物騒な東京にフィジカルモンスター(35歳)をぶっこんでみた話   作:ココロ踊りたい

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 過去話の千束編パート2です。

 この話を書くにあたって先に書いた話と若干矛盾が生じてしまいましたので順次更新しております。

 なお、原作からの離反も発生しております。本作では千束の生存意欲が高いです。不殺が絶対のものではありません。今後登場するキャラに関しましても改変してしまう予定です。

 私事ではありますが、暗めの話しを書いていてリコロスとともに若干病んできてしまったので、少し前向きな話にさせていただきます。

 こんなのリコリス・リコイルじゃないと言う意見もご尤もかと思います。申し訳ございません。


7話 千束は前からむぞらしかったたい パート2

 ヤバい、遅刻した。

 

 待ち合わせした北押上駅に向けて千束は全力疾走していた。

 腕時計を見ると時刻は10:20を示している、完全な遅刻である。

 

 昨日早く寝たのに・・・

 

 昨日は日課の洋画鑑賞も控えて早々と床についたのだが今日のデート?が楽しみ過ぎて寝付けなかったのだ。まるで遠足前の子どもだ。

 

 ガミさん怒ってるかな?もう帰っちゃったかなぁ?

 

 内心不安になりながらも走り続けてようやく駅が見えてきた。

 

 ・・・居た!

 

 駅の出入口の壁に背を預けて佇む巨人が見えた。見間違える事なくガミさんだ。

 今日は日曜日のため人の出入りが多いはずだが、厳ついガミさんの周りだけは空間が空いたように人が居なかった。

 

 私に気づいたガミさんが軽く手を上げて笑顔を向ける。

 

 「ガミさんごめんなさい。寝坊しちゃって。かなり待たせちゃったよね?」

 

 私が頭を下げると。

 

 「いや?俺も今来たところやけん、気にせんでよかよ」

 

 明らかに嘘とわかるが笑って許してくれる。

 

 優しすぎだよガミさん・・・

 

 小言の一つくらい覚悟していたが杞憂に終わった。

 

 優しいなガミさん、嬉しいな。

 

 思わずにやけてしまう。

 

 思えば千束は孝典に怒られたことがない。知り合ってから半年ぐらい経っているが千束がいくら粗相をしても孝典は笑って許した。この前なんかコーヒーをぶちまけて孝典の作業服をずぶ濡れにしてしまったが、孝典は笑いながら失敗は誰でもすると言って許してくれた。それどころか千束が火傷をしていないか心配する始末である。

 

 気のせいじゃないよね?普通怒るよね?絶対私にだけ優しいよね?特別・・・

 

 顔が火照ってくる、熱が上がるのが自分で分かる。

 

 「大丈夫ね?顔の赤かばってん?走って来たとやろ?何か飲む?」

 

 また心配してくれる。

 

 「だ、大丈夫だよ!それより早く行こう?どこに連れて行ってくれるの?」

 

 早く行こうと促す。

 

 「そうやね、まずはゲーセンにでも行こうかね」

 

 「ゲーセン?」

 

 「色々ゲームがあって楽しかぞ」

 

 孝典が動き出すが千束は動かない。

 

 「?どうした?」

 

 千束は少しモジモジした後に上目遣いで

 

「手・・・繋いでいこう?」

 

 か細い声でそう言った。言った後で急に恥ずかしくなったのか慌てだした。

 

「い、いやそのね、今日は人も多いし、はぐれたら嫌だから・・・」

 孝典は一瞬呆気に取られた表情をしたが、柔らかく微笑み

 

「ひゃっ!・・・」

 

 千束の手を握った。

 

「ほら千束、手を繋いでいくばい」

 

「・・・うん!」

 

 ぱっと花が咲いたような笑顔になる。

 

「えへへ・・・」

 

 若干にやけているが

 

 端から見れば怪しい絵面であるが2人はそんな事気にするかとばかりにしっかりと手を繋いで歩き出した。

 

 

 

 「結構人がいるね」

 

 人生で初めてゲーセンに来たけど、結構人がいて賑わっている。色々なゲームの音が聞こえて騒がしいけど、嫌いじゃない。

 

 「さあ、何から遊ぼうか?」

 

 ガミさんが聞いてくる。色々あって迷うけど・・・あ!あれにしよう。

 

 「ガミさんあれやろう?」

 

 私が選んだのはモリオカート。たしか配管工の兄弟が主役だったような?

