アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男   作:カサノリ

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今回は真面目な話です。


60. 呪いの在処

 その日、株式会社ガンダムでは一つの実験が行われることになっていた。

 

 重大なことだと、外部監査役であるシャディクとグラスレー女子も含めた全員が集合。

 

 技術アドバイザー(という名目)として株式会社ガンダム社で雇っている元ペイル社のGUND技術者ベルメリア、ロングロンド社の基幹メカニックも待機する厳戒態勢。

 

 その物々しい雰囲気に、特に地球寮の下級生は緊張感と若干の恐ろしさをにじませている。

 

 そして代表であるミオリネはそんな面々を見渡すと、静かに告げた。

 

「それじゃあ、人体へのパーメット流入。つまり、データストームの影響を調べるわよ」

 

 データストーム。

 

 それはGUND-ARMの副作用として知られる、人体へのデータ逆流問題。

 

 小型の義手や義足においてGUNDを用いる分には微量で悪影響が少ないとされているが、モビルスーツという大型の、あえていうが、義体と接続したときには、莫大なパーメットを人体に流し込むことになる。

 

 それがゆえにモビルスーツを拡張された人体として扱うことができるが、モビルスーツから反動として人体に流れるデータストームは魔女の業火のように人体を害し、最悪の場合、命が奪われることになる。

 

 GUND-ARMが封印されるに至った原因がそれだ。

 

 もしエアリアルが学園に来なければ、ミオリネも一生ふれようとはしなかっただろう。

 

 しかし、今はもう違う。

 

「みんなには伝えた通り、わが社はあくまでGUNDを医療として使用することを前提としてるわ。

 そしてベネリットグループにもGUNDの生命倫理問題を引き受けると言った以上、データストームの問題を未解決にはできない。

 その解決の一歩として、影響をこの目で見ないわけにはいかないのよ」

 

 言いながら、ミオリネは背後にそびえたつ二機のMSを見上げる。

 

 エアリアルとファラクト。

 

 共にGUND-ARMが使われた最新鋭機。

 

 しかし一方のエアリアルにはデータストームによる影響はなく、ファラクトからはその影響があると、データストーム問題を考えると対照実験にもってこいの機体たちだ。

 

 なにがエアリアルとファラクトの差なのか。

 

 どうすればエアリアルのように無害なGUND-ARMを作れるのか。

 

 それを兵器化することはないとしても、実体を知らなければ安全だと喧伝することもできない。

 

(まして宇宙開発に応用するとするなら、大型のGUND-ARMは必須だものね。

 エアリアルを惑星開発用のMSとして量産できたなら、パイロット育成も安全策も大幅にコストカットできる。それは地球に負担をかけなくても宇宙開発を発展できるということ)

 

 糞親父たちが渋々やってる……いや、私腹が目当ての輩も多いだろうが、戦争シェアリングという現状を打破する一手にもなる。

 

 だから今日、ミオリネたちはデータストームを実際に体験することで課題解決の糸口を見つけようとしていた。

 

 ただ……

 

「で、アンタがほんとにやるの?」

 

「もちろん♪ 俺も責任者の一人だし。ミオリネにやらせるなら、俺がやるよ」

 

 その被験体を買って出たのが、トップの一人であるアスムというのが頭痛の種だ。

 

 他の誰にやらせても危険なことに変わりはない。

 

 だが地球寮の社員は雇われの立場だから、彼らにやらせるのも体裁と良心の両面でよくはない。

 

 であるならばエアリアルに乗っているスレッタか、ファラクトに乗っているエランが候補になるのだが……エランはそもそも強化人士という表に出せない裏事情がある上に、ガンダムの犠牲になりそうなところを保護したという流れがある。

 

 スレッタにしてもエアリアルがデータストームの悪影響を無効化した特異例であるから、一般人とは言い切れない。

 

 他の学生から募集をかけて、取り返しのつかないことになったら会社は廃業まっしぐら。

 

 結局、言い出しっぺである責任者が乗るというのが角が立たない方法であり、かといって体が強いとは言えないミオリネを実験に使うというのも嫌だということで、アスム本人から挙手した。

