夏油先生と真依のパーフェクトトリオン授業 作:かりん2022
ある日、気がついたら河原に居た。
記憶がない。やばいほどない。
自分の名前もわからない。
ついでに化け物が見える。視界が二重になってて明らかに変だ。
「ひっ」
手に触れたのは、不可思議な機械。何だこれ。そう思うと、何故か使い方がわかった。
「ト、トリガーオン!」
その瞬間、俺は変身した。服が変わったほか、何かが切り替わった気がした。
視界もガラリと変わった。目に映る黒いのが目に見えて減ったのだ。化け物は相変わらず見えるけど。
「あ、アステロイド!」
立方体がいくつも俺の前に現れ、射出される。
それは化け物を貫いた。
「どこだ、ここ」
困ってしまう。
日本だといいけど。
キョロキョロと辺りを見回すと、黒髪の男が倒れていた。
すぐそばにトリガー。仲間!? 敵!? ビクビクしながら起こす。
「君は? 私は誰だ?」
「俺も知らない。俺達、記憶喪失みたいだな」
それから、俺は空間魔法を使えることと、人には見えない化け物や黒いオーラ的なものが見えることと、空間内に沢山のトリガーやなぜか読める外国語っぽい技術書を持っていることがわかった。
もしかして→実験体の逃亡。
人間兵器とかだったらどうしよう。
幸い、ここは日本らしい。
途方に暮れた俺は、まずトリガーを使った。でないと目がやばい。
それから、川縁で自分の姿を見て、くっそ目立つ白髪と青い目だったのでトリガーで調節して黒に染めた。
よし、俺、偉い。
それから、なんとかバイト先を見つけて、働き始めた。
警察に行けるもんなら俺も行きたい。
でもなんかスパイ的な存在だったら殺されそうじゃん?
そんなわけで、修行していた時に話しかけられた。
「悟?」
「カメレオン!」
トリガーを使って、姿を消して逃げる。
化け物に囲まれる。ついに見つかった? くっそ、鳥河は別行動中だ!
暗闇に男が浮かび上がる。
「お前、俺を知ってんのか! 俺の事捕まえに来たのか!? お前誰なんだよ、俺、誰なんだよ!! ふざけんなよ、俺は逃げ切ってやるぞ! アステロイド! アステロイド! アステロイド!」
立方体をいくつも生み出して威嚇する。
「ええと、もしかして記憶喪失なのかい? 驚かせて悪かったよ、知人に似てたんだ」
「シャーっ!!」
「大丈夫。私は術師の味方だよ。君の力になるよ」
「バケモンで囲っておいて説得力ねぇんだよ!」
「引っ込めるからさ、ね。ところで君は呪術師って知ってる?」
「何その明らかな犯罪者ワード」
「犯罪者ではないね。むしろ正義の味方さ。呪詛師が犯罪者」
「嘘だ、呪いって言葉に肯定的な要素なんて一ミクロンだってないぞ。お前が呪術師ってか?」
「いや、私は呪詛師」
「ダメじゃねーか!!」
足を段々と踏み鳴らすと、落ち着きなよ、と笑われる。
「君は、誰かに追われてるのかい?」
「気がついたら河原で倒れてて、何も覚えてなくて、武器と変な化け物を見る目だけあったんだよ。そんなん実験体が研究所から逃げてきた以外のなんなんだよ」
「化け物を見る目は、珍しいけどそこまででもないね。私もこうして見えるんだし、呪霊、つまり化け物も操れる」
「本当に? 俺って普通? 化け物って迫害されない? というか、化け物を操るトリガーなんてあんのかよ」
「どうかな。呪術師を化け物扱いする人はいるね。呪術規定でも、呪術は人には内緒って定められている。でも、ちゃんとコミュニティはあるよ。君が呪術師か呪詛師かはわからないけどね。トリガーってのは、術式の事かな?」
「術式。化け物をやっつける武器のことか?」
「そうだよ。君が望むなら、呪術師の拠点に送ってあげる。近々用事があるものでね」
「呪詛師だったらどうすんだよ」
「その時はちゃんと逃してあげるさ」
「なんで俺にそこまで?」
「ついでだよ。それに、私は術師には優しいんだ」
俺は、トリガーを解除した。
「あんたもトリガー解除しろよ」
「……悟? えっ 記憶喪失?」
「お前、俺の事知ってんの」
「いや、ちょっと悟より若いかな。ごめんね、何度も間違えて。待って、見えるって六眼?」
「いいから、トリガー解除しろよ!」
「これでいいかい?」
化け物達が引いていく。
すると、化け物の輪の外で困っていたらしい鳥河が走ってきて、俺を庇った。
「鳥音! 無事か!? トリガーオン!」
「服、変わってないし。元から生身だったのか? それとも術式とか嘘かよ」