 

 「あれか?よかぞ?なら競争やね」

 

 「よっし!負けないよ!」

 

 オンラインモードでゲームスタート

 

 「うわっ!ここで甲羅ぶつけないでよ!?」

 「アイテム盗られた!」

 「誰が雷使った?うわー!踏むなー!」

 「なんや!?今何ばされた?」

 

 レースゲームは難しい、上には上がいる事を実感させられた。

 でもなんだかんだ楽しかった。

 

 レースで熱くなったので今度は大人しめのゲームで遊ぼう。

 

 「あ!あのぬいぐるみ可愛い!ガミさん取れる?」

 

 「あれか?よし、任せんね」

 

 私の目に止まったのはちょこっとモンスターのネズチュウ。黄色が特徴の可愛いキャラクターだ。

 

 「あれ?難しかね?もう一回」

 

 なかなか苦戦しているようで100円、200円、300円とどんどん追加していってる。

 

 「も、もう良いよガミさん!気持ちだけでもありがたいよ」

 

 そう言って止めようとするが

 

 「もうちょっとで取れるけん。千束に取ってやるけんね」

 

 ガミさんの熱意に負けて見守ることにした。

 

 

 「よっしゃー!取れたぞー」

 

 結果2000円と少々かかってぬいぐるみをゲットした。

 

 「ほれ千束!プレゼントたい!」

 

 「ガミさんありがとう!ごめんねお金いっぱい使わせちゃって・・・」

 

 「そんな事気にせんでよかと、今日は俺が誘っとるとだけん」

 

 そう言って笑顔を向けてくれる。

 

 「うん、ありがとう」

 

 「そろそろ昼時やね?千束、飯食いに行こうか?」

 

 「お腹空いてきたね。どこ行くの?」

 

 「焼肉に行こうか?」

 

 「おほー!お肉ー!やったー」

 

 やってきたのはちょっとお高い焼肉店。

 

 「さあ千束!たくさん食べんね?」

 

 「わーい、いただきまーす」

 

 お肉たくさんで幸せ、お腹いっぱい食べた。

 

 

 「水族館?」

 

 お腹いっぱいになった私たちは腹ごなしもかねて次の目的地に向かった。

 

 「そう、水族館。綺麗かぞ?海の生き物を見てると癒されるけん」

 

 「楽しみ!早速行こう!」

 

 ガミさんの言った通り水族館は綺麗だった。たくさんの水槽に可愛い魚や変な生き物、ちょっとグロい生き物まで色々いた。その一つ一つに私は感動と興奮を覚えた。来てよかった。最後の大水槽を見てその感情は一気に高まった。

 

 「すごい・・・」

 

 それ以上言葉が出なかった。大きなアクリル窓からみた光景はまるで海の中。いろんな生き物が優雅に泳ぐそれは作られた環境だと分かっていても、広い世界を連想させた。

 

 「・・・」

 

 でも、同時に寂しさも感じる。ここの生き物達はどんなに優雅に泳いでいるように見えても、水槽の中で飼われているだけ。決して外の世界を見ることはないのだ。

 

 まるで私達、リコリスみたいだ。リコリスに自由はない。私は多少特殊なところはあるが、自由に旅行に行くこともできないし、戸籍もないためパスポートも作れない。DAの管轄地域から出ることはできない。

 

 考えていると視界が滲んできた。

 

