緑礬の錬金術師 作:ONE DICE TWENTY
言葉を発せども時間は止まらない。
蛇のように伸びきったエンヴィーの左腕は、右を選択したマース・ヒューズの右肩をごっそりと削ぐ。そして落ちてくるは書架。アメストリスの本という本が詰まった書架がヒューズの足を捉え、潰す。何の慈悲もなく、何の奇跡もなく。
書架の落ちた角度も悪かった。面ではなく辺を下部に落ちてきた書架は、潰した脚を切断する。肉を、骨を。容易だ。それほどの重さがある。
「が──ぎ、ぃ……!」
声にならない声だろう。
即死ではないことがどれほどつらいか。エンヴィーに削がれた右肩は骨の内部までもが露出しているし、両足は千切れている。
だけど死んでいない。
だけど死んでいないのだ。
「は……ハハハ! なんだ、なんだ! カッコつけて登場して、護ってやんないのかよ! できただろ、お前の緑礬ならさぁ! このエンヴィー様の腕を結晶化させるのも、この本棚をサラッサラに風化させるのも! なのに見てるだけ! 見てるだけ! あっはっは、やっぱ不老不死は一味違うね。人間味が欠片もない!」
「馬鹿言え、その書架に詰まってる本にどんだけの価値があると思ってんだ。原本が全部残ってる確証があんなら俺も消したけど、無い奴だってある。それを消せるかよ。本は歴史だぞ」
「……え、それ本気で言ってるワケ? 今さ、アンタの目の前の、アンタの足元でマース・ヒューズが苦痛に喘いでるんだぜ? そのヒューズに聞こえる距離で、今アンタ"マース・ヒューズより本の方が大事だ"って言ったんだけど、それ理解してるゥ?」
「当たり前だろ。なんだ、誰かの前で、あるいは誰かの前でなかったら、その物の価値が変わるか、
メモ帳を取り出して、造形系・持上と書かれたものを発動する。
途端、図書館の床から物を包み込むような手が造形され、書架を押し上げた。
んで、エンヴィーの腕を分解する。
「いっっったいなぁ、オイ……」
「等価交換だ、エンヴィー。お前は俺の姿を模した。なんならこの分館に入る前から俺の姿だった。目撃者複数。なぁ、俺に罪を着せようとしたな」
「……だから何さ。アンタは別に気にしないだろ」
「気にしないなぁ。俺の名が地に落ちても俺はどうでもいい。だけど、お前が俺の姿を模したことは事実だ」
血液が広がっていく。
エリシア・ヒューズについた嘘。その代価。
……止血程度だな。全身治す程のものじゃない。銃創くらい小さなものだったら全身治す等価にもなったかもしれないが、これほど大きいとアレじゃ足りん。
「エンヴィー」
「な……なんだよ。なんだよ、何が言いたいんだよ!」
「俺たちの記憶はどこにあると思う?」
「──は?」
きょとん、とするエンヴィー。
「どこだと思う? 記憶を蓄積している部分は」
「……ハ、何、クイズ? 時間稼ぎ? あぁそうか、もしかして誰か応援が来るのかなぁ! そうだよね、アンタの錬金術ってピーキーすぎて、こーんな大切な本がたくさんある場所じゃ使えないよねぇ!」
記憶のある場所。
エンヴィーから伸びてきた腕を避けずに食らう。顔の半分が削げ落ちたまま、話す。
「俺もお前も脳を吹っ飛ばされたって元に戻る。では蓄積された記憶はどこにある。記憶をため込んだ状態で脳も復活するのか、それとも全く別の場所に保管されているのか。
「チッ……アンタ、まともな痛覚ないワケ? 痛がる素振りも見せないんじゃ面白くない……」
「答えはNOだ。俺もお前も、脳に記憶や知識をため込んでいるわけではない。じゃあどこにあると思う、エンヴィー。今試してみろ。思い出すという行為をして、自分がどこにアクセスしているのか感じてみろ」
脂汗を浮かべたままのマース・ヒューズは何も言わない。
意識を失うことができないのか、決して失うまいと保っているのか。
「どーでもいいよそんなこと。覚えてるから覚えてる。それだけだろ」
