夏油先生と真依のパーフェクトトリオン授業 作:かりん2022
「これから皆さんには、トリガーの貸与と貸与にあたっての使用方法のレクチャーをさせてもらうよ。並行世界の私が迷惑をかけてごめんね。ひとまず百鬼夜行まで貸与しますので、活用してほしい。一回コンテニューぐらいには役に立つと思うから」
「夏油先生撮られるの駄目だから、録音撮影は禁止ね! カメラ向けたらぶっ殺すわよ。後、3メートル以内に3人以上で近づくのも駄目だから!!」
「結構ガチで色々苦手じゃんか」
真希が話す。真希というよりは同級生が警戒の色を出している。
夏油教祖がひどい侮辱をしていたのはつい昨日のことだ。
「先生、トリガー関連で誘拐とか色々被害に遭ってんのよ。呪術師やめてボーダーする時に強い呪霊処分させられたりしてたし」
「トリガーとかボーダーってなんなんだよ?」
「ボーダーとは、トリガーを使って呪霊を退治する人達のことだよ。トリオンと呼ばれる体内物質を使って作動するもので、使ってみればわかるかな。トリオン量を順番に測定していくね。真依」
「はい」
トリガーを夏油教師に押し付けると、夏油教師はトリガーオンと言った。
それで、夏油教師に手足が出現し、呪術師達はなおさら警戒する。
「じゃあ、順番に測定するよ。特に真希、君のトリオン量は興味があるな。トリオンを幼い時から伸ばしている状態と、伸ばさなかった状態を知れるなんてなかなかない機会だからね。トリオンは幼少期から訓練すればするほど伸びて、20歳で確定する。ああ、でも心配しないでいいよ。甚爾先生だって大人になってからのスタートだったけど、ボーダーの教師になれているからね」
「呪力じゃなくてトリオンで戦うって事だろ? それって呪術師である意味あんのかよ。甚爾って天与呪縛だったし」
真希の言葉に、こともなげに真依は肩をすくめた。
「ないわよ。ボーダーは基本非術師よ。でも一般からボーダー募集したら夏油先生がこうなったから、こちらでは呪術規定と呪術師が戦うのは維持した方がいいかも。秘密保持の契約書にサインしてもらったのは自分達の為だって思って貰えば。夏油先生と同じ目にあいたくないでしょ? こっちで友達と共闘できないのは悲しいけど、仕方ないわ」
「あー。東京校ってボーダーに乗っ取られたのか? それで呪術師を京都校って」
「人聞き悪いこと言わないでよ、そうだけど」
「ほら、測定するよ」
順番に測定していき、トリガーを配っていく。
「じゃあ、真依。お手本見せて」
「はい! トリガーオン! 孤月! シールド! スコーピオン! アステロイド!」
「とりあえず、基礎的なもののセットを組み込んでみたよ。今日はこれを一通り使えるようになって、呪霊と戦ってもらった後、負けを体験してもらって終わりです。トリガーに呪力は流さないように。壊れるので。乙骨。君は特に気をつけて。じゃあこれから、的になる呪霊を出すよ。一旦トリガーを解除して、と」
そして、夏油教師はトリガーを解除し、車椅子に座って呪霊を出してテストに付き合う。
最後に、トリガーを起動し、トリオン体の時の弱点部位を黒板に書いた。
「トリオン体になったら、トリオンが貯まるまでしばらく変身できないからね。即座に逃げながら呪力を巡らせ、呪力での戦いに切り替えよう。後、トリガーには本体が格納されているから死守するように」
「じゃあ、攻撃してみて」
「はーい」
真依は無造作に夏油を攻撃し、首を刎ねられた夏油の手足は消滅し、首が出現した。
元の肉体に戻ったのだ。それを真依は受け止める。
「大丈夫、夏油先生」
「ん、ちょっと休むよ。ごめん」
ということで、硝子に連れられて退場である。
「夏油先生はトラウマでちょっとアレだけど、トリオン体が破壊されても本体は無傷だしモリモリ動けるから
大丈夫! 誰から負ける? 他の人は技とかトリガーのオンオフとか練習しててね」
「僕もちょっと傑の様子を見てくるよ。後のことは任せたよ、真依」
黙ってみていた五条はサクッと自分の首を刎ね、トリオン体が解除されるとスタスタと硝子と夏油教師を追いかけて出ていった。
「あ! トリオン体と本体間違えて本体の時に自害しちゃダメだからね!」
「間違えねーよ。どうせ解除するなら、手合わせしねー? 真依」
「やろ!! ニャニャーン!」
真依はぱああっと笑顔になり、爪状のスコーピオンを振った。
子猫のように飛びかかる真依を、真希は笑って孤月で受け止めた。真希だってトリガーは初でも武術はとことん叩き込んできたのである。
それにしても真依は本当に楽しそうに戦う。
