アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男   作:カサノリ

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28. 舞い降りる翼

「オジェロ、そこ遅れてんぞー。もっときびきびやらねーと時間きちまうって」

 

「お、おれ、さっきまでとんでもねー目に遭ってたんだけど……?」

 

「そりゃお前の自業自得だろ……」

 

 地球寮の格納庫にて、エアリアルのメンテナンスが急ピッチで進められていた。

 

 先ほどの寮対抗リレーでエアリアルは盛大な活躍をしたが、それはまだこの祭の序の口。あと数時間でメインイベントである学年選抜戦が開催されるのだ。

 

 それは寮の得点につながったりはしないが、間違いなく全学園が注目するイベント。

 

 なのでロマン男を初め、選抜戦の出場選手は自分たちの寮の仲間にリレーを託して、自身の機体は温存していた。なにせ何度も述べるが、モビルスーツは精密機械の塊。デミトレーナーほど整備性に優れていたらいくつもの競技に出場できるが、エアリアルのような最高の技術の結晶は、作戦行動ごとにちゃんとメンテナンスをしなければ事故や不具合の元となってしまう。

 

 スレッタとエアリアルがリレーに出場したのはある意味特殊な例で、地球寮の層の薄さが原因。

 

 しかし、学年選抜戦でもスレッタ達が注目されているのは当然の事実。なので、地球寮総員でエアリアルの徹底的なメンテナンスが行われていた。

 

 自分たちはよい結果を得られた。だからといって、次の戦いでスレッタに恥をかかせては立つ瀬がないと。

 

 そしてそんな中でスレッタは、

 

「じゅ、準備できました……!」

 

 早々にパイロットスーツに着替えて、格納庫へとスレッタがやってきた。

 

「おー、似合ってるじゃん」

 

「スレッタ先輩、かっこいいですっ!」

 

 ヌーノとリリッケがその恰好を見て素直にほめる。

 

 スレッタの恰好はいつものホルダーの証である白いパイロットスーツではなかった。

 

 アスティカシアのパイロットスーツはデータを入れることで色や模様を変えられる。その機能を使った今日だけの特別なパイロットスーツである。それはスレッタの髪色を模したのだろうか、赤を基調にして肩にはかっこいいシンボルマークまでつけられている。

 

「い、イリーシャさんがデザインしてくれたんですっ……! おんなじチームの証です!」

 

「うん、良く似合っているよ。どうやらチームのみんなともうまくやれているみたいだね?」

 

「はい……! ちゃんと連絡先も交換できました!」

 

 スレッタはアリヤへと照れくさそうに学生手帳を見せる。

 

 確かにそこには、新しく十九人の名前が登録されていた。

 

 アリヤはかわいい後輩が無事に交友関係を広げられたことに安堵しながら、スレッタの肩を優しく叩く。

 

「それじゃあ、あとは楽しんでおいで。スレッタは私たちにたくさん力を貸してくれたんだから、地球寮を背負うとかは考えなくていい。ただ楽しんでくれれば私たちも嬉しいよ」

 

「ありがとうございます。……でも、やっぱり私は楽しむだけじゃなくて、がんばりたいです」

 

 スレッタは思う。

 

 この三日間のお祭りはとても楽しかったと。

 

 たくさんの人に注目されて緊張もしたし、思い通りの結果にならなくてがっかりしたことももちろんあった。だけれど本当にこの祭はスレッタにとって大切な思い出で、一生忘れられないと確信している。

 

 その最後の種目なのだから、当然勝ちたい。

 

 地球寮の仲間も、新しくできた友人や後輩も自分に期待してくれているのだから、その期待に応えたい。みんなに喜んでほしい。

 

「グエルさんも、シャディクさんも、先輩たちも……とっても強い人たちです。だけど、」

 

 

 

「私とエアリアルは、負けませんっ!」

 

 

 

 スレッタは決意を込めて、そう宣言した。 

 

 

 

 機動戦士ガンダム 水星の魔女

 アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男

 

 

 

「お? 早いな、もう着替え終わったんだ」

 

