アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男   作:カサノリ

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43. UNION

「おい、聞いたか!? ミオリネ・レンブランの話」

 

「ああ、あのお嬢さんがインキュベーションパーティーに出るって話だろ?

 確か九歳だか、十歳だっけ? バカだよなー。親父さんが総裁なんだから、黙ってれば一生安泰だってのに」

 

「しかも、あのシャディク・ゼネリまで一緒なんでしょ? シャディク君も頭いいって聞いたけど、わがままお嬢様に乗せられちゃったのかしら」

 

「資料は読んだけどさ、投資なんて受けられるわけないっての。目の付け所は良いけど、あんな子どもが経営なんてできるわけない! またデリング総裁への嫌がらせだろ? よくやるわ」

 

「で? 結果はどうなったの? あのミオリネちゃん、泣いちゃった?」

 

「それが……目標額が集まったらしい」

 

「「はぁ?!」」

 

「しかも、出資者は一人だって話だ」

 

「どこの誰だよ、そのバカは!? 金をどぶに捨てるようなもんだろ!?」

 

「デリング総裁にもグラスレーにもケンカ売ってるようなもんじゃない。ろくな死に方しないわよ……。一発逆転でも狙ったのかしら?」

 

「それが、そうでもないらしい……。だって、出資したのは」

 

 

 

 

「あの、アスム・ロンドだって話だ」

 

 

 

 

 機動戦士ガンダム 水星の魔女

 アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男

 

 

 

 当時のインキュベーションパーティーが終わった後に、そんな会話がベネリットグループの各部で交わされていた。

 

 どの場所でも、どの企業でも、どの立場でも、内容は大して変わらない。

 

 総裁のじゃじゃ馬娘、ミオリネ・レンブランが無謀にも起業を計画した。シャディク・ゼネリもそこに巻き込まれた。そして誰も相手にするはずがなかったのに、たった一人だけミオリネに投資した。

 

 しかも目標額を全額だという。

 

 普通ならばとんでもない嘘だと一笑に付す内容であり、仮に事実であっても小娘の思い付きに投資する大バカ者がグループにいたという笑い話。

 

 しかし、その出資者がアスム・ロンドだという話を聞いた途端、話を聞いた大多数は笑いを止めて、顔をひきつらせた。

 

 なぜなら、この頃のベネリットグループにはある空気があったからだ。

 

 アスム・ロンドという麒麟児は、手がけた全ての事業を必ず成功させると。

 

 そして、

 

「……いったい、どういうつもりよ?」

 

 当事者であるミオリネは、パーティー会場の近くの応接室でアスム・ロンドに相対していた。その顔には起業が成功したという喜びはない。むしろ困惑と警戒の色が色濃く出ている。

 

 ミオリネの隣にはシャディクが座っているが、彼もまたいつも浮かべていた軽薄な笑みがなく、相手の目的を見極めようとする真剣なまなざしがあった。

 

 ミオリネは静かに口を開く。

 

「アスム・ロンド。アンタのことは知ってる。確か昔、どっかのパーティーでも会ったことはあったわよね」

 

 目の前に座る、年齢相応に幼さを残した目をしている少年。どこまでも子供のようにワクワクと目を輝かせて、面白そうに口を弧にしている。

 

 その様子だけを見ると、ただ親に連れられて遊びに来た子供のようにしか見えないが、

 

「でも、そんなことより大事なのは、アンタがその歳で経営者として知られていること」

 

 まだ幼い少年が会長である祖父の後ろ盾があったとしても父親の会社を受け継ぎ、事業再編を通して多大なる利益をもたらしたという話を加えれば、異様という言葉しか出なくなる。

 

 ミオリネもその話は当然のごとく知っていたし、流れてくる話に一種の不気味さと、同年代に対する嫉妬のような感情を抱いていた。

 

(……二年前だったか、彼の家族が殺害された事件は)

 

 シャディクもまた脳裏に少年に対する情報を浮かべる。彼の立場からしても、アスム・ロンドは注目すべき人物であり、当然ながら下調べは済ませていた。

 

(当時、MSの関連機器メーカーとして名をはせていたロングロンド社は、彼の父親の元でMSそのものの開発から兵器転用までを進め、御三家に食い込むほどの勢いを見せていた。