 私の時間は短い。自由もない。普通には生きられない。そのことがとても悔しい。

 

 「千束?どうした?」

 

 隣から心配そうな声を掛けられる。低い声、落ち着く声。

 

 「ん・・・何でもない」

 

 溢れそうなものを手で拭って横を見ると、見慣れたガミさんの顔があった。

 

 「そうか?・・・何かあるなら、何でも良い、話してみ?」

 

 話しても多分分かってもらえない。そう思っているのになぜか、口から自然に言葉が出た。

 

 「・・・ここの生き物が可愛そうだなって思っちゃって・・・外の世界には出られないから」

 

 ガミさんはしばらく私の目をみて、水槽に視線を移しながら静かに話しだした。

 

 「・・・たしかに、ここの魚たちは水槽という箱庭で飼われている。大海原を夢見ているかは分からんけど。おそらく死ぬまでここから出ることはない」

 

 そうだよね。そう思いながらうつむく。

 

 「でも」

 

 ?

 

 「限りある命。限りある世界の中でひたむきに、一生懸命に生きる姿は美しいと思う」

 

 私の顔を見つめながら続ける。

 

 「人間も同じよ。皆大なり小なりいろんな枷の中で生きてる。好きなことばっかりやっている奴はそう多くない。そんな中で地道に、ひたむきに生きて、自分の好きなものを見つけるんだ。美味いものや楽しい場所、好きな人や趣味だったりな。上手く言えんけど、俺は無制限な自由よりも、明日のために今を懸命に生きている方が好きだ。命を燃やして今を生きている姿は美しい」

 

 お前の求める答えになっているかは怪しいけど。そう言って苦笑いしながら。

 

 「それでも理不尽なめにあったり、思い悩んだり、躓くこともある。もう嫌だって投げ出したくなる時もある。もしお前がそうなった時には俺を頼れ。どのくらい力になれるか分からんが、俺は全力でお前の味方をする」

 

 呆気に取られた私にはさっきまでのネガティブな考えはもはや無くなっていた。

彼の持論は極端だし、ズレてるけど。私を思ってくれる力強い意思に動かされた。

DAのこともリコリスのことも心臓のことも知らないのに。

この人なら本当に、本当の意味で私の味方になってくれそうな気がした。

それがたまらなく嬉しくて。照れくさくて。

照れ隠しに全力で馬鹿な事をしてやろうと思った。

 

 ?

 

 突然立ち上がった私に驚いた表情を向けた彼。そんな彼の前で渡しは両手を上に伸ばして波打つように前後にゆらゆら揺れてみた。

 

 「何ばしよっとや?千束?」

 

 あ、方言に戻った。

 

 「チンアナゴだけどー?」

 

 一瞬ポカンとしたけど次の瞬間吹き出しながら笑った。

 

 「ははは!チンアナゴか?そらよかな?・・・ほんなら俺はこれたい!」

 

 足を大きくガニ股に開いて、両手でチョキの形をしてみせた。カニかな?

 

 「タカアシガニー!」

 

 「おお!甲殻類とはやりますな!」

 

 お互いバカやってるなと思ったけど、こんなことに付き合ってくれるガミさんが好きで、嬉しくて。

 

 「ガミさん、ありがとう。おかげで元気が出たよ」

 

 「!よかった。千束は笑っとったほうがむぞらしか!」

 

 もっとこの人と一緒にいたいと思って。

 

 「申し訳ございません、お客様。他のお客様のご迷惑になりますのでお静かに願います」

 

 「「あ、すいません」」

 

 係員さんに注意されるまでやってしまった。

 

 

 水族館を堪能した私たちはおやつ時の小腹を満たすため、最近人気のクレープ屋に来ていた。

 

 「すごい、行列になってるね」

 

 SNSでも話題らしく、現在20分待ちになってる。

 

 「どげんする?他んとこに行くか?」

 

 「せっかくここまで来たから、食べてみたい。並んで良い?」

 

