Re:ゼロからやり直す異世界生活   作:リゼロマニア

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速い再会と、2度目のデート。それから交渉。

「なんて不器用な女なんだよ、あの娘は」

 

 サテラ(仮)との思い出を振り返りながら、スバルは文句を垂れる。

 何故なら、サテラ(仮)がスバルに名乗った名は偽名であることが判明したのだ。

 

 

『なぁ、ラインハルト。サテラってなんだ?』

 

 ラインハルトに介抱されたスバルは、ふらつく頭を抑えながらラインハルトにそう質問したのだ。

 

 サテラをサテラたんと呼ぶ度に、サテラ(仮)は顔を悲痛に歪ませていた。

 あの時は、馴れ馴れしさ故にと思っていたが、今振り返れば罪悪感によるものだと思えてくる。

 

『本気で言ってる……んだろうねスバルは。嘘の気配がない。嫉妬の魔女のことだよ。400年前に世界の半分を飲み込み今もなおルグニカの東の果で眠りに着いてる諸悪の根源』

 

『嫉妬の、魔女』

 

『その悪行は恐怖のあまり多くが失伝しているけど、今なお猛威を振るい続ける残骸を思えば当然だと思う。ついでいうと……銀髪のハーフエルフらしい』

 

『――っ。なぁ、もしサテラって名乗るやつがいればラインハルトならどう思う?』

 

『趣味が悪いね。当時を知る人は殆ど亡くなったけど、遺族のことを考えれば軽はずみに名乗って良い名前ではないと思うよ。申し訳ないけど、僕ならまず正気を疑う』

 

『そうか。わかったよ、(あの娘が死ぬほどお人好しだってな)』

 

 後半はスバル自身にも聴こえない声で呟くスバル。肌を刺すような強者感が絶えぬラインハルトのことだから、もしかすると聞こえていて、聞こえてないフリをしてくれているのかも知れないがそれは置いておく。

 

 なぜ、サテラ(仮)と名乗ったのか理由が分かった気がする。

 スバルは、サテラ(仮)視点では不審者候補の域をでなかった。だから、偽名を名乗られた。このことに不満はない。少しはあるけど、それだけだ。

 在野に転がる常識知らずプラスアルファで陰属性の特化の卵。怪しい、怪しすぎる。偽名を名乗って身の安全をはかるのは美女の権利であり義務だ。

 

 サテラと名乗れば、正気を疑いスバルが離れると思ったんだろう。

 スバルを巻き込まないために。

 

 なんと不器用で優しい女なんだ。

 

「俺が必ず、君を守って救ってみせる!!」

 

 ムカつく金髪娘が死ぬ前に盗品蔵に辿り着いて徽章を奪取。腸狩りとエンカウントする前に逃亡、サテラ(仮)にお届け。

 スバルのことながら、引きこもり明けに中々厳しいミッションであるが、スバルはサテラを好きになってしまった。約束は『死に戻り』で無効になったとしても、お義父さんから娘を託されてしまった。

 

 だから、男としてナツキ・スバルは。

 

「おいおい、ここはそんな上等なおべべ着た女が来るところじゃねえぜ? お嬢ちゃん」

 

 聞き覚えのあるチンピラ3人組が、あろうことか女性に乱暴しようとしている声がスバルの耳に届き、使命感に燃える男スバルはブチ切れる。

 

「ぬあに、白昼堂々なに情けねえことしやがる! トンチンカン!!

 

喰らえぇー!! 親父直伝跳びハイキック!」

 

 耳を頼りに路地裏にダイブ。激情そのままに跳びハイキックを外道その1に叩き込む。

 

「ぐほっ」

 

 顎にクリーンヒットし、三半規管を揺らされトンと前回スバルが仮称した男は敢なく気絶し倒れる。

 

「このスバル様の目が黒いうちは情けねえ真似は許さねえ! さ、お嬢ちゃん、俺が来たからには――」

 

 いきなり乱入してきたスバルに、チンとカンは動けない。

 

「――え?」

 

 ふんっと鼻を鳴らし、怯えて縮こまっているだろう女の子を見て――スバルは声を失った。

 

 震えて縮こまっている訳でなく、目をまん丸に見開いて驚いて固まる少女。

 少女は美しい銀髪を腰まで伸ばしていて、鷲が象られたローブを着ていた。

 

「いきてっ、生きてる」

 

 ぴょこんと覗く耳は尖っていて、彼女が人間ではないことをさし示している。

 

「なんで、泣いてるの?」

 

 凛と転がる声を聞いて、初めてスバルは自分が、泣いていることに気が付いた。

 

「あれ、俺なんで泣いて?」

 

 慌てて拭うも溢れる涙。

 サテラ(仮)が生きていると分かって、安心から次から次へと涙がこぼれ出てくる。

 

「あなたに一目惚れしました。どうか俺に助けさせてください。――てか、勝手に助けるけどね」

 

「黙って見てりゃイチャイチャしやがって!」

 

 激昂したカンが殴り掛かってくる。

 スバルの顔面狙ったストレートを、スバルはひょいっとしゃがんで躱し、

 

「ふっ――らッ」

 

