物騒な東京にフィジカルモンスター(35歳)をぶっこんでみた話   作:ココロ踊りたい

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 今回から何話か過去話になります。

 何故ちさたきがこんな距離感になったのかを書ければと思っています。

 誤字脱字、解釈違いがあるかもしれませんがよろしくお願いします。


6話 千束は前からむぞらしかったたい パート1

 今から5年前のある日

 

 錦糸町の閑静な住宅街にある小さな喫茶店。

 

 ここは喫茶リコリコ。先生と一緒に始めた素敵なお店、私の居場所。

 開店当初はほとんどお客さんも来なくて閑古鳥が鳴いてたんだけど・・・

 今では少しずつお客さんも来てくれて嬉しい。

 先生のコーヒーもあの頃に比べるととても美味しくなった。最初のは控えめに言って飲めたものじゃなかったね・・・

 

 そんなわけで少しずつお店も繁盛してきて毎日が楽しい。

 本日の開店準備を済ませてお店のドアプレートをオープンにしお客さんを待つ。

 今日はどんな楽しいことが待っているだろう。

 

 ドアの開く音と一緒に鈴がなる。

 本日一番のお客様のご来店。最高の笑顔と元気な声で挨拶をしよう。

 

 「いらっしゃいませー!ようこそリコリコ・・・へ・・・?」

 

 開いたドアの先には、

 

 

 

 怖い顔をした巨人がいた。

 

 

 

 私は固まった。時間が止まったようだ。

 えっ?誰?てか何?怖いんだけど?

 2メートルはあろうかと言う長身に着ている作業服の上からでも分かる筋肉の鎧。

 昔映画で見た、殺戮ロボット?みたいなヤバさを感じた。

 

 リリベル駄目だったからって外部の殺し屋雇ったの?そこまでやるか!?

 

 DAにおいてファーストリコリスという立場の私は、言ってみれば機密情報の塊だ。私が拉致されたり、他の組織に所属してしまえばこの国の暗部を晒すことになる。

 そのためリコリスは任務以外での外出が禁止されている。基本的にリコリスはDAの寮で生活をしているのだ。それを外出どころか拠点を外部に持ちDAを抜け出している私はリコリスの常識では完全な異端者だ。

 そんな私からの情報漏洩を防ぐ目的でDA所属の別機関は時折私を殺害するために部隊を送り込んでくる。

 『リリベル』君影草の名を冠する元孤児の男子で構成された部隊。言ってみれば男の子版リコリスだ。

 リコリスがJKに擬態し暗殺に特化している分リリベルは重火器を用いての殲滅戦に特化している。もはや軍隊と言っても過言ではない。

 そんな部隊を送り込んでくるのだ。まあ、全員非殺傷弾で撃退してお帰り頂いたのだが。

 

 落ち着け私、私はファーストリコリスだ。こんな修羅場は何度も潜り抜けてきた。落ち着いて対処を・・・見たところ武器の類いは所持していない。今なら先手をとれるはず・・・なんだけど

 

 理由は不明だが勝てる気がしない。目の前の巨人に勝つビジョンがまったく見えない。本能的に恐怖を感じる。

 

 「くっ・・・」

 

 思いとは裏腹に訓練によって鍛えられた体は反射的に行動を開始する。

 すなわち銃を抜こうとした。

 したのだが・・・

 

 私今リコリコの和服じゃん!?銃ないじゃん?あぁ、私終わった・・・

 

 巨人が私に手を伸ばしてくる。

 

 「ひっ!」

 

 あぁ・・・死ぬのかな?そりゃいつかは死ぬかも知れないと思ってたし、心臓の件もあるし・・・まだしたいことたくさんあったのにな・・・

 

 自覚すると自然に涙が出てきた。

 

 まだ死にたくない。

 

 嫌だな、せめて苦しまないように一撃で殺してくれないかなぁ?

 

 でも嫌だなぁ。

 

 目をギュッと閉じて歯を食い縛る。

 

 何も起こらない。あれっ?何で動かないの?あれっ?