 

 妖怪が一般人かはともかくとして、アスムの体質が人と変わらないのは確認済み。

 

 そして今から害がある実験に向かうという本人は……意外なことに真剣な調子かつ、ためらいはない様子で準備を進めていた。

 

 むしろ心配そうなのはニカやアリヤ、そして無表情ながらに手をぎゅっと握りしめているサビーナの方。

 

 そんなアスムにいつも以上の沈黙を貫いていたエランが話しかけてきた。

 

「一応、体験者としてだけど。

 僕は強化人士としてデータストームに対して高い耐性をもっているからスコア4まで上げられるが、キミの場合はスコア2までにすること。ロマンだからといきなりリミットブレイクするのは本気でやめておけよ」

 

「わかってるって。人の命の問題だから、俺だってそこは真面目にやるさ」

 

「……まったく」

 

 呆れたようにエランは肩をすくめる。

 

 ベルメリアが事前検査をして、アスムの体質的にスコア2ならば問題ないと判断している。

 

 だがそれでも万が一というものがある。そしてその万が一が起こった時は、エランもベルメリアも庇護者を失って、ペイルに逆戻りの最悪が待ち構えている。

 

 アスム本人はミオリネとシャディクがいるから大丈夫だろうとでも思っているのだろうが、エランにとって一番信頼に足るのが誰かと言えば目の前のバカしかいない。

 

 ただ……こうして妖怪が珍しくも責任感を前面に出して課題にも向き合おうとしているのも、きっとエランの問題を解決するためでもあるのだから、ぐちぐちと文句を言うのもはばかられてしまった。

 

 だから最後に念押しのために、

 

「アスム・ロンド、だったら一つだけ忠告がある」

 

「ん?」

 

 

 

 

「死ぬほど痛いぞ」

 

 

 

 

 機動戦士ガンダム 水星の魔女

 アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男

 

 

 

『あばばばばばばば!?』

 

「…………意外と平気そうね」

 

『平気じゃねえって!? あっ、そこ、そこはダメっ!?』

 

 数十分後、実験開始とともにファラクトのコクピットからバカのバカみたいな悲鳴が響いてくるのを、ミオリネはしかめっ面をしながら聞いていた。

 

 とりあえず事前に決めたNGサインは出していないので余裕はありそうだが、その余裕がほんとにギリギリなものなのかギャグをやれる程度のものなのか判断ができない。

 

 その点でサンプルとして失格だったと、今更ながらにミオリネは反省した。

 

 だが、

 

「ぜぇー、ぜぇー、あー、あたまがぐるぐるするぅ……」

 

「社長、しっかり……!」

 

「ほら、水を持ってきたからまずは飲め……!」

 

「あ゛ー」

 

 コクピットから這い出してきたアスムは常日ごろの元気100倍という様子からは程遠く憔悴しており、実際に受けた苦痛の大きさをまじまじと実感させるもの。

 

 今もニカとサビーナが介抱しなければ、パイロットスーツもまともに着脱できなさそうな脱力具合である。

 

 それを見るエランは呆れたように頭を抱えた。 

 

「だから言ったのに……」

 

「まあ、アイツが言い出したことだから仕方ないさ。それよりもエラン、お前の場合はスコア2だとどうなるんだい?」

 

「そうだね……全身の神経がいらだつ程度だね。スコア3まで行くと明確に脳に痛みが走るし、スコア4はそれがシェイクされている感覚になる」

 

「……話には聞いていたし、お前には悪いけど。

 俺は体験するのも御免こうむりたい。なんにせよ、既存のGUND-ARMが禄でもない代物なことは確かだな」

 

 シャディクは人前だから顔にださず、アスムの無茶を内心で心配しながら言う。

 

 あのバカがああなるというのなら、一般人はそれこそ耐え難い苦痛だろう。

 

 それを堂々と商品として売り出そうとしていた21年前のオックスアースは正気の沙汰とは思えないし、逆にそれを許容していた世界の人命軽視ぶりは今よりも酷いものだったと想像に難くない。

 

(戦争シェアリングの……いやデリング独裁時代の現在がましかもと思わされるなんて、世も末だな)

