アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男 作:カサノリ
やっぱり二日にいっぺんくらいの投稿ペースが安定しそうですので、今週からそうしていきたいと思います。
『モビルスーツとはなんであろうか』
その存在が当たり前となったアド・ステラの時代に、そんな問いをすれば、答えは千差万別のものが返ってくるだろう。
ある者は人型の機動兵器であると言う。
またある者は精密技術の粋だと言う。
さらにある者は悪魔の力だというかもしれない。
そしてかつて、とある研究者はとあるモビルスーツを『人類がゆりかごから抜け出すための服』だと称したし、とある学園のとある少年はロマンの塊だと叫ぶだろう。
それは兵器にして兵器にあらず、機械にして機械にあらず。
だからこそ、モビルスーツに人は惹かれるのかもしれない。
機動戦士ガンダム 水星の魔女
アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男
体育祭三日目。
三日にわたって繰り広げられた青春の祭典の最終日であり、最も華やかで最もエネルギッシュな光景がみられる日でもある。
その理由は、この開会式の光景を見るだけでわかるだろう。
見事に修復された広大な競技場の真ん中に並ぶ、形や色も様々なモビルスーツたち。
ジェタークのディランザ、ペイルのザウォート、グラスレーのハインドリーといった最新鋭機から、デミトレーナーにベネリットグループに所属する企業が開発したあらゆるモビルスーツが勢ぞろい。
中にはどこかのロマン男に感化された学生が『古きモノこそロマン!』と言って、20年以上前のハイングラをレストアして持ってきたりもしている。
そしてもちろん、ロマン男の目立ちまくって仕方ない自作スーパーロボットも並んでいる。
だが、何よりも観客の目を引くものはそれらではない。何よりも観客が待ち望んでいた、一目見たいと思いながらやってきた目当ての機体がある。
……そう、エアリアルだ。
「ママ―、見て見てっ! ほんもののエアリアルだよーっ!」
「あれが水星から来たモビルスーツか……」
「はぁはぁ……! エアリアルきゅん、はぁはぁ……! ほわぁっ!?」
「「エアリアルくん(ちゃん)によからぬこと考えているんじゃねぇえええ!!」」
一部の不埒者な学生は影の『エアリアル保護同盟』によって川に投げ込まれ、凶暴なピラニアの餌食になったりしているが、平和で一般的な観客は話題に事欠かないどこか可愛らしいモビルスーツに夢中。
なにせグエルを全世界的アイドルにしたあの決闘で、エアリアルの姿も世界へ向けて示された。
ヒロイックで目立つトリコロールカラー。見る者によって少年にも少女にも見える柔らかく温かみのある外見。そして、ダリルバルデを真正面から打ち破ってみせたMSとしての力。
この宇宙において、エアリアルほど注目を浴びているMSはない。
屋台でもエアリアルの風船や1/100スケールの精巧なプラモデル(ロングロンド社が旧時代から復興した文化の一つである)が販売され、転売目的の賊を排除しながら、求める人々全員に小さなエアリアルが届けられている。
そんなエアリアルをはじめ、かっこいいモビルスーツが集結しているのだから、盛り上がらないはずがない。
体育祭三日目。誰が呼んだかモビルスーツ博覧会。
企業の威信や学生のプライド、そして友情努力勝利ももちろん詰め込まれた、祭のラストを彩る華やかな一日である。
そんな一日を盛り上げるのだから、競技も生半可なものではない。
開会式が終わって小一時間ほど、既に各所で熱気が渦巻いている。
「もってけ、ダブルだ!!」
「ちょっせいっ!!」
「やったぜ狂い咲きぃ……!!」
ガトリングやらミサイルポッドやら誘導弾やらを装備した射撃カスタムされたモビルスーツたちがアスティカシアの空に汚くはないけれど綺麗じゃない花火を咲かせたり、
