今日もいい天気ですねぇ。絶好のトレーニング日和です。さて、今日は何をしましょうか?そう考えていると……。
「あー!ファントムさんだー!」
元気いっぱいに私の名前を呼んでいる子がいました。
「……むっ!この声はッ!」
”ゲェッ!?この声は……ッ!”
私は声がした方へと身体を向けます。すると、こちらに向かって猛ダッシュしてきているウマ娘がおり……
「こんにちはー!」
そのまま私の胸にダイブしてきました。私はしっかりと抱き留めます。その声の主とは。
「……久しぶりだね、ウララちゃん」
「うん!久しぶりー!」
ハルウララちゃんです。今日も元気いっぱいですね。こっちも元気になるってもんですよ。そうは思いませんか?私。
”そいつからさっさと離れろ!しっしっ!どっか行け!”
もう一人の私はウララちゃんのことを鬱陶しそうに手で払います。もっとも、その様子はウララちゃんには見えていないわけですが。というか、この場では私ぐらいにしか見えていませんが。
もう一人の私、この態度からも分かる通りウララちゃんを良く思ってない……というわけでもないのですが、あまり関わろうとはしません。むしろ遠ざけようとしています。まぁもう一人の私がこんな態度をとってもウララちゃんに見えるはずもなく。
「聞いて聞いてファントムさん!ウララこの前のレースでなんと~……ッ!」
「……なんと?」
「3着になったんだー!」
「……ッ!なんと。それはおめでたいですね。今夜はパーティしましょう」
”ふざけんな!そんなもん開くんじゃねぇ!クッソ、マジで調子が狂う……ッ!”
ちなみに、もう一人の私がウララちゃんにこんな態度をしているのも勿論理由があります。
「……前から思ってたけど、ウララちゃん嫌いなの?」
”そういうわけじゃねぇ!ただこいつには関わりたくねぇだけだ!”
「……まぁ、私がそういう態度をとるのは分からないでもないよ。なんてったって」
”おいやめろ!それ以上言うな!”
なんとウララちゃん。
「……私の
”やめろぉぉぉぉぉぉ!?それを言うんじゃねぇぇぇぇぇ!”
「?どーしたのファントムさん。わたしとファントムさん以外は誰もいないよ?」
「……気にしなくて大丈夫だよ。ただのひとり言」
「そーなんだ!」
そう、ウララちゃんはもう一人の私の
さてさて、ウララちゃんが出たレースはなんでっしゃろ。ちょいと聞いてみましょうか。
「……それで。ウララちゃんはなんのレースに出たの?」
「ウララが出たレース?え~っとね~……」
ウララちゃんはハッとした表情を浮かべます。
「とーきょーだいしょーてんだ!」
「……成程。東京大賞典ですか」
確かダートのG1ですね。着々と強くなっていってますね。実は私、たまにウララちゃんと併走したり一緒にトレーニングをしていたりします。こうして強くなっていってるのが結果として出てくるのは良いですね。というか、もう一人の私はウララちゃんを邪険に扱う割には併走には付き合ってあげてるんですよね。これがツンデレって奴でしょうか?
それはともかく、偉いですよウララちゃん。よしよししてあげましょう。
「……偉いよウララちゃん。よしよし」
「えへへ~」
ウララちゃんの頭を撫でていると、ふと思い出したような表情をウララちゃんが浮かべます。どうしたんでしょうか?
「ねぇねぇファントムさん!また併走しよー!」
おや、併走のお願いですか。私の答えは勿論決まっていますよ。
「……いいよ。それじゃあ、これから一緒にやろうか」
私が了承すると、ウララちゃんは飛び跳ねて喜びました。うーん可愛い。癒されますね。
「やったー!ファントムさんと併走すると、ウララなんだかいつもより調子がいい気がするんだー!」
何ですこの子。天使か何かで?嬉しいこと言ってくれるじゃありませんか。わしゃわしゃしてあげましょう。よーしよしよし。
それからしばらくウララちゃんを撫でてあげて。早速併走をすることになりました。
「よーしっ!頑張るぞー!」
「……じゃあ、今日もダートで走ろうか」
「うん!よろしくねファントムさん!」
さて、と。頑張りまっしょい。
”おい、俺様に代われ”
「……どしたの?理由は察しがつくけど」
”決まってる!今度こそこのピンク娘を絶望に叩き落してやるんだよ!”