 

 はたして管理された、どこかの誰かに負債を押し付ける現在が正解か。

 

 あるいは人が機械の部品のように消費され、その力が管理されずに行使される過去がマシか。

 

 前者の被害者であるシャディクにとっては憤懣やるかたないことではあるが、人の世の業というものの根深さを感じてしまう。

 

 一つ叩けば、別のゆがみが顕在する。

 

 闘争や戦争は永遠に続くワルツのようなものだとは、よく言ったものだ。

 

 ただ、とシャディクは自問する。

 

「……だとしたら、エアリアルはなんなんだ?」

 

 このデータストームを解決した唯一の機体。

 

 そしてそれをプロスペラ・マーキュリーが学園に送りこんだ理由も。

 

「そうだよっ! そこが問題だっ!」

 

「っ!? いきなり復活するなって、驚くから」

 

「君、残機制とかになっていないかい? 死亡したら土管から出てくるような」

 

「失敬な! ちゃんと体は人間だっての!」

 

「「いやいやいや」」

 

 水を飲んだだけでピンピンするのは人間じゃないとシャディクたちは思いながら、しかしまだ顔が土気色になっているアスムの話をまずは聞くことにする。

 

 アスムは地面にどかりと座ると、体をいたわるようにこすりながら言う。

 

「とりあえず、データストーム汚染がどんなものかってのは身をもって分かった」

 

「というと?」

 

「結局のところ、あれは情報の逆流なわけで神経系に負担がかかってるっていうのは資料で読んだ通り。実際に神経がビリビリする感覚だった。

 ただ……体験した感じだと、人とモビルスーツとの違いってのが大きいと思うんだよな」

 

「それは、どういうことだい?」

 

 シャディクの得心いっていない様子に、アスムは説明を続ける。

 

「まず事実として、人間の脳はかなりの処理能力を持ってるだろ? 内臓を動かしたり、筋肉をこまかく動かすこともできるから人間はこんなに精密なモノづくりができている。

 その点、大きくなったからってモビルスーツ全体の構造パーツの方が情報量が多いって感じはしないんだよな」

 

「まあ、それはそうだね」

 

 義手にせよ、モビルスーツにせよ、人間の細胞一つ一つを部品としてみればそれよりも構成パーツは少ない。

 

 人間の脳はデータストームを処理できるだけの能力を有している。

 

「じゃあ、どうしてデータストームで人間に被害が及ぶんだ? おかしいじゃないか?」

 

「そこなんだけど……あ、ベルメリアさん!」

 

「わ、わたし、ですか?」

 

 不意にアスムがベルメリアに声をかける。

 

 するとベルメリアはまだこの妖怪に対して不信感があるのか、神経質そうに体をびくつかせながら近くにきた。

 

「これは専門家として間違ってたら教えてほしいんですけど、もしかして人間とモビルスーツの構造の違いってのがデータストームの原因なんじゃないかなって」

 

「構造の、違い、ですか?」

 

 アスムは頷き、自分がリンクを開始したときの感覚を思い出す。

 

 パーメットリンクを開始したときに、最初にアスムが感じたのは違和感だ。

 

 自分の体が機械に変わっていくかのような。筋繊維の一本一本がなくなり、鋼と駆動系に代替される感触。

 

 それが強烈な違和感になっていた。

 

「素人意見だから、ほんとにそう思っただけなんですけどね。

 例えば人間は動くときに神経と骨や関節、筋肉を使いますよね? でもモビルスーツの場合はパーメットの伝達系に、駆動モーターとか機械系の駆動系を駆使します。もしかして、その違いを無理矢理に脳で処理させようとしているからこうなってるんじゃないかなって」

 

 GUND-ARMの最大の利点は、人間の感覚でモビルスーツを操縦できるようにすること。

 

 しかし、その感覚というのが鬼門ではないかとアスムは言う。

 

 人間の脳は人間の手足を動かすことに最適化されている。

 

 しかしそこにまったく理屈の違うモビルスーツの運動処理を当てはめようとしているのがいけないのではないかと考えたのだ。

 

