そのウマ娘、亡霊につき   作:カニ漁船

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夏合宿も終わり。


亡霊少女とご褒美

 トライアスロンも終わってここはリギルのホテルでございます。なんとトレーナー、私達全員にスイーツ食べ放題を奢ってくれることになりました。太っ腹万歳。

 

 

「本当に良いのかよ!両チーム棄権なのにスイーツ奢ってもらっても!」

 

 

「おう!良い走りを見せてもらった礼だ!じゃんじゃん食え!」

 

 

「トレーナーたまにはいいことするじゃねーか!」

 

 

 いやぁ目移りしちゃいますね。何を食べましょうか?……やはり王道オブ王道のイチゴのショートケーキですね。

 

 

「それにしても、スズカさんもあんな顔するんですね!アタシ初めて見ました!」

 

 

「止まんな~い!……どうどう?結構似てたでしょ!」

 

 

「そ、そんな声出してたかしら?」

 

 

「出してた出してた!結構似てんじゃねぇかテイオー!」

 

 

「「「アハハハ!」」」

 

 

 ショートケーキうまうま。和気藹々とした雰囲気ですねぇ。良きかな良きかな。……うん?トレーナーが震えていますね。どうしたんでしょうか?

 

 

「どうしたのトレーナー?泣くほど美味しいの?」

 

 

「……俺は、俺は!お前達全員が参加するレースが見たい!」

 

 

 ……私たち全員が参加するレース?

 

 

「今日みたいなスゲェワクワクするレースを、俺はもう一度見てみたい!だから、これからは互いをライバルだと思って競い、高め合い、助け合って全力で駆け抜けてくれ!チームスピカはこれからが本番だ!気合入れていけよ、お前ら!」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

 うーん良いですねぇ。青春って感じがします。よく知りませんけど。

 この後滅茶苦茶スイーツ食べました。美味しかったです。あ、もちろんトレーニングも欠かしませんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さぁさぁそして現在。みんな同じ部屋でTVを見ています。今やってるのは……夏のホラー特集ですね。

 

 

「ど、どうせこんなの作り物よ。現実に幽霊なんているわけないじゃない!」

 

 

「へ、へへ。そう言う割には身体が震えてるじゃねぇかスカーレット。逃げるなら今の内だぜ?」

 

 

「は、ハァ!?逃げるわけないでしょ!そういうアンタも震えてるじゃない!」

 

 

「ふ、2人ともお子様だなぁ。ボクは全然平気だもんね」

 

 

「声震えてんぞテイオー」

 

 

「う、う~。ちょっと怖いべ」

 

 

「……幽霊って速いのかしら?」

 

 

「え?そこが基準なんですの?」

 

 

 ちなみに私はあんまり怖くありません。なんでって?そんなの決まってるでしょ。

 

 

”なんだ俺様の方を見て。何の用だ?”

 

 

 実際に幽霊みたいなもんが隣にいますし。というか私にも幽霊とかその類のものが見えてますし。普段は無視してますけど。

 

 

「……いや、別に」

 

 

”そうかい。……お、そろそろ始まんじゃねぇか?”

 

 

 本当ですね。さてさて、どんなものが見れるんでしょうか?

 

 

《今年もやってきました真夏のホラー特番。最初に紹介するのはこちらのお話です。題して……【ジャパンカップに現れる亡霊】の噂……》

 

 

「「「……亡霊?」」」

 

 

 ちょっと、亡霊ってだけで一斉に私を見るんじゃありませんよ。私は無実ですよ無実。弁護士呼んできてください。

 

 

《そう……これは、ジャパンカップで実際に起きたお話です……。海外のウマ娘のもとに突如として現れる亡霊……。手当たり次第に勝負を仕掛け、勝負が終わった後その姿は忽然と消える……。摩訶不思議な現象。我々は、実際に被害に遭ったウマ娘へとインタビューすることに成功しました》

 

 

《……では、突然現れたと思ったら勝負を仕掛けられたと?》

 

 

《そうさ。その亡霊は顔をフードで隠していて……》

 

 

「顔を……フードで……」

 

 

「隠してる……」

 

 

「……私は無実です!」

 

 

 本当に知りませんって!人違い……じゃなくて亡霊違いです亡霊違い!