 渾身のブローを一発、カンの腹部にブチかます。衝撃が腹部を突き抜け、カンは泡を拭いて白目剥く。

 そのままカンを背負ってぶん投げようとするが。

 

「クソがあっ!」

 

 逆ギレしたチンが、ナイフを持って突進して来たので、スバルはぶん投げることを諦めた。

 

「いやいや、自分の所業を棚に上げんなよ」

 

 チンのナイフを握り締める手に、スバルは手のひらをぶちあてた。そのまま、流れるような手付きでチンの手からナイフを奪うと、チンの首筋にナイフを当ててスバルは一言。

 

「クソはお前らだよ、女の子相手に3人掛かりで」

 

「ひぃいいいいい」

 

「うおっ、汚ね」

 

 失禁するチンを適当に投げ捨ててスバルは、サテラ(仮)を見る。

 

「さてと。ないと思うけど、ケガはない?」

 

「う、うん。助けてくれた、のよね? ありがとう。えっと……」

 

 サテラ(仮)の問い掛けに、スバルは腰に手を当て、片手で天を指差す。

 

「スバル。ナツキ・スバルさ。君の名前は?」

 

「ありがとうスバル。私は……サテラ。サテラよ」

 

 一瞬だが、考えてサテラ(仮)はサテラと口にする。その、表情は苦いものだったが、スバルは。

 

「そっか。良い名前だね、サテラたん」

 

 ぱっと、花が咲くように笑ってスバルは褒めた。

 豆鉄砲を喰らったみたいにサテラは目を丸くした。

 

「あまり、ボクの娘に食い付かないで欲しいかな? ボクの娘は箱入りなんだ」

 

 愛娘を口説く怪しい少年にパックは、苦言をもらした。

 

 

※※※※ ※※※※

 

 

「これまた運命的なことに、実は俺もその小娘に用事があるんだ。しかも、たぶんきっと、その小娘がいる場所を俺は知ってる」

 

 歩きながら、盗品蔵に向かって歩きながら、スバルは運命だねっとうそぶく。「にゃううーー。スバルの手は心地良すぎるよー」歩きながら、スバルの手は、パックを撫でくりまわし、その毛並みを堪能している。

 滑らかで気持ちいい手触りに、少しスバルの顔が緩んでいるのはご愛嬌だ。

 

「なんで知ってるの?」

 

「やられたら、耳をそろえて倍以上に返せってのが俺の信条でね。その小娘にちょっとバカにされたから、仕返してやりたくて調べてた。サテラたんも用があるっぽいし、どう? 一緒に行かない?」

 

 嘘は言っていない。嘘は。

 

「みゃぁあ。耳の裏は反則だよぉ」

 

「なんてそこまで私にしてくれるの? スバルと私は初対面でしょう?」

 

「それは俺が君を好きだから、……じゃ信用出来ないか。お義父さん的には俺をどう思うよ? 存分に触れ合ったろ?」

 

 手の中で存分に愛で回したパックを掲げて、スバルはパックと目を合わせる。 

 

「――!?」

 

「にゃー、大丈夫だよぉリア。この子、ぜんぜん嘘を言ってない。それ込みでボクをここまで虜にするなんて、スバルは中々やるね〜」

 

「これくらいでお義父さんの信用を勝ち取れるんなら安い安い」

 

「これくらいでボクの娘をあげると思ったら大間違いだよスバル」

 

 スバルがサテラ(仮)を娶るにはまだまだ信用が必用のようだった。

 

 

 

「あ、そうだ。注意事項があるんだけど。お二人さんって荒事得意だったりする?」

 

「得意かは分からないけど出来るわ。けど、どうして?」

 

「全部凍らせるのは得意だよー?」

 

「なんかその娘が腸狩りっつう猟奇殺人鬼? と組んでるらしくて。まっすぐ一直線に向かってる理由なんだけど、早めに行かないと腸狩りとかち合うかもだからお二人は得意なのかなーっと」

 

「なんでそれをもっと早く言わないの?」

 

「君と話せるのが楽しくて嬉しくて、つい」

 

「スバルのばか! おたんこなす、すっとこどっこい!!」

 

 スバルとサテラ(仮)が、心を通わす道のりはまだまだ遠い。

 

 

※※※※ ※※※※

 

 

「俺が交渉役で、サテラたんとお義父さんが凄み役。準備できてる?」

 

「私は大丈夫よ」

 

「ボクも大丈夫だよー」

 

「よし、そいじゃ。腸狩りがいないことを祈って、頼もーう!!」

 

 盗品蔵の扉を、スバルは豪快に蹴破って中に踊り入ると。

 

「誰じゃおぬし?」

 

「誰だよ目付き悪ィ兄ちゃん」

 

「あらあら? 誰なのかしら?」

 

 巨漢ジジイに、金髪の憎き小娘。

 それにまさかの、腸狩り。

 

 最重要警戒対象が、すでに盗品蔵の中にいたのだ。

 

「まさかの腸狩りいたぁあーー!!?」

 

 

 スバルの目論見は、最初の段階から外れることになる。




世の中、そう上手いことはない
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