アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男   作:カサノリ

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今話は少し短かったですが、キリがいいので。


29. オールスター戦

「うおぉおおおお! やっぱり、やっぱり白い機体とエランは似合うと思ってたぁ!! いいなっ! 最高にロマンしてるっ!!」

 

「うるさい、黙れ。絶対にあとで〇す」

 

『ゲンキダセヨ、ゲンキダセヨ』

 

「しかもなんでハロが入っているんだ、コクピットの中に!!」

 

「あ、それ? ミオリネのところで一番優秀だったハロなんだけど、ファラクトのサポート役として買い取ったんだ。GUND-ARM使えない代わりに、姿勢制御やらいろいろと調整してくれるぜ!」

 

『マカセロ、マカセロ』

 

「……どうして、こんなに"濃い"声をしているんだ」

 

 それはどこか別の世界で『お前を殺す』やらなにやらエランと同じようなことを言った声に似ていた。

 

「まあ、これでエランも無事に出てきたし……!」

 

 ロマン男は並んだ仲間たちと、前方に同じく固まって待機している後輩チームたちを見る。

 

 総勢三十機の学園トップパイロットたち。

 

 後輩たちもファラクトの異質な姿にわずかにひるんだり、ロマン男の後輩は大興奮してカメラアイをビカビカ光らせたりしているが、大きな乱れはない。

 

「相手にとって不足なしっ!!」

 

 そのロマン男の言葉に、三年チームの誰もが同じ気持ちになった。

 

 全世界が注目している戦いを盛り上げるため、そして栄光を奪い合う相手として、彼らは立派なライバルであると。

 

 そして興奮の実況解説が流れる中で、とうとうカウントが開始される。

 

『いよいよ始まるアスティカシア学園頂上決戦!!』

 

 3、

 

『勝つのは歴代でも最強と言われる三年生か!』

 

 2、

 

『ダークホース、エアリアルを擁する一二年生か!』

 

 1、

 

『最高の戦いが、いま始まった!!!!』

 

 0!

 

「いくぜ、グエル!!」

 

「ふざけんな、お前がついてこいっ!!」

 

 カウント0とともに真っ先に飛び出したのは三年チームのグエルとロマン男だった。

 

 片やスパロボなヴィクトリオン。前回のエラン戦と違って、背部にジェットパックをつけた上に装甲も身軽そうな高機動の装備である。

 

 もう片方はグエルの専用紫のディランザ。頭につけた羽こそ取り払っているが、かつて幾度となく敵を打ち払ってきた愛機だ。

 

 対する後輩チームも、まずは先頭の二人を潰すという作戦だったのだろう。エアリアルからガンビットが分離して二人へとオールレンジ攻撃を始め、それに合わせて二十機のMSが一斉にビームライフルを斉射する。

 

 しかし、それだけで止まるのならば元ホルダーとそのライバルは務まらない。

 

「そういうのはもう、見飽きたんだよっ!!」

 

 ディランザがビームの嵐の中、加速する。

 

 グエルとてスレッタに惚れた弱みで研究を怠ったわけではない。むしろいざという時のためにビットの動きをよく研究して、効果的な回避や対処をできるようにしていた。

 

 十や二十のビームなど、ものともせずに敵の一団へと接近していく。

 

 そしてそれはロマン男も同じ、

 

「イェーガーパック、お披露目だっ!!」

 

 コクピットで楽しそうにそう叫ぶと、ヴィクトリオンの両足、両肩につけられたウェポンハッチから奇妙な武装が顔を見せる。それはかぎ爪のような形状の先端を持っており、

 

「こういう動き、やってみたかった!!」

 

 妖怪の歓喜の叫びとともに射出される。

 

 正体はまさしくアンカーと、それに結び付けられたワイヤー。それは障害物として設置された隕石へと突き刺さると、ヴィクトリオンの体を巻取りによって移動させ、通常の推進器では不可能なアクロバティックな動きでビームの嵐を回避させた。

 

 そしてそのまま、森を進むターザンのように縦横無尽な動きを見せる。

 

 ちなみにこの装備はファラクト戦でミサイルを撃ちまくったために予算不足となった開発部門が、選抜戦でロマンを何とか追及するために急造したもの。苦肉の策だったが、ロマン男はかなり気に入ったそうだ。

 

 曰く、なんか巨人でも相手にできそうとか。

 

「なんだあの装備っ!?」

 