「真っ向唐竹割り!!」
「ここからが俺のステージだぁああああ!!」
「ウェーイ!!」
かと思えば「武器なんて捨ててかかってこい」と言われた後のように、遠距離武器をわざわざ本当に投げ捨ててから実体剣でどつき合ったり、
「光になれぇええええええ!!」
「月は出ているか……!」
「ディランザフィンガあああああ!!!!」
「はいだらぁああああああ」
校内でやるんじゃねえと文句が出るほどの高出力の攻撃を放つ、武器の威力コンテストをしたり。
そんなMSのカッコよさや魅力が表現できるように……いや、半ば実行委員会たちの趣味ではあるが、計算された競技が開催されていく。
企業側としても初日にブリオン社に出番を取られた分を取り返そうと、なるべく目立つように学生たちをサポートしていくのだから、もう際限がない。
もちろん最初の頃は、本当の意味での『学生の遊び』に付き合うことはないとジェターク社などはあからさまにやる気を見せていなかった。わざわざ最新鋭機を衆目にさらす必要はないと。
しかし、ひとたび世界に映像が流されて、そこで活躍した御三家外のMSに受注が集中すると、もうプライドは投げ捨てるしかない。ジェターク社、いやヴィム・ジェタークCEOも苦虫を嚙み潰したような顔でディランザなどの投入を決定した。
今ではなるべく企業イメージを壊さないよう正攻法で、だけれど抱えた職人達がMSの晴れ舞台だとやる気を出してとんでもないことをしてしまうという想定外に苦しめられたりしながらも、体育祭を許している。
結局、どんなに時が進んだところで新人類になったわけでもない。かっこよく活躍したロボットへ人は好意を持つし、人々から人気のある装備を行政も組織も買いたがるものなのだから。
とにもかくにも、そうして企業が総力を挙げて取り組む三日目。
そのハイライトとなる種目が始まっていた。
「ひぃ……! ひぃ……! な、なんで俺がこんな目にぃ……!!」
砂塵が巻き起こる砂漠地帯の中をひた走る一体のデミトレーナー。
それに乗り込み、悲鳴をあげているのは地球寮の二年生、オジェロだ。
彼が挑んでいるのは、三日目の中でも最も過酷で最も盛り上がると言われる『寮対抗リレー』。各寮から3体のモビルスーツで挑む、寮の実力を真っ向勝負させる種目である。
その第一ステージは砂漠地帯。
当然ながら精密機械であるMSに細かい砂塵は天敵であるし、重量の大きい機動兵器に流動する砂漠は動かしにくい場所。少しの油断が転倒から行動不能につながる。
ちなみにこのレースは行動不能になった時点で次の走者を待たずしてリタイアとなり、順位も記録されない。あくまで完走した寮だけが評価される。
そんなレースに賭けで負けたペナルティとして参加しているオジェロだが……
「もう勘弁してくれぇええ!!」
悲鳴がさらにデカくなる。
なぜならオジェロのデミトレーナーは走るというより、飛ばされていた。
デミトレの身長くらいはある巨大なプロペラントタンクと、そこに直結したこれまた巨大なジェット推進器。
それは『カットビング』などと銘打ってロングロンド社が受注生産する超高速推進器。
使ったユーザーの誰が呼んだか『地獄への片道切符』。
直線では無類の速さを誇る代わりに、操縦性の全てを投げ捨てた装備なのだから。
『ぜってえに、なんとしても活躍するぞっ!!』
チュチュを筆頭にやる気を見せている地球寮が、パイロット科でもないオジェロというハンデをなるべく軽減するために選んだのがこの方法。複雑な操縦やらなにやらは必要なく、ただミサイルを背負って吹っ飛べばいいと。
ただ、
「ぶ、ぶつかるぅううう!!」
オジェロは命の危険に涙しながら、間一髪で障害物の岩を回避していく。そのたびに大きくコースをそれるが、何とかコースへ戻るということを繰り返していく。