「たとえがあってるかもわからないけど、スパロボの理屈でリアルロボットを動かせないっていうのかな?」

 

「ご、ごめんなさい、よくわからないわ……」

 

「あー、問題ないです。足を動かそうとしても手は動かないっていうほうが分かりやすいかな。でもGUND-ARM操縦の実際って、それを可能にしちゃうっていうか」

 

 パーメットという情報伝達に優れた物質を使うことで、本来ならばリンクしえない領域をつなげてしまうが故の負荷ではないかとアスムは考えた。

 

 実際にスコア3から可能になるガンビットの操作など、わかりやすい例だろう。

 

 人間の体でもないのに、空間の中を自由に動かせるようになる。そんな器官をもたない人間にとって、処理できる情報の種類ではない。

 

 そこまで説明すればシャディクは理解が早い。

 

「……待てよ? アスムが言っていることが正しいとしたら、そもそも人間の構造がGUND-ARMに適合していないことになる。データストームは人が人であるが故の副反応。なら……」

 

「ああ、つまり僕みたいなのを作ったのはそういうわけか。人間には無理だからって」

 

 シャディクの言葉を遮ってエランはベルメリアに皮肉めいた言い方をする。

 

 強化人士などと人からより優れた人類を作るように言っておいて、人体を人体から変貌した異分子に変えようとしているということだ。

 

 ベルメリアも顔色をわずかに悪くしながらうなずく。

 

「ええ、実際にあなたたちに移植したパーメット用の神経系は、そういう伝達に適応するように作られているわ」

 

「でも、データストームは起きると」

 

「一部だけ適応できたからと言って、元からある神経は残っているし、脳を総入れ替えするわけにもいかないだろうからね」

 

「ええ、それにパーメットの伝達原理にはまだ未解明なところが多くて……」

 

「じゃあ俺の感じたことも当たらずともって感じか」

 

 うーん、とそこで男子三人は頭を悩ませる。

 

 なんとなく課題は見えたが、その課題を突破するのが大問題。

 

「シャディク先生! ぱっとSF的に考えた解決策があります!」

 

「とりあえず与太でもいいから言ってごらん、アスムくん」

 

「君ら、ほんとに仲いいね」

 

「慣れだよ、慣れ。キミもいずれはこうなるさ」

 

「…………はぁ」

 

 シャディクとエランがひっそりと言い合っているのを聞かず、アスムは指を二本突き出しながら提案する。

 

「一つ、人体と全く変わらないモビルスーツを作ります!」

 

「エ〇ァじゃないか」

 

「人造人間じゃロボットじゃないだろ?」

 

「お、おまっ! 旧世紀から議論されていることを……!!」

 

 だが、モビルスーツと人間との構造的不和を解消するならそれが一番だ。

 

 ただ、元から複雑な人間の構造を再現するというのだけでどれだけの研究と資金が必要かがわからない。

 

「じゃあ二つ目! 人間の体を機械に寄せます!」

 

「僕みたいにかい?」

 

「いや、脳だけ残してあとはアンドロイドにする」

 

「攻〇か……。それも技術的に難しいだろうね」

 

「……エラン、気づいていないと思うけれど。すらすらとタイトルが出ている時点で、お前も大概毒されているよ?」

 

「……なん、だと?」

 

 エランが戦慄する中、アスムは頭の後ろで手を組みつつ、大きく伸びをした。

 

「はぁ、うまくいかねぇなぁ。ま、簡単にうまくいくならヴァナディース事変は起きなかったし、GUNDが封印されたりもなかったわけで」

 

 しかしこの難題には一つのヒントがある。

 

 

 

 そしてそのヒントを持つ少女はと言えば……

 

「スレッタ先輩、だいじょうぶですか?」

 

「気分が悪いなら、休んでてもいいわよ?」

 

「だ、大丈夫です、ミオリネさん、リリッケちゃん……!