「ああ、今日は手間がかかるレネもいなくてな、準備も早々に終わったんだ」

 

 三年生チームの控室にロマン男が入ったとき、そこには先にサビーナが座っていた。彼女もロマン男と同様に三年生チームがデザインした黒を基調とした専用スーツを着て、準備万端という様子。

 

 ロマン男はそんな彼女の横に腰を下ろすと、満足そうな、だけれども少し寂しそうなため息を吐いた。

 

「毎年思うんだけど、この試合が始まるときってロマンの気配にドキドキして……だけどやっぱり名残惜しくなるんだよな。もうすぐ体育祭は終わりかって」

 

「お前にとっても最後の体育祭だろう。これだけ力を注いできたんだから、当然の感傷だ。……今更だが、お前は本当によくやっている」

 

「……そういうサビーナはどうだった?」

 

 少年はサビーナの顔を見つめながら問いかける。少しだけ、彼には気がかりなことがあった。

 

「ほら、今回は実行委員会に協力してくれてさ、すごい助かったけど、サビーナは他の競技には出ていなかっただろ? ちゃんと、思い出とか作れてたのかなって」

 

 その言葉にサビーナは少し驚いたように目を開いて、だけれどすぐに微笑みを浮かべた。いつも冷静と厳しさをもった彼女にしては、珍しい穏やかな表情だった。

 

「私がこういうことを重視していないのは知っているだろう? 残念だとは思っていない。むしろ……」

 

 サビーナは少し言い淀みながら思い返す。

 

 元々、サビーナはグラスレーの女生徒代表として、実行委員会に入ることはせずに競技専任で出場する予定だった。所属するグラスレーの名前を広めることが、シャディクや自分たちの役に立つと思っていたからだ。

 

 だが、それに待ったをかけたのは、彼女が支えるシャディクだった。

 

 グラスレーの談話室で、シャディクはサビーナと二人っきりの時にこう言ったのだ。

 

『一人、実行委員会に人を貸してほしいってあいつから頼まれていてね、サビーナが行ってくれないか?』

 

『……どうして私が? 寮としての戦略を考えるなら、競技に出場しない学生を出した方がいいだろう』

 

『ああ、もちろんそれは分かってる。……だけど、これまで支えてくれたサビーナにおせっかいをしたいと思ったんだ』

 

『……それは』

 

 シャディクはサビーナと長い付き合いだ。それはもう、ただの同級生で終わらないほどの付き合いだ。

 

 後ろ暗いこともお互いの秘密も知り尽くしている。

 

 だからこそ、彼女が秘めた気持ちもまた知っていた。

 

『実行委員会ならあいつと一緒に行動できる。ただの選手としてではなくて、あいつを支えてあげられる。……それは、君にとっていい思い出になるんじゃないかって俺は思った』

 

『……本当におせっかいだな。私は今の関係で満足している』

 

『言葉の上では、ね。……だけど、俺がミオリネに対してそうだったように、こういう気持ちに満足なんてものはないんだ』

 

『…………』

 

『俺との私的な関係はともかく、グラスレーとロングロンドの間に業務提携はない。このままグラスレー社に入れば、サビーナがあいつと簡単に会うことはできなくなるだろう。なにせ君も重役候補で、相手はライバル企業の社長だ。周りからどう見られるかをわからない俺達じゃない』

 

 それに何より、なにかを起こさない限りはサビーナもシャディクも会社に身を捧げなければいけない立場だ。あるいは会社のためにと政略結婚のようなものまで仕組まれてしまう可能性を否定できないのが彼女たち。

 

『最後に決めるのは君の意思。だけれど、気持ちを封じるにせよ、賭けに出るにせよ、俺は君の仲間としてチャンスを作ってあげたい。ああ、あとは君が素直になれる言い訳としても『サビーナがあいつの横にいてくれるなら、俺は安心して競技に集中できる』なんてどうかな? あいつはストッパーがいないと何をするか予想がつかないからね』

 

 そう言ってシャディクは、サビーナに判断をゆだねた。

 

 そしてサビーナもまた決断し、実行委員会に入って、ロマン男と共に大会のために働いた。

 