明らかに操縦技術に見合っていない装備なので、一事が万事そんな調子。
なのでオジェロの順位はビリではないものの、後方になっている。
その一方で先頭では
『アクセルシンクロォオオオオオオ!!!!』
『光が、俺にも光が見える……!!』
『これが諦めないってことだあああああ!!』
『ギア弄ったっけ、ロー入っちゃって、もうウィリーさ』
謎の光のわっかを生み出して走るバイク型装備に乗ったハインドリーや、なぜかウマみたいなしっぽをつけたロングロンドのMSやら、ダルマを乗せてウィリー走行をしているディランザらしきものがトップ争いをしている。
その中でもトップに立っているのは、
『さあ諸君、俺がゴールするのを止められるかな?』
『ドーピングパーメットエンジンだ』
何やらコクピットで血管を浮かび上がらせたペイル寮の三年生とその愛機の緑色のザウォートだ。彼は後日、
『ドーピングパーメットって、それつまりGUND-ARMじゃね?』
と、査察に入られて『人体にはよくない影響がありそうだけどガンダムじゃない』判定を受けて事なきを得るのだが、それはまた別の話。
とにかく観客をいろんな形で楽しませながら第一走者は砂漠を走り切り、オジェロもまた、
「ひぃ……ひぃ……、な、なんとかはしりきったぞ……」
「おっしゃ! あとはあーしに任せろっ!」
殺人的加速の圧とプレッシャーにボロボロになりながら、第二走者のチュチュへとバトンタッチする。その傍らでは他の地球寮メンバーが装備の点検をしたり、コースの戦略を決めるなどサポート中。
実はこのレース、大まかな各コースの概要は伝えられているが、当日になるまで具体的なコース情報やコースの状態は非公開になっている。
この種目の目的は寮の総合力を評価するというものなので、メカニックや戦略も含めて、その場でどれだけ対応できるかも重要なのだ。
なので、チュチュ機も直前まで装備の換装などの準備が行われており、
『うん、もう大丈夫。行っていいよ、チュチュ』
メカニックとして最終点検を終えたティルの合図で、チュチュ機が出発する。
チュチュはコクピットで好戦的な顔をしながら、にやりと口角を上げた。
第二ステージは森林。
さっきまでのように直線というわけではなく、曲がりくねっているうえに、触れるとペナルティで数秒足止めされてしまうダミーバルーンが山のように迫ってくるという障害物コースだ。
しかし、オジェロを待つ間にスペーシアンたちに先を越されたフラストレーションをため込んだバーサーカーチュチュにとっては、良いストレス発散である。
「うらぁあああああ!! ゴートゥーヘルっ!! まとめてお陀仏だぁあああ!!」
バルーンにはちょうどいいからともたされた打撃武器『クギ★バット』を片手に殴るは、ふっとばすは撃つわであらゆる障害を壊しながらの大爆走。
外から来た観客たちはスペーシアンが多いので、最初はアーシアンチームということから地球寮を侮っていたが、そんなチュチュの絵になる奮闘っぷりを見てボルテージを高めていく。
そしてアスティカシア学園生は『このバーサーカーにはケンカを売らない』と改めて桃色の狂犬への恐怖に震えた。
そんな強引な方法で順位を上げていくチュチュだが、敵もさるもの。
先頭グループで今度目立ったのは何故か腕を六本も生やしたロングロンド寮の数量限定量産型ヴィクトリオンであり、ロマン男の信奉者である二年生が乗っている。
彼は、
「オラオラオラオラっ!!」
「ドララララララァ!!」
「WRYYYYYYY!!!!」
「無駄無駄無駄無駄、むだぁああああ!!」
と増えた腕をつかって漫画みたいなパンチラッシュを披露、障害物などないかのように走っていく。コクピットの中での彼は、それはもう最高の笑顔であったという。
御三家の機体もまた、方法は違えど同様に障害物を排除していった。
