喧嘩師《セイント》カシオス   作:ソロモンは燃えている

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クリスマス記念投稿です。


IF 友人の誕生日

 

 

 

 12月24日、日本では聖夜を楽しもうとする家族連れや恋人達で賑わっている。

 星の子学園でもクリスマスを祝うイベントが開かれ、この孤児院のOBである星矢が幼馴染の美穂を手伝い、サンタ役をして子供達を喜ばせていた。

 

「ありがとう、星矢ちゃん。

 子供達もあんなに喜んでいたわ」

 

「いいよ、俺にとっても弟、妹達みたいなものだし。

 それより、いいかげん星矢ちゃんはやめてくれよ。

 もう子供じゃないんだぜ」

 

「ふふっ、私にとって星矢ちゃんはいつまでも星矢ちゃんだもの」

 

 楽しかったクリスマス会も終わり、後片付けをしながら二人はほのぼのとした会話を楽しむ。

 

 聖域が複数の神々に侵攻されると言う史上最大規模の聖戦が終わり、差し迫った脅威もなくなったと判断されたことで聖闘士たちは各々で休暇を楽しんでいた。

 星矢は日本に帰り、子供達の笑顔を見て、地上の平和を守り抜く事が出来て良かったと思う。

 少しはあの背中に近づけたんじゃないかな。

 

 たとえ見ず知らずの子供でも、目の前で理不尽に命を奪われそうになっていれば前に立ち、とんでもない力を発揮するだろう憧れの任侠立ち(せなか)を思い出しながらこの時間を楽しんでいた。

 

「おや?星矢じゃないか」

 

 よく知った声に振り返れば、やはりシャイナがいた。

 

「シャイナさん、どうして日本に?」

 

「ああ、私も休暇でな。

 友人の誕生日を祝いに来たんだ」

 

「へぇ、そうなんですか」

 

 シャイナさんに魔鈴さん以外の友人なんていたのか?

 失礼な言葉をどうにか飲み込んで星矢が相槌を打つ。

 だが、星矢の反応も無理はない。

 聖域では孤高の存在で、魔鈴以外と個人的な関係を持っている様子は見られなかった。

 

「なんだい、その納得いってなさそうな顔は」

 

「いや、日本に友人がいるとは思わなかったから」

 

 シャイナは日本人ではないし、魔鈴繋がりかとも思ったが彼女もギリシャを生活拠点にしているため日本との繋がりはほぼ無い。

 

「ああ、日本人じゃないよ。

 あっちも休暇で日本に来ているみたいでね」

 

 シャイナの言葉でようやく得心がいった。

 相手がたまたま日本に来ていたからここで会うことにしたのだと。

 

「しかし、日本ってのは不便なところだね。

 誕生日にはケーキでお祝いするって聞いたから買おうと思ったら何処もかしこも売り切れだったよ」

 

 お陰でずいぶん苦労したと言うシャイナ

 

「ああ、今日はクリスマスだから品薄なんだ。

 時期が悪かったですね」

 

「なんでだ?

 日本はキリスト教徒が少ないって聞いてたけど」

 

「あ〜、宗教は関係なく、家族や恋人と楽しむ日みたいな感じです」

 

「ふーん、そうかい。

 だからそっちの娘と過ごしていたってわけかい。

 星矢もなかなかやるね。

 アテナは知ってるのか?」

 

「ちょっ、美穂ちゃんとはそんな関係じゃないですよ!」

 

「くっくっく

 慌てているところが怪しいなぁ」

 

「止めてください、沙織さんはあれで嫉妬深いんですよ!

 ここは俺がいた孤児院で、美穂ちゃんは家族みたいなものですから!」

 

 星矢の言葉に美穂は少し悲しそうな顔をする。

 星矢が沙織とお付き合いをしていることを聞いて、星矢のことを好きだったと自覚した。

 それでも、星矢がそう望んだのならと気持ちの整理を付けていた。

 だが、改めて言葉にされると胸が痛んでしまう。

 

 そんな美穂の様子を見て、シャイナは思う。

 

 はぁ、星矢も罪な奴だね。

 まぁでも、それが恋愛ってものか。

 この子がまごついてる間にアテナが勇気を持って踏み込んだ。

 そのだけのことだ。

 

 恋でも戦いでも攻めなきゃ勝てない。

 実に聖闘士らしい価値観だった。

 

 実際、星矢と沙織はまだ結婚しているわけではない。

 なのに美穂は諦めてしまっている。

 諦めたら、そこで試合終了なのだ。

 

「はいはい、分かった、分かった。

 んっ、来たみたいだな。

 私は、もう行くよ」

 

 どうやら、シャイナの友人が来たようだ。

 

「そうですか。

 シャイナさんもせっかくの休暇、楽しんでください」

 

「ああ、そっちもな」

 

 そう言ってシャイナさんは去っていった。

 シャイナさんが向かった先には二人の男性がいた。

 あの人達がシャイナさんの友人かな?