 

 恐る恐る目を開くと巨人がアワアワしていた。

 

 どういうこと?

 

 「どっ!どげんした!?何ば泣きよると!?」

 

 凄く心配されてた。

 

 

 これが私と孝ちゃんとの出会いだった。

 

 

 「さっきは驚かせてごめんな・・・」

 

 巨人さん改めお客さんはさっきから私に謝りっぱなしだった。

 

 「良いの、私が悪かったの。お客さんは悪くないよ」

 

 「いや、でもなぁ。泣かせてしもたけんなぁ。ごめんな」

 

 申し訳なさそうにまた頭を下げてくる。損してるなぁこの人、子どもの私にこんなに真剣に謝ってくれるぐらい良い人なのに。

 

 「もういいってば。それよりおじさんの名前を教えてよ?私は錦木千束って言うんだ。珍しい名前でしょ?」

 

 「確かにめずらしか名前ね?おっちゃんは江ノ上孝典って言うばい」

 

 「江ノ上さん、じゃあガミさんって読んで良い?」

 

 「よかよ。千束ちゃん?」

 

 「千束って呼んでよ!ちゃんって子ども扱いみたいじゃん!私はもう立派なレディーよ?」

 

 頬を膨らませて、ムキになった。

 

 「ははっ、わかったばい千束」

 

 「何で笑ってんの?」

 

 「笑とらん、むぞらしかっただけたい」

 

 「むぞ・・・えっ?なに?」

 

 「ああ、すまん熊本の言葉で可愛らしいって意味たい」

 

 「可愛い//・・・ってかガミさん九州の人なの?」

 

 「そうばい!熊本よ!肥後よ!」

 

 「私は九州の方には行ったことがないから色々教えてよ?」

 

 「千束、そろそろ注文を伺いなさい」

 

 先生がカウンターから出てきて言う。いっけなーい、話に夢中で忘れてた。

 

 「そうだった!ガミさんご注文は?」

 

 「じゃあ、ブレンドコーヒーばよろしく」

 

 「はーい!ブレンドコーヒー1つ入りまーす!」

 

 「了解した。千束、すまんが裏の方を片付けといてくれ」

 

 「はーい、じゃあガミさんまた後でね」

 

 千束はヒラヒラと手を振って店の奧に入っていった。

 

 

 「すいませんでした。色々と」

 

 カウンターから出てきた色黒の店長、(後で知ったが)ミカがコーヒーを差し出しながら謝罪した。

 

 「とんでもなか!よーかお子さんですよ」

 

 「私は育ての親みたいな者でして。千束の両親はその・・・居ないんです」

 

 「そげんやったとですか、、」

 

 「よかったら今後もご贔屓に、千束も喜びます」

 

 「こちらこそ、よろしくされなんばい」

 

 「せーんせ!裏の片付け終わったよ」

 

 「ご苦労さん」

 

 「ガミさん、もう少しお話ししようよ?」

 

 「よかばい!なんば話そうかね?」

 

 

 

 しばらくガミさんとおしゃべりしていたら結構な時間が経っていた。

 

 「あら?もうこんな時間?楽しい時間は短いね」

 

 「そげんやんね、そろそろ帰らなんな。千束、また来るけんね」

 

 「また来てね?約束だよ?他のお店に浮気しちゃ駄目だからね?」

 

 「わかった。また近いうちに来るけんね」

 

 「ガミさんまたね!ばいばーい」

 

 帰っていく巨大な背中を見送りながら思う。

 

 面白い人だった。私が初めて恐怖を感じた人。会話をしながら観察してみた、私が見た限り彼は本当に一般人のようだ、見た目以外は。

 

 まあ、始めは殺し屋かと警戒しながら話してたけど、途中から私も彼とのおしゃべりが楽しくなってついつい長話をしてしまった。

 

 子どもの私の話をしっかり聞いてくれて、彼の話もたくさんしてくれた。

 純粋に楽しかった。

 

