アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男 作:カサノリ
その日、スレッタ・マーキュリーは運搬船の無重力の中で夢想していた。
今から自分が向かい、通う学校とはどんなところだろう、と。
優しい人がいっぱいだったらいいな。友達もいっぱい作りたいな。やりたいことリストはたっぷりあるけど、卒業までに全部埋められたらいいな。ちゃんと勉強して、お母さんとみんなの役に立ちたいな。
家族であるエアリアルとの二人旅。初めての水星以外の場所。そして、初めての学校。
不安がないわけじゃない。聞いた話だと何人も同じ年ごろの学生が通うと聞いているし、その中でまともにふるまえるか、ドラマや創作みたいないじめにあったりしないかなんて暗い想像もしてしまいそうになる。
だけれども、それ以上のワクワクがスレッタの胸には詰まっている。
そして、
「あれが……学校!」
宇宙に浮かぶ大きなフロント。そこに広がる場所こそ、スレッタの通うアスティカシア学園。
あと小一時間もすれば運搬船が着陸して、スレッタは入学する……はずだったのだが。
「…………あれ?」
窓から乗り出して学園を見ていたスレッタの眼の端に、人影が映った気がした。
さらに目を凝らしてみると、それは間違いなく宇宙服を着た人間で。さらには誰かを呼ぶように両手を大きく振っている。
(遭難者……!)
スレッタは大慌てで走り出す。過酷な水星環境で人命救助にあたっていたスレッタにとって、この状況は見過ごせるものではなかった。
エアリアルに乗り込み、運搬船のスタッフによる制止もかまわず、宙へと発進。全力で急ぎつつ、けれども脆い人体を壊さないようにと慎重に人影へと接近する。
するとその人影がワタワタとさらに大げさに慌てだした。
まるで『ちょっ! まだこっち来ないで!』とでも言いたげな様子。だけれど、スレッタはそれを必死に救助の手にしがみつこうとしていると思い込み、
「もう大丈夫です! 安心して…………って、えぇ!?」
次の瞬間、目を丸くして驚きの声を上げた。
なぜならスレッタの眼前、学園の方角からいくつものミサイルのようなものが発射され、それがスレッタ達のところへと向かってきたのだから。
そして、
パン!パンパン!!
ど派手な音と、カラフルな色をまき散らしながらスレッタとエアリアルよりちょっと離れたところで爆発したのだった。
けれど、目をつぶったスレッタに衝撃も、痛みももたらされない。
なぜなら、
「……わぁ♪」
それは決して攻撃などではない、信号弾を利用した花火。
宇宙の漆黒の中ではそれはひときわ輝いていて、スレッタは思わず頬を緩ませてうっとりと見入ってしまった。けれど、その手の平には救助者の姿があるはずで。
「はっ! ご、ごめんなさい! はやく助けないと!!」
テンパりながらスレッタはエアリアルの手の中にいる人へとカメラを向ける。まさか見入っている間に限界を迎えてたりは、と不吉な想像が頭をよぎるが、
「……へ?」
今度もまたスレッタは目を丸くして驚いてしまった。
その宇宙服を着た人影。体格から見るに男の人だろう。その男はヘルメット越しに満面の笑顔を浮かべながら、
『サプライズ♪ ようこそアスティカシアへ!!』
などと書かれた布を広げていたのだから。
機動戦士ガンダム 水星の魔女
アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男
「ほんっとごめん! ごめんなさい! 驚かせてごめんなさい!」
「ほらほら、もっと誠心誠意謝る! 土下座よ、土下座! 無駄に高い身長をへこへこさせているだけでどうにかなるとでも思ってんの?」
「あ、あのぉ……も、もうそのへんで……」
「駄目よ。このバカを通り越した大馬鹿ロマン中毒に甘い顔をしたら、もっと大変な目にあうわよアンタ」
「お、おおばか、ろまん……?」
「ごめんなさい!!」
