アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男   作:カサノリ

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年内最後の更新ですっ!

みなさま、ありがとうございましたっ!
来年もよろしくお願いしますっ!!


12. LOVEですっ

『うつくしい……』

 

 天空に向かって放たれた一条の光を見上げながら、ロマン男は呟いた。それは自社の技術者が整備性やら常識やら、商品価値やらを投げ捨てながら渡してくれた、ロマンあふれる武器の威力を見ての感想であり、

 

「あ、あぶなかった……! エアリアル、大丈夫?」

 

 それを受けても倒れない白い機体と少女への賛辞でもある。

 

 そう、スレッタとエアリアルは健在だった。

 

 ロマン男が『ヴィクトリ―カノン』と名付けた試作型大口径ビームライフルの直撃を受けたと思われた時は、学園各所から悲鳴と『俺たちのエアリアルきゅんが!?』『アイツマジ〇す!』などとロマン男への敵意が渦巻いたものだが、なんとかエアリアル爆散という最悪の結果は免れていた。

 

 その結果に、実況席も大いに盛り上がる。

 

『おおっと! エアリアルきゅんは無事だ―っ!! ですが、私の眼にもビームに飲み込まれるエアリアルきゅんが確かに見えたっ! これはどういうことでしょう、シャディク先輩!!』

 

『説明しよう。まず一つは、これまた水星ちゃんのとっさの判断が素晴らしかったということだね。次の攻撃が広範囲に渡ると判断し、すぐに射線上から離脱。だけれど、それだけでは攻撃から逃れられないと見極めて、途中でビットを盾に戻して防御を行ったんだよ』

 

『な、なるほど……!』

 

『中心から離れれば離れるだけ、ビームが拡散して破壊力自体は落ちるからね。盾でも十分に防御ができたのさ。それと、もう一つ』

 

『それは……!』

 

『あのビームが……見かけ倒しということだよ』

 

『そ、そうなんですか!?』

 

『そりゃあそうだよ。戦艦じゃあるまいし、見かけ通りならヴィクトリオンだけの動力で発射できる代物じゃない。アイツはそれをごまかして、なんとか見栄え良くしているわけだ。そもそも、そんな威力を当てたら相手のパイロットだって死んでしまうだろ? アイツはそういうことしないよ』

 

 実はヴィクトリオン自体、一世代前のMS技術で魔改造した機体だ。

 

 御三家と評される企業と違い、ロマン男が率いるロングロンド社の主力製品はMSではない。最新のドローン技術もなければ、ジェタークの軽量と頑強を両立した装甲も、ペイルの高機動も、グラスレーの特殊兵装も用意できない。

 

 戻ってこないロケットパンチに、見かけ優先して低出力のビームなど、冷静に考えなくとも無茶苦茶な設計をした機体なのだ。

 

 だが、

 

『不可能を可能に! 夢を現実にっ!! それがロマンってやつだろっ!!』

 

 ロマン男はコクピットで嬉しそうに叫ぶ。

 

 彼の判断基準はいかに商品を売るかでも、いかに他社を出し抜くかでもない。

 

 あくまでロマン。

 

 どれだけ見ている人々をワクワクさせられるか、ロボットは素晴らしいものだと思わせるか、それだけを考えて生きている。

 

 そして、

 

『ただ……見かけ倒しだからと言って、無意味なわけでもない。直撃を免れたとはいえ、エアリアルの全身には大きく負荷がかかっている。このまま戦うと厳しいだろうね』

 

 シャディクの言う通り、スレッタはコクピット内で冷や汗をかいていた。

 

 モニターには機体の各部で異変が起こったことを知らせるアラートが表示されており、まだ機体制御に影響は出ていないが、これ以上の継戦にはリスクを伴う状況。なにより、その機体状態であの堅い相手を倒せるのかといえば、手は限られる。

 

(どうしよう、どうしよう……)

 

 焦りながら、目まぐるしく頭の中で作戦を立てるスレッタ。その中には自分を応援してくれる地球寮の面々やミオリネ、ロマン男の顔も浮かんでは消えていく。しかし、有効な手は思い付かずに、焦りだけが頂点に達しようとした時、

 

『フフフフ、さぞ困っているだろう、スレッタさん』

 

「っ……! 先輩?」

 

 ロマン男が通信を入れてきた。

 

『超パワー、超装甲、そして超かっこいい! それがこのヴィクトリオン! ロマンと技術の結晶体をそう簡単に倒すことなどできないっ!! だから……』

 