実技部分を終えてしまえば、物理攻撃が効きにくいなどの要点は事前に配った冊子に書いてあるので安心である。
トリガーはあっという間に受け入れられた。
トリオン量が多い呪術師の場合、トリガーを使った方が強いし、トリオン体で怪我をしても元に戻れば傷は消える。トリオン体でやられても生身の体がある。トリオン体だと身体能力が上がる。良い事づくめである。トリオン量が少ない術師にもバッテリーは貸与されたし、そもそもトリガーを使うのは義務ではないのだ。
次の日には、京都校や京都の呪術師たちも講習に来ていた。
「直哉せんせー! ニャニャーン♪」
笑顔で直哉に飛びかかる真依を全力で夏油教師は止めた。
とはいえ、全てのオプションを外されたトリオン体では若い体を止められず、ずるずると引っ張られる。
「真依! 直哉先生はこっちでは先生じゃないから、飛びかかったら問題が!」
「なんや、積極的やん。手合わせしてほしいんか?」
「直哉せんせーの手合わせ大好き! 手のひらでころころされるの好きよ!」
「確かに私たちの所の直哉は手加減上手いけど、こっちでは教師じゃないからこっちの直哉は違うかもしれないだろ。それにトリガーも初めて使うんだし」
「手加減くらいしたるわ。トリガーが初めて、いうんは事実やな。生身でええわ」
「ええっ でも危ないよ?」
「誰に向かっていうとるんや。それにトリガーいうんが便利なんは認めるけどな。あんたまで認めとらんよ、傑くん。何せこっちの傑君は大犯罪者やからな。しかも傑くん、参戦せんのやろ。人混み嫌いやからって」
「うう、ごめん。人に囲まれるだけで動けなくなっちゃって……代わりに」「代わりに! 私が頑張るから!!」
「なんや生徒で女の子に庇ってもらうなんて情けなっ」
「こっちの直哉先生ってすごい意地悪なのね。やはり呪術師の家は悪環境、魔王めぐみんを産んだ家……!」
「ああ?」
「真依! むやみやたらと喧嘩を売らない! 恵にそんな口聞いて、知らないよ!」
「ボッコボコにしてやんよー!」
やんのかステップをかます真依。
「真依!! すみませんすみません、うちの生徒がすみません!」
「ええよ。ダメ教師の傑くんに見本見せたるわ」
そういうことで、手合わせが始まった。
真依の姿が消える。
開幕韋駄天である。直哉は驚いたが、夏油教師はさらに驚いた。
「ま、真依!? それ、直哉先生の大事なオプショントリガー! いつのまに、怒られるよ!?」
「直哉先生のものは私のものー!」
「いくら温厚な直哉先生でもキレるよそれは!!」
「ふぅん。手加減の必要はなさそうやな……!」
「え。怒っちゃやだ」
「直哉先生、落ち着いて!?」
「教師ちゃうわ! でもクソガキに今回ばかりは社会勉強させたる!」
「よそ見したわね! カメレオン!」
「消えた!?」
「ああっ 結構ガチ構成!?」
というわけで、わちゃわちゃして、相討ちとなった。
「討ち取ったりー!」
「手加減してもらったの忘れちゃダメだよ、真依!」
無論本気である。
「もっと頑張りなよ、直哉。と言っても今回は仕方ないかな。向こうの君、強いしね。それと真依が毎日戦ってわけだし」
「向こうの自分の方が強いいうんか、悟くん!」
「単純に武器一個増えるとそりゃ違ってくるよ。ビデオ見る?」
ということで、今回は教材ビデオを見てからの実習となった。
『とーじくん、胸貸してやぁ』
『めんどくせーがあっさり済ませたら勉強にならねーしな、遊んでやるよ』
『ぱーぱ!』
直哉は目を見開く。
楽しそうにトリガーを取っ替え引っ替え、さまざまなオプションを見せつけながら楽しそうに訓練する二人。オプショントリガーについて説明する灰原。たくさんの生徒たちの模擬戦。市街地セットでのチーム戦。
「……胸糞悪いわ」
欲しかったものを全部持ってる世界。
「ところであの子誰?」
「直哉先生の娘で燕ちゃん。色々あって今は人質。私かお姉ちゃんとの子供で交換してくれるって。私は仕方ないかなって思ってるけど、直哉せんせーは絶対嫌だって」
「母親は?」
「殺されちゃった。ボーダーってトリオン体にならないと呪霊見えないし。恵ね。私にスパイして戻ってこいっていうの。それくらいなら直哉せんせーと子供作って差し出すかな。ボーダーに好きな子もいるけど、直哉せんせーどうなったか見ちゃうとね。恋とか愛とか頭おかしいのかって言っちゃう仕事しか頭にない恵も嫌」
「うーん、向こうは向こうで地獄の片鱗が滲み出てるよね」
その後、トリガーの配布と受講を行なった。
オプションの希望がアホほど出たが、百鬼夜行まで日がないのである。