この時点でチュチュの順位は先頭集団からは離されつつも中段の位置には届いていたが、先頭集団にはまだ距離がある。けれど、それは地球寮の作戦通り。
なにせアンカーを任されているのは、エアリアルなのだから。
「姉御っ! 任せたぞっ!!」
『エアリアル、発進どーぞ』
「は、はい……! エアリアル、行きますっ……!!」
ピットゾーンでバトンタッチしたエアリアルが飛翔する。
最後に待つのはアクロバットゾーンとも呼ばれるコースで、進行方向に設置されたフープをくぐることがルールになっている。重力の状態はこれまで同様、地球地表上に設定されており、サブフライトシステムがない状態では精密なジャンプと飛行を繰り返すことが求められる。
(でも、エアリアルなら)
エアリアルはエスカッシャンを構成するビットを各部にドッキングさせたビットオンフォーム。全身に推進器を装備した状態なので、こうした精密行動には向いていた。
まるで空をひらひらと自由に舞う蝶のように、エアリアルは観客に優雅な姿を見せながらフープを潜り抜けていく。
ライバルたちもフライトユニットを背中に装備したり、なぜか円盤状になって飛んでいたり、カニみたいなゲテモノまで飛んでいる始末だが、エアリアルにはかなわず順位を明け渡していった。
そしてようやくゴールが見え始めたというところで、スレッタとエアリアルは先頭集団の後ろを捉え、
『待っていたぞ、水星女……!』
「うひゃぁあああ!?」
先頭を行くディランザからばらまかれたチャフにスレッタは目を丸くした。
チャフを巻いたのは緑色に塗装されてバックには高機動用のジェットパックを装備したディランザ。それを駆るのはグエルではない。
『今日ここでお前に勝ち、兄さんの目を覚ましてやるっ!』
「……こ、この声は」
スレッタはチャフを回避しながら考える。聞こえてくるその声には覚えがあったからだ。
確かグエルと話をしているとき、グエルをよく呼びに来ている男の人のもので……。
「あっ……!」
スレッタはそこでようやく思い出す。
声の主には目立った特徴があったと。そしてスレッタは大声で、彼のことを呼ぶのだ。
「グエルさんファンクラブ一号さん!!」
『0号だぁああああああ!!!!』
「ひぃっ! ごめんなさいっ!?」
そして会長でもある。
そう先頭を争うディランザに乗っているのは、グエルの弟であるラウダだった。
グエルと彼のディランザは学年選抜戦に万全を期すためと、このレースを欠席。だが寮の威信をかけた戦いのアンカーは、グエルが最も信頼する者に任せたい。だからとグエルは、ラウダに託した。
『ラウダ……お前はジェタークの柱となれ』
夕日の中で肩を叩かれながら言われた言葉。
それは妖怪が見れば『青春だぁあああ!!』と叫ぶほどにドラマチックであったという。
託されたラウダは当然ながら燃えている。
コクピットをグエルグッズで埋め尽くしながら、魂を燃やしてレースをしていた。
『トップをとるのはジェタークだっ! 落ちろ、水星女ァ!!!!』
いや、魂を燃やしたどころか、四方八方を敬愛するグエルの顔に囲まれて最高にハイになっていた。
ゴールへの執念と半ば私怨の混じったのがこの妨害行為。とはいえ、このレースで妨害行為はルール違反ではない。
形式上は模擬演習なので、相手の邪魔をしようが何しようがあり。それが目立たないのはそんなことをして足の引っ張り合いをしていたら御三家たちにさっさとゴールをされてしまうからという事情に他ならない。
だが、エアリアルの猛追の前に、その先頭集団が肝を冷やしてしまった。
目の前に見えたゴール。そこに自分たちが入るまで、エアリアルを遅らせなければいけない、と。エアリアルの前方から雨あられと様々な妨害物が流れてくる。
チャフから小型のミサイル、それになぜかキノコに甲羅やバナナの皮みたいなスタン装置まで。
(だめっ、このままじゃ……!)
