしょう。帰り道にありますし、別に手間でもありませんし。

 辺りを見渡すと……スズカがファンの人達に囲まれていますね。でもどこか笑顔がぎこちないような気がします。

 

 

「サイレンススズカさん!次はあの亡霊に勝ってくださいね!」

 

 

「秋の天皇賞は、きっとサイレンススズカさんが勝ってました!早く怪我が治るように私も祈願します!」

 

 

「え、えぇ。ありがとう」

 

 

「サイレンススズカさんなら勝てますよ!あの亡霊に!」

 

 

 おやおやまぁまぁ。本人がここにいるというのに随分な言われようでござんす。別に気にはしませんけど、スズカがぎこちない笑みを浮かべている理由が分かりましたね。

 

 

”いいんじゃねぇの?叶いもしねぇ夢を見るのは自由だからなぁ”

 

 

「……どうだろうね」

 

 

”ま、前に言ったがああいう手合いは関わるだけ無駄だ。ほっとけほっとけ”

 

 

「……そうだね。それより、次は何食べる?」

 

 

”たこ焼きでいいんじゃねぇの?つーか、栄養偏るからあんま食うなよ?”

 

 

「……明日の食事でバランスを取り戻す」

 

 

 さぁたこ焼きを食べにれっつらごーです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうしましょう……困ったわ)

 

 

 さっきから、神社でファンの人達に囲まれています。スペちゃんはお守りを買いに行ったし、トレーナーさん達も今は別行動中。私1人だけ。

 別に、ファンの人達に囲まれること自体は気にしないんだけど……その内容が、ちょっと看過できないものだったから。

 

 

「それにしても……秋の天皇賞惜しかったですねサイレンススズカさん。無事に走れていたら、きっとサイレンススズカさんが勝ってたのに」

 

 

(……そんなことないわ)

 

 

 例え怪我がなかったとしても、もう一人のファントムに勝てるかは怪しかった。それぐらい、あの子は強い。無敗というのも頷ける強さをもっている。

 

 

「きっと、亡霊の呪いですよ!そうに違いありません!」

 

 

「あ、あはは……」

 

 

(……止めて。あの子は、そんな子じゃないわ)

 

 

 ファントムはそんなことしないし、もう一人のファントムもそんなことはしないと思う。そもそも、あの子から感じたのは自分の強さに対する絶対的な自信。傲慢な走りも、自分の強さに絶対的な自信を持っているからこそ生まれたものだと分かります。そして、それを裏付けるだけの膨大な量の努力を積み重ねてきたはず。そこから生まれる、あの走り。呪いなんてものに頼らなくても、十分に強い。さすがに、見下すように走るのはどうかと思いますけど。

 ここで否定するのは簡単かもしれない。でも、この人達はきっと私を心配して言ってくれてる。だから、あまりキツく咎めることはできない。

 正直、いい気はしない。けれど、我慢しないと……。

 

 

「あ~あ、あの亡霊のせいで走るの辞めたって子もいるし、ヤバいですねファントムは」

 

 

(……違う。本当のあの子は優しい子。話してみれば、きっと分かるわ)

 

 

「しかもG1にはそんなに出走しないんでしょ?自分より弱い相手をいたぶるのが趣味なんじゃない?」

 

 

(そんなはずない!よく知りもしないくせに、あの子を語らないで!)

 

 

 どんどんと苛立ちが募っていく。表情が無くなっているのが自分でも分かる。あぁ、ダメ。抑えなきゃいけないのに……抑えないと、いけないのに。

 

 

「辞めてった子の前で、嗤ってたりするんじゃない?」

 

 

「あはは!それありそ……」

 

 

「止めてください」

 

 

 思わず、口に出してしまいました。私のファンの人達は、驚いたように口を開けて呆けています。でも、私は止まりませんでした。

 

 

「先程から聞いていれば……あの子のこと、分かったような風に言わないでください。あの子は、そんな子じゃありません」

 

 

「さ、サイレンススズカさん?」

 

 

「あの子は優しい子なんです。ちょっとレースだと雰囲気が変わるかもしれませんけど……。それでも、弱い相手をいたぶって楽しむ趣味はないですし、ましてや学園を辞めた子の前で嗤うような子でもありません」