 ロマン男はヘルメット越しに微笑むと、続ける。

 

『大切な後輩に、一つアドバイスしよう。とっても、とっても大事なことだ。これからも戦いで勝ちたいと、君が思うならね』

 

「そ、それって、なんですか……?」

 

 

 

『戦いはっ!! 声が大きい方が勝つっ!!!!』

 

 

 

「………………はい?」

 

 スレッタはその答えに茫然とした。

 

 頭が理解を拒む。だって声の大きさなんて、機体性能でも、操縦技術でもない。そもそも声の大きさで言うなら、自分はあの先輩に勝てるはずがない。

 

 なのでよくわからないまま目を白黒とさせていると、ロマン妖怪は続ける。

 

『ロボットアニメを見たことはないかい? 主人公たちは、必ず強敵を倒すときに叫び声をあげる。心の底に抱えた大きな気持ちを吐き出して、機体に託して戦うんだ。

 そして、必ず勝つっ!!

 なぜならっ! それほどの強い気持ちを、彼らがもっているからだっ! 大きい声とはすなわちっ、気持ちの強さっ!! それこそが勝敗を分かつ鍵なんだよっ!』

 

「っ……!」

 

『スレッタさんも心当たりがあるはずだよ? 君とグエルとの決闘。紙一重で君が勝利をつかんだのも、強い気持ちがあったからだ』

 

「あの時は……」

 

 確かにスレッタは思い当たるものがあった。ダリルバルデと衝突する寸前、その時に感じたのは『この学園にいたい』という衝動。そしてそれを叫びにしてエアリアルに託したことで、スレッタは勝利をもぎ取ることができた。

 

『なら早く叫ぼうっ! 君がこの戦いで勝利したい理由はなんだい? 農園の従業員のため? ミオリネの横暴に立ち向かうため? いいや、君が心に抱いた願いはそれじゃあないだろうっ!

 それを! 今ここで! ぶつけてこいっ!!』

 

「っ!?」

 

 そういってロマン男は機体の戦闘態勢を整えると、エアリアルへと向かって突撃してきた。

 

 あれだけの攻撃を放ったというのに、まだヴィクトリオンの動きに衰えがない。いや、現実にはエネルギーも底をつきかけているだろうが、そんなそぶりさえ、そこからは感じさせない。

 

 なぜなら、彼にもこの決闘に勝ちたい理由があるから。

 

『俺は勝ちたいっ! だって、俺はこの決闘がとても楽しいからっ! 君という素晴らしい後輩と、その美しいモビルスーツと一対一で戦えるっ! これがロマンじゃなくて何なんだっ!! 俺は憧れたロマンの中にいるっ!! だったら、俺の考える最強のロボットと一緒に勝利を目指したいっ!』

 

 だからこそ、これだけ戦えるのだと。手本を示すように。

 

 交差しながらエアリアルはヴィクトリオンと切り結ぶ。その巨大な体と同じくらい強い一撃一撃。そしてその攻撃はエアリアルとスレッタを急かすようで、

 

「わ、わたしは……」

 

 声は最初は小さく、

 

「わたしだって、勝ちたいですっ……!」

 

 しかしだんだん大きくなり、

 

「だって! だって……!!」

 

 そして発せられた声は、学園中に響いた。

 

 

 

『だって私、ミオリネさんが大好きだからっ!!!!!!』

 

 

 

 その突然の告白に、

 

「……………………………は?」

 

 ミオリネは観客席で聞いて頭を真っ白にさせ、

 

「てめえら……なんで俺をそんな目で見るっ……!?」

 

 グエルは周囲の生徒全員から同情の視線を浴びた。

 

 一瞬の静寂。そして驚き、ざわめくアスティカシア。

 

 学園中を一斉に駆け巡るのは『三角関係勃発』『時代は百合』『スレミオてえてえ』などの文面。学生記者たちは事実を確認しようとグエルとシャディクの元へと走り、解説席のシャディクは忽然と姿を消した。

 

 そして、スレッタ派とロマン男派で分かれていた観客席も一斉に『あらー』とほほえましいものを見るように変わっていくのだが……そんな周囲の状況を知るよしもない二人は、決闘をさらに白熱させていく。

 

 お互いの機体を、武器をぶつけ合わせ、ロマン男に煽られるまま、スレッタは大声で叫びをあげる。彼女の戦う理由を、勝ちたい理由を。

 

