Re:ゼロからやり直す異世界生活   作:リゼロマニア

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スバルに秘められし魔法の素質

「ところでサテラたん。魔法ってどうやるの?」

 

 地道に聞き込みをする道すがら、というより疲れて休憩してる最中に、スバルはサテラに質問した。

 召喚されてから、一度も目にしたことがない魔法について。

 魔法の存在は、サテラの周りをくるくる浮かぶ喋る猫が証明している。

 

「どうってどういうこと?」

 

「だってサテラたん、精霊術師なんでしょ? じゃ、魔法使いじゃないの?」

 

 と、ここでパックがスバルとサテラの会話に割って入って来る。

 

「リアを魔法使いと一緒にしてもらっちゃ困るよスバル。精霊術師と魔法使いはまるで違うんだ」

 

「どう違うの? 俺ってば国際情勢も、常識もなにかも知らない天下無敵の無一文。とにかく魔法を教えてくれよ!」

 

「魔法使いは自前のマナを使って魔法を使うんだ。けど精霊術師は、ボクたち精霊と契約を交わして大気のマナで魔法を使う。結果は同じでも、過程はまるで違うよ」

 

 自前の燃料を消費するのが魔法使いで、燃料が外部供給されるのが精霊術師。

 なるほど、さっきのチンピラたちがビビる訳だぜ、とスバルは納得する。

 納得したところで、スバルの目下最大の疑問はまだ解消されていない。即ち。

 

「ふむふむ、で魔法って何なのさ?」

 

 スバルの質問に、パックはつらつらと答えようとするも。

 

「ゲートを介してマナを放出して起こす――もしかしてスバルってばゲートも知らない感じ?」

 

「そんな知ってて当たり前みたいな感じで言われても知らんもんはしらんぜお義父さん」

 

 知らないことは知らないのだ、と胸を張って答えるスバル。

 そんなスバルの目には、悲壮感がまるでない。

 

「へええ、ここまで無知蒙昧だと今まで良く生きてたねって感心しちゃう。スバルってひょっとして凄まじい豪運の持ち主なんじゃない?」

 

「そうだね、君に会えたし俺は幸運だね。って話がそれた。で? ゲートって何なのさ!」

 

「えっと、私は専門家じゃないから詳しく説明出来ないんだけど。えっとね、体の中にあって、体と中にマナを通す門みたいなものなの。ね、パック?」

 

「如何にも本で覚えましたって知識をありがとうサテラたん。で、お義父さん。娘さんの説明は百点満点中何点?」

 

 パックは両手でバツ印を作る。

 

「20点くらいかな? 常識がないであろう君でも理解できるように噛み砕くとね。生き物はゲートを通じてマナを取り込んでゲートを通じてマナを放出する。マナには基本四属性あって、マナの適性とゲートの素養が魔法使いとしての格と一生を左右するんだ」

 

「おーけい。MP関連の蛇口ってことね? マナを取り込んだり出したりする器官だから、それの素質が魔法使いのレベルに直結する……と。こんな理解であってる?」

 

 パックの説明を自分なりに噛み砕くスバル。

 パックは、スバルの理解に花丸を付けると補足する。

 

「ちょくちょく聞き慣れない単語が入ってるけどそんな感じの理解で問題ないよ。ゲートの数と大きさが、そのままマナの吸入量、排出量、保有量に繋がるんだ。それでいてゲートは先天性のものだから、どんなに魔法使いとして大成したくともゲートの素質に左右される」

 

「なるほど聞けば聞くほど重要な器官だな、ゲートってやつは。それで、マナの属性って何なのよ!」

 

「あ、これは私も得意です! えっとえっと、火のマナは熱量関係を司って、水のマナは癒やしを司るでしょ。風のマナは体の外の加護に関わってて、それで地のマナは体の中の加護に関わってるの。この中の1つでも適性があると恵まれた方で、大魔導士とかって呼ばれてる人はたくさんの適性持ちだったりするの」

 

 サテラの説明に、スバルは益々高揚することになる。

 やれゲートだの、やれ属性だの。さっきから、スバルの厨ニ心をくすぐる用語のオンパレードに、スバルの心は魂はますます荒ぶる。

 サテラとパックは知らない。

 スバルが異世界から召喚された者――つまり招かれし者だと言うことを。

 

「ううむ! まさに絵に描いた様なファンタジー! ねぇねぇサテラたん。お義父さん! 俺に秘められた属性とかわかったりしねえの?」

 

 スバルは興奮したままサテラとパックに詰め寄る。

 興奮したまま、キラキラ輝く目でサテラを見るスバルに、サテラはたじたじになり、そんなサテラを見てパックはニコニコ笑いながらやんわりとスバルの額を押して距離を開かせる。