 それが例のテロ事件のために、主導者である社長が死亡。その後も会社内で内紛騒ぎが起こったことで大きく勢いを減らしていたが……。そこで彼が現れた)

 

 内紛を鎮めると、兵器部門の大胆な売却と元々の主力部門だったMS装備品へ再注力。アスム・ロンドのアイデアをもとに製造されたそれらは独創的でありながら高品質で、各企業からの注文が殺到。

 

 さらにその売り上げを使って、アニメ・ゲームを中心に総合エンターテインメントを提供するコンテンツビジネスに新規参入し、それもまた大成功。ベネリットグループでの立ち位置も、悲劇に見舞われた落ち目のメーカーから、大躍進する注目株へと大きく変わっている。

 

 実際には彼自身にも大小さまざまな失敗があり、それが大事にならないように持ち前のバイタリティーで働きまくった結果、成功例だけが取りざたされているという話だが、傍から聞く限りにはどこかの物語にありそうな逆転劇。

 

 そしてそれは今回のミオリネの行動にも影響している。

 

 ミオリネはシャディクに対しても、アスム・ロンドへの嫉妬や対抗心のような気持ちを見せており、今回強行策に打って出たのも、その成功例を聞いていたからこそ、自分でもできるという思いがあったのだろうとシャディクは考えていた。

 

 父親の強権的な支配に対してなすすべもなかったミオリネが、同じ年ごろでありながらも自分の未来を自分で切り開いているように見える少年になにも思わないはずがない。

 

(ただの子供の対抗心……だったらよかったけどね)

 

 そんな周辺情報はともかく、シャディクが考えなければいけないのは、この事態への対処だ。

 

 この男が何を考えて自分たちに無謀な投資をしたのか、それを見極めなければいけない。

 

 なのでシャディクは誰にも悟られないように一息をつくと、薄い笑みを浮かべながら話し始めた。

 

「……アスム・ロンド、君はまさか遊びのつもりじゃないだろうね?」

 

「へぇ……遊びって?」

 

「知っての通り、これは僕とミオリネとが提案した事業だ。グラスレーのサリウスCEOもデリング総裁も関与していない。それどころか、今頃彼らは怒り心頭だろうね。

 君はそのことを想定し、投資したところで総裁の横やりが入ることを見越していたんじゃないかな?」

 

「つまり子供が勝手にやったことだからって、起業の件はパアになるかもってことか」

 

「そう。そしてその場合でも……君は利益を得られる。

 投資金はすべて回収できるし、なによりあの会場で名前を大いに売ることができた。自社を急成長させたカリスマというイメージを強く押し出すことができるだろう」

 

 シャディクが言っているのは、彼がミオリネが失敗するのを見越して、投資というパフォーマンスに走ったという話だ。

 

 しかし、その言葉にアスム・ロンドは笑いながら言う。

 

「確かにそういう方法もあったかもしれないけど。でも、そのルートはなくなっただろ?

 二人は目標額を達成した。その資金の決裁権を持っているのは俺だし、デリング総裁でもサリウスCEOでもない。俺がNOと言わない限り、この金は引き上げられない。

 それに……親だからって、公式の場で成立した事業を取り潰したりしたら大問題だ」

 

「確かにそうだね。理屈としては可能だが、デリング総裁に対する悪評は極めて高くなる。今後、インキュベーションパーティーに出ようなんていう者はいなくなるだろうし、グループからの離脱を考える企業も出るかもしれない」

 

 会社を成り立たせるのは互いへの信用だ。

 

 そして信用とは互いへの約束を、つまりはルールを守ることで成り立つ。

 

 それを親だからと言って、公的なルールを一方的に破り捨てるなら、次は自分たちにも同じ事態が降りかからない保証はない。ベネリットグループに大きな亀裂が入るだろう。

 

「それに自分で言うのもなんだけど、今、うちのロングロンド社はこのグループでの成長株だ。MSに頼らないコンテンツ部門も順調だし、それが今後のグループにとって大きな武器になってることをデリング総裁なら見抜いている。

 ……そんな俺の出鼻をくじくようなことをして、グループ離脱でもされたら大きな損害だろ?」

 

「はぁ……。あり得ない可能性だとは思っていたけど、起業自体の不成立を狙っていたわけではないと」

 

「そうそう! 別に遊びで投資したわけじゃない。ちゃんと二人の事業を応援するつもりがあるってことだよ♪」

 