「私が知ってるミオリネさんは、とっても優しい人ですっ! 学校のことを案内してくれて、困ったときは守るって言ってくれて! エアリアルと私のために、お父さんにも立ち向かってくれました!」

 

「不安になってたら手を握ってくれて、ぶっきらぼうだけどお話するときは目を見てくれてっ! この間も寮が見つからない間は泊めてくれて、夜が寒かったら一緒のベッドに入れてくれましたっ!!」

 

「私はそんなミオリネさんが大好きですっ! 大切な友達ですっ!!」

 

 繰り返し言うが、これは学園にライブで流れている。

 

 その間『ちょっとっ! 誰でもいいからあの子を止めなさいよっ!!』と顔を真っ赤にした女帝が観客席で暴れて『あらあらうふふ』とほほ笑む女生徒たちに羽交い絞めにされたり、グエルが真っ白に燃え尽きたり、一部生徒から『ミオリネママぁ……』などと新たな性癖が開かれる音がしたりするが、真剣に叫ぶスレッタには届かない。

 

 とにかく、スレッタがこの戦いに挑んだのも、ひとえにミオリネのため。

 

 この数日、ミオリネの学内での様子を見聞きしたスレッタは、どうしてもミオリネに言いたいのだ。

 

「なのに、周りのみんなはミオリネさんは酷い人だって、血も涙もない女帝とか、悪代官とか、お父さんよりひどい独裁者とかっ!!

 でも、違うんですっ! ミオリネさんは分かりにくいけど、ちゃんと優しい人なんですっ!!」

 

『だから、君はこの決闘でミオリネを止めに来たんだなっ!?』

 

「はいっ!! 私は決闘に勝ちますっ! それでミオリネさんに伝えるんですっ! みんなを怖がらせなくても、大丈夫だって! ミオリネさんは優しい人だから、ちゃんと話し合えばみんな協力してくれるって!!!!」

 

 一人でもあんなにすごいことができるミオリネ・レンブランという友達。だったら、一人じゃなければ、もっともっと、素敵なことができる。お父さんも超えることも、世界を平和にすることも。

 

(大丈夫、ですっ! だって何があっても、私はちゃんと友達でいるからっ! みんなだって、きっと……!!)

 

 それは純粋で、まだ大人の世界を知らずに友情の尊さを信じている……いや、今まさに感じている少女だから言えること。

 

 そして、ロマン男はそれを聞いて、満開の笑顔を浮かべながら涙した。

 

『嗚呼、なんて美しい友情っ!! これぞ、ロマン! 最高のロマンっ!! 俺は、この瞬間に立ち会えて幸せだっ……! 見事っ! 見事だよ、スレッタさん!』

 

 妖怪も認めるしかない。この少女はもう学園に来たばかりの転校生でも、手を引いてあげないといけないただの後輩でもない。強く優しい戦士であり、なによりも輝くロマンの体現者。

 

 そうロマン妖怪にとって、リスペクトすべき相手だ。

 

『だったらもう、俺は遠慮しない……!』

 

 己が望みをかなえたいならば、

 

『この俺に、勝って見せろよっ!! スレッタ・マーキュリーっ!!!!』

 

 ロマン男は叫び、機体の全エネルギーを燃やし尽くしながら、最後の攻撃に挑んだ。

 

 己が乗り越えるべき壁となり、少女の物語を完遂させるために。

 

 とるべき一手はもちろん、左手に残されたアレ。

 

『ひっさつぅうううううううう!!』

 

 突進しながら引き絞られる左手。スパークを上げるほどに回転し、おそらく反応ができないほどの速度で飛び出してくる質量弾。

 

 それはロマン男の叫びとともに、エアリアルへと向かう……

 

『ロケットパァアアアアア「そこですっ!!!!」……なにっ!?』

 

 はずだった。

 

 発射の直前、エアリアルが最大出力でヴィクトリオンの懐へと飛び込んできたのだ。

 

(先輩の言ったとおりだね、エアリアル。叫ぶと、力が湧いて……怖くないっ!!)

