こ↑こ↓は幻想郷。
古い日本家屋のような建物が立ち並ぶ街に、お菓子作りの材料屋さんはあった。
店長の妖怪ネズミ、にょんは今日も今日とてゴロゴロ。
とおもいきや、今日は目を血走らせながらテレビに向かって叫んでいた。
「うぉおおおおおおおぉぉ! 入れろ! 一点! たま! ぶち込め! 無理ならてぇめえの金玉投げ入れろ! 一点! 一点!!うおぉごおおおおお!! ぢぃぎじょおおおぉぉ!! ワダジの5万がえじでぇえええぇ!!」
「どうしたの、にょんちゃん。外まで声が聞こえているよ」
店にやってきたのはにょんのお友達、いちごちゃん。
ふわふわした雰囲気の甘くて優しい、わたがしみたいな女の子。
「あ!! いじごちゃん! 5万返して!」
「借りてないよ、にょんちゃん……どうしたの? ちょっと冷静になろう。ほらアクエリ飲んで」
「あが……ありがどう、いじごじゃん」
にょんはいちごからもらったアクエリを、CMかの用に喉をゴクゴク鳴らして飲み干した。「んぁ! うめぇなぁ~!」
「良かった。どうしちゃったの? そんなに叫んで」
「いやぁ~、野球賭博してたら5万円負けちゃってさ」
「さも当然の用に言ってるけど犯罪だよ、にょんちゃん」
「まあよく考えたにょんは最終的に億お万長者になるんだから、5万なんてよく考えたら大したことなかったね」
「プラス思考がイキスギてて怖いよ、にょんちゃん。あと億お万長者って何?」
「まあまあ、細かいことは置いといて。実はいちごちゃんにとってもいい話があるんだよね」
「どうせろくでもないんだろうけど、聞いてあげるね」
「実はにょん、映画を撮ろうと思います。映画って儲かるんだよぉ~。世界中で大ヒットすればもうがっぽがっぽ。白ごはんに万札ふりかけて食べられるよ」
「そんなお金をふりかけみたいにできたらいいなって願望ないよ」
「そんなわけで、にょんの映画のヒロインにいちごちゃんを抜擢したいと思います」
「遠慮するね」
「大丈夫、濡れ場は20回ぐらいしかないから」
「遠慮するっていってるよ。その映画ほぼ濡れ場じゃない? AV?」
「ニップレスは着けてもいいよ!」
「そのでかい耳はなんのために付いてるのかな?」
2日後
お菓子作りの材料屋さん。
「あの後なんかキャストを募るとか言ってたけど、どうなってるのかしら」
いちごは材料屋のドアを開けて中に入った。
「いらっしゃいませ~っていちごちゃん! なに? いまさらヒロインにしてとか言うつもりじゃないよねぇ~。まあどうしてもというなら考えてあげなくもないけどね」
「大丈夫、考えなくていいよ。映画のキャストを募るとか言ってたから、どうなってるのかと思って」
「まあね、にょんの人脈を使えばもうあいつからこいつまで、新進気鋭の凄腕俳優たちが集まったよ!」
「にょんちゃん各所に借金しまくってて、人脈もクソもないけど、とりあえずどんな人がいるのか紹介してよ」
「そういうと思って、みんな集めてるよ! さあおいで、ボウヤたち!」
にょんが手をたたくと奥から三人の男が出てきた。
「エントリーナンバーワン! 野暮ったい目とそのふてくされている感じが明らかに反社! ゲスな命令させたら右に出る者なしの清野君!」
「ウッス。お願いします」
「エントリーナンバーツー! 30歳でありながらその風体は40歳後半! 自分の立場を利用してゲス顔でゲッスい命令すること間違いなしのゲス男。軍畑君!」
「軍畑です」
「エントリーナンバースリー! そのルックスはインテリヤクザ。法律スレスレのグレーゾーンで荒稼ぎしてること間違いなしの高田!」
「タカダキミヒコだよ」
「以上だよ!」
「偏ってない? 演者さんたちのカテゴリー。アウトレイジでも撮るの?」
「ううん、撮るのはラァヴコメディだよ」
「ラブの言い方うざいよ。言ったら悪いけどこの人達でラブコメは無理だよ。どうあがいてもファンタスティックバイオレンスにしかならないと思うよ」
「ちょっとしたバイオレンスも、ラァヴコメには必要なのさ」
「添え物じゃなくて主食がバイオレンスになっちゃうと思うんだけど。えっと、清野さん、でしたっけ? どういう経緯でここに来たかは分かりませんけど、にょんちゃんに付き合わなくてもいいんですよ。ほんと趣味で作るみたいな映画ですし」
「小さい大きいは関係ないっす。だだ自分ができる演技に全力を尽くします」
「プロ根性エグくない? 軍畑さんですよね。弱みを握られてるなら私がなんとかしますから、逃げてもいいんですよ?」
「自分、この作品に命かけてますから」
「命の無駄遣いだよ。洗脳調教でもされたのみんな。高田さん、あなただけでも逃げて」
「タカダ、キミヒコだよ」
「……タカダさん?」
「タカダ、キミヒコだよ」
「なんだよこいつ、死んでんじゃん」
「おっしゃぁ! じゃあお前ら河川敷で撮影開始だ!」
にょんはジャージに着替えて役者たちを先導する。「あの夕日に向かって競争だ!」
『おぉぉ!!』
いちご以外の者たちはランニングで河川敷に向かっていった。
「はぁ、熱血学園モノじゃないんだから……まったく、変な事件にならなきゃいいんだけど」
5時間後
「あのね、なんかね。みんなで映画とってたらヤベーことやってるって思われて、にょんいがいみんな警察にパクられちゃった」
「うん……そうなんだ。にょんちゃんは捕まらなかったんだね」
「役者のみんなが口裏合わせてくれて、にょんは無関係ってことにしてくれたよ」
「本当にどうしてそんな聖人たちをにょんちゃんは集められたの? じゃあなんとかみんなを釈放させなきゃ」
「ん、なんでぇ? 正直ラァヴコメにしてはメンツがきつかったら別にあの人達もういいよ」
「心とかないの? にょんちゃん」
「まあ、にょん妖怪だしね。そんなことより、にょんは妙案を思いついちゃったんだ!」
「そんなこと?」
「てなわけで読んでおります! 入ってきなボウヤ!」
「オッスお願いしまーす」
にょんが手を叩くと、上半身裸の色黒男が奥から出てきた。
「この人は知る人ぞ知る、田所さんだよ」
「うん、知ってるよ。何回かここで見てるけど」
「まあ、いちごちゃんでもご存知の田所で、映画とっていっちょ金儲けといくわけですよ。やっぱ役者には有名人使わないとね」
「へえ、そうなんだ。たぶん何言っても無駄だと思うけど、田所さん、ろくなことにならないからやめといた方がいいですよ」
「俺の雄姿、見とけよ見とけよ~」
「うん、もうがんばってください」
「おっし! もうタイトルは決まっちゃってるもんね『森の中のナドコロ』!! さあ樹海で撮影開始だ! 行くよ、田所ちゃん!」
「行きますよ~イクイク!」
2人は走り出すと、さっさと店を置いていってしまった。
「はあ……きっとろくなことにならないんだろうなぁ」
2日後
「あのね、なんかね。撮影してたら田所がシカ用のトラップに引っかかってさ、オウンオウン叫んでたらマタギのおっさんに連れてかれちゃったんだ」
「そうなんだ」
「結構いい値段で売られてるらしいよ」
「へえ、よかったね」
億お万長者への道は、まだまだ遠いらしい。