 

 

《その亡霊との勝負は?》

 

 

《……負けたよ。完膚なきまでに。あの亡霊はとんでもなく速いんだ。あんなウマ娘は見たことがない。日本にはあんな幽霊も現れるなんてね。驚きだよ》

 

 

「ファントム?あなた何やってるの?」

 

 

「さすがに海を越えてやってきたウマ娘相手に酷いんじゃない?」

 

 

「今からでも遅くないです。謝りに行きましょうファントム先輩」

 

 

「知らないって言ってるでしょうが!?」

 

 

 誰かー!誰か弁護士呼んできてくださーい!私は無実でーす!

 

 

《他に特徴は?》

 

 

《特徴?そうだねぇ……正直時間的に遅いし暗いからよく分かんないんだよね。でも、フードぐらいしか被ってなかったのは確かだね》

 

 

「なんだ。お面は被ってねぇのか。じゃあ姉御じゃねぇな」

 

 

「そうッスね。疑ってすいませんした」

 

 

 ……私の判断材料フードとお面なんです?疑いは晴れたのに全然嬉しくありません。

 

 

”諦めろ。お前を判断するのはその二点だけだ。それに疑いが晴れて良かったじゃねぇか”

 

 

「……全然嬉しくないんだけど。というか本当に私何もやってないし」

 

 

”ま、そうだな。お前は何もやってねぇよ”

 

 

 そうでしょうそうでしょう。全く失礼しますね。一体どこの幽霊ですか?カフェさんに頼んで除霊してもらいますよ除霊。いや、カフェさん除霊できるのか知りませんけど。とりあえず塩撒いときましょう塩。

 ちなみにその後は普通に心霊スポットを紹介するぐらいで終わりました。たまに本物混じってて面白かったですよ。全員もれなく怖がってましたが。

 

 

「ききききょ、今日はみんなで寝ないかしら!?そ、そうした方がいいと思うの!」

 

 

「ななななんだスカーレット!ビビってんのか!?でもその案には賛成だぜ!」

 

 

「そ、そうしましょうそうしましょう!」

 

 

「私は別に構わないけど……ジャパンカップの亡霊……走ってみたいわね」

 

 

「スズカ。お前だけなんかズレてね?」

 

 

「みみみみんな怖がりだなぁ。ぼ、ボクは勿論平気だけどね!」

 

 

「じゃあテイオーは1人で寝てくださいまし?怖くないのでしょう?」

 

 

「ピエッ!?や、ヤダよ!1人だけ仲間外れなんて!」

 

 

 そんなに怖かったですかね?まぁお泊り会みたいで楽しいので良きです。

 

 

「……じゃあ、トランプとか持ってくる」

 

 

 私は自分の部屋に戻って遊び道具を持ってきました。それを使ってみんなで遊びます。

 

 

「フッフッフ。みんなそれで大丈夫~?それで勝負するのはちょ~っと不味いんじゃないかな~?」

 

 

「その手には乗らないぜテイオー。お前こそ、勝負降りた方がいいんじゃないか?」

 

 

「あなた方の自信はどこから来るのかしら?勿論、メジロ家の誇りにかけてわたくしが勝たせていただきますわ!」

 

 

「え、え~っと……み、みなさん降りた方が良いと思いますよ!」

 

 

 ちなみに今やってるのはインディアンポーカーです。自分のカードは確認することができず、相手のカードと反応を見て勝負をするかを決める……単純ですがそれゆえ奥が深いゲームです。

 現在のプレイヤーはテイオー・ウオッカ・マックイーン・スペちゃん。私には全員の札が見えているのですが……ある意味凄いですね。スペちゃん以外全員エースのカードです。エースのカードということは、このインディアンポーカーにおいて一番弱い札ですね。いうてスペちゃんもハートの2なので2番目に弱いんですけど。