数時間後、アスティカシアの校舎にて。
スレッタは困惑したまま、目の前で頭を下げている金髪の男子生徒と、それを罵り倒す銀髪の女生徒のやり取りを見ていた。
金髪の男はアスム・ロンドというらしい。あの宇宙で遭難、もといウェルカムサプライズの準備をしていた宇宙服の中身。
彼の計画によれば、もう数十分スレッタの到着は遅くなるはずで、そのころにはドローンを使ったでかいメッセージを仕込んでいる予定だったそうな。
「そ・れ・を! なんでアンタが宇宙に出て待っているのよ!?」
「いやぁ、たまには宇宙に揺られたいし? ちゃんと計画通りに打ち上げできるかなぁって最終確認?」
「ど馬鹿!!」
「そ、そのへんでいいですからぁ!!」
とにかくスレッタとしては早くこの騒動を収めたかった。すでに道行く生徒の話題の的になっているし「またロンドだよ」「あのロマン男」などとひそひそ声まで聞こえてくる。
元からこんなにたくさんの人を知らないスレッタは、注目されるのにも慣れていない。このままでは緊張でちぎれてしまいそうだとも思い始める。
そしてそんな様子が銀髪の少女にも伝わったのだろう。
「はぁ……、いいわ。ここまでにしといてあげる。この子のほうが先にまいっちゃいそうだしね」
「あ、でっ! でも! あのサプライズ! う、うれしかった、です!!」
「ほら見ろ!」
「ふんっ!!」
スパンと、あまりにもキレがいい手刀がロマン男を襲った。
「とにかく! アスティカシア高等専門学園へようこそ、スレッタ・マーキュリーさん。委員長として君の転入を歓迎するよ!」
「委員長……?」
「こいつは学生自治会のトップなのよ。っていうか、立ち上げた張本人でもあるけどね」
「は、はぁ……」
「簡単に言えば、学園をもっと楽しく、もっと愉快にしていこうってイベントを企画する部署なんだよ! 転入生のお出迎えもその一つさ!」
「はぁ……、そのアンタはともかくなんで私まで……」
「そりゃ、ミオリネ様はうちの女王ですから」
「次、くだらない口を叩いたら、女王らしく首を落としてあげるわよ?」
またアスムは土下座をかました。
ひたすらに男が調子に乗って、ミオリネという少女が叩き潰している関係。なのだが、そこには敵意のようなものはなく、当たり前のような空気感が存在する。そんな二人をスレッタが不思議そうに見つめていたことに気づいたのだろう。ミオリネはため息を吐きつつ言う。
「あ、気にしなくていいわよ。こいつ、私の幼馴染だから。正確にはあと一人いるんだけどね。昔からバカが直らないから、調教してあげてんの」
「そ、それ! 知ってます! 『あんたのこと、放っておけないのよ』とか言って、恋に落ちたり……!」
「ハァ!?」
「ひぃいいい! な、なんでもないです!」
「ミオリネさんミオリネさん、スレッタさんがおびえ切ってるから」
「誰のせいよ! 誰の!!!!」
数分後、ようやくと喧嘩が落ち着いたらしい二人は、スレッタを連れて学園の案内を始めた。
「な、なるほど! ミオリネさんは、学園の理事長さんの娘さん! なんですね……!」
「どうしようもない糞親父だけどね。ま、だからここにいる間は、あいつの権力と立場を使い倒してやろうって決めたの」
「それだけじゃなくて、スレッタさんと同学年。しかも経営戦略科じゃ断然トップなんだよね。だから学園を案内するなら適任だと思って誘ったんだ」
「と、トップ……!」
「ふん! 当然よ。いつかはこいつの会社も、糞親父のグループも全部掌握してやるわ」
トップという言葉に、スレッタは脳裏で玉座に座り下々へと命令を下しているミオリネの姿を思い浮かべる。いささか以上に独裁者なイメージだが、現実のミオリネを見るとそれが本物になりそうだ。
一方で冷たい印象を与えるが、ミオリネへの過剰な恐れは浮かばない。わかりやすく友好的なアスムとはタイプが違うが、なんとなくいい人ではあるのだとわかるのだ。時折、スレッタのほうを気づかわし気に伺ってくれているからかもしれない。