(……ああ、そうだな。お前の言う通りだ、シャディク)

 

 サビーナは思い返しながら苦笑いをする。

 

 大会の準備のために走り回ったり、トラブルが発生したら走り回ったり、ロマン妖怪がロマンの発作を起こして変なことをしようとしていたので走り回ったり、彼の後輩がさらにロマンを爆発させようとして走り回ったり。

 

 休まるときなんてない慌ただしい時間だったが、それを楽しくないと言うのは嘘だった。

 

 だから、横に座る少年へとサビーナは心を込めて言った。

 

「……楽しかったさ。私は……お前と一緒に働けて、本当に楽しかった」

 

「……サビーナ」

 

「っ……、こほん、なにを終わったような空気を出しているんだろうな、私は。気を取り直すぞロングロンド。この戦いで勝利しなければ、有終の美とはならないからな」

 

 そして、とサビーナは目つきを鋭くしてドアの方をにらみつける。

 

「そこで聞いているシャディクとエナオ、早く入ってこい」

 

「……ガイアが私に聞き耳を立てろとささやいていたのよ」

 

「俺はエナオがそう言うから、ついね」

 

「…………後で覚悟しておけよ、お前たち」

 

 どうせいい雰囲気だからと邪推して、わざと二人きりにしていたのだろう。そう考えたサビーナは、声を低くしておせっかいな仲間へと言う。

 

 一方で横の少年はといえば何もわかっていないという風に目をきょとんとさせ、

 

「シャディクとエナオも早くこっち座れよ! 最後の作戦会議と行こうぜ!!」

 

 なんて元気よく言うのだった。

 

 

 

 そして各チームの代表選手がそろい、

 

『長く、それでいて短い祭も、とうとうこの一戦で閉幕っ! だけれどきっと、みんなもこの戦いを見たくてうずうずしていたに違いないっ!!

 学年選抜、オールスター戦! いよいよ開幕ですっ!! 実況は私、今日は体育祭実行委員会としてきておりますドゥーエ・イスナン。そして解説は……!』

 

『はーい♪ 決闘委員会のセセリア・ドートと』

 

『同じくロウジ・チャンテです……』

 

『お二人ともありがとうございますっ! さて、改めてルール説明となりますが、この戦いは実行委員会が選抜した三年生チーム十名。そして一、二年生チーム二十名による団体戦となります』

 

『えっと……ルールは決闘委員会で採用している集団戦、つまりフラッグ機を撃破した段階でそのチームの勝利となります』

 

『なので、あのえっぐいほどオールスターな三年生チーム相手にも、一二年生が勝てるチャンスは十分にありますよ♪ でも、これで負けちゃったら、先輩たちのお株が地の底ですねー♪』

 

『ただ決闘の集団戦と違って、フラッグ機以外もブレードアンテナが破壊された時点で行動不能となります。倒れても倒れても立ち上がるゾンビ戦術はできないということです』

 

 実況解説が流れる中、アスティカシア学園の生徒ほぼ全員と観客はメイン競技場の観客席に座り、競技場の中央に設置された巨大なモニターから戦場である宇宙空間を見る。

 

 そこはビーコンによって区分けされつつも広大な範囲をもっており、計三十機のMSが動き回っても支障がないほどのステージ。そして避難場所や障害物として大小の隕石が配置されていた。

 

 ちなみに宇宙空間での戦闘のため、実弾は禁止されている。

 

『さてルール説明をしているうちに、もう入場の時間がやってきました! まずは一、二年合同チームからですっ! 三年生の牙城を崩せるかっ! そして全世界注目のエアリアルは活躍できるのかっ!』

 

 実況のそんな大声は、当然ながらスレッタ達にも届いていた。

 

 全員がコクピットに乗り込み、おそろいの赤いパイロットスーツに身を包んだ二十人は、最後に気合を入れるためと全員でモニター越しに顔を合わせる。

 

「みんな、準備はいいよね?」

 

「あったりまえだっての♪」

 

「グエル先輩に、私の力を見せてやるんだからっ!」

 

「うぅ……不安だけど、私もがんばるね?」

 