 「よかよ、ばってん千束も疲れたろ?順番待ちしとくけんあっちのベンチに座っとかんね?」

 

 体力には自身があるので疲れてはいないけど、ガミさんの気遣いに甘えることにした。

 

 それに水族館を出たあたりから向けられている視線がいい加減鬱陶しくなってきた。

 

 私がベンチに腰掛けて程なくして複数の人影が現れる。

 

 「・・・あんたたち誰?」

 

 威圧を兼ねて低い声で問いかける。

 

 街の不良のような格好をしているが、まとっている雰囲気は素人のそれではない。

 

 「・・・リリベル?」

 

 「ご名答」

 

 正面の男が答え、背後に回った別の男が銃口を突きつけてくる。

 

 「一緒に来てもらおうか錦木千束。下手な真似はするなよ?お前の連れの男にも1人付いてるぞ」

 

 「!!」

 

 思わず視線を向けると、ガミさんの2人後ろに似たような服装の男がいた。パーカーのポケットに手を突っ込んで、おそらく銃を持っている。

 

 「わかった、ついていく。あの人には手を出すな」

 

 「賢明な判断だ。来い!」

 

 私は人気のない路地裏へと連れて行かれる。

 

 ごめんねガミさん、巻き込んだ上にまた心配掛けちゃうね・・・

 

 心の中で彼に謝罪した。せめて彼だけは無事であって欲しい。

 

 この時、私を含め誰も気づかなかった。ガミさんが横目でこちらの様子を見ていたことに。

 

 

 

 こらおかしか。

 

 孝典は先程横目で伺っていた光景を推察する。

 

 最初は千束の知り合いち思いよったばってん、あげん不良のごたる奴どんと仲良かて思わん。

 

 そして、

 

 孝典はちらっと後ろを振り返る。2人後ろに並んでいる不良風の男があからさまに目を逸した。

 

 こん奴もあの馬鹿どんの仲間やろね。千束ばどこさんやった?

 

 ギリッ!苛ついて奥歯を噛みしめる。

 

 たたっ殺すぞ!馬鹿どんが!!

 

 ・・・落ち着かんといかん、失敗すっと千束が不味か。まずは後ろん奴から。

 

 孝典は後ろをぱっと振り返り、例の男に笑顔を作って声をかける。

 

 「藤田?藤田じゃにゃーや!?久しかぶりやん!元気しとったっか?」

 

 努めて笑顔で、同郷の友人に話しかけるように近づく。

 

 「は、はぁ!?」

 

 素早く男の肩に腕を回し肩を組むように列から離れ、人通りから死角になるような場所へ足を進める。

 

 「何や、俺んツラば忘れたつか?情のなか奴ね。ちーっと話そい!あ、後ろん人!俺たちゃ外っけん、先に行ってよかよ!」

 

 圧力と勢いで男を捕らえ、ポケットに入れた男の手を抜かせないように上から抑える。

 

 「て、てめぇ!!殺すぞ?」

 

 なおも抵抗する男の手を銃らしき凶器とともに握りつぶす。骨や何やらが砕ける音がする。

 

 「あ”があああ!?」

 

 「騒ぐな、首折るぞ!」

 

 「!!・・・」

 

 脅しながら馬鹿力で顎を無理やり閉じさせる。

 

 「言われたこつだけ答えろ、千束はどこや?」

 

 「だ、誰が!ぐあああ!!・・・」

 

 正直に答えなかったため前腕も握りつぶす。骨が砕ける感触がする。

 

 「次は肘ぞ?」

 

 男は寒気が止まらなかった。こいつはヤバい!バケモノだ!

 

 「・・・2ブロック先の路地裏だ」

 

 「そうか・・・あんがとうな!」

 

 肩に回していた腕を首にからめて絞め落とす。一瞬で男の意識は途切れた。

 

 死んではいないだろうが・・・どうでもいい。千束に手を出した時点でこの男はゴミ以下だ。即断できるほどに孝典はキレていた。

 

 無事でおれよ、千束!