「それで? スレッタさんは質問あるかい? なんでも聞いていいよ! 自慢じゃないけど、ここは俺たちのホームだからね!」
「え、えっと……それじゃあ、あの……」
その人好きしそうな笑顔に、スレッタも少し緊張感を緩めて尋ね始める。聞きたいことは山ほどあった。
授業の難しさ、学園の広さ、食堂のメニューといった質問メモからの抜粋。それに加えて、家族であるエアリアルの整備環境に、
「えぇ!? りょ、寮って、自分で選ばないと、だめ、なんですか?」
「アンタ、推薦企業は……って、そっか水星のシン・セーだもんね。あそこにそこまでの影響力はないか」
「は、はい……」
「だから不安にさせない! 大丈夫大丈夫、いろんな寮の上のほうには俺からお願いしておいたから、希望の寮に入れるはずだよ。こう見えても、俺は学園全員と友達だからね!」
「お、おぉー!!」
「嘘つきなさい。半分からは死ぬほど嫌われているわよ、アンタ」
「えぇ!?」
「将来、グループでの出世をもくろんでる連中からすれば、遊びだ! 青春だ! ロマンだ! って騒ぎまくっているこいつはうっとうしいに決まってるでしょ?」
「そ、そうなん、ですか……!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ! みんなツンデレなだけだよ!」
多分に苦しい言い訳だった。
けれど、とスレッタは先ほどから感じる視線の種類に気がつく。一つは友好的なもの。学園でも有名なのだろう二人に挟まれているスレッタを好奇の眼で見つつも、小さく手を振ってくれたり、微笑んでくれたりする。
もう一つは、とても冷たいもの。陽気に笑う少年を見ては、舌打ちをしたり、露骨に目をそらそうとしている。
ミオリネが言う通り、この少年に対する評価は二分されているのだろう。
「で、でも……」
スレッタはぎゅっと手を握って考える。
不安だった自分を出迎えてくれたこと。案内してくれたこと。質問も、スレッタのペースに任せてくれたこと。学校の中でいろいろとあるかもしれないが、それは彼女の中で"いい人"に分類するには十分で、
「わ、わたしはアスムさんのこと、いい人だと思います!……! それでわたし、も。行事、参加してみたい……です!」
逃げたら一つ、進めば二つ。
母親からの教え。
この人と仲良くなってみようと思うのは、きっといいことなのだと思えた。
するとアスムはニコリと満面の笑みを浮かべ、
「ありがとうっ! それじゃあ、さっそくだけど我が校の伝統行事、やってみない?」
「は、はい……?」
「じゃあ、案内するよ。決闘へ!」
「わぁ……! 広いし、きれーですね」
「いいでしょ? 決闘委員会のラウンジ。うちで一番豪華な部屋だと思うよ」
スレッタが案内されたのは、演習場を見渡せる大きな窓がついた部屋だった。半円形に並んだ椅子は革張りになっていて、座り心地はいかにも良さそう。
そしてその部屋にはすでに何人かの学生がくつろいでおり。
「シャディクー! 決闘やりたいんだけどー!」
アスムがとても気やすい調子で、長髪の男性に手を振った。
「まったく、相変わらず突然だな、君は。
もちろんこちらは決闘委員会だから調整してあげるけど、けっこう手続きとか大変なんだよ?」
「そこは俺とお前の仲ってことで! よろしくぅ!」
ビシッとサムズアップするアスムと、はいはいと手をひらひら振りながらうなずくシャディク。すると、
「まあ、こうなるとは思っていたから準備は進めておいたよ。
そちらが例の水星ちゃんだね?」
シャディクはちらりとスレッタを見た。
そして優雅な歩き方でスレッタの前に来ると、手を差し伸べて挨拶をするのだ。
「シャディク・ゼネリだ、よろしく。君と同じパイロット科の三年で、決闘委員会の委員長を務めている」
「それに俺たちの幼馴染!」
「腐れ縁ってだけよ」
「ははっ、おかげで苦労させられているよ」
「よ、よろしくおねがいします!