まぁそんなことだろうと思ってましたよ。
”俺様の
「……ちなみにそれ、11回目の台詞だね」
”黙ってろ!”
というわけで、私の代わりにもう一人の私がウララちゃんと併走します。
……まぁ結果としては私の圧勝だったわけですが。基本芝でしか走りませんけど、私はダートも走れますからね。ふふん。ドヤドヤ。
ウララちゃんを絶望させようと躍起になっていたもう一人の私。
「楽しかったー!また一緒に走ろうねー、ファントムさーん!」
ウララちゃんはピンピンしてるどころか、過去一のタイムを記録していました。うーん、良い感じに成長してますねぇ。私の目的には関係ありませんが、ウララちゃんも着実に強くなっていってますよ。
”なんでだぁぁぁぁぁぁぁ!?”
速報、もう一人の私、ウララちゃんが私の
その後は普通にトレーニングして一日が終わりました。楽しい一日でしたね。
”俺様はまったく楽しくなかったわ!”
もう一人の私の悲痛な叫びを聞きながら私は眠りにつきます。さてさて、良い夢見れるといいですねぇ。
今日は学園の課外授業ということで、ウマ娘の資料館というところに来ています!レースで輝かしい実績を残したウマ娘の記録や、凄く昔のウマ娘の資料まで色々な物がまとめてあるみたいです!
「オーホッホッホッ!いずれはこのキングもこの資料館に残されるようなウマ娘になるわ!」
「キングは元気だねぇ。ま、頑張れ~」
「色んなウマ娘のことについてまとめられていますね。あ、レースの映像もあるみたいですよ」
「う~ん……さすがにかなり昔のウマ娘のは資料にぬけがありますね。仕方ないデスけど」
「みんな見て!ルドルフ会長の資料もあるみたいだよ!」
「本当だ!やっぱり会長さんは凄いですね!」
本当に色んなウマ娘の資料がありますね~。私はエルちゃん達と一緒に見て回ります。最初に見たのは……。
「この人がトゥインクル・シリーズで最初に3冠ウマ娘になったウマ娘か~。威厳ありますな~」
「スカイさん?本当にそう思ってるのかしら?」
「やだな~キング。ちゃんと思ってますって」
レース映像もあるみたいなので一緒に見たんですけど、驚きの強さをしていました。やっぱり3冠を取る人達は凄いんだなと改めて思いました。
次は日本じゃなくて、世界のウマ娘の資料。中でも、アメリカで一番有名なんじゃないかってウマ娘さんについての資料です。
「通称ビッグ・レッド……凄く大柄ですね」
「しかもピッチ走法とストライド走法を自在に使い分けていたみたいだわ。そんな走り、本当に可能なのかしら?」
「実際にできてるからこその強さデース!やっぱり偉大デスねー!」
グラスちゃん曰く、アメリカのウマ娘さんと言えば大体この人ともう一人が出てくるみたいです。もう一人の方も、ビッグ・レッドと呼ばれているのだとか。
それから色んなウマ娘の資料を見て……
「あー!」
私は、あるウマ娘さんの肖像画の前で止まりました!あまりにも驚きすぎて、ちょっと声が大きくなってしまいました。周りの人達が私に注目しています。
「どうしたのスペちゃん?そんな大きな声出して」
「つ、ツルちゃんツルちゃん!私、この人知ってる!」
私の言葉に、キングちゃんが呆れたような溜息を吐きます。な、なして?
