夏油先生と真依のパーフェクトトリオン授業 作:かりん2022
「帰還しましたー!」
きゃあきゃあと東京のバックアップの生徒と合流し、はしゃぐ生徒達。
「甚爾くん……本当に甚爾くんや」
呆然と直哉は甚爾を見る。
「ああ?」
「記憶がないってほんとなん?」
「あー。ボーダーの機密奪いに忍び込んだ時に、どじったらしくてな」
「甚爾くん、自分と手合わせしてくれへん?」
「別に良いぜ」
「自分も! 自分も手合わせして!」
「二人一緒にこいよ、面倒臭い」
そう会話する横で、呪術師の真依は夏油傑に願う。
「トリガーについて知りたいの」
「技術提供の準備はしてあるよ。ただし、呪霊とトリガーの技術情報の一般公開が条件だけどね」
そう言った夏油傑は悪い顔をしていた。
「どういう影響を与えるか実験したいってこと?」
「そう。公開してしまえば、技術情報の秘匿の為に記憶を消す必要もなくなるからね。医療と軍事面で他国からの横槍もあるし、正直秘匿に限界を感じてるんだ。でもそうすると、呪霊退治が軍の仕事になりそうでね。どこかで公開した場合の実験をしたかったんだよ」
「うーん、想像もつかないかな、とりあえず上に判断を仰いでいい?」
「もちろんだよ。こちらの上層部の決定なら悟も文句言わないだろ?」
「こっちの世界の上が決めた事なら、僕が口出しする事じゃないね」
「こっちからの要求は、そうだな。傑の監視をしっかりして、二度とこっちの世界で暴れさせないようにする事」
「問題ないよ」
「私が呪術師至上主義でもかい?」
「私が非術師至上主義だから、バランス取れるかなって。呪術師の子達皆、しっかりしてるしね。じゃあ、三ヶ月後、また来るよ」
さて、直哉コンビと甚爾との対決である。
「トリオンってのは、自由なもんなんや。それを呪力と掛け合わせると……」
そして、直哉はロックなアニソンを掛ける。
直哉の体がメキメキと変わっていく。
それは、まるで呪霊のような。
「呪体転生! ステージ1!」
「はああ!? 呪霊になった!?」
「この体だと、俺は音速超えられるんや! トリガーが耐えられるんは五分間だけやけどな!」
「めんど」
いかにも面倒くさそうに、甚爾が構える。
異形となった直哉が動いた。
ガキン!!!
孤月によるトリオンの剣と異形直哉がぶつかり合った。
そして、甚爾は呪術師の直哉を見る。
「こねぇの?」
「やったるわ!!」
呪術師の直哉も走る。
早々に蹴り飛ばされた。
「ああっ 弱っ!!」
見学していた呪術師の五条先生は真依に問いかける。
「あれ、ステージ2もあるの?」
「あるわよ。領域展開もどき。触った人の細胞一つ一つが直哉先生と同じ攻撃をしないと1秒止まっちゃうの。天与呪縛の完全なフィジカルギフテッドには効かないけど、おねぇちゃんがそうなるには私が死なないとなのよね。双子ゆえの天与呪縛って奴?」
「私はそこまでしてトップを取るつもりはねぇ」
「だから、私がおねぇちゃんの代わりに一番になるの。なったの。呪力はなくても、トリオンとそれを使う才能はあったし」
「凄いじゃん。いや、本当に凄いよ。直哉も真依も見違えた」
「えへへ」
五条先生に撫でられて笑う真依に、真依は気焔を挙げる。
「〜〜っ 私! 絶対トリオンについて学ぶから!」
そうして、直哉ーズをフルボッコにした甚爾は、傷を軽く手当てして、腕を振った。
「いってぇ。三年後には負けてるかもな。相性いい奴に負けるのかっこわる。今のうちに諦めとかねぇ?」
「誰が諦めるか! 一年で倒したるわ!」
「そしたら呪術師サイドに戻ってくんない? 甚爾連れて」
「いーやーや!」
「優遇するよ? 当主はもう無理だけどさ」
「いらんわ。飛び出した身だし、めっちゃ大変やん、当主も呪術師も!」
「ボーダーも大変そうだけどなぁ」
悟と甚爾に囲まれる異世界の自分。
憧れている二人の手が並行世界の直哉の頭を撫でた時、呪術師の直哉は、歯を食いしばった。
異世界の直哉ができている事は、自分もできるはずなのだ。
何が違う? 直哉は領域展開すら出来ない。
そんなのは許せない。あいつも自分なのに。
トリガー? それが差異だというのか。
それなら。それなら、自分もトリガーを手に入れてやる。
手段なんて、選ぶはずがない。
「そっちの直哉もお疲れ。まあ頑張れ」
甚爾が頭を撫でる。
涙が溢れた。
欲しかったものだった。手に入らなかったものだった。
次期当主の座は持ってないようだけど、それは自分のものだけど、でもそんな物より、甚爾と悟(最強達)の賛辞が欲しかった。
いや、まだ間に合う。自分のじゃなくても構わない。
欲しいなら、奪うまで。
「自分、トリガーの技術情報の取得をさせるように動くわ」
自分は時期当主なのだから。
「ところで、次期当主誰やん?」
真依が嫌そうに答えた。
「恵よ」
「恵くんの話題は自分の前じゃ出さんといて。胸糞悪いわ」
「ええ……。恵いい子だけどなぁ」
「人様を踏み躙って悦に浸るようなのはあかんわ」
「お前の得意技じゃねーか」
思わず呪術師の真希が突っ込む。
「自分、そんな酷いことしたことないわ!!」
「そーかよ。わりぃ」
「あ、もしかして恵って禪院で育てられた?」「当たり前やろ」
つまり直哉と恵の性格がチェンジかぁ。
後からこの会話を知り、ぐぬぬする直毘人だった。