そ、それで、その……決闘って……?」
スレッタは戸惑いながら質問する。今まで学校の参考にしてきた漫画や雑誌には、そんな物騒なワードが出てくることはなかった。
するとシャディクは苦笑しながら、うなずく。その戸惑いは当然だと。
「うちの学園では生徒のもめごとが起こったときに、仲裁方法に決闘を使うんだ。簡単に言えばモビルスーツの模擬戦だよ」
「な、なるほど……」
「ただ、最近は本来の目的から離れて、娯楽イベントにもなってきたんだけどね。どっかの誰かさんのせいで」
それは間違いなく、シャディクの後ろで得意げな顔をしているアスムのことだろう。言われた当人はといえば、
「企業間の代理戦争とか、堅苦しいの嫌じゃん!
一対一だぜ? ロマンを求めよう! ロマンを!」
「ああいう変な奴だけど、悪く思わないでくれよ?
いいところも多少はあるから」
「多少かよ!?」
「せいぜい1パーセントくらいね」
涼しい顔ですごいこと言う人たちだなとスレッタは思った。
「でも、大きなことを賭けずに決闘を体験してみるのもいいっていうのには同意だね。
それで? 水星ちゃんは誰と決闘してみたい?
発案者のアスム相手もいいけど、初心者には向かないと思うんだよね。アスムの戦い方は、とびきりの際物だから」
「で、でも、私、まだ知り合いも少ないですし……」
「はいはい! シャディク先生!」
「なんだい、小学生レベルに退化したアスム・ロンド君?」
「俺に提案があります!」
「って、なんで俺が田舎者の相手なんか……!!」
『そういうなって! ホルダーのグエル相手なら、負けてもスレッタさんの経歴に傷はつかないし、お前ならいい感じに手加減もできるだろ?』
「第二位のてめえでも、三位のシャディクでもいいだろ! もしくはエランだ!」
『シャディクはスレッタさんへの説明役。エラン君はちょっと固すぎて圧倒しすぎちゃうかもしれんし。いい感じに花を持たせて勝てるのはグエルだよ』
これでも、ちゃんと信頼してんだから。と、通信越しにアスムが言うと、ディランザのコクピットでグエルは鼻を鳴らした。
「……いいぜ。ただし、俺が勝ったら、お前に代償を払ってもらう」
『おっ! いいね! なにする、なにする!?』
「なんで嬉しそうなんだよ! ……次の決闘の時は、変なギミックはなしにしろ」
『ロケットパンチも? ブレストミサイルも?』
『そうだ。……ふざけなしの真剣勝負をしろ』
(ふざけてるつもりはないんだけどなぁ……)
と心の中で呟きつつ、アスムは同意する。
『わかった。約束だ』
「はっ……! なら決闘成立だ。あの田舎者なんざ、すぐに倒してやる」
『だからお手柔らかにって言ってんだろ!?』
アスムはグエルとの通信を切り、ため息を吐くと、今まさにコクピットに乗ろうとしているスレッタへと話しかけた。
「ということで、スレッタさんのペナルティとか気にしなくていいから。思う存分、楽しんできてよ」
「は、はい……!」
「大丈夫? 緊張してるみたいだけど」
「い、いきなり、一番のパイロットさんって聞いたら……」
「大丈夫、大丈夫♪ 一番ってことは、それだけ操縦もうまいから。この機体も壊したりしないって」
アスムはそういって、エアリアルという機体を見上げる。
白と青に赤のアクセント。軍事用の無骨さがなく、女性的なフォルムで神々しささえ感じる。
(ロマンだ……)
目を閉じて、しばし空想の中を泳ぐ。このエアリアルには主役を張れるポテンシャルがあると感じた。次クールの新機体案として、提案するのもいいかもしれない。
「あ、あのぉ……? アスムさん?」
「あぁ、ごめん。ちょっとロマンに浸ってた。それでなんだい? スレッタさん」
「……そ、その、私とエアリアル、勝っても、いいんですよね?」