「さすが我らがロマン先輩っ!! そこにしびれる憧れるゥ!!」

 

「興奮すんなっ! もうグエル先輩もロマン先輩も近くに……ぐわぁ!?」

 

 三年チームのフォワード二人の突撃に動揺する一年生。その一機が突如として頭部にビームライフルの狙撃を食らいリタイアする。

 

「おやおや、こっちのことも気を付けないとダメじゃないか」

 

 攻撃を放ったのはシャディク、そしてその周囲を固める中段の三年生チーム五機だ。

 

 シャディクはこの戦いをいくつかの段階に分けて戦略を練っていた。

 

 まず最初の段階は相手の連携を崩すというもの。

 

『水星ちゃんが冷酷非道な女の子だったら、味方もかまわず撃てるだろうけれど、あの子は優しいからね。混戦状態になったらビットの運用はかなり難しくなるはずだ』

 

 だからまずはグエルとロマン男が突撃して、相手の前衛から中衛の配置を崩すという作戦。

 

 そして崩れたところをシャディクたち中衛が狙撃していけば、エアリアルを封じつつ、問題である頭数を削ることができると。

 

 だが、

 

「そう来ると思ったよ! シャディクっ!!」

 

 二年生のメイジー達もシャディクとは古い付き合い。当然ながら、その作戦を読んでいた。

 

 だからこそ、対策もしている。

 

「グエル先輩っ! 胸、借りるっすよ!!」

 

「フェルシーかっ!!」

 

 グエルのディランザの動きを止めるように、水色のディランザが突撃したのだ。それに乗るのはもちろんフェルシー。

 

 彼女の役割は愛弟子としてグエルの足止めをすることだった。

 

 フェルシーは師匠を相手にすることへ喜びを感じながら、叫ぶ。

 

「私だって、ジェターク寮のパイロット! グエル先輩の陰に隠れてるだけじゃいられないっす!!」

 

「その気合、いいじゃねえかっ! 相手してやるよっ!」

 

 二機はもつれあいながらビームパルチザンで打ち合う。

 

 一つ一つの動きではグエルのほうが精度が高いが、それでもフェルシーも動きについていけていた。

 

 そしてもう一人のフォワードへも。

 

「わ、ワイヤーが巻き付いて!?」

 

「よっとっ!!」

 

 一年生のディランザの足にアンカーを刺したヴィクトリオンが、そのワイヤーを巻き取りながら急接近し、謎にぐるぐる回転しながらブレードアンテナを切断する。

 

 どう考えても普通にそんなことをしたら運転酔いして目を回しそうなものだが、やはり妖怪なのか、ロマン男は楽しそうな様子だった。

 

「これで二機目っ! ……っと、あぶねっ!?」

 

 しかしそこへ、

 

「ロマン先輩、みーつけたっ♪」

 

 突撃してきたハインドリーがビームサーベルを振りかざし、対するヴィクトリオンもサーベルで応じる。接触回線で声をかけてきた相手は、少年も見知った少女だった。

 

「やあ、レネちゃん! ずいぶん楽しそうじゃないかっ!」

 

「あはは♪ せんぱーい、どうして何度もデートに誘ったのに断るんですかぁ? レネ、傷ついちゃいますよぉ♪」

 

「うーん、なんか虫の予感がして……」

 

「ひどーい! そんな意地悪な先輩にはぁ……こうしちゃうんだから♪」

 

 声だけは全力で媚を売って、けれども剣撃には一つの媚もない。

 

 ハインドリーはディランザやザウォートと比べても可動域が広く、人に近い体型なのもあって操縦性に優れた機体だ。その特性を活かして、アクロバットな動きを繰り返すヴィクトリオンを抑え込んでいく。

 

「うん、二人とも作戦通りだね……」

 

 そんな様子を見て、スレッタの傍らで護衛兼指揮官を務めていたメイジーが満足げな顔をした。

 

 元々、三年生チームの構成としてグエルとロマン男が真っ先に突っ込んでくることは予想できていた。そんな二人に好き勝手やられれば、数の優位は崩れてしまうし、ビットによる援護射撃ができない状態にもっていかれればエアリアルを残して全滅。あとはエアリアルをタコ殴りさせてしまう。

 

 そこでフェルシーとレネだ。一二年生チームでも有数な実力者な彼女たちなら、フォワード二人の足止めはできる。そして足止めさえできれば、数で押せるのは後輩チーム。

 