 一人はパンチパーマで、もう一人はロン毛だった。

 どちらも戦いとは縁が無さそうな体格だ。

 

「そう言えば、どんな関係の友人なのか聞いてなかったな」

 

 そこまで突っ込んで聞くのも失礼かな?

 自分だって聖闘士であることが全てじゃない。

 美穂ちゃんや星の子学園の子供達を家族だと思っている。

 シャイナさんにだって聖闘士として以外の繋がりもあって当然だ。

 

「星矢ちゃん、そろそろ後片付けをしましょう」

 

「うん、そうだね」

 

 少し気になった疑問も美穂に呼ばれたことで消えていく。

 

 

 

 シャイナは、二人の友人に近づき声をかける。

 

「悪いな、わざわざ迎えに来てもらって」

 

「気にしなくていいよ、シャイナ」

 

「そうそう、久しぶりにできた友人だからね。

 それよりケーキは買えた?」

 

「ああ、何軒も回ってなんとか買えたよ」

 

「それは良かった。

 じゃ、さっそく家でパーティーしようか。

 料理も出来てるよ」

 

「悪いね、二人とも。

 私の誕生日のために色々してくれて」

 

「「気にするな、友人だろ?」」

 

 シャイナは二人が住む部屋に行き、3人で誕生日を祝う。

 美味しい料理とケーキに舌鼓を打ち、楽しい時間を過ごす事が出来た。

 

「いや〜楽しかった。

 久しぶりの下界を満喫したよ」

 

「今年は二人で過ごす予定だったけど、まさか3人になるとは思わなかったですね」

 

「だよね、まさかこの時代にあそこに来る人がいるとは思わなかった」

 

「そこまで珍しいのか?」

 

「シャイナ、君がやったことは歴史的に見ても結構な偉業だよ!」

 

「あんまり実感が湧かないが、ブッタやイエスが言うならそうなんだろうな」

 

 何でもないように語るシャイナの様子にブッタ達も苦笑する。

 さすがあの空間で自分を見失わなかった者だ。

 二人はシャイナと出会った時のことを思い出していた。

 

 

 

 それは、真っ白な空間。

 人々の信仰によって神となった者達との戦いでシャイナが第九感(ナインセンシズ)に目覚めた時のこと。

 あまりの全能感に自分を見失いそうになりつつも何とか踏みとどまったシャイナは、あたりを見渡す。

 

 どこだ、ここは?

 

 へぇ、ここでしっかりとした意識を保てたんだ。

 

 私達以外では、本当に久しぶりですね。

 

 誰だ!

 

 シャイナは、この白い空間に突然響いた自分以外の声に警戒する。

 

 私はブッタ。

 

 私はイエスです。

 警戒する必要はないですよ。

 貴女もここに来た以上、分かるでしょう?

 私達は友達になれる。

 

 その言葉に嘘はない。

 シャイナは警戒しながらも、その必要がないと理解していた。

 彼らは、この空間において自分よりも圧倒的に先達だ。

 彼らがシャイナを害するつもりなら、今、無事であるはずがない。

 シャイナは、それを事実として確信していた。

 だから警戒を解く。

 していても無意味なのだから疲れるだけだ。

 

 シャイナがあっさりと警戒を解いたことに驚いた気配がした。

 

 すごいな。

 普通はこんなすぐに受け入れられるものではないのに。

 

 ええ、ここでなら全てを理解できる。

 しかし、それを受け入れられるかどうかは別物ですからね。

 

 どうやら、少しは認めてもらうことが出来たみたいだな。

 

 最初から認めていますよ。

 

 そうそう、予想以上だったから感心しただけだ。

 

 シャイナは、彼らと交流しながら、ここにいる自分は意識の一部であることを理解していた。

 こうしている間も身体は聖域で4神と戦っている。

 

 しばらくすると急に身体が強く引っ張られる感覚がした。

 どうやら、意識が完全に身体に戻ろうとしているようだ。

 

 下界に戻るみたいですね。

 

 せっかく友達になったんだから、もう少し話したかったな。

 

 なら、今度は下界で話しますか?

 

 おお、いいね!それ。

 こんど私達は休暇を日本で過ごす予定なんだ。

 イエスの誕生日もあるし、その日に日本に来てくれたら迎えに行くよ。

 

 ああ、私もせっかく出来た魔鈴以外の友人だ。

 お邪魔させてもらおうか。

 

「「「じゃあ、またね」」」

 

 ここでシャイナの意識は完全に聖域に帰っていった。

 

 シャイナは、ナインセンシズに目覚めたことで新たな友人を得た。

 4神にも惚れられて、彼女の人脈(神脈?)はとんでもないことになってきた。

 ただ、その事実を正確に理解してしまうと胃に深刻なダメージを受けてしまうので全力で考えないようにしている。

 彼らはただの友人。

 正体?

 そんなの知らないな。

 

 階梯を登って神となった者達と友好関係を持ちながら、自惚れることもなく、彼らに頼ろうとしない姿勢は、彼らからの評価をさらに引き上げていた。

 イエスもブッタもシャイナがこのまま階梯を上がり神になると確信していたのだった。






聖お兄さん的なあの人達でした。
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