「答えは魂だ。霊魂でもいい。俺もお前も、肉体を損失したとて記憶は失われない。魂に記憶が蓄積されているから、肉体がどうなろうと関係ない。──ではここで更なる問題」
「チッ……ていうか、なんでこのエンヴィー様がこいつにムキになってんのサ。コイツは殺せないなんてハナからわかってるんだから、殺すべきはそこで虫みたいに喘いでいる──」
「姿を偽ることの対価は、なんであるべきだと思う?」
「マース・ヒューズだよねぇ!」
エンヴィーの腕が伸びる。瀕死のマース・ヒューズに。
そしてそれが、その腕が、彼の頭蓋を叩き潰した。
「──簡単だ。偽りには偽りで返す。これで等価交換だ、エンヴィー」
「……!?」
頭蓋が潰れた途端、サラサラと緑礬になって撒き上がっていくマース・ヒューズの体。
苦痛に喘ぐ彼はもう存在しない。床に広がっていた血液さえ消え去っている。
あるのは持ち上げられた書架だけだ。
「……苦しんでるから殺してやったマース・ヒューズを緑礬で人形みたいに模してそこにおいてたってこと? いつの間にすり替えた?」
「うん? 何を言ってるんだ。だから、偽りを返したんじゃないか」
「さっきから……意味の分からない話ばかりでイラつくなぁ。もっとわかりやすい言葉を吐けない──ッ?」
エンヴィーは気づいただろうか。
今自分が立っている場所に。
石の床。レリーフの彫られた門。円と二重五角形の陣。
「は……あ? 第五研究所!? いつの間に……」
「残念ながら俺は、お前ら
「……一回一般人の意味調べ直してきなよ。で? その一般人が、どんな手法を使えばこの距離を一瞬で移動できるわけ?」
「だから、偽りだよ」
たくさんのパイプがある部屋。
それが繋がる先にいるのは──フラスコの中の小人。彼はこちらを一瞥することさえせず、ただ座っている。
どこまでも広がる草原。見渡す限り山と草原しかなく、人工物は見当たらない。
吹雪の荒ぶ冬山。巨壁を目指せども、手足は次第に凍り付いていく。
「……幻覚、って奴か」
「まぁ、そうだ。最上級の嘘だな。人間なら脳を弄れば簡単に幻覚を見せることができるが、お前らはそうじゃない。魂に干渉する必要がある。しかし魂に干渉するとなると生体錬成の域じゃあない。人体錬成、あるいは門、あるいは真理に纏ろう領域だ。俺は"生体錬成の権威"。そう呼ばれている」
「……」
「が、スマンな。これ別につけられたあだ名であって俺の真骨頂じゃねぇんだわ。勿論生体錬成も得意だぜ。多分アメストリスの誰よりもな。ただ俺は、俺が俺であるという理由だけで、ソイツの魂が見える。ソイツの魂に干渉できる」
そこは真っ白な空間。
天地の継ぎ目の見えぬそこに、エンヴィーはいた。小さな体。醜い芋虫のような身体で、そこにいた。
彼の眼には、目の前には──輪郭が黒の靄で覆われた自分が見えていることだろう。
けれどそこに扉はない。帰り道の扉も、あちら側にいくための扉もない。
「……」
腕を伸ばした状態で固まったエンヴィー。
その腕の先には、マース・ヒューズが横たわっている。
あと数㎜。そんなところで止まった腕は、けれどマース・ヒューズには届かない。
「……死んだ、んです、かね」
「いや全然? 今俺の顔掠めた腕に色々投与してイザナミっただけだよ。魂に干渉できるのはホントだけど、干渉つったって話ができる程度だからなぁ。そいつを弄ってどうにかできたら俺はもう不老不死でもなんでもないカミサマかなんかだよ。今やったのはドギツイ劇薬で幻覚見せて、ドギツイドラッグでアッパーにまで押し上げて、ドヤバイ合成錬金薬物で全身に弛緩効果と硬直効果を同時投与してるだけ。ちなみに全部違法薬物ね」
「……よく、わかんねぇ、です」
「で、もう一個嘘。俺は違うけど、
やったことはとても簡単だ。
エンヴィーは腕を伸ばしたあと引き戻すクセがある。だから伸びきった腕に薬品投与すればそれを引き戻す際に体の中へそれを浸透させることができる。アッパー系で攻撃をそれ一辺倒にして俺に集中させ、何度か薬品を投与。
その前の分解の時に
