アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男 作:カサノリ
温めてきた話だけに、ちょっと怖い気持ちもあります。よろしければどうぞ…!
「シャディクは……本当に変わったよね」
「同じことをよく言われるけど……そんなにかな?」
シャディクは肩をすくめながらエナオに尋ねる。
それはいつかの日常で。授業終わりに寮でくつろいでいるときに言われたこと。
だけど同じように「シャディクが変わった」と伝えてくる学生は多かった。
『前よりも優しそうに見えます』
『話しかけやすくなりました』
なんて異口同音に。
おかしな話だとシャディクは思う。
昔からシャディクは人の顔ばかりを気にして生きてきた。
祝福など受けられなかった自分の生まれに、同胞も仇も平等にいない世の中に、そしてその中で胸に抱いた大望のために。常に笑顔の仮面を作って、誰からも好かれるように過ごしてきた。
だから、自分の素を一瞬でも出してしまったというのは失態に他ならない。だというのにその後の方が、シャディクは周囲に好かれるようになっている。
実際にエナオも微笑みながら言う。
「別に、悪いことじゃないわよ? 確かに計画は大きく変わったし、そんなシャディクについていくべきかもみんな考えた。
でも……今のシャディクなら、もっと大きなことをしてくれそうだとも思ってる」
「それは……どうなのかな?」
確かにシャディクや周囲は多かれ少なかれ変化したが、自分の根っこの部分まで大きく変わったということはないとシャディクは思う。
計画のためにテロやクーデターといった武力行使を用いるという選択肢を外したのは確かで、陰謀めいた企みからは解放された。けれど、逆にそれらの短絡的な手段を失ったことで、頭を悩ませる機会は倍増しているのも事実。
だから自分は相も変わらず策士で策謀家のシャディク・ゼネリ。あのバカみたいにまっすぐな男には天地がひっくり返ってもなれやしない。
このままでは今までと変わらず、文字通りに人をたぶらかした妖怪に一生振り回されることになるだろう。
「まったく……アイツに出会ったせいで、俺の人生はめちゃくちゃだよ」
それはあくまで自嘲のつもりの呟き。だけど、
「ねえ、シャディク気がついてる? 今、すごくいい笑顔になってたって」
「はは、まさか」
機動戦士ガンダム 水星の魔女
アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男
そして今も、シャディクは妖怪に振り回されている。
「まったく、あのバカは……とんでもないモノを呼び起こして」
シャディクはミカエリスのコクピットで、青く光り輝いたエアリアルを見ながら苦笑いを浮かべた。
エアリアルの周囲には遊泳する魚のようにガンビットが動いていて、それがまた有機的で異質さを示している。このアド・ステラ世界のどのMSにおいても、こんな事例はないだろう。
ましてアンチドートのコントロール下で動くGUND-ARMなんて。
(下手をしなくてもパンドラの箱だ。グラスレーも、いや、世界の全てがエアリアルを中心に動き出すことになる)
そんな規格外の魔女を、あのバカは目覚めさせてしまった。
きっとスレッタに対しても、熱量たっぷりにロマンを引きずり出したのだろう。シャディクに宣言したスレッタには確かな自信と自己が感じられたから。
「お前は分かってるのかな? 自分が何をしているのかって」
かつてシャディクはアスム・ロンドをして「夢を見せる才能がある」と評したことがある。それは彼がアスムと出会ってから変わらぬ評価だ。
究極のポジティブ思考。頭十歳児。ロマン信者。
夢という不確かなものを、未来を、他者に信じさせてしまうほどの大バカ野郎。
その夢とロマンに振り回される立場になったシャディクからすれば、このエアリアル覚醒なんてどうやって収拾をつければいいのかわからないほどの事態だというのに。
「だけど、それでこそお前だ……!」
エアリアルへ向かってミカエリスを駆りながら、シャディクは笑みさえ浮かべて思い出す。
アスム・ロンドに人生を狂わされた日のことを。
「アスム・ロンド、僕たちの仲間にならないか?」
あのインキュベーションパーティーから三年。ミオリネとアスムと三人で運営してきた会社を成長させ、総仕上げとして売却に踏み切ろうとしていた時のこと。
シャディクはアスムを呼び出して、そう切り出した。
目的は文字通りの勧誘。
それまでの三年間、シャディクは裏でアスム・ロンドという人間を徹底的に調べあげた。シャディクの描いているベネリットグループの解体と、それによる地球と宇宙との戦力格差解消……新たなる冷戦構造の構築のために、彼がどれだけ役に立つか、あるいは脅威かを計るために。