「??? ごめん、勘違いがあったみたいだ。トリガーについて、説明してもらってもいいかな。それとごめん、君達、多分実験体だと思う。私と悟のクローンかぁ……」
俺は、男が鳥河とそっくりなことにようやく気づいた。
男の名前は夏油 傑らしい。
「名前わからないからさ、俺達、とりあえず鳥河と鳥音って名乗ってる」
「センスないね!」
「知ってる言葉がトリガーとかトリオンしかなかったんだよ!」
「とりあえずさとりと優って呼ぼうかな。凄いねトリガー」
「俺らが頑張って考えた名前ガン無視じゃん」
夏油はトリオン体になり、アステロイドを手の内で弄ぶ。
「でもさとり。さとりと優は多分、他にも武器あるよ。使い方、しっかり学んでいこう。呪術師にも紹介してあげるから、そっちに行ったほうがいい」
「呪詛師だろ? いいのか?」
「ちょうど宣戦布告に行くんだよ」
「ダメじゃねーか!! 待てよ、夏油傑……夏油傑……五条悟!! 2人はじゅじゅキュア!」
「待ってそれ誰が言ったの?」
「夏油傑! 脳みそくり抜いて乗っ取り予定の人!!」
「怖いな!? 誰が言ったんだよ!」
「えっ わからない。すげー悪い脳みそで呪霊と組んでる」
「あっ 私も思い出してきた! 呪霊操術天元様が操れちゃうので夏油傑の脳みそをくり抜いて代わりにイン!」
「ええ……そういう勢力があるのかい? そもそも、それなら君を使えば良かったんじゃあ?」
「それから逃げた結果が今なんじゃねーの? 知らねーけど」
「それもそうか。なら、尚更悟の所に行った方がいい」
「……いやだ」
「私も嫌だね」
「さとり? 優?」
「俺、呪力とか関係ないところで生きたい。思い出した。呪術師ってスッゲーブラックな職場じゃん。呪霊とかどうだっていいよ。関わりたくない」
「私も秘匿死刑にされる未来しか見えない」
「それは悟にいいなよ。悟と話して、どうしてもダメだったらこっちで受け入れてあげるよ」
「呪詛師も嫌ですー。大体、呪力を持ってるからって、どうして戦わないといけないんだよ。別に戦わなきゃいいじゃん。呪力があれば必ず戦えって法律はない! ……よな?」
「呪霊操術だから呪霊を取り込まないといけないってわけでもないだろ」
「それが、そうでもないんだよね。呪力があるって、簡単な事じゃない」
そう苦笑して、夏油は俺に手を差し出した。
俺はその手を取った。
やってきました、呪専。
「やあ悟。久しいね! 早速だけど、君にプレゼントがあるんだ」
「何かな?」
「さとり、優、おいで」
俺と優はペリカンの口から引っ張り上げてもらう。
「紹介するよ。私達の子だよー! あっほら、ちゃんとトリガー解除して」
「はあ!??」
「冗談だよ。どっかの勢力が私達のクローンを作ったらしくてね。記憶喪失で困っていたのを拾ったんだ。元々生まれたばかりなのかもだけど」
「馬鹿な、呪霊操術と無下限……!?」
「彼ら、呪力の練り方も知らないんだ。いやー。私も教えようとしたけど、全然でね。ここはやっぱり本職の先生にお任せするよ」
「何が狙いだ……!?」
「いや、本当に拾っただけなんだよ。私は無関係だ。クローンとはいえ、悟を呪詛師に引っ張り込むのも違う気がしてね。彼らを作った勢力から、守ってあげてくれないかな。私が貰っても良ければもらうけど? あっ本人の希望は、呪力関係ない職業につきたいって事だったけど。いくら君でも、それは無理だよね?」
「クローン? 一体いつ……護衛依頼の時か……!!」
「本当は宣戦布告もしようと思ってたんだけど、さとりと優が逃げる時に実に面白いものを持ってきていてね。しばらくそれで遊んでようかなって。届け賃として、それくらいは貰ってもいいだろ? じゃあ、2人の返品はいつでも受け付けるからね。ああ、当然秘匿死刑になんてしようものなら、百鬼夜行を開催させてもらう。呪霊二千体をばら撒かせて貰うよ」
注目を浴びる俺達。
「俺らめちゃくちゃ疑われてる……」
「うう、私達はただ生まれてきただけなのに……」
「かわいそうに。2人とも、いつでも戻って来ていいんだよ。なんなら今からでも一緒に帰るかい?」
「夏油呪詛師じゃん」
「一般人>超えられない壁>呪術師>超えてはいけない壁>呪詛師だよね」
「ひどいなぁ。で、どうする悟?」
「……預かるよ。若人を正しい方向に導くのは確かに僕の仕事だからね」
そして、俺達は呪専に入学することとなったのだった。