 

 スレッタとエアリアルの、文字通り覚悟を決めたカウンター。

 

 突き出された拳は突進してきたエアリアルの肩をかすめ、その装甲を弾き飛ばす。しかし、それだけ。目標を失ったロケットパンチは、試験区域の地面へと一直線に向かっていった。

 

 そして、

 

「私とエアリアルの、勝ちですっ!」

 

『ふっ、見事っ……!!』

 

 スレッタが下から切り上げたビームサーベルが、ヴィクトリオンのV字のブレードアンテナを切り落とした。

 

 

 

『勝者 スレッタ・マーキュリー』

 

 

 

 空中に浮かぶ文字に、またも爆発的に湧き上がる歓声。それを聞きながら、スレッタはコクピットの中で愛機へとほほ笑む。

 

「ふぅ、ふぅ……。やったね、エアリアル」

 

 とても疲れたけれど、なんだかとっても暑いけれど、だけれどすっきりした決闘。

 

 そして、そんな良い勝負のラストは、いつも決まっている。

 

『……負けたよ、スレッタさん。いいロマンをありがとう』

 

「こ、こちらこそっ! アドバイスありがとう、ございましたっ……!」

 

『いいんだよ。君は大切な後輩だから。……絶対に、次もまた勝負しようっ!』

 

「……はいっ!」

 

 空中で頷き合う、二機のモビルスーツ。

 

 二人のロマンあふれる決闘は、見ている誰もの心に熱いものを残し、こうして終幕となった。

 

 その後、この決闘は学内に『スレミオはガチ』派、『スレミオは友情』派とを生み出し、両派の終わらない長き論争の引き金になるのだが、それは別の話。

 

 ちなみにこれも恥ずかしい告白に入れるべきではという有識者の意見もあったが『恥ずかしくない、尊い』という多数派の抗議を受けて、その有識者は川に投げ捨てられ、そしてなぜかグエルがまた、全世界トレンド一位を取ることになった。

 

 

 

 さて、そんな決闘だが、まだ後始末というより後日談がある。

 

「スレッタァアアアアアア!! あんた、なにやってくれてんのよ!?」

 

「ご、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! で、でも、やっぱりミオリネさんには他の人と仲良くしてもらいたくてっ!!」

 

「っ~~~~!! せっかく築いてきた私のイメージがぁ……!!」

 

 ミオリネ農園にて、スレッタは顔を真っ赤にしたミオリネに思い切り頬を引っ張られていた。

 

 両者による決闘は一区切りがつき、あとは敗者が条件を受け入れる、つまりは農園アルバイトたちの待遇改善を行うだけ。この場はその会であったのだが、その前にスレッタとミオリネはお話しないといけないことが多すぎた。

 

「で、でもっ……なんでだめなんですか? ミオリネさん、ほんとにいい人なのに……」

 

「っ……。いい人でいても、私には得がないのよ。どうせ、アンタやあいつら以外は敵ばっかり。なら、恐れられていた方が気が楽なの。……性にもあっているしね」

 

 面倒なのは、ミオリネが"いい人"だというのも"ドライ"だというのも、どちらも真実であるということ。

 

 根は世話焼きでありながら、冷徹なビジネスウーマンとして演出していた面もあれば、父親譲りのプライドの高さや決断力の高さで、他の意見を一刀両断してしまう独裁者気質もミオリネ本人のもの。

 

 スレッタになにを言われたとて、急に優しい聖人になどはなれないと、ミオリネも分かっている。

 

 だけれど、

 

(……冷徹な、独裁者よりはマシね)

 

 自分で世界を変えてやると決めてから、それこそ父親すら超えて自由になってやろうと進んできた。けれど、他人からはそのまんま嫌悪する父親の生き写しと見られ続けるのも、それはそれで腹立たしいことに違いない。

 

 ミオリネはデリングになりたいのではなく、デリングを倒したいのだから。

 

「だったらスレッタさんの言った通り、仲間をもっと作った方がいいんじゃないか? そっちの方が主人公っぽいしロマンあるから」

 

「バカに心の中を読まれたくないんだけど……。ったく、バカのくせに好き勝手に言ってくれるわ……」

 

 だが、あの決闘の場でもまっすぐに自分を慕ってくれるスレッタを「信用できない」とか「仲間じゃない」と拒絶することもできないのが自分だと、ミオリネは分かっている。

 

 なので、そういう自分を受け止めて、妥協するしかない。

 

「はぁ……、アンタたちっ!」

 

 ミオリネは大きく息を吐くと、アルバイトの面々に分厚い冊子を見せた。

 

「み、ミオリネさん……? それって?」

 

「どうせバカが負けるって思って、用意していたのよ。従業員の待遇を改善した契約書をね」

 

 おおっ!とオジェロとチュチュから喜びの声が上がる。だが、

 