 

「むふふぅ! ボクくらいの大精霊になると触っただけでわかっちゃうのだ。気分が良いから、キミの属性を調べてあげちゃう」

 

「やったぜ! 愛してるぜパック様! お義父さま!」

 

「みゅんみゅんみゅーん」

 

 ふざけた口調で、スバルの額に手を当てたまま目を閉じるパックを尻目に、スバルは今後の活躍に夢を馳せていた。

 

「俺の荒ぶる心に反映して火かもなぁー! でもクールな面で水かも! あ、それとももしかして全属性!?」

 

 大活躍をして、サテラを惚れさせイチャコライチャコラする輝かしい未来。

 たけど、そんなスバルの儚い妄想は、秒で崩されることとなる。

 

「期待してるとこ悪いけど、ものの見事に『陰』属性特化だよー。珍しい、いっそ小気味いいまでに他の属性に適性ないね」

 

「まさかの四属性否定きたー!!!」 

 

 希望から絶望に叩き落され、スバルは崩れ落ちてむせび泣く。

 

「そう悲観することないよ。極めれば空も少し飛べるし、空間に作用する大魔法もあるし、敵を一生暗闇の中で彷徨わせることだって出来るよ……極めれば。逆に凡俗だと目眩ましとか、相手の能力を阻害するので精いっぱい」

 

「まさかのチート属性きたあー!!」

 

 絶望から拾い上げられ、スバルはよっしゃあー天に向かい叫ぶ。

 

「ゲートの大きさはちょっと小さめだけど数はかなりのものだね、開ききれば通気性が良さそう。ちゃんとした師に師事すれば、良いところの魔法使いになれると思うよ」

 

「それってマジすか? お義父さん!」

 

 極めればチートな陰魔法に加えて、魔法使いの生命線ゲートにも恵まれているらしい。

 スバルのボルテージはどんどん上がりうなぎ登りだ。このままでは、パックにキスをしてしまいそう。

 

「陰魔法は使い手が少ないから保証は出来ないけど、伸びれば間違いなく歴史に傷を残せるよ。偉大な面でか、悪い面でかはわからないけどねー」

 

「な、な。俺、魔法使いたいなー?」

 

 パックのまさかの保証に、スバルは思わずウズウズしてパックかサテラを見る。

 

「私もパックが褒めるなんて、どれくらい凄いのか見てみたいな?」

 

「まったく。じゃボクが手伝うよ。スバルの中にあるマナに干渉してスバルのゲートを通じて魔法を使う。大気のマナから君の中のマナに変わっただけだから、やることは変わりないよ。どう?」

 

「おーけい! いつでもバッチコイ!」

 

 スバルは鼻息荒くパックを待つ。

 

「まったくモテるオスは辛いね。リアは、離れて見ててね。なにせゲートがゲートだから。もしもの事態になってこの辺り一帯が吹き飛ばされたら危ないから」

 

「それってあり得ないくらいの失敗したときのまさかじゃね? そうだよね?」

 

 ちょっと心配になってきたスバルを、サテラはフォローする。

 

「大丈夫よ、パックはベテランさんだから。確かに、他人のゲートを介して魔法を使うのは危ないことだけど、パックがやるから安全よ。だってパックだもの」

 

「余計に心配になるフォローをありがとう。くそこうなったら、男スバル! 乗りかかった船だ最期まで乗ってやらぁ!」

 

「良し気合十分なスバルに、今回使う魔法を教えてあげよう『シャマク』」 

 

 と、灰色の猫が、短く唱えた瞬間。

 

 ふいにスバルの視界が闇に覆われた。真っ暗な暗闇で、何も見えない。いや、見えるという現象そのものをまるで遮断しているよう。

 

 思わず、驚きに小さな声を上げたのだが、自分が上げたはずのその声すら耳に届かない。生じた闇は視界を、そして外界との関わりとスバルを完全に断つ。

 しかし、やがてスバルの目に何かが飛び込んでくる。暗いモヤを纏った何か。夜目になったみたいに徐々に暗闇の中で視えてくる。

 

「はい、おしまい」

 

「――お、親父ってあれ?」

 

「いやあ驚いたねえ。結構強めにかけたつもりだったんだけど、さすがは特化型って感じかな? 今のがシャマクっていう目眩まし魔法。陰魔法の初歩だね。スバルがめちゃくちゃ頑張れば、たぶん相手を一生暗闇で過ごさせる以上のことができるよ」

 

「マジかよ俺の才能。てか、シャマク怖えな」

 