 少年はそう言って楽しそうに笑う。

 

 だが、そこで

 

「だからっ!! その理由がわからないって言ってんのよ!!」

 

 バンと机をたたいて、ミオリネが激高した。

 

 ミオリネからすればますますわからない。

 

 シャディクが言うような、そもそも投資が成立しないという状況なら、パフォーマンスだったというなら説明はつく。

 

 だが、それが目的じゃないというのなら、500億という大金を一人だけで投資したという異様さだけが残る。

 

 自分で起業に打って出たミオリネだが、それでも一人が全額を投資するなんて事態は想定していない。むしろ、別のことで頭がいっぱいな今なら、いかに自分が無知で無謀な行動をしたかを考えることができている。

 

 だからこそアスム・ロンドがわからない。

 

 わからないものは、怖い。

 

 そんな内心での不安を消し去るように、ミオリネは声を荒げる。

 

「何を考えてるの、アスム・ロンド!? 糞親父に貸しを作って、立場を良くしたいの!? それとも、私との婚約でもお望み!?

 私はデリング総裁の娘だもんね! 金を出したら私のこと、好きにできるとでも思ったの!?」

 

 そして、その言葉に、

 

 

 

「あのさあ、そんなに理由が大事?」

 

 

 

 アスム・ロンドは不思議そうに尋ねた。

 

「……そ、そんなの大事に決まってるでしょ?」

 

「そうかな? 俺がどんなことを考えていても、なにをするつもりでいても。君にとって大事なのは、君自身が選択肢を得たことじゃないのかな?」

 

 少年はシャディクとミオリネの前に指を二本立てて言う。

 

 じっくりとミオリネに教え諭すように。

 

「君の前には500億って金がある。普通の人が一生かかって働いても、決して手に入らないほどのお金だよ。そして、まあ多少は口を出すつもりだけど、君はこれを自由に使える権利を得た。

 あんまりカネカネ言うのは好きじゃないけど、事実としてこの世界で何かを動かそうとするなら、お金がなくちゃ何もできないし、お金はシンプルで最強の力だ」

 

 だからこそ、ミオリネにあるのはシンプルな二択だ。

 

「この力を受け取るか、受け取らないか」

 

「っ……、わたし、は」

 

「あと一つ、言っておくけど、これは汚い金じゃないし、俺は適当に考えて投資したわけでもない」

 

 むしろ逆だと少年は言う。

 

「父さんたちが死ぬ原因になった兵器工場にMS開発部門の売却金。それから……父さんたちを殺した叔父から差し押さえた分社や関連資産。

 それを全部合わせて、じいちゃんが俺に預けてくれた俺の使える個人資産すべて」

 

 つまり会社自体は残しているが、

 

「俺個人はこれで一文無しなんだよね♪」

 

 などと少年は笑う。

 

 そして少年はまっすぐにミオリネを見ながら言う。その言葉に、だんだんと熱がこもっていく。まっすぐすぎるほどの視線で、ミオリネを貫くほどに強く、強く。

 

「だけど、俺は二人の力に賭けたいと思った。あの会場で、この世界の経済を動かしてるバケモノたちの真ん前で! ミオリネとシャディクは堂々と戦ってみせた!!

 そんなことできるやつ、他にいるか? いいや、いないね! そんなにがんばっているやつがいるのに、応援しないなんてありえない! それが……」

 

 

 

「俺のロマンだから!!」

 

 

 

 その聞きなれない言葉に、ミオリネは訳が分からないというように茫然として、そしてシャディクもまた、初めて理解の外の人間を見たように口をぽかんと開けていた。

 

「ロマン…………」

 

「さあ、どうする?」

 

 一方で、シャディクはこの少年に対する警戒心を最大限に高めている。

 

「……ミオリネ、やめておこう。いくらなんでも、これは危険すぎる。

 投資を受けたと言っても彼一人。そんな状態じゃ起業はできたとしても利益を出すのは難しい」

 

「そうね、私たちはアンタを信用できない。このまま事業を成功させるビジョンも見えない……」

 

 でも……と、ミオリネはアスム・ロンドを真正面から見る。

 

 この時のミオリネにとって、どちらが自分の将来のためになるのかということが大事だった。

 