 そしてスレッタもまた、

 

「が、がが、がんばりますっ……!」

 

 地球寮の仲間には負けませんと気合を入れて言ったが、やはり緊張はしている様子。

 

 だけれど逃げ腰になるのではなく、自分なりに精いっぱいの勇気を込めていた。

 

 メイジー達はそんなスレッタの様子をほほえましく笑って、最後にスポーツで円陣を組んだ時のように言う。

 

「それじゃ、みんな行くよ……!」

 

「「「「チーム一二年生、勝つぞぉおおおお!!!!」」」」

 

 そして各機は広い宇宙へと飛び出した。

 

「LP011、メイジー・メイ!!」

 

「LP012、イリーシャ・プラノ……」

 

「LP013、レネ・コスタ♪」

 

「「「ハインドリー、出るっ!!」」」

 

 まずはグラスレー寮の二年生三人娘。美少女な彼女たちは学内でも人気が高く、競技場で発進の画面が映るたびに黄色い歓声が飛び交う。観客席には彼女たちの顔をプリントしたシャツを着こんで応援している男子生徒も少なからずいた。

 

 次いで、フェルシーもペトラが丹精を込めて塗り上げた水色のディランザで出撃し、

 

「LP041、スレッタ・マーキュリー! エアリアル、いきますっ……!」

 

 観客席と実況の盛大な拍手と歓声に見送られて、エアリアルもまた戦場へと飛び立った。

 

 

 

 一方でそんな様子を見ながら三年生チームもコクピットに乗り込み、最後の顔合わせを行っている。

 

「さすが水星ちゃん、すごい人気だね」

 

「そりゃあ、あんなにロマンある機体だからなっ♪ 盛り上がらないはずはないって! でもこっちだって人気は負けてねえぞ? なんせグエルがいるからなっ!!」

 

「うるせえよっ!? 誰のせいでこうなったと思ってる!?」

 

「えっと……グエルのせい?」

 

「お前が映像を流したからだろうが!?」

 

「ハイハイ、二人ともじゃれ合うのはそこまでにしてよ。はぁ……男子ってバカね、サビーナ」

 

「ああ、まったくだな……」

 

「まあまあ、これも俺達の学年らしいってことさ。ところで……」

 

 と、そこでシャディクはデリケートなものに触れるような調子で、とある少年へと話しかける。

 

「エランは大丈夫かい……?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「「「それ、大丈夫じゃないやつ……」」」

 

 答えたエランの目と言葉は死んでいた。

 

 それでいて諦めの境地に入ったようなそんな覚悟も感じられた。

 

 ロマン男を除く仲間たちは心の中で、そんなエランへと哀悼の気持ちを示す。なぜロマン男を除くかと言えば、彼はむしろ大興奮して喜んでいる側だったからだ。

 

「と、とにかく……! ……俺たちの晴れ舞台だ。後輩たちに高い壁を見せてやろう」

 

「ああ、エアリアルだろうと誰だろうと、負けられねぇっ!!」

 

「すべては最高のロマンのためにっ!!」

 

「………………どうして、こうなった」

 

 最後にぼそりとしたエランのつぶやきを残して、三年生チームも出撃していく。

 

「KP003、シャディク・ゼネリ。ハインドリー・カスタム、出る」

 

「KP001、グエル・ジェターク。ディランザ、出るぞっ!!」

 

「KS002、アスム・ロンド!! ヴィクトリオン・イェーガー、発進!!」

 

「KP015、エナオ・ジャズ……」

 

「KP014、サビーナ・ファルディン」

 

「「ハインドリー、出る」」

 

 その光景はまさしく壮観そのもの。

 

 二年生のレネ達と同様にアイドル的な人気をもつエナオとサビーナ、そして学内の女性が選ぶガチ恋ランキング一位のシャディクや、ご存じグエルには爆発的な歓声が浴びせられ、当然ながらロマン男にも同じくらいの賛辞も届いている。

 

『いやー、さすがは三年生。どの機体も立派なものですね……!』

 