 スバルはさっきの光景を思い出す。

 一瞬にして真っ暗闇になった光景。手足の感覚が喪わられ自分の声すら聴こえない暗闇。

 地面を踏みしめる感覚さえ無くなり自分という存在が溶けるような恐怖を味わった。それが、己にも出来るのだという。

 

「準備万端だね、スバル」

 

「あだぼうよ」

 

 パックは、ちょこんとスバルの頭の上に座る。

  

 至高のモフリが頭に乗ったことでスバルは、引き締めた頬が緩むがパックはというと、座り心地が悪そうだ。

 スバルの切り揃えられた短髪が、チクチクパックに刺さるのだ。仕方ない。

 

「えっとチクチクしてて痛いから手短に済ませるね」

 

「まさかお義父さんを頭の上に乗せる日が来るなんて想定すらしてなかったからな。茶は出せねえけどゆっくり寛いてくれ」

 

 と、軽口を叩いていたところで、スバルの全身を燃えるような感覚が襲った。体の中を巡る何か。

 血とは違うそれが、マナなのだろうか。目に見えない力の奔流が、パックの干渉によって指向性を持って動き始めたことが、スバルにははっきり分かった。

 

「大きさの割に結構量が多いね? 数でカバーしてるのかな。それはさておき、スバル。イメージしてごらん? 今君はマナの流れを知覚してる。そのマナがゲートを通って外に流れるんだ。通るときに雲という形になる」

 

「任せてくれよお義父さま。俺はこう見えて妄想が得意なんだ」

 

 スバルはイメージする。

 先程、スバルを暗闇に捉えた雲のことを。マナとやらが、溢れ出て雲の形となって周囲を覆い尽くす様子を。

 

 体内にあるという、小さいながらもたくさんの数があるゲート。イメージするのは和風屋敷。全部の襖が開き、中からマナが流れ出てくる様子を。

 

「おっと、まずい。この放出量は想定してなかった」

 

 何が、マズいのか問い質す暇もなかった。

 

 何故なら、スバルとサテラ。パックだけでなく、文字通りの意味で裏通り一帯全部を、スバルの体から溢れ出た暗い靄が覆い尽くしたのだから。

 

 

※※※※ ※※※※

 

 

「結論から言うとスバルのゲートは止めなくマナを放出するから、魔法は使わないほうがイイネ。少なくともちゃんとした人に教わるまでは。マナ切れでしか止まらないなんて思いもしなかった」

 

「……今の俺見て出た言葉がそれか?」

 

「てへ」

 

「……がくし」

 

 てへっと舌を出すパックを見て、スバルはとうとう力尽きた。冗談はさておき。

 スバルは全身を持って路地裏の固い地面の感触を味わっていた。

 

 パックによるスバルのための魔法講義は、結果的にみれば大失敗で。

 暴走した魔法は、スバルのマナを使い尽くすことでようやく止まることとなった。

 

 息も絶え絶えで、高熱でも出ているかのように全身がダルい。まるで力が出ない。

 ガス欠状態にスバルは襲われていた。

 

「これが、マナ切れか。ぜえ……ぜえ……」

 

「全身全開のフルオープンだから、どばって全部出るんだよ。良かったじゃん、どんな魔法も高火力だ?」

 

「まるで人のゲートのことを建て付けが悪いーーお?」

 

「どうしたのスバル? やっぱあんだけ無茶したから体の調子悪いの?」

 

 ちょっと心配そうに、スバルを見ていたサテラが、声を震わせてスバルに声をかける。

 

 そんな中、マナ切れで疲労困憊てあるはずのスバルは、よっと置き上がり、シャドーボクシングを始めるではないか。

 疲労困憊だった筈なのに、痺れて疲れ果てた体の端からどんどん力が漲ってくる。

 

「なんか、治った。それに力が漲ってる感覚がする!」

 

 しゅっしゅっと繰り出されるスバルのパンチは一つ一つが空を切る。

 そんなスバルの動きに辛さやダルさ一切見られない。

 

「スバルのゲートはばんばん放出するけど、出したそばからどんどん吸うみたいだ。何とも得難い才能だね」

 

 

 ナツキ・スバルは陰属性に特化していて、マナをばんばん吸って尋常じゃないほど吐き出す何とも極端なゲートを持っているらしかった。




原作スバルのシャマクが精々庭一角を覆う程度なら、本作スバルのシャマクは文字通り裏通り一帯、区画単位で暗闇に覆い尽くします。

実際、高レベルに位置するエミリアも不覚にもパックも一瞬前後不覚になった、って描写したつもり。
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