「もちろん! 無理に負けろとか、八百長しろとか言わないよ! 転校生が勝利するなんてロマンだし! むしろそっちのほうが俺は嬉しい!」
だが、
「でもちょっと意外だね。スレッタさんが、そういうこと言うなんて」
するとスレッタは少し頬を染め、俯きながら言うのだ。
「逃げたら一つ、進めば二つ手に入るって、お母さんから教わったんです。だから、負けるつもりで戦うよりも、勝つつもりで戦ったら、きっとたくさん手に入るって、思ったから」
「そっか……」
アスムはそれを聞くと、満面の笑顔ではなく、ふと微笑むような表情を見せる。
「だったら君の力、見せてきな!」
「は、はい……!!」
「スレッタだっけ? あの子、度胸あるわね」
「おや? ミオリネもあの子のこと、気になるのかい?」
「別に、純粋すぎて苦労しそうねってだけよ。今日が終わればもう会うこともないでしょうけど」
「いやぁ、まさかまさかグエルを倒して、ホルダーになっちゃったり?」
「その時はミオリネに花嫁ができちゃうわけだね」
「バカとバカとバカが三つ巴で争ってるよりマシよねー。女の子のほうが華があるもの。
ま、誰がトップになったところで、最後は私が独裁してやるけど」
「うわぁ、この子、野心バリバリでロマンあるわー。
あ、でも、うちの会社はみんなロマン心ある社員ばかりなので。みんな俺の類友なので覚悟しておいて」
「シャディク、アンタ絶対にこいつは潰しときなさい。女帝になる前に、過労死させられるわ」
「ははは、了解。あ、俺は辞退する気ないから。それは理解してくれよ?」
「…………知ってるわよ」
「おっ!! 始まる!!」
ラウンジで見つめる三人の前で、決闘が始まる。
片や、現役ナンバーワンのパイロット、グエル・ジェターク。
そして対するは水星からやってきた転入生、スレッタ・マーキュリー。
それはどう考えても、思い出作りやウェルカムパーティーの一環であり、なんの波乱もなくグエルの勝利で終わるはずのイベント。
スレッタはすこし奮闘して、だけれどもグエルが勝利して、それで学園の一員として受け入れられるというシナリオは……
脆くも崩れ去る。
『なんなんだ、その機体は……!』
『なんなんだ、お前は……!!』
縦横無尽に飛び回るガンビット、それは機械仕掛けとは思えない、意思のあるような動きでグエルのディランザに迫り、四方八方からビームを浴びせて文字通りのダルマに機体を変えてしまう。
開始一分にも満たない、瞬殺。
『えっと……勝てちゃいましたけど? いいん、ですよね?』
この瞬間、ホルダーの座は謎の転入生の手にわたり……、
「……まずいな、フロント管理社だ」
「ちょっと、あのバカは!?」
響くアラート、降り立つ管理社の武装MS。それらは棒立ちとなったエアリアルとスレッタへと迫り、
『ガンダムを使用した嫌疑で、君の身柄とそのモビルスーツを拘束する!!』
「ま、待ってください! が、ガンダムってなんのことですか!?」
『早く投降しなさい! さもなくば……!』
しかしその銃口がエアリアルたちに向くことはなかった。
中空から一線、ビームライフルの光が舞い降り、管理社のMSは、手にした銃を破壊されたからだ。
「……え?」
茫然とスレッタが見上げた先には、
「あの、モビルスーツは……?」
『おい……、いまは決闘の最中だろうが……』
それは誰もが夢見るような、ロマンにあふれたロボット……のはずだった。
だが、アラートの赤色光が暗闇に点滅する中、照らされたそれはあまりにも凶悪で、乗っている者の敵意を反映するようで……
大人たちが乗るMSが動揺に震える中、怒りに満ちた声が響き渡る。
『大人がロマンの、青春の……、邪魔するんじゃねえよ……!』
平和な学園生活です。平和です。