夏油先生と真依のパーフェクトトリオン授業 作:かりん2022
夏油 傑が増えた。
そして、並行世界の生徒達を引き連れて、自分と対峙するという。
私達は全員様子見とフォロー。ボーダーとかよく知らないけど、なんの茶番だと思う。
そもそも、並行世界なんて嘘に決まってる。
帷が降りて、空に大きな画面が映し出される。
映し出されるのは、夏油傑。それと男の子だ。
東京や京都も映し出されている。
『ハッピーメリークリスマス!』
その言葉が、私の思考を吹っ飛ばした。
ハッピーじゃないわよ。
『さあ、ボーダーファンの皆、喜べー! 市街戦でクリスマス、イン東京アーンド京都、ただ今開戦するよー! 対するは呪霊1000体、先に狩り切れた方が勝ち! あ。いつも通り、志願者のみ、遺書は事前に書いてもらってるからあんしーん!! 実況は私、夏油傑。解説は与 幸吉ことメカ丸くん、中継協力冥冥さんでお送りします! それでは両チームの紹介をしていくよ! 今回はー。なーんと! 学生VSOB企画! 年寄り無理するなどんどこどん!』
安心でもないしどんどこどんでもないわよ。っていうかメカ丸!?
私達はメカ丸を見た。メカ丸はブンブンと首を振る。
男の子を見る。結構格好いいじゃない。
『はいはい、夏油先生ぶっ殺されますよーもーそういうこと言うと! リーダーは学生側、高校一年生! ご存じボーダーの女帝禪院真依! 一体何を魅せてくれるのでしょうか! 全く予想がつきません! 対するは、呪術界の被験者No.1! 以来、ボーダー最強の座を死守し続けてきた男、伏黒甚爾先生!! 今宵も全てを叩き潰す様を魅せてください!』
画面には、無邪気な笑顔を見せる甚爾とそれと会話する直哉。
楽しそうに笑い合う私とおねぇちゃんだった。
私!??
今度は私が注目を浴びてブンブンと首を振った。
っていうか女帝って何!?
『正反対のリーダーとなりますが、どちらが有利かと思いますか、解説のメカ丸くん』
『難しいですね。学生組はなんと言っても若さがあります、若さが! トリオンは20歳までしか伸びないので、この若さがとても重要なんですね。対してOBは若い頃はもっと動けていた、というのがネックになると思います。ただし!』
『ただし?』
『それでもOBは歴戦揃い! 伸び代限界まで伸ばした猛者たち! 特にボーダー最強の男甚爾が負ける姿はどーしても想像できません!』
『これは楽しい勝負になりそうだね! 今夜は寝かさないよー!』
寝かさないよーじゃないのよ。えっ これ放映してるの?
今更その事に思い至る。これ放映されちゃうの? え?
『レギュレーションはなんでもあり! 実戦ですからね、死力を尽くして戦ってもらいましょう!』
『おおっと甚爾先生ロケットスタート!!! 早い早い早い! そして呪霊達が続々と集まってます! まるで無双ゲーのようだぁー! あっ 甚爾先生、生身は危ないですって、あー! この男止まらない止められないー!』
「甚爾くん……!! 甚爾くんやて!?」
直哉が叫ぶ。確か、私達が幼い頃に死んだ人だったか。並行世界では生きているという事だろう。
かなり強い。
『そして京都はいきなりデカい武者が現れた模様ですね、高い高い高い怪獣のようだー! しかもマザートリガーの近く、虎杖ママは大丈夫かー! おっと双子の女帝が自ら防衛に出るようだ、双子キャノンが見られるかー!』
お姉ちゃんが私に密着して、一緒にしゃがむ。
腰の辺りで機械を接続した。そ、そんな密着する必要があるわけ?
そして銃を構えた。
『はい、皆さんご一緒に、メ・テ・オ・ラー♡』
夏油傑が連続で可愛くポーズを決めて投げキッス。おっさんが何してんのよ。
おねぇちゃんと私はアイドルのように笑顔とウィンクで銃を撃ち放った。
一級呪霊の胸に着弾し、根こそぎ吹っ飛ばして大穴を開ける。
『 見事にハートを撃ち抜いたー! 可愛いねー! ファンサばっちり! 見た? ウィンクしてたよ!』
ハートを撃ち抜いたじゃないわよ。
カメラ目線で軽く互いのほっぺにキスした後、二人は別行動へと移る。
なんなの? なんなの!? どうしたらそんなことしてもらえるわけ!??