「ただし、これは文句が一欠けらも出ないようにガチガチに規約を定めた"書類上は"従業員に優しい契約! ……だったけど、やめたわ」

 

 ビリビリ、とミオリネは契約書を破り捨てて丸めると、ぽいとゴミ箱へ放り投げた。

 

 ミオリネは少しだけ、ほんの少しだけ自省をしながら言葉を紡ぐ。

 

「確かにアンタたちの意見も、一部は正論ね。人を雇うのに意見も聞かないなら、機械だけに任せた方がいいもの……。それに、こんなにこじれさせたら、最初の目的が達成できない」

 

「目的……?」

 

「トマトって地球の野菜でしょ? これから品種改良とか、生産をさらに拡大するときに地球出身者ならいい意見をもらえるかもって思ったのよ」

 

「なるほど、だから私たち地球寮を中心に集めたわけだ」

 

「そういうこと」

 

 なので、とミオリネは腕を組み、全員を見渡しながら言う。

 

「雇用条件見直しにあたり、アンタたちの意見をちゃんと取り入れるわ。……一緒に、いい仕事をしていきましょ」

 

「「「うぉおおおおおお!!」」」

 

「ただしっ!!!!」

 

「「「っ!?」」」

 

 ミオリネはそこで空恐ろしい顔をした。

 

「信頼する分、責任もたーっぷり押し付けるから! 特に意図的なサボりのペナルティは、さらに重くするっ! わかったわね!!」

 

 その言葉に主に男子二人が崩れ落ちるが、さすがにこればかりは先輩たちもチュチュも、かばう気は起きない。

 

「まっ、あーしらも対等っていうなら、文句言うことはねえな」

 

 とのことだ。

 

 こうして一つの争いに終止符が打たれ、ミオリネ農園はミオリネと地球寮中心に運営されるようになる。そして、もう一つの問題も。

 

 

 

「スレッタだが、地球寮に入ることになったよ。特にチュチュが懐いてね、あの子は姉のような存在が欲しかったみたいだ」

 

「へぇーっ! そりゃよかった!」

 

 地球寮の中に作られた真新しい動物飼育小屋。何十匹もヤギや鶏が快適そうに暮らしているそこで、アリヤとロマン男は並んでエサをやりながら会話を弾ませていた。

 

 スレッタの入寮が決まったことを説明したいと、アリヤが呼び出したのだ。

 

「ミオリネの奴も、媚び売ってくる連中よりも地球寮の子のほうが安全だって言ってたし、これがベストな選択だと思うよ」

 

「そんな他人事のようなことを言っているけれど、本当は君の狙い通りだったんじゃないかな? 農園に連れてきたタイミングなんて、特にばっちりだったじゃないか」

 

「いや、ないないっ! スレッタさんがスレッタさんらしく生活できる場所って考えたら、アリヤたちのところがいいんじゃないかって思ったくらいだよ。あんなことが起こるとか思ってなかったから。同級生を信じてくれって」

 

「同級生だからこそ、君ならもしかして……って思ったりするんだけどね」

 

 君はやさしすぎる人だから、とアリヤは小声でつぶやく。

 

 何度も自分たちを助けてくれたように、後輩のためなら、なんでもしてしまいそうだ、と。

 

 だが、それを言うのは無粋だし、いい結果に水を差すだけのものでしかない。

 

「とにかく、スレッタのことは任せてくれ。ティルとマルタン、それから私で面倒をみよう。それと悪いギャンブルだけは教えさせないようにするから安心してくれ」

 

「任せたっ!」

 

「任された。ああ、それと、これは個人的な頼みでもあるんだが……たまには、うちにも遊びに来てくれないか? 最近、占いの腕もまた上がっててね」

 

「へぇーっ、どんなの?」

 

「ふふっ♪ 知りたいかい?」

 

 そしてアリヤは微笑むと、一年生の頃から変わらない、少年みたいな顔を見つめながら言った。

 

「恋占い。……きっと、いい結果を伝えられると思うよ」




ということで、ミオリネ+オリ主くんの章でした。

オリ主だけ目立たせるよりも、原作キャラを動かしたり変化させるついでとして、オリ主を描くのが好きだったりします。

次回はちょっと閑話を挟みつつ、〇〇〇くんの章を進めていきます。
来年もよろしくお願いいたします。

よろしければ年の最後に、
評価、感想などもいただけると嬉しいです。

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