 また来てくれると言ってた。明日かな?明後日かな?毎日は無理だろうけど、頻繁に来てほしいな。

 

 私との約束を守るようにガミさんは翌日からほぼ毎日お店に来てくれたのだった。

 

 

 

 それからしばらくたったある日

 

 「千束はいつもここで働きよるけど学校はいこっとや?」

 

 どうやらいつも私がリコリコにいるから心配しているらしい。さて何と答えるべきか。

 私が考えているとガミさんが何かを察したらしい。

 

 「・・・学校も色々な人間がいるけんね。合う合わんもあるよな。嫌なこつばする奴もおるかもしれん。千束、何かあるなら、相談にのるけん」

 

 ガミさんはどうやら私が不登校になっていると思ったらしい。

 

 呆気に取られたものの、心配してくれる気持ちが嬉しい。胸がポカポカするような感覚。ああ、この人は本当に優しいな。ただし誤解は訂正せねば。

 

 「ガミさん、私は大丈夫だよ?学校はリモート授業が多いだけ」

 

 「そうやったつか、千束が嫌な目にあってないなら良かった」

 

 

 

 また別の日

 

 「いらっしゃいませー!あー!ガミさん今日も来てくれたの?ありがとー!」

 

 「これ、欲しがっとったろ?」

 

 「わー!これ駅前の店のお菓子?SNSでバズってたの!良く買えたね?ありがとう。ねぇお茶していくでしょう?一緒に食べよう?」

 

 私がこの前美味しそうだと言ってたのを覚えてくれてたらしい。喫茶店に食べ物持参はどうかと思わなくもないが、私へのプレゼントなので許す。てか超嬉しい。

 

 「そうね。ならブレンドコーヒーを1つよろしく」

 

 「了解!ブレンドコーヒー1つだよ先生!」

 

 先生が私の分のコーヒーも持ってきてくれたので、休憩がてらガミさんとお話ししながら話題のお菓子を食べた。

 

 とっても美味しかった。

 

 

 

 リコリコの仕事は喫茶店だけじゃない。

 もちろんDAの支部である以上本部からの任務が回ってくることもある。

 リコリコではそれ以外にも地域の困り事を解決する何でも屋みたいなことをやっている。

 何でかって?そりゃあ人の役に立つ仕事をしたいからだよ?

 私が頑張って人が喜んでくれるととても嬉しい。

 

 そうして私が関わった人達の記憶の中に私と言う存在を残したい。

 

 私は、短い人生の中に意味を見いだしたいのかもしれない。

 

 でも、最近になって思う。

 

 私は生きたい!皆と一緒の時間を過ごして、恋をして、子どもを生んで、歳を取って安らかに息絶えるまで!

 

 そんな普通が堪らなく欲しい!無理だと解っていても!

 

 

・・・話を戻そう。

 

 この日は近所の人の依頼で帰ってこなくなったネコちゃんを探してた。

 

 案外早く見つけたのだけど・・・

 

「どうしてそこまで行っちゃったの?ネコちゃん・・・」

 

 猫がいたのは高い木の上。まずなんでそこまで行けた?

 

 猫の火事場の馬鹿力?に呆れつつどうしたものかと考える・・・

 私は木登りは得意だ。というかDAに鍛えられた私達の身体能力は高い。

 

 「私だけなら問題ないけど」

 

 問題は登ったところで猫を抱えて降りられるか・・・怪我をさせたら死なせたりしたら大変だ。

 

 「警察?消防?役所?」

 

 どこに電話をかけるべきか考え込んでいると最近私のお気に入りとなった人物が偶然通りかかった。

 いつ見ても大きい。

 

 「ガミさーん!こんにちはー!」

 

 私に気がつき軽く手を挙げながら歩いてくる。

 

 「こんにちは、千束。なんばしよると?」

 

 もはや見慣れた悪そうな笑み(本人は微笑んでいるつもり)を向けてくれる。

 