『特に男子、かっこつけよねー♪ きっと全世界に中継されてるからって気合入ってるんですよアレ。グエルせんぱーい、またトレンド一位期待してますよ~』

 

『三年生チームは機体もほぼカスタムされていますから、見ごたえありますね。あ、今回出場する機体について、僕のホームページで解説を載せておきました。よければ見てください』

 

『さて続々と集結する三年生たち、だがこれはどういうことだ? エラン先輩の姿が見えないぞ!?』

 

 実況の声とともに、観客席でも戸惑いの声が広がっていく。

 

 順番を考えるならばロマン男の後には出てきてもおかしくなかったのに、音沙汰がないのだ。では欠席かと言えば、それも違う様子。三年生チームを乗せてきた運搬船のハッチは開いたままなのだから。

 

 そして、そのカタパルトの中で、エランは死んだ目をしながら気持ちを落ち着かせていた。

 

『エランの出撃は最後なっ! ぜったいに、観客が盛り上がるからっ!!』

 

 などと妖怪がたわごとを言ったせいでトリに回されたエラン。

 

(いや、そりゃ驚くだろうさ。僕だってこんなのに乗ってきたのを見たら驚くよ、驚いて正気を疑うよ。でも乗るしかないじゃないか。これしかないんだから……ああ、まったくあのバカはぜったいに後で〇す)

 

 心の中で自分を救ったくせに、さらなる地獄へと善意で叩き落そうとしてくるバカへと呪詛を一万回は唱え、エランはようやく操縦桿に手をかけた。

 

 なにがひどいかって、その機体はエランの音声認証がなければ起動しないため、恥ずかしい口上まで言わなければいけないこと。

 

 エランは嫌な汗をかきながら、言う。

 

「わ、わが身にまとう正義の翼よ! 輝く未来へ導き給え……!!」

 

 

 

「ファラクト・ブランシュ! 正義執行っ!!」

 

 

 最後はやけだった。

 

 そして、

 

『おぉっ! エラン先輩も発進っ! だ、だがあの機体は……! な、なんだアレ!?』

 

『あははははっ! ちょ、ちょっと待って!! エラン先輩、まじどうしちゃったの!?』

 

『おぉ……! 天使、ですね……』

 

 実況だけでなく映像を見ているものすべてが、そのエランの機体にくぎ付けとなる。

 

 かつてはエランにとっての棺桶でしかなかった黒い凶鳥『ファラクト』。だがそれは、ロマン男とその部下のメカニック……特に『主任』と呼ばれた男の肝いりで徹底的な改装が行われた。

 

 表向きはファラクトがガンダムであるとばれないための偽装。

 

 その真の目的は『こんな最新鋭機をいじれるんだっ! ロマンをもって理想を実現するしかない』というエアリアルで果たせなかった夢を叶えること。

 

 そう、ファラクトは生まれ変わった。

 

 白く。

 

 全身を覆うのはヒロイックな純白の装甲。

 

 両肩部に存在した可動式スラスターはオミットされ、その代わりに背部には三対の白い大型のウィングが搭載されている。

 

 しかもこれで完成形ではなく、『時間があれば羽が舞うようにしたかった』という。その主任の涙ながらの言葉を、エランは同じく唖然としていたベルメリアと共に聞いて、エランは時の神に感謝した。

 

 とにかく誰がどう見ても"天使"にしか見えない純白のMS、それがファラクト・ブランシュ。

 

 エランに与えられたロマンの象徴であり、もっと言えばそれはアニメ『ヴィクトリオン』にて登場する最大のライバル『ジャスティリオン』を彷彿とさせるもの。

 

 そして観客が『エランが壊れた」と困惑と興奮を示す中、ペイル社ではゴルネリ'sが飲んでいた紅茶をこぼし、ジェタークではヴィム・ジェタークが頭を抱え、ベネリットグループ本社では。

 

「これはガンダムか?」

 

「……が、ガンダムではないかと」

 

「……そうか」

 

 デリングも遠い目をしながらつぶやいていた。




ということで、モチーフはスノーホワイトです。

なにあの中二機体、カッコよすぎだろと興奮した思い出。

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