まぁ
さて、エンヴィーの顔を掴み、脳をこちゃこちゃしていく。
賢者の石に記録されたモノと、肉体の記憶に齟齬が出るように。流石だねフラスコの中の小人。人を見下しているクセに、
「おぅけぃ。んで、だ。マース・ヒューズ」
「なん……ですかい」
「清算と行こう。俺は昔、お前の娘に嘘を吐いた。お前の娘の前で嘘を吐いた、という方が正しいか。それを咎められてね、対価として
マース・ヒューズの前に屈みこんで、目線を合わせる。
「
分解の錬金術で自身の胸を分解する。
簡単に心臓にまで達した穴は、脈打つソレさえも分解し、俺を貫通する。
それも一瞬で再生した。ぐじゅる、と。
「この通り俺は不老不死だ。等価ではない交換で変ずる部分がない。──よって、エリシア・ヒューズとの等価交換により、俺は今日一度だけ等価ではない交換を行う。俺が俺自身に決めたことに対し嘘を吐き、欺く」
「……つまる、ところ……ぼったくっても許されるってことで?」
「ははっ! "年寄りは話が長い"。やっぱりお前ら親友だな、マース・ヒューズ」
彼の身体に手を当てる。
削ぎ落された右肩が瞬時に盛り上がり、修復された。
切断された両足が一瞬ブレたかと思えば、繋がった。血液はどこにもなく、マース・ヒューズも「信じられない」という顔で自身の両手足をみて、先ほどまでかいていたはずの脂汗を拭い取る。
本の下から抜け出て立ち上がる彼の身体に傷は一切ない。
「"生体錬成の権威"……」
「それと同時に」
マース・ヒューズの顔を掴む。
ぎょっとした目でこちらを見る彼に、囁くように言葉を零す。
「知は力だが、力持つ者こそが知を持つべきだ。何故なら力無き者は知も自らも守れない」
「……アンタに、アンタに伝えなきゃならねえんだ。この国に、おかしなものが──」
「知ってるよ。その上で放置している。俺が害されるということと、俺がそいつらの企みを阻止することは等価にはならないからな」
生体錬成。
さてどこまで消すべきか。
えーと。
あん?
……アレ、エルリック兄弟ティム・マルコーの研究書貰ってないの? だから第五研究所にも行ってないし、アルフォンスの悩み、エドワードの悩みも解消されてないままダブリスへ?
オイオイオイオイ。なんで渡さなかったんだよティム・マルコー!
「っと」
崩れ落ちるマース・ヒューズの身体を受け止める。
とりあえず彼が分館で受刑者の釈放記録を探したところまで記憶を戻させてもらった。エルリック兄弟との会話から俺を連想したのなら、そこはカットだ。
んで担ぐ……も、うん。
背が足りないな。いいや、引き摺って行こう。とと、危ない危ない。持ち上げてた床を戻して、書架は……ま、いいだろ。
怪奇! 夜のうちに勝手に動いていた書架! で。監視カメラはハナから切ってある。
「ちょっと」
「あぁラスト。丁度良かった。エンヴィー連れてってくれ。賢者の石がドラッグ類を有害と認定して分解するまでもうちょっと時間がかかる。ああ、マース・ヒューズの記憶は消したから」
「それで私たちが彼から手を退くと?」
「退かないのか?」
「……いいえ。貴方との全面戦争は分が悪いわ。ただ、一つお願いがあるのよね」
「対価次第」
「いえ……エンヴィーはあれでいてとても重いから、持っていけ、と言われてもね。気付け薬とかないのかしら」
ふむ。
「ちなみに言うとない。所持してるだけでお縄な薬物使ったからな。つか、グラトニーに引っ張らせろよ」
「今いないのよ」
「ほーん。じゃあ」
舌を噛み千切る。
それをエンヴィーの足元にプッとやって──彼は、奈落の底へと落ちて行った。
メモ帳から造形系・修復、引延の錬成陣を取り出し、床を修復。
「回収はプライドとかに任せりゃいいだろ」
「貴方、後処理が雑って言われないかしら?」
「よく言われる」
さて、お帰りだ。
引きずるのは流石にヤバいので土車を錬成してそれで運んでいく。
……車椅子でも俺には難しい造形なんだよ!!