そしてその結果……シャディクは彼を仲間に引き入れようと企んでいた。
シャディクからすれば大きな博打。
これまでその野望を明かしたのは、同じ孤児院で辛苦を共にした仲間たちだけなのだから。
当然だろう。彼の計算ではこの計画の実現のために多くの後ろ暗いことをしなければならない。人殺しや裏切りは当然、虐殺もありうる。それでもこの戦争シェアリングなんて馬鹿げた道理で回っている社会を変革するためには必要な犠牲。
そんな野望を共有できる人間なんて、そうはいない。
だが三年を通して構築されたアスム・ロンドのプロファイルから、うまく彼を引き入れれば大きく計画を進展できるという目算があった。
家族をアーシアンに殺され、スペーシアンの親族にも裏切られた過去。それによる兵器産業からの離脱という決断と、アーシアン差別どころか積極的に支援しようとする姿勢。それは彼がこの社会問題の解決に並々ならぬ信念を持っていることを示していた。
さらにシャディクが目を付けたのは、彼が持つメディアへの影響力。
ベネリットグループの地球への売却に、その後に続く地球と宇宙との緊張関係の維持。それを成し遂げ、世論をコントロールするためにメディアの力は不可欠だ。
グラスレーでは得られないそれを、アスム・ロンドを引き込むことで達成できる。
(それに……もしもの時も、彼程度なら始末するのもたやすい)
この頃のシャディクは既にいくつかのテログループとつなぎを作っており、そこにはアスムの家族を奪った者たちも含まれている。それらを利用すればアスム・ロンドを"事故"に合わせられるという事後処理の算段もばっちりという状態。
純粋にシャディクとの友情を信じ、これまでもシャディクが侮られるたびに矢面に立って抗議してくれた少年へ情がないとは言い切れないが、計画のためには切り捨てもやむないと割り切っていた。
そこまで準備し、シャディクは言葉巧みにアスムへと誘いをかける。
この世界を停滞に追いやる罪過の輪と、その打破という最終目標を。
彼好みの理想論でデコレートしながら。
「それで……どうかな?」
二人きりの室内に、薄く笑みを浮かべたシャディクの問いかけが響く。
黙ってシャディクの言葉を聞いていたアスム・ロンドは俯きながら、肩をかすかにふるわせており、それだけを見るとシャディクの演説のようなプレゼンテーションに感じ入ったようにも見えている。
だからシャディクは仮面の奥でひそかにほくそ笑んだ。
(……かかった)
ひとたび承認すれば、こちらのもの。あとは彼にも工作の片棒を担がせ、共犯関係を結べば終わりだ。彼とて一企業を預かる身なのだから、シャディクが弱みを握ることでコントロールできると。
その考え方は確かに合理的。
しかし一つだけシャディクが考慮に入れていなかったのは……
「……シャディクっ!!」
「っ!?」
「俺は……! 俺は……!! 猛烈に感動した!!」
相手がシャディクの想像を超えるほどにバカだったこと。
アスム・ロンドは涙さえ浮かべながら、シャディクの手を取って言うのだ。
「あの時、俺が感じたのは間違いじゃなかった! 俺たちが一緒に動いたら、きっと世界を変えられる! ロマンを実現できるって!! しかもこんなことまで考えるとか……! ほんっとにすごい! 打ち明けてくれてありがとうっ!!」
「あ、ああ……」
直観的に『まずい』とシャディクは思った。
言うなれば見えている爆弾に着火してしまったような悪寒だ。
本来なら自分がこの熱量を操って、自分たちの有利に動かさないといけないというのに、目の前の少年は赤熱する太陽のようにテンションを上げ続け、コントロールするどころではない。
シャディクの困惑を他所に、少年は夢見ごこちに語り続ける。
自分もこの世界の仕組みを変えたかったこと。そのための仲間が欲しかったこと。地球と宇宙との格差と、それによって生まれる戦争に心を痛めていたこと。
そこまではシャディクにとって計算通り。
その後に言われた一言以外は。
「これで世界中が幸せになれるなっ!!」
「しあ、わせ……?」
目を輝かせながら、純粋すぎるほど純粋に放たれた一言に、今度こそシャディクは頭を真っ白にさせた。
なぜなら、それはシャディクが知らない概念であり、そして計画には考慮されていなかったことだから。
アスム・ロンドは気圧されるシャディクにかまわずまくしたてる。
「だって、お前はこの世界から戦争をなくそうとしているんだぞ!? 誰も兵器で死ぬこともない、虐げられることもないっ! みんなが笑って、平和に暮らせて、学校も、食料も、手の届く場所にある!! そんな未来を創ろうとしてるんだっ!!