 友人関係にも介入してきて、おそらくは婚約者を決めたりとミオリネの人生を束縛し尽くそうとしている父親。なにより、そんな父親に立ち向かえない自分自身の弱さが情けなくて仕方ない。

 

 そしてそんなミオリネに対して、少年は言外に言っているのだ。

 

『目の前に武器があるから選べ。ヘタレて逃げるか、手に取って戦うか』

 

 正直に言えば、ミオリネは怖い。

 

 大切な母親が亡くなったときは心の奥が冷たく凍り付くような怖さを感じたが、今感じているのは崖の目の前に立っているようなスリル。

 

 崖の向こうには宝箱があるが、その亀裂をジャンプで飛び越えられるか、飛び越えられたとしても宝箱の中身がなんであるかもわからない。

 

 リスクがてんこ盛りの大博打。

 

 しかも悪魔みたいに笑う少年がいて、ミオリネに重すぎる武器を渡して、後ろから崖に向かって蹴飛ばそうとしている。

 

 ミオリネの心臓がバクバクと跳ねあがる。嫌な汗が背中を伝っていく。

 

 しかし、それはミオリネが久しく感じていなかった生きているという実感だ。父親に決められた物語ではなく、自分自身が主人公になっているという感覚だ。

 

 目の前の少年は得体が知れないし、ミオリネ自身を乗せようとしてる姿勢も腹が立つが、それでもそんなミオリネがこれまで得られなかったものを提供しようとしている。

 

 そして少年が最後にもう一度、ミオリネを挑発するように言う。

 

「ミオリネ・レンブラン、悪魔と相乗りする勇気あるかな?」

 

 その言葉にミオリネは歪な笑みを浮かべて、勇気を振り絞るように叫んだ。

 

「バカにすんじゃないわよっ!! やってやる、やってやるわっ!!

 言っておくけど、糞親父にもアンタにも私の人生好き勝手にさせてやらないっ! 私は私の意思で、この投資を受け取って、成功させてやるっ!!

 それでこの投資もきっちり返してあげる! 倍返しよっ!!」

 

「ミオリネ……」

 

「ははっ、いいね! 思ったとおりにロマンだ♪」

 

 そこでアスム・ロンドは悪魔のような笑顔を消すと、ほっとするような、どこか心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべながらシャディクに問いかける。

 

「それで、君はどうする? ミオリネはこの通りやる気だけど……」

 

「ここでミオリネを置いて離脱したら、僕は臆病者のレッテルが張られて終わりだね……。こうなったら付き合ってあげるよ」

 

 ラフに言うシャディクだが、その内心にはアスム・ロンドへの大きな警戒心とわずかな期待のようなものがあった。

 

(かなりリスクを伴うし、計画を変更する必要もあるけれど、アスム・ロンドという人間を見極めるにはちょうどいい。

 家族を失った過去、ベネリットグループに迎合しない姿勢……。うまくいけば、彼は俺達にとっても大きな武器になる)

 

 個々の思惑はあれど、こうして三人の同意により新会社が設立されることになった。

 

 最後にアスム・ロンドは立ち上がって、二人と強引に握手をしながら言う。

 

「これで、二人とも縁ができたな! 俺達は友達だっ!!」

 

「友達? そんなわけないでしょ?」

 

「同意だね、百歩譲ってビジネスパートナーだ」

 

「おっけー、おっけー! 思ったより塩対応だけど、これが美しい友情の始まりってのもロマンだよなっ!」

 

「っていうかそのロマンってなんなのよ、さっきからわけわかんないこと言って」

 

「んーっと、俺の行動指針で、明日を夢見る力ってやつ♪ それも追々わかるって!」

 

「「はぁ……」」

 

 そんな噛み合わない会話が三人の始まり。

 

 今では"幼馴染"と言っているが、それも三人の関係性を対外的にアピールする時にそう言うのが収まりがよさそうだからというだけで、結局はもっと複雑な関係だ。お互いの利益だけで繋がって、呉越同舟のような、なにかのきっかけで破滅を迎えるような。

 

 だが、そんな始まりでも彼らは繋がった。それから四年ほど、後のロマン男にとっては愉快な、そしてミオリネとシャディクにとっては苦労の連続の日々が始まった。

 

 ミオリネが社長、シャディクが副社長、そしてスポンサーでもあるが能力と知名度を見込んで、かつ、地獄への道づれを兼ねてアスム・ロンドを役員に。

 

