ダンジョンを最後まで見届けたかったのは間違っていただろうか 作:和歌山在住ではない
___まずい!
洞窟の中にいるミイラのような体の男。
___嫌や!まだ死にたない!見届けるんや...
世界の終わりを見届けるために生きてきた男の野望は潰えた。
___これが私の、エンディング...
そして、世界は再構築され。
男は、連綿と300年間生きてきた菱形紙垂彦の精神は、
...今じゃが丸を売っている男にとっては懐かしい失敗の記憶である。
「...君!カリキリ君!」
「んー?ヘスティアちゃんやないですか!最近じゃが丸売りに来なくなりましたから心配してたんですよ?」
『カリキリ』と呼ばれた男は顔を上げるとポニーテールのじゃが丸売りの同業者に目を向ける。
「ふっふーん!ついにボクにも眷属ができたのさ!ベル君って言うんだけどね~」
「あー、長くなりそうですし後でお聞きします。いったんじゃが丸売りませんか?」
「あっ、そうするよ。」
じゃが丸を売るカリキリをヘスティアは横目でちらりと見る。
セールスのやり方やじゃが丸の作り方を教えてもらってそれなりに世話を焼いてもらっているが、なぜかカリキリに苦手意識を持っていて申し訳なく思っているヘスティアはできるだけカリキリと会話をして仲よくしよう作戦を実行中なのだ。
しかし、どうやらカリキリは時々意識が飛んでいるようだ。休んだほうがいいのではないだろうか。
「いえいえ、病気の母のためにも休まず稼がなくては!」
まぁ、無理はしていないようだしいいだろう。
しかしなぜこんな親孝行のいい人を苦手なのか、ヘスティアは苦手意識の克服を胸に誓うのだった。
...そしてカリキリとヘスティアたちがじゃが丸を売っているころ、迷宮中層。
「...おっと、見られてしもたかな?」
地面を縫うように高速で動いてきた影から這い出てくる四腕四目の黒い人型。
上層で追い抜いた白髪赤目の兎のような少年が腰を抜かしているのを思い返すが、別にこの姿との関わりを知られたわけではない。殺す必要まではないだろうと考えながら後ろから飛びかかってきたミノタウロスを鋭い刃のように変形した腕の一振りで斬り殺す。
「まぁええでしょう。...さて、それじゃあ
魔石を体の中に取り込む人型は、冒険者には謎のモンスターの特殊個体として第一級の賞金首『シデ』と呼ばれている。
...その日、中層の一角から魔物が姿を消した。
「この荒らされ方って...」
「『シデ』だね。最近はどんどん魔物を狩る範囲が広くなってるらしい...親指がうずうずいってる。遭遇戦に備えておいたほうがよさそうだ。」
何もいない迷宮の一角を睨む集団は、そう言い残すとその場を去っていった。
そして、その日の夜のダイダロス通りの一角にて
「なぁ、シデ?」
「なんです?ハイネ。調子まだ悪いですか?」
白髪の少女と、少女とまるで家族のように手をつなぐカリキリ。
「ちゃうねん。シデ、もう無理して魔石とらんくてもいいんやで?」
「なんでです?魔石があればハイネも回復できるでしょう?」
しかし、
「ごめんな、シデ...権能の使い過ぎやねん。魔石でごまかしごまかししてたけど、もう次産んで転写するのは、無理やねん。」
「...そうですか。」
うつむいている少女へのカリキリの目はどこか冷たかった。
「...また、か。」
「シデ、なんか言った?」
「いえいえ何も...」
そして、彼はまたエンディングを模索し始めた。