お前の夢はすごいロマンにあふれてる!!」
「…………っ」
違う、とシャディクは反射的に言おうとした。
シャディクの思い描く未来は、そんな間が抜けたほど単純なものじゃない。
ベネリットグループの権力を握るだけでもどれだけの血を流すかわからない。テロのような後ろ暗い方法だって当然のように用いなければいけない。
ましてシャディクの想定では、最後には地球と宇宙との間に果てしなく続くにらみ合いを作ろうともしている。
断じて、みんながハッピーエンドなんていう未来を描けていない。
(お前は説明をまともに聞いていたのか? それともそれが理解できないほど楽天的だったのか?)
だがシャディクの戸惑いを理解してか、アスム・ロンドは笑顔で言うのだ。
「できるさ、お前なら! だってお前は、こんな世界を変えようとしているヒーローなんだからっ!」
「ひー、ろーだって……?」
「ああっ! それでお前の活躍が子供たちの夢になる。俺たちの子供も、そのまた孫も、みんなが世界を良くしようとしたお前の物語を聞いて、それで次は自分もって希望を持つようになる。
ずっと思ってたんだ。ヒーローが必要なんだよ。この世界には子供たちが憧れるヒーローが……!」
それがシャディク・ゼネリだと。
ギラギラした眼で言い放つアスムは、シャディクからは甘言で誘う悪魔にも、世の理から外れた魔の者のようにも感じられた。
その育ちからシャディクの知らない、知るはずもなかった甘い理想を与えてくる妖怪。
妖怪ロマン男。
何処までも楽天的に、楽観的に。未来に待つのがハッピーエンドだと少年の強い視線が語り、交渉だからと視線を逸らすことを許されないシャディクは、真正面からそれを受け止めさせられる。
そして自分も幻視してしまうのだ。
幸せもヒーローなんて概念もシャディクの人生には何一つなかったというのに、あまりにも少年の語り口が確信に満ちていて。
既に血にまみれていると思っていた自分の手が、誰かの幸福を生み出せるのではと……希望を持ってしまった。
「やってやろうぜ、シャディク! アーシアンもスペーシアンも関係ない。みんなが幸せでロマンを掴める世の中に! そうしたらきっと……俺の夢だって叶う!」
「ちょ、ちょっと待て……! そもそも……君の夢はなんだ?」
それは、このまま吞まれまいというシャディクの苦し紛れの方向転換。
だがアスムは「よくぞ聞いてくれました!」とばかりに椅子から立ち上がり、宙を見上げて宣言する。
「俺はこの世界から……モビルスーツをなくすっ!!」
「………………………………は?」
そして、再度シャディクは頭を真っ白にした。
(ちょっと待て、このバカは何を言った?)
ベネリットグループに属しながら、あれだけロボットに熱意と執着を燃やしながら、そのモビルスーツをなくす?
