喧嘩師《セイント》カシオス   作:ソロモンは燃えている

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感想でシャイナさんに触れられたことで妄想が爆発してしまいました。
ちょっと短めですが、可愛い師匠のシャイナさんです。


シャイナの憂鬱

 

 

 

 突然だがシャイナは、カシオスの師匠である。

 聖闘士になるための修行は厳しい。

 才能がある者でも挫折し、命すら落としていく。

 だから師匠となる者は皆、弟子に厳しく接する。

 過酷な試練を生きて突破してくれる事を願って、嫌われてもいい覚悟で修行をつけているのだ。

 

 そんなシャイナにとってカシオスはいい弟子だった。

 自分を慕い、どんな過酷な訓練にも耐える頑丈さがあった。

 こいつなら、どんな試練にでも安心して送り出せる。

 調子に乗りやすい所があるから試練を突破出来るかは分からないが、死ぬことはないだろうと信じることが出来た。

 

 

 だが、最近シャイナに悩みが出来た。

 星矢に素顔を見られたから?

 確かにそれも女聖闘士にとっては一大事だが、今はどうでもいい事だった。

 最悪、星矢を殺すか愛すればいい事だし、聖域の歴史でも、掟はあるがそれで処罰された女聖闘士の話は聞いたことがない。

 と言うか、どんな罰があるかも聞いたことがない。

 掟は厳しいが罰についてはユルユルなのが聖域なのだ。

 

 

 なら、何に悩んでいるのか?

 弟子のカシオスが修行をしなくなってしまったのだ。

 ある日突然、人が変わったように修行に打ち込み始める者の話は聞いたことがある。

 だが、カシオスは全く逆だった。

 何かの壁にぶつかって、絶望から聖闘士への道を諦めたのか?

 カシオスの顔を見た瞬間に違うと分かった。

 諦めたから修行をしないのではない。

 確かな信念を持って修行を拒否しているのだ。

 

 だがシャイナには師匠としての責任感があった。

 カシオスに対して師匠としての愛情を確かに感じていたのだ。

 このまま修行することなく試練に挑み続ければ、さすがに頑丈なカシオスでも命を落とすかもしれない。

 そう思い、シャイナは心を鬼にしてカシオスに修行を迫った。

 

「強く産まれた者が鍛えるのは卑怯だろう?

 強くなるために鍛えるのは弱者の権利だ」

 

 強く産まれた者が鍛えるのは女々しい。

 あくまでそんな態度を取るカシオスにシャイナも言葉での説得を諦めた。

 自分が鍛える必要がある弱者なのだと身体に叩き込むしかない。

 シャイナは、カシオスに見せ付けるかのようにゆっくりとコスモを高めていく。

 白銀聖闘士であるシャイナが、まだ聖闘士候補生でしかないカシオスの前で臨戦態勢を取ろうとしていた。

 普通ならその威圧感に恐れ慄き、頭を下げて許しを乞うだろう。

 だが、カシオスの表情は何一つ変わらなかった。

 

 

「カシオス、歯を食いしばりな!」

 

 そう言ってシャイナの拳がカシオスの顔に迫る。

 だがカシオスは微動だにしない。

 カシオスの顔の前でシャイナの拳は止まっていた。

 

「なんで躱すなり、防御《うける》なりしないんだ!」

 

「師匠のあんたには申し訳なく思っている。

 鍛えないのは俺のわがままだ。

 だから、あんたが納得するまで殴ってくれていい」

 

 そう言ってカシオスは、女性のシャイナでも殴りやすいように座り込む。

 これなら巨漢のカシオスに対しても好きな所を殴れるだろう。

 カシオスは、筋を通そうとしていた。

 

「なるほど、見上げた覚悟だ。

 だが、お前は聖闘士の攻撃力を分かってない。

 それを教えるのも、師匠としての私の役割なのだろうな」

 

 もう寸止めはしない。

 シャイナは、コスモを高めて拳を繰り出す。

 クロスを纏ってないとは言え、シャイナは白銀聖闘士だ。

 その拳速は音速を遥かに超える。

 秒間105発に達する連撃がカシオスの身体を叩く。

 腰を下ろしたカシオスは、衝撃を受け流すことすらできないはずだ。

 重傷を負ったかもしれない。

 心配そうにカシオスの様子を伺ってみる。

 しかし、カシオスはまったくダメージを感じさせない佇まいであった。

 

 やはりか

 