 「実は近所の人から猫探しを頼まれたんだけど」

 

 話ながら視線を上に持っていく。ガミさんも上に目を向ける。

 

 「なるほど、な」

 

 納得して頷く。

 

 「ちょっと俺に任してみらんね?」

 

 「えっ?」

 

 作業着を脱いで放り、Tシャツ姿になる。服越しに筋肉の造形がハッキリ分かる。

 腕が太い、首が太い、肩幅が広い。ありとあらゆる部分が規格外。正に筋肉の鎧。

 

 「少し離れとってな?」

 

 私が離れたのを確認すると彼は、足を少し開き膝を曲げ溜めを作り

 

 全身のバネを使い跳躍した。

 

 「は?」

 

 まるでミサイルのように勢い良く発射された彼は片手で猫のいた木の枝を掴み、もう片方の手で猫を捕まえ、一瞬下を確認した後

 

重力に従い落下してきた。

 

「危ない!」

 

 思わず声を出した次の瞬間に

 

地響きをさせて地面に着弾した。

 

 発射したときと同じ姿勢で膝を曲げて落下の衝撃を殺す。

 

 そして何事も無かったかのような顔をして私に猫を手渡す。

 

 「お待たせな」

 

 「・・・ガミさんって某未来から来た、I'll be backなの?」

 

 「何かそれ最近見たばい?俺は溶鉱炉に入るごつなかよ?」

 

 まあI'll be backも跳びはしなかったが。

 

 「こんくらい軽かもんばい」

 

 何かあったら俺に頼れよ。そう言って彼はサムズアップしながらニカッと笑った。

 

 ドキッとした。脈無いけど。

 (やばい!!カッコいいーーー!)

 

 さりげなくとんでもないことをしてアッサリしてるところとか、筋肉とか、優しいところとか。

 

 まるで某洋画のシワちゃんみたい。

 

 猫を返してやってくれ、そう言って仕事に戻って行く背中に声をかける。

 

 「ガミさん!仕事終わったらお店来る!?お礼もしたいから来てね?」

 

 もちろん行くよと言って歩いていった。

 

 私はしばらく彼が歩いていった方をみていた。

 「・・・カッコ良かったね?ネコちゃん?」

 

 多分理解してないだろうがニャアと鳴いてた。

 

 

 

 「遊びに行ったこつんなかて!?」

 

 ある日の夕方、仕事帰りのガミさんとリコリコでコーヒーブレイクしながらおしゃべりしていた。

 

 「うん、私小さい頃から色々あったし、リコリコ出来てからも忙しかったから」

 

 うん、嘘はついてない。事実忙しかったからのだから。任務任務任務で。

 

 「マジか?ミカさんあーた、マジかやん?」

 

 「・・・すまん」

 

 先生があからさまに目をそらす。今でこそ丸くなったけど司令官で鬼教官だったからねその人。

 遊び?はぁ?なに言ってんの?黙って訓練しとけや訓練訓練。

 実際マジでこんな感じだったからね。

 

 「よし!決めたぞ!」

 

 ガミさんが私ににっこりしながら言う。

 

 「今度の日曜日に遊びに連れて行くぞ?駅前に10時集合な!」

 

 有無を言わさずに告げられた。えっ?これってデートじゃん?ガミさんにデート誘われてる?えへへへ

 

 にやけ顔になりそうなのを堪えて笑顔で

 

 「嬉しい!ありがとう。楽しみにしてる!」

 

 オッケーした。

 

 「寝坊するなよ?ミカさんもよかな?千束連れていくけんな?」

 

 「いや、その日は「よかろうもん?」・・・問題ない」

 

 ちょうどコーヒーも無くなって

 

 「よっしゃ、今日はこの辺で!千束また日曜日にな!」

 

 「了解!ちょー楽しみだよ!!」

 

 デート?の事で浮かれた私はワクワクしながらガミさんを見送るのだった。




 次回パート2は遅くなると思いますがよろしくお願いします。
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