 

 

「……フッフッフ。そう言うスペちゃんはどうするの?ボク的には降りた方が良いと思うんだけどな~」

 

 

「う、う~……!だ、騙されませんよ!勝負です!」

 

 

「「「ふふふ~」」」

 

 

 さて、結果は……

 

 

「「「この勝負貰った!」」」

 

 

 全員降りずに勝負ですね。あ、ちなみに進行は私が務めています。スズカ達は別のゲームやってるんでね。

 

 

「……じゃあ、カードオープン」

 

 

「「「……え?」」」

 

 

「や、やった~!初めて勝ちました~!」

 

 

「……じゃあ、スペちゃん以外の全員はスペちゃんににんじんを渡してね」

 

 

「そんな~」

 

 

「ちっくしょ~!」

 

 

「わ、わたくしが負けた……!?」

 

 

「……それじゃあ、次行こうか」

 

 

「「「次は負けない!」」」

 

 

 中々の盛り上がりですよ。ちなみに私、ギャンブルはそこそこ好きです。もう一人の私は……好きなのかどうなのかよく分からないです。ただ、もう一人の私はギャンブルに凄く詳しいです。でも。

 

 

”……ッチ”

 

 

 あんまりいい気してないみたいなんですよね。何かあったんですかね?知りませんけど。

 そんなこんなで盛り上がりながら夜は過ぎていって、みんなで仲良く寝ました。良いですねコレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ふぅ。夏合宿、とても充実したものとなりました。

 

 

「……よし!全員揃ってるな。それでは学園に戻るぞ!」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

 東条トレーナーの指揮の下、私達はバスに乗り込みます。それにしても……。

 

 

「ファントム先輩はまた走って帰るのでしょうか?」

 

 

「どうかしら?さすがにやらないんじゃない?」

 

 

「いや……ファントムのことだ。絶対にまたやるだろうね」

 

 

「どうしてかしら?ルドルフ」

 

 

「単純明快。彼女はそうするだろうという確信があるからさ。縛られでもしない限り、彼女は走って帰る確率が高い。それだけだよ」

 

 

 さすがにないと思いますが……?なんか向こうが騒がしいですね。何かあった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファントム。もう走って帰ろうとするんじゃねぇぞ」

 

 

「……分かった。分かったから手錠で私を縛りつけるのは止めて欲しい。明らかに罪を犯した人にしか見えない」

 

 

「しょーがないじゃん。そうでもしないとファントム逃げるし」

 

 

「……ソンナコトナイヨ」

 

 

「前回の夏合宿を忘れたのかしら?ファントム」

 

 

「……記憶にございません」

 

 

「そうかそうか。よーし、早速帰るぞーお前らー」

 

 

「「「はーい!」」」

 

 

「……ドナドナ」

 

 

 ……とても見覚えのあるフード姿にお面。ファントム先輩が両手に手錠をかけられた状態で車に乗せられているのが見えました。何やってるんですかあの人。

 

 

「……ねぇ、グラスちゃんあれって」

 

 

「知りません。私は何も見てません」

 

 

「え?でも……」

 

 

「早くバスに乗りましょう。東条トレーナーに怒られますよ」

 

 

「そ、そうね。そうしましょうか」

 

 

 私はバスに乗り込みます。なんというか……ファントム先輩にもあんな一面があるんだなって思いました。少し、笑みが零れます。

 

 

(秋のレース……毎日王冠を始動戦にすると言っていました。そして……その次は……)

 

 

 ジャパンカップ。世界の猛者を相手に、私の実力を試す。そしておそらく……ジャパンカップで、スペちゃんと二度目の対戦となるでしょう。まだ分かりませんが……何となく、そうなる気がしています。

 

 

(スペちゃん……あの宝塚記念以降、あなたがどれだけ成長したか……楽しみですね)

 

 

 今度こそ本気の勝負をしましょう、スペちゃん。




亡霊、実はギャンブルが得意らしい?ただ本人は気乗りしない様子。グラスはジャパンカップに出走。

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