『呪力タンクの直哉先生がいない事からどうなるかと思いましたが、いやはや1級に通用するメテオラが撃てるとはやりますね。呪力混じりじゃありませんでしたよ、あれ』
呪力じゃないならなんなのよ! っていうか呪力タンクって何よ。
『学生組に呪力タンクが君しかいないのが痛いよね。君は戦闘はできないし。先生でもタンクできるほどの呪力持ちは私と直哉くらいだけど。秤をスカウトできてたらなぁ』
『ボーダーは呪霊が見える方も見えない方も応募しています。入隊試験に我こそはと思うものは奮ってチャレンジください』
『いやー。それにしても、学生組は地味ですね地味! 索敵と妨害に専念しているようです』
『うーん。どんな作戦を取るつもりですかね。あ、マザートリガーの所で話し合いをしているようです。あ、殴り合い。虎杖ママがオロオロしてます。トリオンモンスターとはいえ、彼、まだ中学生ですからね。手元を覗き込んでみると、おー。チームごとに担当陣地を分けるようです』
『余裕だね! あ、ここで女帝真依、貫禄を見せた。話し合いが決着したようです。散開していきます』
『グラスホッパーをうまく使いますね。凄まじい移動速度です。学生組はフットワークが軽い!』
『チームレッドドラゴン、早い者勝ちでチーム内で対決しだしたー!!』
『チームカメレオンは一斉射撃を試してみるみたいですね』
『チーム大鷹はチームワークで呪霊を追い込むみたい』
『見事にバラバラですが、これはこれで見応えがあっていいですね!』
「私はいないのかな?」
「俺もいないようだ」
「向こうじゃ死んでるとかだと嫌だなぁ」
先輩達が会話する。その目は並行世界の私に釘付けだ。
あ。遊んでばかりいるから、一人呪霊にやられた。
ドンッ
倒された人は光になった。
『たーまやー! 先にペイルアウトしたのは学生組か! 油断したね! 虎杖ママの元で産まれ直しておいで!』
光は流星のように大きな装置に飛んでいき、そして装置に取り付けられた箱から人が出てきた。
復活できるってこと? 産まれなおし? 何それ???
とにかく、彼らは呪霊が見えて、復活できて、同じ武器を持っているようだった。
こんなの革命だ。ありえない。
『京都の現役学生チームが勝利です! 東京はちょっと入り組みすぎてたね。でも僅差だよ、両方頑張った! おめでとう学生チーム! ということで、トロフィーをもらいに行くよ。今日はこれまで! 実況夏油、解説メカ丸でした!』
学生達は一斉に歓声を上げて喜ぶ。
そこで、並行世界の私が放送した。
『みんな、ありがとう。楽しかった?』
轟音。
『そう、私もよ。とても楽しかった。じゃあ、お片付けして向こうの皆と合流して、帰りましょ。帰るまでが遠足よ』
そして、テキパキと片づけて、大型の飛行装置らしき物に乗っていく。
京都校にも来た。
「呪術師の皆様、今日はこのような機会をくださり、ありがとうございました。至らぬ点等ございましたら、全部夏油先生のせいですので文句はそちらにお願いします」
深々と礼をする。
「メテオラとか言ったか。あれはなんだ?」
「姉からトリオンを分けてもらって撃ち出したんです。詳しい技術情報は私からは言えません。夏油先生に聞いてください」
「最悪の呪詛師が教師だと?」
「目を離さなければいい先生だから……」
「術式はいいし……」
「私達に呪霊を運んでくれる貴重な存在」
「黙って呪霊一気飲み&大量提供してくれればいい人」
「一応スカウトとかも凄いし……怪しげな所から」
色々とひどいことを言っているが、とてもきやすい仲なのが伺えた。
「待てや! 甚爾くん、帰ってしまうんやろ!? 自分も東京に行く! もう一度だけでいいから、甚爾君と話したい……戦いたいんや」
「甚爾先生、記憶一度全消しされてますよ」
「なんやて……」
「それでなくとも並行世界の人間ですし、甚爾さんを苦しめるような事を言わないよう気をつけるなら紹介しますけど」
「それでええわ」
「わ、私も行く!! 私、ボーダーについてもっと知りたい!」
私は思い切り声を上げていた。
「俺も興味があるぞ! 並行世界の俺はどうなったんだ?」
「普通に呪術師してるわよ」
「いなかったが」
「ボーダーは非術師中心の団体だもの。東堂さんは呪術師でしょ」
「真依は違うのか」
「私はボーダーだもの。それに、一応見えるけど、呪力なんてないも同然じゃない。おねぇちゃんはそもそも見えないし」
「でも見えてたわよね?」
「トリオンで見える脳を構築してんのよ」
「ふむ。そのトリオンという謎エネルギーで疑似的に体を作っているということか。真依の術式と相性良さそうだな」
「あら、わかる? さすがね東堂さん」
「まあな。好きなタイプはなんだ?」
お決まりのセリフに、並行世界の私は弾ける笑みで答えた。
「お姉ちゃん!!」
私の顔は羞恥で燃え上がった。