 ただ……すこしだけ、怖いなって思っちゃって」

 

 スレッタは椅子に座りながら、顔を暗くする。

 

 彼女が怖いと思ったのはデータストームのこと。そしてそれを浴びて苦悶の声を出していた先輩のこと。

 

 明るい様子でごまかしていたが、たった数分の曝露だけで、いつも元気な先輩が弱り切っていた。そしてそれはきっとエランも同じで。

 

(これが、ガンダムが怖がられている理由……)

 

 乗れば死ぬモビルスーツの現実。

 

 一歩間違えれば、それが自分になっていたかもしれないという実感がスレッタをすくませる。

 

 そして、

 

(じゃあ、なんでエアリアルは大丈夫なのかな……?)

 

 秘密を解明できたなら、ガンダムの呪いを解けたなら。

 

 みんなでそれを為すことの責任の重さもスレッタは感じていた。

 

 するとそこに。

 

「おーい、スレッタさん! 次はエアリアルに乗ってもいい?」

 

「先輩!? も、もう大丈夫なんですか?」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ、ほら体も軽くなったし!」

 

 言いながらバク宙してヒーロー着地する妖怪に唖然としながら、スレッタはうなづきを返す。

 

「は、はい、じゃあ、大丈夫です! エアリアルも先輩ならいいって言ってくれてますし!」

 

「おっ! そっか、それは嬉しいな♪」

 

「はぁ、ほんとにちゃんと比べるなら体調を万全に戻してからの方がいいんでしょうけど……エアリアルが安全っていう前提があるから仕方ないわね」

 

「おうっ! 今やる方が感覚的に比べ易いと思うからな!」

 

 そうと決まれば、と一同は今度はエアリアルの前に移動する。

 

 エアリアルの姿はグラスレーとの決戦の時以来、簡易的な修復が行われただけだ。明日にでもベネリットグループが所有する巨大MS開発施設、プラント・クエタにて本格的な修理、もしくは改修を施される事になる。

 

 そのエアリアルに乗り込むと、アスムは静かに目を閉じた。

 

 勘のようなものだろうか、誰かに見守られているという感触がある。それはどこか神秘的で、けれども悪い感じではない。

 

 そっと操縦桿に手を触れると、アスムはゆっくりと言った。

 

「よろしく、エアリアル」

 

『うん、ボクこそ』

 

「…………え?」

 

 瞬間、アスムの意識は別の空間に引きずり込まれていた。

 

 

 

『ここは……』

 

 気がつくと、そこは不思議な空間だった。

 

 どこか視界全体にもやがかかったような、自分と空間との境目がわかりにくいような、そんな場所。よく目を凝らすと、ここは地球寮の格納庫にも似ているように感じた。

 

 そしてそれを認識した瞬間、

 

『おぉおおおおおお!? 不思議体験、キター!!!!』

 

 アスムは歓喜の声を上げて、両手を上げた。

 

『え、なにこれ、なにこれ???? イデ?? それともNTの謎空間?? 虚数空間とかでも面白いし、ミラーワールドとか……!!』

 

『よくわからないけど、そんなに楽しい?』

 

『楽しいって! めっちゃロマンじゃん!! 俺、生きててよかったぁ!!』

 

『そ、そっか……やっぱり君って変わってるね』

 

『そりゃあ伊達に妖怪と呼ばれては……ん?』

 

 不意にアスムは誰が自分と会話しているのだろうと思った。

 

 コクピットの中は自分一人しかいなかったし、このような声は聞いたことがない。生来、誰かの顔と名前と声を覚えるのは得意なアスムだ。そんな彼の知らない声は……

 

『な、南無阿弥陀仏! エイメン!! エクスペクトパトローナム!!!』

 

 振り返るなり、とりあえず思いつく成仏系の呪文を言ってみるアスム。

 

 だが、そこにいたのは幽霊でも物の怪でもなく、

 

『あはは、酷いなぁ。ボクは幽霊じゃないよ?』

 

『…………君は?』

 

 アスムはその姿に茫然とする。

 

 幼い子供だった。

 

 誰かによく似ている子供だった。

 

 その誰かは、彼の大切な後輩で……

 

 そして赤髪の少女は静かに少年へと言うのだ。

 

 

 

『初めまして、アスム・ロンド。

 ボクはエリクト・サマヤ。いつもスレッタを助けてくれてありがとう』




次回、早すぎるネタバレ!!

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