 

 

 

 状況は芳しくない。

 

 私は5人のリリベルに囲まれている。ご丁寧に等間隔で全周囲を包囲して。

 

 重火器は持っていないのか、全員拳銃で武装している。

 

 対する私は丸腰だ。当然だがリコリスは私服で銃は撃てない。リリベルもそれは同じはずだが。

 

 「制服も着ずに、ずいぶん無茶をするじゃん?いつからリリベルはそんなに緩くなったの?」

 

 軽口を重ねて隙きを伺う。

 

 「勘違いしているようだが、この件に上は絡んでいない。俺たちは個人的な恨みで貴様を殺しに来た」

 

 そう口にした男の顔は何となく見覚えがある。セーフハウスを襲撃した部隊の1人だ。

 

 「恨まれることなんて一々覚えてないよ?お互いそうでしょう?」

 

 「俺たちは!国の安寧のために殺し殺される覚悟で任務を遂行している。それを貴様のような殺す覚悟もないやつにコケにされて!今まで死んでいった仲間に顔向けできん」

 

 なるほど、どうやら非殺傷弾でお帰り頂いたのが気に食わないらしい。私から言わせれば命があってラッキーぐらいに考えればいいのに。まあ、言わないけど。

 

 「それで?そのために一般人である私の連れを人質にしていると?」

 

 「貴様さえ殺せればあの男には要はない。付けている仲間の引かせる」

 

 「そう」

 

 それを聞いて一安心したが、私も安々と殺されてやるつもりはない。まだまだガミさんとデートしたいし、いっぱい遊びたい。

 

 明日を生きるために、今を全力で生きる。死んでたまるか!

 

 生きる覚悟を決めて神経を研ぎ澄ます。

 

 まずは動きで撹乱して武器を奪う。致命部位を避けて相手を無力化する。殺してしまうかもしれないが、ガミさんの命がかかってる!躊躇してられない。きっと落ち込むかもしれないけど、慰めてもらおう。

 

 動き出そうとした私の左側、この路地裏への入り口にいたリリベルが突然吹っ飛んできた。

 

 「は?」

 

 飛ばされたリリベルは私の目の前で放物線を描き反対側の壁に激突した。

 

 そのまま気絶したのか、動かなくなる。

 

 「千束!!」

 

 「っ!?」

 

 呆気に取られてた私の耳に飛び込んできたのは、今一番聞きたかった声だった。

 

 「ガミさん?」

 

 「良かった!無事やったか!」

 

 とてつもない早さで走り込んで来て、勢いそのままに私を抱き抱えて反転。出口へ向かって逃げる。

 

 「ガ、ガミさん!」

 

 「怖かったな?遅くなってすまん、もう大丈夫ぞ?」

 

 「!?逃がすか!撃ち殺せ」

 

 再起動したリリベルたちが発砲してくる。

 

 「ちっ!今時の不良はチャカどん持って、にやがって」

 

 射線の通らない曲がり角で私を降ろす。

 

 「千束、ここで待っとかんね。片付けてくるけん」

 

 「待ってガミさん!危ないよって早ッ!」

 

 言うが早いか銃弾の中を掻い潜り一番手前のリリベルにかち上げアッパーを食らわせ意識を刈る。

 

 動きは早いけど、動きはメチャクチャ。何であんな風に動けるの?