文字通りの妄言としか聞こえない言葉。
しかし言い間違えたというわけでもなく、妖怪は続ける。
「正確にはモビルスーツを兵器から解放する! 人を守ってロマンを体現するスーパーロボットに回帰させる! それが俺の最終目標だ!」
詳細に語ったところでさらに訳がわからない内容にシャディクは思わず反論してしまう。
おそらく今現在のシャディクなら、ここで話に乗ってしまった時点でアウトだとわかっているが、熱にうかされた状態ではそんな判断はできていなかった。
これがロマンという沼への手招きだと知らないまま、シャディクはアスムを促してしまうのだ。
「そんなの……できるわけがないだろう。グラスレーもジェタークも、ペイルも……いや、グループ全体が敵になる……!」
「いーや、できるねっ! ついでに未来予想図もできてるし、計画も実行中!!」
いつの間にか攻守は逆転している。アスムがシャディクへと熱弁をふるう番へと。
「結局、戦争シェアリングも兵器に需要を生むために無理くりやってることだろ? ドローン大戦を繰り返さないためとか父さんは言ってたけど、それは当初の理想論。
今はその聞こえのいい名目で経済を回してるだけだ。
だけどさ、実際には地球の貧しい人たちの間で兵器需要を生み出して、金を巻き上げてるだけ。最後は地球も宇宙もどんづまりなのは目に見えてる」
「あ、ああ、その通りだ」
だからこそシャディクはスペーシアンにも平等に緊張感を与えて、双方に軍備拡張をさせることで経済が回るようにするつもりだった。
「うーん、それも確かにありだけど……。だいたいアニメだとそれで絶滅戦争に行っちゃうし、宙と大地とでにらみ合ってたら発展も何もないじゃん?
だから俺は別の案を考えたんだよ! 富裕層のスペーシアンもMS開発に投資するように!
方法はなにかって? エンタメだよ!」
「まさか……MSを娯楽の道具にするというのか?」
「さっすが理解速い! だからアニメ流して、ルネサンスよろしくロマン再興やってんだよ!
それに……知ってるか? アスティカシア学園で決闘の試用が始まってる。それを聞いたときビビッと来たね! このフォーマットは役に立つ!
MSを使った試合をプロ競技化して、それを中心に経済が回るようにする! そうすれば戦争以外でもMSや兵器に需要が生まれるだろ?」
地球に、宇宙に、無数の競技場を作り、人が死なないMS競技を開催して経済を回す仕組みを作る。そうすればMS開発をとどめることなく……いや、兵器としての廉価性や汎用性の追求を廃して、さらに高性能機の開発に集中できると。
なによりそうすれば……モビルスーツは人殺しの兵器から解放される。
「ワクワクしないか? 地球で、水星で、月で、もっともっと人類が先に行けば太陽系の外で! スーパーロボットたちが活躍する! みんなが楽しみながらお金を投じて、ロマンが世界を回していくっ!」
「アニメ放送の影響と意識変化は検証できたから、次は学園でもいろいろやるつもりなんだよ! まずはアーシアン差別が酷いって言うから、そこから変える! 将来、地球で事業が回せるように学生から意識改革!!」
「それから決闘をエンタメ化するのも試さないとな! よぉーし、俺はリアルのヴィクトリオンを作って乗り込んでやる! 実況解説に出店にスタジアム! MS大暴れの体育祭もいいなっ!!」
「やることはいっぱいだけど、まずは三年間! アスティカシア学園からロマンを始めて、最後は世界に!」
「それが俺の夢の形だ」と興奮冷めやらぬ様子でアスム・ロンドは言い切った。
そして、
「…………いや、バカな」
シャディクはその言葉に強く頭を抱えた。
頭の中がまとまりが生まれないほど混乱していた。
そもそも妖怪が言っていることは全般的に無理がある。
ベネリットグループがそんな方向性に舵を切る可能性が皆無の上に、今のアーシアンとスペーシアン対立から地球と宇宙を巻き込んだエンタメ旋風が生まれるわけがない。
既にあるMSの兵器需要はどうする? 一時的にでも戦争を止められない限り、そんな急な方向転換など承認されるはずもない。
さらにスポーツで街おこしなんていくつもの事例があるが、失敗したのがほとんどだ。その更に大規模なものをロマンの一言で実現しようなんて妄言どころか、幻覚でも見ているようなもの。
そんな何万もの否定の言葉は出てきても……シャディクにはそれを口に出すことはできなかった。その理由は自分でもわからない。
あるいはアスムがシャディクとの出会いによって、その夢が形になると無邪気に信じているからか。それともその甘すぎる理想の先に、自分のような子供の笑顔があるかもしれないと毒されてしまったからか。
……その両方か。
そして、アスム・ロンドはシャディクの手を潰すほどに握りしめながら言うのだ。
「不可能? 無理? 言わせておけよっ!
