彼女が出来ました。 作:ロリコンじゃありませんフェミニストです
と、まぁ前回から日にちが少し経って夏休み初日。例年通りなら、課題を早々に片付けて、あとはバイトしたり家で惰眠を貪っているんだが、今年は違う。俺には彼女(相手は小学生)がいる。しかも夏のバカンス。なんだけど──
「ヴィヴィオ、いきなりお母さんへのご挨拶はハードル高すぎやしないか?」
現在午前中の真っ昼間に高町家の前。俺、先にコーチに挨拶と思ってたんだけど……
「そ、そんなに気負わなくて大丈夫ですから。それはまたの機会に……今日はあくまでお友達、ですから」
そう。今日はあくまでも恋人としてではなく、ヴィヴィオのトレーニング仲間として……ふぅ。
「灰は拾ってくれよ」
「だから大丈夫ですって……」
隣でヴィヴィオが苦笑いしてるが、俺は意を決してインターホンを押した。
ピンポーン
軽い音だが、今の俺には晩鐘の鐘の音に聞こえる。
さぁ、ここは正念場だクルス•アルス。ヴィヴィオとの今後と俺の命を賭けたネゴシエーションだ。
まずは第一印象肝心だ。見た目にはちゃんと気を配ったし、髪や服も整えてヴィヴィオのお墨付きを貰ったあとは、失礼のないように硬くなりすぎない程度の挨拶でオッケー。大丈夫、俺はやれる。
はーい。
と、鈴を鳴らすような可愛い声が家から聞こえてから少しして出て来たのは、薄手のブラウスとロングスカート姿で長い髪をサイドテールに流した超絶美人がいた。
「あ、は、初めまして……こんなにご挨拶が遅れて申し訳ありません。ヴィヴィオ、さんと仲良くさせてもらってます。クルス•アルスです」
よし。ちょっと噛んだが及第点。どうだ!?
挨拶と共に下げた頭を上げると、キョトンとした目をしてたが、すぐにヴィヴィオと同じくような、花が咲いたような笑顔をむけてくれた。
「初めまして、ヴィヴィオの母の高町なのはです。どうぞ、上がって」
「は、はい!」
ヴィヴィオのお母さんの1人。高町さんのあとに続いて、後ろからヴィヴィオ、俺と家に入っていく。
『ね?大丈夫だったでしょ?』
『いや、ヴィヴィオのお母さんを疑ってるんじゃなくて、俺がヘマしないか怖いんだよ』
『アハハハ……でも、なんか嬉しいです。真剣に考えてくれて』
『当たり前だろ。彼女なんだから』
そう言うと、前を歩くヴィヴィオの足取りが今にもステップを踏みそうなほど軽くなる。
あの……バレちゃいけないって分かってる、よな?
「フェイトママただいまー」
リビングへのドアを開けると、まず目に入って来たのは金髪のこれまた超絶美人。
うん。美少女の母親は美女なんだなぁ。なんて場違いなことを考えていると、金髪の女性─フェイトママさんは俺たちに優しい笑みを浮かべる。
「おかえりヴィヴィオ。……と、初めまして、クルス•アルス君。ヴィヴィオのもう1人のお母さんです」
「あ、えっと……はい。こんなにもご挨拶が遅れてすいません。フェイトさん……で、宜しいんですよね?」
「うん。フェイト•テスタロッサ•ハラオウンです。娘がお世話になってるようだし、気軽にフェイトさんでいいよ?」
お世話というか、彼氏です。なんて、口が裂けても言えないので俺は曖昧に返す。
「は、はい……フェイトさん」
よかった……思ってた以上に穏やかな人みたいだ。
そしてフェイトさんから促され、俺は向かいのソファに掛け、フェイトさんの隣にはヴィヴィオ、とそれを挟んで高町さんが座る。
「も〜。クルスさん緊張し過ぎですよ〜」
「するに決まってるだろ。今まで散々心配させてたんだから」
「格闘技、強いって聞いたよ?凄いね」
「あ、え、い、いいえ。自分はただの運動程度で……その、ヴィヴィオ、さんのことに関してずっとご挨拶をしなきゃいけない、って思ってたんですが予定が合わず。このように遅れたこと、重ねてお詫びします」
「そ、そんなに堅苦しくならなくても……」
「かもしれない。でも、通すべき筋があるんだ」
若干引いてる彼女に真剣に返しながら、俺はお二方へ視線を向ける。そして、俺の余りにも真剣な表情を察してか、表情は優しいが、先ほどのぽわぽわした優しい空気は少しなりを潜めていた。
「ヴィヴィオさんは格闘技─SAを真剣にやっているというのは普段の本人の練習だったり、話で私自身にも伝わっています。なのに、私が勝手に指導者のようなことをしてしまったこと、そして氏も素性も知れない自分ということで大変ご心配をお掛けしましたこと。お詫びします」
「ヴィヴィオ。娘のことは……どのくらいご存知ですか?」
「本人から大体のことは。自分自身それを他言する気はありません」
「娘をどう思ってますか?」
来た!来るかと思ってたけど、1番困る質問!
