夏油先生と真依のパーフェクトトリオン授業   作:かりん2022

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pixiv版と微妙に間違い探し程度に変えてます。


ファム・ファタール5

「そもそもさ、初めての出会いはその日じゃないし、僕らは手も足も出なかったし、思いっきり嬲られたし、洗脳だってされそうになったんだけど。舐めプで見逃されたけど。どうせ傑の記憶するに値もしない出来事だよね。あと、甚爾や直哉も殺されてないけど、これも洗脳した被害者なんて傑にとって家族じゃないってことかな?」

 

 僕が言うと、こちらの世界の人達に激震が走った。

 

「は!? 悟が負けたのか!?」

「やっぱり洗脳されてんのか!」

「自分は洗脳されとらんで! 自分で膝を折ったんや」

 

 ざわざわざわざわざわ。

 

「当然だろ。僕、そん時、いたいけな高校生一年生だよ? 勝てるわけないだろ、そんなの」

 

 ざわざわざわざわざわ!

 ボーダーの戦い見ただろ。こいつらと戦わせられたんだぞ、僕。

 

「でも攻撃当たらないだろ?」

「術式を使えばな。肉体的にも精神的にも呪力的にもガンガン削られてく中、平静を保って術式を維持し続ければな。もう死ぬ気で赫と紫覚えてオートで術が発動し続けるようにして、がむしゃらに努力したわ。こんな事言うと努力なんて二流のやる事って真依に言われちゃうけどさ」

 

 真依の顔を思い出して、憮然とする。ボーダーの女帝なんぞと言われてるだけあるんだよな。

 

「真依は何があったんだよ……。流石に今は洗脳されてないんだろ?」

「すごいじゃん、真依。努力なんて必要ないって?」

 

 真希とこちらの僕が言葉を絞り出した。真依のイメージと一致しないらしい。

 まあね。トリガーがないなら、落ちこぼれだろうから。

 

「逆だね。イヤイヤやったり追い詰められて我武者羅にやってる奴は楽しんでやってる奴には勝てないって意味。全力の努力と全力の遊び、両方経験しての言葉だってさ。プレイヤー共はトリガーで遊ぶ為だけに他の全てを代償に捧げてるから。休みの日に訓練や研究は当たり前、給料だってほぼほぼトリガーの改良に使う、どころか借金までするのもいるから。流石にそれはやめさせてるけど。今も、飽きて携帯見てるだけのように見えるけど、見てんの今の試合の解析動画だから。あと、入学を選んだのは真依で、入学前はどうやっても洗脳は無理だよ。禪院家は特に警戒してたしね」

 

 傑の生徒達を指し示すと、こちらに聞き耳立てながらも動画を見る子供達。

 今の試合の動画編集が終わり、配信され始めたようだ。本当にボーダー所属の技術者は仕事が早い。

 そして、しっかり動画を見ていた傑の頬を引っ張る。

 

「いたひ、いたひよ、私は借金してないだろ?」

「めちゃくちゃグレーな金稼ぎしてただろ。あと、お前はちゃんと話を聞けよ。どうでもいいって顔すんな」

 

「プレイヤーってのは?」

 

 色々聞きたそうにしながら、それでもこっちの僕は話題転換のために聞いてきた。

 僕としてもこれは言っておかねばならないので言っておく。

 

「蔑称だよ。プレイヤー、ゲーマー、廃ゲー、現実でゲームする奴ら。他にも廃神、ゾンビ、ちょっと捻ったのだと契約者やナウ、感染者、もー死んでる奴ら、戦う死体、亡霊、概念、個にして全なんてのもあったかな。悪魔と契約した奴らとか、今この瞬間の為だけに生きてる奴らってことね。群体ってのは、好き勝手やってるように見えて、根っこでは一個の生物みたいにがっちり繋がってるから。いい子達だけど、ゲーム感覚でめちゃくちゃするから、絶対に信用、ましてや信頼はしないこと。全く意識してない部分で裏切ってくるから」

「蔑称多っ」

「全くひどいよね!」

 

 ぷんぷん、と傑は怒ってみせる。それをジトっとした目で見ると、傑は目を逸らす。

 

「捧げるってのは」

「全部だよ。お金、時間、愛、過去、未来、自分、大切な人、命、記憶、魂」

「は?」

「でもそんなの、呪術師も同じだろ。呪具高いし、訓練に時間を使うし、戦いが好きな人だっているだろうし」

「呪術師は仕方なくなる場合も多いし、そこまで全部捨てないよ。でもボーダーは、望んでそういうの捨てて、残りも捨てる契約結んでようやくなれる職業だからね。真依や真希は禪院家は大丈夫だろうからってそのまんまだけど、ボーダー可愛い子ばっかりって思わなかった? 整形して名前捨ててんの。周囲の人が人質として狙われることが多いから、そうなった。で、20歳になって箸にも棒にも掛からなかった奴は21歳までに大体死ぬ。20歳になるまでは死亡率はすごく低いのにね」