だって俺達が生きてるこの世界だって、昔の人には夢物語だった。宇宙進出も巨大ロボットも、みんなみんなファンタジーから生まれてる!
俺たちは誰かのロマンの上で生きてるんだ……! だから、きっと俺たちの夢も……!!」
それがロマンだからと。
疑いもしない目で。
「…………」
「どうだ? いい夢だろ♪」
「…………ほんとに、お前はバカだったんだな」
シャディクに出せたのは、それが精いっぱいだった。
ほうとため息を吐きながら、椅子に背を沈ませる。
どっと疲れが出て、めったにないほどに動悸が止まらない。
せめてと考えたのは、このどこまでも壮大な夢物語をぶち上げた男を、本当に仲間に迎え入れるのかという当初の目的のこと。だがそれを頭によぎった途端否定する。
(……俺には、こいつを制御することができない)
むしろ今この時さえ、この底抜けのロマン主義に当てられてしまってる。
直射日光に焼かれて、頭がくらくらするようだ。
シャディクの頭には処理しきれないほどの熱が押し込められて、このままではシャディク自身の計画にもノイズが入ってしまいそうで。
だから、この男への対処をまずは考えないといけないと……
「あ、もしもし、ミオリネ? シャディクがすごい夢を教えてくれてさ! そうそう、ベネリットグループを地球に売って、世界平和をつくるんだよ!」
「お前はなにをやってるんだ!?!?」
思わずシャディクは妖怪の首根っこを掴みながら叫んでいた。
「へ? だってこんなすごい夢なんだからミオリネも誘わないと……」
「おまっ……! このバカはっ……!!」
必死に止めようという行動は……どう考えても遅きに失している。
妖怪から奪った端末には呆れ顔のミオリネが映っていて、じーっと見定めるようにシャディクを見つめていた。
そしてそんな彼女の口から出たのも、意外な言葉。
『もしもし、シャディク?』
「っ、ミオリネ……」
『乗るわよ』
「……は?」
『だからその案、乗るって言ってんの。
糞親父の地盤をめちゃくちゃにするのにちょうどいいし、このままじゃ、ベネリットの先行きが悪いのは分かり切ってたもの』
「さっすがミオリネ! よっ、将来の女帝!!」
『そうなったらアンタの会社は真っ先に斬ってやるから』
「ひでえ……!!」
「なっ、なんで……」
わからない。
それがシャディクを支配した感情だった。
ミオリネにだけは知られてはいけない野望だったというのに、こんなあっさりバラされて、しかも当のミオリネまで乗り気。
もう計算なんてどこかに消えてしまった。
だけど初めて、
「………………はは」
シャディクは顔を覆って、心の底から小さな笑い声をあげた。
そして一秒だけ沈黙し、顔を上げたシャディクは微笑みながら言う。
「……悪い、二人とも。ここまで話をしておいてなんだけど……今は、冗談っていうことにしてもらえるかな?
二人のせいで、いろいろと考えなくちゃいけないことが増えてしまったから」
「おっ! そっか! じゃあさ、アスティカシア卒業するときにまた話そうぜっ!
俺はそれまでにロマンを学園に広めてみせる! だからその時に……!!」
「教えてくれよ、お前のロマンを……!!」