「みんな、グエル君とロマン君を集中砲火! 一気に相手の中核を……」

 

 けれどそこでメイジーのハインドリーのセンサーが警報を鳴らした。

 

 メイジーは急ぎその反応を確認し、驚愕する。

 

「この速度……上からっ!?」

 

 彼女たちの上方向から、白い光が突っ込んできたのだ。

 

 十分に周囲の状況は確認していたというのに、この瞬間まで気づかれなかった。それはつまり、敵機はセンサーの感知しない範囲から一瞬でこの距離まで近づいたということ。

 

 そんな芸当ができる機体など、メイジーは知らず。そしてそれゆえに相手の正体を看破する。

 

「……っ、エラン君だねっ!!」

 

 見上げる頭上。そこにあるのは確かに、ふざけているとしか思えない天使の翼。

 

 その魔改造ファラクトを駆るエランは加速に耐えながら、しかし目標を見据えて言った。

 

「殺人的な、加速だ……!」

 

 ファラクト・ブランシュ。

 

 それはかつてのファラクトからスタンビットをオミットしたことによる戦力低下を、高機動型へと偏らせることで補った機体。

 

 元々のファラクト、そしてペイル社のお家芸が高機動であるので、フレームは加速に耐える強固、かつ軽量のものであった。その改造にあたり、各フレームをさらに補強し、背部の翼型をした大型スラスターの威力に耐えられるようにしてある。

 

 結果、コントロールは非常に難しいが、使いこなせれば戦場を高速でかき乱すトンデモ機体が生まれた。

 

 三年生チームの陣形の中で、白い流星を見るシャディクは笑みを浮かべる。

 

「メイジー、君ならグエルとアスムへの対処はできると思っていたよ。だけれど、真の一番槍は二人じゃない。……エランだ」

 

 その言葉通りにファラクトがメイジーのハインドリーを強襲しようとして……しかし、その前に立ちはだかったのは白と青のモビルスーツ。

 

「メイジーさん、私がいきますっ!」

 

「水星ちゃん!?」

 

「メイジーさんのほうが、私よりも大切です!」

 

 スレッタとエアリアルだ。

 

 スレッタはエアリアルのエスカッシャンでファラクトの突撃を受け止め、しかし勢いを殺し切れずにファラクトに押され、チームの中核から離脱する。

 

 だが、それこそスレッタの望み通りだった。

 

(私は、みんなの作戦指揮なんてできない……! でも、一対一なら負けない……!)

 

 一二年生チームにとって攻撃の核であり、勝利のカギであるのはエアリアル。だけれども全体の指揮をとれる点で重要なのはメイジーだ。

 

 スレッタもまだ短い付き合いだが、ミーティングでの作戦立案などでメイジーになら任せられるという気持ちがあった。

 

 ならばこそメイジーを守り、このイレギュラーを倒すのは自分の役目。

 

 そして戦場の中心から少し離れたところで、エアリアルと白いファラクトは向かい合った。

 

「驚いたね。君はフラッグ機だろう?」

 

「は、はい……! みんなに、任されました……!」

 

「だったら、誰を犠牲にしてでもこの攻撃はやり過ごすべきだった。……アイツならその行動もロマンだと言うだろうけど、僕は違う。

 ここで君を倒し、今すぐこの"呪われた機体"から降りてやる」

 

 エランの声は切実さにあふれていた。

 

 だが、スレッタはそんなエランの気迫を受け止めつつ、言い返す。

 

「私も、負けられません……! ここでエランさんを倒して、みんなのところに戻りますっ!!」

 

「だったら……!」

 

 

 

「スレッタ・マーキュリー。キミを……堕とす!」

 

 そうしていつかの日に実現しなかった、ガンダムVSガンダムが始まった。




形は違いますが、ようやくファラクトVSエアリアルです。



それと、ほんとにほんとに差し出がましいお願いではあるんですが、
めっちゃ私生活忙しい+二か月ノンストップで書き続けてきた結果、びみょーに気持ちが折れそうな危機感を感じています。

この後もニカさんとあれこれとか、シャディクとあれこれとか、グエキャンであれこれとか、エアリアルが魔改造であれこれとか、めちゃくちゃ書きたいネタはありまくりなので、折れたくないぃ……!

感想返信とかも頑張るので、評価とか入れて応援いただけると、すごくうれしいです……! よろしくお願いします!

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