スレッタはエアリアルのコクピットで歯噛みする。
ただでさえフープをくぐっていかなければいけないというのに、前から飛んでくる飛来物まで意識しなければいけない。かといってビットオンフォームを解除してビットを防御に回すとしたら、今、追い上げられている勢いを失ってしまう。
「こ、こんなときどうすれば……!」
スレッタは考える。
お母さんなら、ミオリネなら、グエルなら、そしてロマン先輩ならどうするか、と。
そしてふと、妖怪の声がスレッタの脳裏に思い浮かんだ。
『なに? みんなが前をゆずってくれない?』
『スレッタさん、それは無理矢理抜こうとするからだよ』
『逆に考えるんだ』
『「あげちゃってもいいさ」と考えるんだ』
穏やかな顔をした先輩の大きな顔が青空の中に浮かんでいた。
そして、
「わ、わかりました……!」
スレッタは何故か答えを得た。そういう顔をした紳士という名の妖怪のアドバイスに間違いはないとなぜか思ったからだ。
次にとったスレッタの行動。それはラウダを含めて先頭集団全員を驚愕させることになる。
「エアリアル、お願いっ!!」
『な、なにィっ!?』
エアリアルが空中で止まったのだ。
急に、ぴたりと。
レースに勝つためには進まなければいけない。スレッタの行動はその真逆を行くもの。
しかし、
『くっ! あいつの行動予想が狂った!!』
ラウダは狼狽する。
元々、ラウダたちがまき散らしていたチャフなどは、エアリアルの行動を予想して自動的に散布しているものが大半だ。自分たちもフープをくぐるという精密行動をしている中で、後ろにまで常時目を向けることはできない。
ここまでうまくいっていたのもエアリアルが最大出力、最短ルートで追いかけていたから。つまり、エアリアルの位置は彼らにとってまるわかりだった。
しかし、その動きが止まる。それはほんの一瞬だったが既に撒かれたチャフはエアリアルの横を通り抜けて、妨害物のない空白地帯が生まれた。
その隙をエアリアルとスレッタは逃がさない。
「行こっ、エアリアル!」
エアリアルのデュアルアイが、大切な家族の呼びかけに応えるように光る。
そして全身のビットが火を噴き、エアリアルは加速した。
それはラウダたちの想定よりも早く、とうとうエアリアルを先頭集団の端に到達させてしまう。
ラウダは顔を歪ませ、叫ぶ。
彼には兄をどう考えても愉快な道に誘い込んでいる水星女への恨み+嫉妬もあるが、それ以上にジェターク寮を背負う責任もあったからだ。
『くっ、負けられない……! お前にだけは負けられないっ……!』
「そ、それは私も同じですっ……!」
スレッタもレース前に地球寮の仲間から託されている。
しかし、それはラウダとは違う。だからこそ、あのような行動もとれた。
『一位を無理に目指さなくてもいい。だけれど、絶対にゴールをしよう』
それがスレッタだけじゃなく、地球寮のメンバー全員の悲願。今まで一度もこの土俵に立てなかった彼らの、はじめの一歩。
だからスレッタとラウダでは前提条件が違うのだ。スレッタにとっての負けとはリタイアであり、妨害に屈することだから。
スレッタは叫ぶ。
「優勝は、あなたに譲りますっ! だけど、だけど……! "私たちの勝ち"は譲りませんっ!!」
『くっ……! そういうところが……!』
そしてラウダのディランザがゴールをくぐる。
一位、ジェターク寮。
それは寮にとって大きな名誉であるはずなのに、ラウダはどこか負けた気持ちになって唇をかんだ。
そして、
『おぉーっと! これはこれはまさかの結果っ!! 地球寮、四位に入ったーっ!! すごいぞエアリアルっ! いや、地球寮が頑張ったっ!!』
スレッタ達の結果は四位。
だけれどもその四位という順位に与えられた拍手と賞賛は、ジェタークへのそれを大きく超えていた。
学園の全員が分かっている。いくらエアリアルがいたとしても、地獄を見たオジェロがいなければ追いつけないほどの差が開いていたし、バーサークチュチュが暴れなければ中央集団でスレッタにバトンを渡すことができなかった。
なによりその装備や作戦を立てたのは地球寮の限られたメンバーの力。
このレースは、寮の総合力を競うもの。
『確かに個々の力は弱かったが、地球寮の作戦と絆は御三家にも負けなかった』
それが閉会式にてロマン男が地球寮へ向けた、そして学園全員が抱いた彼らの奮闘へのねぎらいだった。