「なんだよそれ。20歳で死ぬってことかよ」

「死因は大まかに三つ。トリガー狙いの奴らからの襲撃。ボーダーへの怨恨またはストーカー行為。あと自殺ね。今日参加してたOBは全員関連企業の社員か教師。選ばれなかった奴は記憶の抹消処理をするから、無防備になるんだよね。そもそも装備がないと呪霊見えないし、呪術師にも呪霊にも、どころか記憶がないことで一般的に見ても無防備になる。あ、選ばれるってのは、トリガーの原材料になるのを含めてるから。そうだね。小学生の一学年60人のクラスの内、ボーダー卒業の20歳になるまで大体だけど140人が編入して、5人死んで、150人が20歳を前にドロップアウトして、20人職員や教師や関連企業勤めになって、9人トリガーになって、1人はマザートリガーに身を捧げて、残りの10人は犯罪の標的になって、5人が抜け殻になって生きる。そんな感じかな。あ、ドロップアウトすれば小学生は転校、中学生から記憶の抹消処理を受けて職業訓練を受けて孤児として社会に出る事になるね。ドロップアウトした子は自殺率や犯罪巻き込まれ率は減るけど、やっぱりボーダーの組織攻撃の対象にはなるよ」

 

 ばっとこの世界の傑が、どうでも良さげに聞いている傑を見た。そうだよね。そうなるよね。

 こっちの傑はまともな感性を持っているようで、羨ましい。

 

「なんだよ、それ。そこまでして、何がしたいんだよ」

「呪霊と闘かったり、トリガー使った試合がしたい。マジでそれだけだから。お金の為にって子もいるけど、そういう子は変わらない限りまずドロップアウトするね。競争率高すぎて、いわゆる努力と情熱を併せ持った天才しか土俵にも立てない。そんな奴らがそこまでして競争してるんだ。手段なんて選ぶはずがない」

「はあ!? 理解できない!!!」

 

 傑が叫ぶ。俺も理解できない。

 

「そうだろうね。生まれながらの本能とか経験が呪術師の強みなら、それが非術師の強みかな。数が多いってそういうこと」

「僕はそれを容認してるのか?」

「強制されてないからね。自分達で選んでやっている以上、どうにもできないよ。僕らには地獄に見えても、彼らには何を支払っても入りたい楽園なんだから。そもそも、一回その楽園潰して復活されてるし、最近は呪術師も巻き込もうと手ぐすね引いてるし」

「ふざけるな、呪霊と戦うのは遊びじゃないんだぞ!」

「えー? 君の価値観を押し付けないでくれないかい?」

 

 傑が言い争う中、真希は蒼白な顔をして叫んだ。

 

「待てよ、真依は……っ 真依はどうなるんだよ!?」

「真依は間違いなく開発者に選ばれるよ。真希はトリガーに選ばれるんじゃないかな。どのみち二人は覚悟してる。禪院家は横槍入れようとしてるけどね。直系が4人もボーダーに取られてるわけだし、冗談じゃないよね」

「そんだけ手が足りてるなら、どうしてこの世界に?」

「私の術式ね、やっぱり便利なんだよね。私はトリオン量も結構多いし、2、3人欲しいよね「やめてね?」」

 

 ほんっとうに傑は。

 

「あとは、トリガーの知識を広めたらどうなるかの実験があるかな。僕の世界さ、呪霊やトリガーの公開して、やっぱり呪霊増えたんだよね。あ、傑。全国ネット放映阻止しといたから」

「えっバレちゃってたのかい!? そんな……! 悟はどこまで私の邪魔をするんだ……! 頑張っても頑張ってもプチッとする!」

「潰しても潰しても悪巧みするしな。他の世界にまで迷惑掛けんなよ。俺もトリガーのない世界には来たかったから、それは良かったけどさ。たまに考えるんだよな、傑と同じ学校に通えてたらどうだったんだろうって。……この世界の傑。僕と同じ特級術師だったくせに、百鬼夜行だの村ひとつ皆殺しだの、ほんとファム・ファタールだよな。それでも、他の世界でも、ほんの短い間でも。同じ世界を見れた時はあったのかなって思ったら」

「キュンキュンしちゃうかい?」

「絶望したわ。僕も呪詛師になってなくてほんとよかった」

 

 そうなのだ。ほんっとーにこいつ! って思うけど、惹かれるのがやめられない。

 本当に楽しそうに戦うんだよな。こいつ。ボーダーはみんなそう。イカれてて、不思議とカリスマがある。

 いっそ処刑されてくれればなんて思うが、ほんとこいつら有用で殺せないんだよな。

 ボーダーはどいつもこいつもイカれてるが、呪術師よりずっと付きやすかったりするのがタチが悪い。

 多分、処刑の決定降りそうになったら俺、実用面と感情面の両方で全力で阻止するだろうし。ほんとお前。

 

「話が脱線したな。とにかく、そんな性質を持ったボーダーの前身のお化け研究所と戦わされたわけだ。あと、こいつら設備が整ってる場所ならマザートリガーの近くならノータイムで復活できるし、無人兵器も持ってる。兵器な以上、設備が整った場所の方が当然有利だし、そんな相手の研究所に突っ込んでたった二人で勝てと? しかも、思いっきり敵対してくる要救助者を助けるのが絶対条件。無理ゲーだろ。無理ゲーだった」

「確かにね。それでも僕なら今なら何とかなるだろうけど、高校一年生の僕じゃ、無理だったかも。でも、実際に楽園は潰されたし、傑は確保できた。どうやったんだい? 早く聞かせてよ」

 

 俺は続きを話し始めた。

 あれは高校入学して、任務を受けた時の話。

 この任務が一発目だぜ? 本当にひどい話である。




前置きだけで終わってしまった……。
そして戦闘回、ちゃんと書けるのか……。
この話では津美紀は行き場のない子としてボーダーに入ってます。
恵とは一切なんの関係もありません。
甚爾が再婚してないので。
なので伏黒甚爾ではなく、禪院甚爾です。
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