 

 類稀な洞察力をもつ千束だから分かったことだが、孝典の動きは素人そのもの。動きは洗練されておらず軸はブレている。ただただ超人的な身体能力に任せて暴れているだけだ。

 

 ゆえに人間よりも獣を連想させる。

 

 2人、3人と意識を奪い最後の1人と対峙する。

 

 「何なんだ!お前は!」

 

 先程まで千束と話していた、リーダーの男は狼狽えながらも怒りをあらわにする。

 

 「・・・」

 

 無言で追い詰める。もはや話すことなどないと言わんばかりに。

 

 「クソが!」

 

 リーダーが発砲する。至近距離から頭部へ向けての一発。避けることなどできないはずの弾丸は

 

 「!!」

 

 前歯で受け止められていた。

 

 

 「は、はっはは・・・こんなの聞いてないぞ!あり得るか!お前のようなデタラメ!バケモノ!何でお前みたいなのがあのクソガキの近くにいるんだよ!」

 

 ヤケになって乱射しようとしたリーダーの頭を衝撃が襲う。

 

 錐揉みしながら数メートル飛び、着地後も地面を転がり壁にぶつかり止まる。立ち上がることはなかった。

 

 後には拳を振り抜いたままの孝典が立っている。

 

 「はぁー・・・」

 

 息を吐いて力を抜く。

 

 全身から力みが取れていく。

 

 孝典はこれまで銃を持った相手と喧嘩をしたことなどなかった。恐ろしいほどの身体能力を有してはいるが全くの素人なのだ。

 

 千束に危険が迫っていた。その事実だけで頭に血がのぼり、恐怖心を怒りが支配し、一気に突っ走ったのだ。

 

 千束の待つ通路に行こうとして足を向けたその時

 

 「ガミさん!」

 

 腹のあたりに軽い衝撃を受けて見れば千束が顔を埋めて抱きついていた。

 

 「ガミさん!大丈夫?怪我してない?」

 

 心配そうに見上げる千束。

 

 「大丈夫よ。千束も怪我はなかね?」

 

 「私は大丈夫だよ。ごめんね、巻き込んじゃって・・・」

 

 千束が暗い表情で落ち込む。自分のせいでと。

 

 「?何で千束が謝ると?悪かつはあん不良どんやろ?」

 

 がばっと驚いた表情で孝典の顔を見てくる。

 

 「言うたろが?俺は全力で千束の味方ばするて。嘘じゃなか」

 

 孝典は優しげに笑いかけた。

 

 今日は帰ろう。そう言って私を家まで送ってくれる。

 

 また一緒に出かけよう。そう言ってくれたことが嬉しかった。

 

 その言葉に偽りはなく、彼は度々私を誘ってくれるのだった。

 

 

 

 

 

 彼はきっと本当の事を全部知っても私から離れてはいかないだろう。

 

 確信できる。

 

 今はまだ全てを打ち明けるのは難しいけど、いずれは全てを打ち明けよう。

 

 彼を危険に巻き込むことになるかもしれないけど、もう無理。

 

 こんなに大事にされたら好きになるよね?意識しない人いないよね?

 

 年の差?私には関係ない。年上全然あり。

 

 人相が悪い?私にはイケメンにしか見えません。

 

 身長差?いいじゃん毎日抱っこしてもらえる。

 

 心臓の件・・・これが一番の壁。

 

 私に移植された人工心臓には耐用年数があるらしい。大体私が成人する頃には止まってしまう。

 

 今まではその事実を前にただただ悲観し、人生を恨んでいた。

 

 でも今は、今からは明確な目標がある。

 

 明日のために今を全力で生きる。ギリギリまで諦めずに足掻く。

 

 それでも、どうしても絶望的だとわかった時には、それすらも彼に話して慰めてもらおう。

 

 彼は私の味方。たとえ時間制限つきだとしても私のそばにいてくれる。

 

 誰かの時間を奪いたくはないけど、彼の時間は私のわがままで欲しい。

 

 だって、こんなに恋い焦がれているのだから。

 

 とにかく、私は目標のために日々を全力で生きる。人生を勝ち取るために。




 前書きで書かせていただきましたが、本作は原作離反、キャラ崩壊。場合によってはブレイクも発生する可能性があります。

 申し訳ございません。

 それでも構わないと言っていただける方は続きをお待ちいただけたら幸いです。
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