「スペシャルウィークさん。そりゃあ見たことぐらいあるでしょうよ。その方は、世界史の教科書にも載るぐらい有名な方よ?」
「そ、そうじゃなくて!私、この人に会ったことあります!」
間違いありません!この赤黒いウルフカットの髪に、炎が揺らめているように見える白い流星!猛禽類を思わせるような鋭い目つきに肖像画越しにも分かる荒々しい雰囲気!見間違えようがありません!あの日温泉で会ったあの人です!
あの時もものすごく強いと思っていましたけど……やっぱりすごく強いウマ娘さんだったんですね!だってここに資料があるぐらいですもん!
「「「……」」」
ただ、キングちゃん達は呆然とした表情を浮かべて……いや、私を哀れむような目で見てきます!?な、なして!?
「え~っと、スペちゃん?」
「な、何?ツルちゃん?」
「その人の年代のとこ、よ~く見てみて?」
「年代?」
ツルちゃんにそう言われて、私は年代のとこを見ます。温泉で会うぐらいですし、最近のウマ娘さんなのは間違いないと……ッ!?
「……え~っ!?」
全然最近じゃありません!100年以上も前の人じゃないですか!?
「スペちゃん、10年や20年そこらの人だったら幸運だね~で済ませちゃうけどさ。さすがに100年以上も前の人に会ったって言われたらすぐ嘘だってバレちゃうよ?もっとバレない嘘をつかないと」
「いやそもそも嘘をつくのはあまり良くないわよスカイさん。それにしてもスペシャルウィークさん、本当にこの方に会ったの?」
「は、はい!温泉で会いました!……多分!」
「そこは自信を持って答えなさいな!?」
だ、だって!流石にこんなに昔の人だと思わなかったんですもん!自分でも信じられなくなっちゃうよ!
「アハハ!スペちゃん面白いジョークデース!お笑い番組に出れるんじゃないデスか!」
「う、う~っ!」
すっごく恥ずかしい!顔が熱くなってきました!
「ほらほらみんな。スペちゃんをあまりからかわないであげてください。他人の空似ということもあるでしょう?」
「ぐ、グラスちゃん……ッ!」
グラスちゃんが私に助け舟を出してくれました。きゅ、救世主だべ……。
「まぁ世界には同じ顔の人が3人いるって聞くしね~。でも私も会ってみたいな~そのそっくりさん」
「そうね。ただ、これほどまでに偉大なウマ娘とそっくりなんだからそう簡単には見つからなそうね」
「案外、いつも顔を隠して生活してたりするんじゃないかな?」
ツルちゃんがそう言います。顔を隠して……。
「……なんでしょう。一瞬ファントム先輩の顔が思い浮かびましたね」
「奇遇だねエルちゃん。私もそう思ったよ」
「スペちゃんもですか。私もそう思っていたところです」
まぁでも、さすがにそんなことはないでしょう。だとしたら、世界が狭すぎますからね。きっと、私達の知らないどこかで普通に生活していると思います。
あ、そうだ。名前を見るのを忘れていました。え~っと……。
「【伝説のウマ娘エクリプス】……は~、すっごく強い人だったんだね」
「強いなんてものじゃないわよスペシャルウィークさん。生涯負けなしに加えて、全てのレースで大差勝ちを収めたまさに歴史上最強と言っても過言ではないウマ娘の1人なのだから」
「というか、この前授業でやってたとこデース」
「スペちゃん?さては……あまり勉強していませんね?」
「ぎ、ギクッ!?」
ま、不味いです!かくなる上は……ッ!
「あ、み、みんな!あっちに面白そうな資料があるよ!早速見に行こうよ!」
「逃げたわね」
「逃げましたね」
「テストも近いですし、しっかり勉強しましょうね?スペちゃん」
は、は~い……。
──とある公園にて。
”ックシュンッ!”
「……風邪?」
”知らん。誰か俺様の噂でもしてんじゃねぇの?”
「……変なの」
”どういう意味だおい”
そんな会話があったそうな。
亡霊の天敵、それはウララちゃんである。ウララちゃんには亡霊の領域がなぜか効かない模様。そしてスペちゃん。その推理、合ってますよ。ついでに現状、真実に一番近いのがスペちゃんという。