ここでヴィヴィオを妹のように、とか軽い気持ちで返すのは簡単だけど、俺はヴィヴィオの彼氏。そのことを否定したくはない。だから…!
「ヴィヴィオさんは……なんといいますか……少し詩的な表現になってしまうんですが……優しい太陽のようだと思っています」
「太陽……ですか…」
「ヴィヴィオさんと出会って俺は変われました。彼女に会う前の自分は卑屈で、すぐに諦めるような奴でしたけど、彼女の姿を見て。俺も少しは前を向こう……って。何話してんだ、俺」
どんどん溢れてくる言葉を口にしていたら、答えにもなっていないような事をベラベラと口走って、あーほら、お母さんたち困ってる。
「と、とにかく。素敵な子です」
こんないい子が俺の恋人なんて夢に思えてしまうくらいに──
最後の言葉は心の中でだけ呟き。2人の間で俺の話を聞いていたヴィヴィオは顔を真っ赤にして今にも爆発寸前だ。
そして娘を挟んでいる母親両名は顔を見合わせて少しすると、俺にヴィヴィオに似た太陽のような笑みを向けてくれた。
「よかった。ヴィヴィオにこんな良い人がお友達になってくれて」
彼氏ですけどね。
「でもなんか結婚の許しを貰いに来た彼氏さんみたい」
「え!?え、え〜っと……それは……なんと言いますか……」
「冗談だよ冗談!でも安心した。これからも娘と仲良くして上げて下さいね」
はい。ずっと守っていく所存です。
「は、はい……」
それから一先ず肩の荷が降りた俺は高町家でティータイムを楽しみながら(紅茶マジ美味い)旅行に行く他のメンバーを待ってること、1時間ちょい。
「お邪魔します、なのはさん。フェイトさん」
高町家に赤毛の女性引率の元、ヴィヴィオの友達たちが……ってなんか見たことある子もいるな。アッチも俺のこと驚いた目で見てるし“あの時の子”か?最近ヴィヴィオの大人モードで変身魔法は見慣れてるし、多分そうだろう。
「えーっと……えーと、この間振りでいいのか?」
「はい。その節は大変ご迷惑をお掛けしました。まさか先輩とは」
と、ヴィヴィオとまた違った虹彩異色の少女は俺に頭を下げる。
「気にすんな。もう終わったんだろ。ならあの件は俺も追求しねぇよ」
「クルスさんお知り合いだったんですか?」
「あー……街中でケンカ売られて─」
「一撃で返り討ちにされました」
うわ、めっちゃ悔しそう。めっちゃ気にしてるわ。
あ、なんか赤毛の人が思い当たるような思案顔してる。
「いや、あの……ホラ、不意打ちだったし、気にすんなって」
「気にしてません」
そう言ってそっぽ向いてるけど、悔しいです。って顔に書いてあるんだよなぁ。
「不意打ちとは言え、アインハルトさんを一撃って凄い……」
あ、ヴィヴィオ。傷を抉るなって!
「………」
あーほらぁ!拳握ってプルプルしてるじゃん!
「あーもう。分かったよ。アッチ着いたら一回相手してやるから」
「……はい」
殺る気満々やんけ……
俺の穏やかなバカンス(仮)が……まぁ、軽い運動程度ならいっか。
「そっかぁ。クルス結構強いんだねぇ」
ん?高町さんの視線がなんか怪しいぞ?
「ヴィヴィオに教えてるくらいだからストライクアーツかな?」
「い、いえ……ストライクアーツを基本にした近接よりの魔導師っていうか……」
「へぇ〜なんか面白そう。クルスも良かったら、アッチの訓練おいでよ」
あ、これ。参加しなきゃいけないヤツだ。
「え?え〜……っと検討しときます」
あぁ……俺のバカンス(仮)の脳内プランがガラガラと崩れていく。デバイスの調整しとこ。
はぁぁぁぁぁぁぁぁ。
外には漏らさず、心の中で俺は大きな溜息をついた。