『ミオリネ、そっちの数値は……』

 

『今から出すからちょっと待ってて、っていうかクソ忙しいのに、アスム・ロンドはどこ行ったのよ!』

 

『みんな、スシがあるぞ! ウニもだ! パーティーしようぜっ!!』

 

『『その前に働けっ!!』』

 

 まじめにやってるのにロマン男が毎回のごとくふざけ倒し、ミオリネからの印象がバカで固定されたり、

 

『誰がPVをアニメにしろって言ったのよ!? このバカっ!』

 

『いやいや、ミオリネ案じゃ固すぎるって! ここはもっと時代に合わせないと!』

 

『だからって、なんで私がこんなキラキラエフェクトでアニメになってんのよ!? あーっ! 風評被害がーっ!』

 

『ミオリネ、そのPVの再生数が大変なことになってるみたいだ。しかも君への取材依頼も殺到している』

 

『よっしゃーっ! 俺の作戦勝ちぃ!』

 

『こんなの納得できないんだけどっ!?』

 

 ミオリネがとてもいきいき……というか、毎日のように怒鳴りながらアスム・ロンドと喧嘩して結果的にいい方向に向かったり、

 

『あんにゃろっ!! シャディクを養子野郎とか呼びやがって!!』

 

『落ち着けって。僕は別に気にしていない』

 

『はぁ!? 友達が悪く言われてんのに、へらへらしてられるわけねぇだろがっ!? お前がよくても、俺がいやだねっ!』

 

『っ……友達、か』

 

『あの会社の弱みなら、リサーチ済みよ。こっちにもさんざん嫌がらせしてたし……

 いつ出発する? 私も同行するわ』

 

『ミオリネまで……!』

 

『ふっ、こういうのワクワクするな……! 行くぞっ!!』

 

 なんだかんだで三人で困難を切り抜けたりと、それはもう、ちょっとした自伝でも書けるぐらいにはたくさんの出来事があった。

 

 だが結果として、この子供三人による事業は大成功。

 

 最終的に会社は売却することになるのだが、その時の売却額はアスム・ロンドへの倍返しどころか、ミオリネとシャディクの今現在の活動資金の原資になるくらい十分な額に到達していた。

 

 そしてミオリネはただのデリングの娘から、幼いながらも抜群の経営手腕を持つ女帝候補として名前を上げ、シャディクもまたそんなミオリネを支える辣腕ぶりを評価され、アスム・ロンドにとってもロングロンド社とともに名前をさらに広める結果になった。

 

 その裏ではシャディクの変心とロマン男との友情のきっかけがあったり、ミオリネが女帝として恐れられる出来事があったりするのだが……それはまた別の機会に語られることもあるだろう。

 

 

 

 

(ほんと、今でも悪夢に見るわよ……

 あの時の私はなんにも分かっていなかった。この世界で戦うやり方も、そのために必要なものも。分かんないまま飛び出して、危うくもっと自分を傷つけることになるとこだった)

 

 そして今現在、成長したミオリネ・レンブランは過去を思い出しながら、少しだけ口元に笑みを浮かべて歩いている。

 

 ついでに言えば、"あのバカ"も当時はかなり生き急いでいたのもあり、自称通りに悪魔みたいな印象もあったので、そっち関連の悪夢もあるのだが……

 

(でも、今でも超一流とまでは言えないけれど、私は自分に自信を持ててる。私ならどんな困難でも切り抜けられると信じられている。……それは間違いなく、あの出来事がきっかけ)

 

 幼いながらに勝負に出て、大きな勝ちを得て。

 

 その後も一人で農園を経営したり、初めて社員と間近で接したり。

 

 ミオリネは自分が何を成し遂げてきたのかを考えながら歩みを進め、そのすべてをぶつけるために彼の前に立つ。

 

「……お待たせしました、デリング総裁」

 

「いったい何の用だ、ミオリネ」

 

「それはもちろん、ビジネスの話です。私は、いいえ、私たちはこれから新しい会社を立ち上げます」

 

 その名は、

 

「株式会社GUND-ARM」




次回:親子喧嘩?

初期ミオリネを動かすには煽るのが正解なんでしょうね。
なおロマン男がここぞとばかりに特撮ネタ入れてたことを知って、ミオリネはキレたらしいです。

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