 シャイナは、カシオスを叩く自分の拳に伝わってくる感触から予測していた。

 これではダメージを与えられない。

 だから、シャイナも覚悟を決めた。

 コスモを最大限にまで高める。

 

「サンダークロウ!」

 

 聖闘士として磨き上げてきた技を放つ。

 カシオスを殺してしまうかもしれない。

 その覚悟で技を放ったのだ。

 カシオスを打ったシャイナの拳に伝わってくる衝撃がイメージさせるもの。

 それは、巨大な岩を分厚いゴムが包み込んでいる姿。

 クロスなしには破壊できない。

 いや、クロスがあっても並みの聖闘士では傷一つ付けられないだろうイメージだった。

 カシオスは、シャイナの聖闘士としての誇りである技を受けても揺るがなかったのだ。

 

「分かったよ、私の負けだ。

 明日は星矢との試合だ。

 お前の好きにしたらいい」

 

 そう言ってシャイナは肩を落としながら出て行く。

 

 

 

 その夜、シャイナは小高い丘の上で空を見ていた。

 

「私は師匠に向いてないのかな?

 師匠だからこそ、弟子には厳しく接しなければならないのに。

 なのに私はカシオスを傷付けることが出来なかった」

 

 昼の事で自分の力不足を嘆いているようだった。

 

「全力で殴っていたつもりだったのに、聖闘士候補生のカシオスに効かなかった。

 無意識に手加減してしまったんだな。

 そんな事、カシオスのためにならないのに」

 

 いや訂正しよう。

 彼女は、自分の攻撃がカシオスに効かなかったのは弟子の身を案じて手加減してしまったからだと思っていたようだ。

 確かに、白銀聖闘士の全力の技すら受け切るような候補生がいるとは信じられないだろう。

 そんなことより、無意識に手加減してしまった可能性の方が高いと考えるのも無理はない。

 

 ただ、昼の光景を同じ白銀聖闘士で星矢の師匠でもあるマリンが見ていたら『えっ、あいつ、弟子を殺す気?』とドン引きするくらいには本気の一撃だったが。

 

 

 翌日の星矢との戦いでは、勝負に勝って試合に負けたような結果だった。

 星矢が倒れ、カシオスは歩いて去っていった。

 それでも聖闘士になったのはクロスに選ばれた星矢だったのだ。

 この時は、まだ自分の弟子がどれほど規格外なのかと言うことに気付いていなかった。

 この決着も、星矢がクロスを脱いでいたからだ。

 シャイナはそう思っていた。

 

 

 

 聖域、パライストラ

 

 校内を教師をしているシャイナが歩いている。

 アテナと星矢が恋人関係になったことで女聖闘士の掟も改正された。

 自分が恋愛しているのに部下に禁止するわけにも行かないからだろう。

 シャイナは、今では珍しい仮面を着けている女聖闘士だった。

 

「きゃあ!あの伝説のカシオス様を育てたシャイナ様よ!」

 

「カシオスさんを育てた伝説の師匠か、俺も鍛えてほしいぜ」

 

「ばぁか、お前なんぞに耐えられるわけないだろ」

 

「いったいどれほど厳しい修行だったんだろうな?

 本人の実力も黄金聖闘士を軽く超えてるって噂だし」

 

 

 生徒たちの声にシャイナは顔を引き攣らせている。

 仮面はそれを隠すために着けているのだ。

 

(やめろ!私は普通の白銀聖闘士だぞ。

 まさかカシオスがあんな規格外だったとは知らなかったんだ。

 育てたどころか修行さえつけれなかったのに)

 

 星矢と戦った時までは良かった。

 だがカシオスは、その後もやらかしていった。

 デスマスクやアイオリアと言った黄金聖闘士を打ち倒し、雑兵なのに聖戦に参加して冥界にまで行った。

 最終的には、ハーデスと決闘《タイマン》してきやがった。

 弟子に親友だとハーデスを紹介された時の私の気持ちが分かるか?

 ハーデスにカシオスを育てた師匠だと尊敬の目で見られた時は、何もかも投げ出して逃げたかった。

 

 今日も伝説の師匠の幻影に押しつぶされないように生きている。

 シャイナの憂鬱はまだまだ続くのだった。






書き上げて思いました。
Ω編を書くとしたら、パライストラを舞台にシャイナさん主人公にして勘違いものになりそうですね。
周りは、さすが伝説の師匠と勘違いを加速させていくw
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