 

 

 あぁ、ダメ。止まらない。ファンの人達を咎める言葉が、止まりません。

 

 

「私は、普段からファントムとは仲良くさせてもらっています。そんな私の前で、どうしてあの子の悪口を言うんですか?」

 

 

「で、でもあの亡霊のせいでサイレンススズカさんは……」

 

 

「それはただの噂です。呪いなんて、あるわけないじゃないですか」

 

 

 止めないといけないのに止まらない。歯止めが聞きません。

 

 

「あの子は悪い子じゃない。それは、同じチームで仲良くさせてもらっている私は良く知っています」

 

 

「そ、そんなことは……」

 

 

「あなた達に分かるんですか?ファントムのこと、上辺だけしか知らないくせに」

 

 

「わ、私達はサイレンススズカさんを心配して!」

 

 

「私を心配するためだったら、ファントムの名誉を貶めてもいいんですか?そんな心配だったら、私はいりません」

 

 

 私の言葉に、ファンの人達は沈黙します。でも、私の怒りは収まりません。そのまま、言葉を紡いでしまいます。

 

 

「そんなのは、私の……」

 

 

「……スズカ、たこ焼き食べない?」

 

 

 ファンじゃありません。そう言葉を紡ごうとした私の口に、何かが入ってきました。そして、聞こえてきたのはあの子の声。

 

 

「モガッ!?ふぁ、ふぁんほむ?」

 

 

「……たこ焼きをスズカの口にシュゥゥゥゥゥゥ」

 

 

 超!エキサイティン!と、謎の言葉を喋ってるけど、それは何なのかしら?ファントム。

 

 

「あ、あなたは……ッ!」

 

 

「……どうも、噂のファントムちゃんです。握手でもします?」

 

 

 おそらく、さっきの会話を聞いていたのかもしれない。そう考えたであろうファンの人達は、ファントムを睨みつけるだけですごすごと引き下がりました。そのまま、どこかへと行ってしまいます。

 

 

「……別に気にしなくていいのに」

 

 

「どういう意味かしら?ファントム」

 

 

「……私は、あんまり気にしないから。スズカは自分のファンを大事にして」

 

 

 ……ファントムはさっきの会話が聞こえていたと思う。きっと、傷ついたはずなのにむしろ私を心配する素振りすら見せている。

 

 

(私よりも、自分のことを心配して欲しいのだけど……)

 

 

「ありがとうファントム。それよりも、たこ焼きもう一つ貰えるかしら?」

 

 

「……いいよ。沢山お食べ」

 

 

「スズカさーん!あ、ファントムさんも!お守り買ってきましたよー!」

 

 

 丁度良くスペちゃんが帰ってきたわ。みんなで一緒に楽しみましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやぁ、スズカがぎこちない笑みからどんどん表情が消えていって、挙句の果てにはファンの人達に反論していましたからビックリしましたよ。思わず横やりを入れてしまいました。

 別に私は何と言われても構いませんが、スズカの印象が悪くなるのは嫌ですからね。それが、私のせいならなおさらです。

 

 

”別にお前のせいじゃねぇだろ。あの凡愚共が勝手に言ってるだけだ”

 

 

「……まぁ、震源地は私だから」

 

 

 辞めていった子達がいるのも事実ですからね。あまり無視はできません。呪い云々はバカバカしいとは思っていますが、そういう噂が広まってもおかしくない格好している自覚はありますからね。この格好辞める気はないですけど。でも、スズカはきっと私のために怒ってくれたんだと思います。だから、ちょっと嬉しかったり。

 ちなみにすぐにスペちゃんが合流して、その後にみんな合流して屋台巡りをしましたよ。栄養偏る関係であまり買えませんでしたけど、楽しい時間が過ごせました。別れた後は、寮に帰る前にコンビニで食品を買い込んで、トレーニングに勤しみましたよっと。継続は力なりー。




前々からファンの反応はちょこっとだけ出していましたが、今回は少し明確に描写しました。ファントム自身はあまり気にしていませんが、やっぱり悪い評価もあります。
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