玄関のドアベルを鳴らせば、一瞬で扉が開いた。
そこにいたのは憔悴した顔のグレイシア・ヒューズ。
「あなたっ……あ……あの、時の?」
「どうも、緑礬の錬金術師ヴァルネラです。ちょいと図書館でぶっ倒れてたの見つけたんで届けに来ました。多分過労ですね」
「……本当に、ありがとうございます」
「一応栄養剤その他諸々打っといたので大丈夫だとは思いますが、なんかあったらお電話ください。そんじゃ」
できれば俺がマース・ヒューズと接触しなかった、ってことにした方が良い。
記憶というのは難しいもので、忘れさせることはできても消すことはできない。封じる、が正しいか。箪笥の奥の奥の奥底にしまい込んで、他の記憶で見えなくする。それしかできない。完全な記憶喪失をやるなら脳の一部を破壊しないとダメだろう。
そしてそんだけ厳重にしまったものも、ちょっとしたきっかけで顔を出す可能性がある。
だから、ダメだ。
もう一度思い出して、もう一度調べ上げたら。
もう一度、今度は誰かと共有しようとしたら。
「お兄ちゃん、だれ?」
「あ、エリシア……起きちゃったのね」
「ぁ、ぱぱだー」
エリシア・ヒューズを見る。
その奥。
彼女の魂。否、もっと奥。
「俺はヴァルネラ。あるいはクロード=ルイ・アントワーヌ……いや、君じゃまだ覚えられないか」
「……むー」
「代価は足りた。君の差し出したものは、君の大切なものを助ける未来を手繰り寄せた。俺が吐いた嘘は一つだけ──本当は全部、等価交換だったんだから」
真白の空間。どこまでも真白の、天地の境目のない空間。
ただ、黒い靄を纏ったエリシア・ヒューズが、嬉しそうに、元気そうにこちらに手を振っていた。
「あ、あの……?」
「ああ、すみません。錬金術師なんて職業やってると、ついつい難しい言葉を吐いてしまって。今日も軍人さんに言われたばっかですよ、"年寄りは話が長い"って」
「はぁ……」
「ん、すんません。会うの二回目な奴の自虐ネタとかどー対応したらいいかわかんないですよね。それじゃ、俺はこれで失礼します。お大事に」
今度こそ去る。
幸せでありなよ。今幸せであるならさ。
で、だよ。
今夜汽車に乗ってダブリスに向かってるんだけど、これどーなの?
マース・ヒューズの記憶を盗み見た感じ、エルリック兄弟はなーんでか賢者の石の材料についてまでは辿り着いていたけれど、第五研究所へは行っていない。だからそのあたりで起きるイベントガン無視。
ダブリスっていうかラッシュバレーに行く理由も「エルリック兄弟が強くなりたいから」、ではなく俺との「医学、機械鎧、生体錬成談義で盛り上がって新しい機械鎧に挑戦したくなったから」になっている。
大丈夫かぁ、これ。
エドワード・エルリックが疑似・真理の扉に飲まれた時、外に出る方法を思いつく根底理由が第五研究所の賢者の石の錬成陣だ。
それを見てないとなると……ワンチャン出れずにおしまい☆ もあり得るぞ。
っべーだろそれは。
そーなったら。
……そーなったら、まぁ、
アイツらの復讐対象は国家錬金術師であってアメストリス人じゃない。それは
……おん。
まいっかー。
そんな感じで夜汽車に揺られている時だった。
ラッシュバレーには一切興味ないので降りずにいるつもりだったのが……悪かったのかなぁ。俺悪くはないと思うんだけど。
「な……あ、アンタ」
「イズミ!」
……この二人の中央旅行ってもっと前じゃなかったっけ?
この辺なー、10日だの一週間だのなんだの、日数が曖昧でよくわかんねーんだよな。
つか、この二人がいるってことは、どっかにホーエンハイムも……いない、ねぇ。氣が見つからん。
オイオイオイオイ大丈夫かアイツ。マジで失意ってんじゃね。失意って行き倒れてもう嫌になってたりしないだろうな。俺が打ち込んだ分以外はアイツがやってくれないとカウンター錬成陣発動しないぞ?
「まーまー座れよカーティス夫妻。俺別に何もしねーって。んで錬金術なんざ使おうモンなら汽車の中ぐちゃぐちゃになるだろ?」
「イズミ、座ろう。大丈夫だ、大丈夫だから」
「……っ」
あれぇ、俺なんでそんなに警戒されてる?
いや確かにショッキングな手術したけどさ。まぁ押し売りではあったけどさ。
あ、あれか。あとで返せ、って言ったから、何か奪われると思ってんのか?
俺そんな悪徳業者じゃないってー。
「あれから調子はどうよ」
「……」
「ああ……吐血することも、倒れることもなくなった。あの時は……感謝の言葉も言えなかったが、心の底から感謝して」
「あんた! ……そいつに頭なんか下げなくていい」
「だがイズミ、今日の今日まで平穏無事に生活できていることは……事実だ」
「だとしても、ソイツは人間じゃない。化け物だ。加えて国家錬金術師……軍の狗さ。頭なんて下げる必要は」
「ありがとう。心の底から感謝している」
「おう」
ま、シグ・カーティスは先に眠ったからな。
イズミ・カーティスより知っている情報が少ない。だから純粋に施術に感謝してんだろう。
逆にイズミ・カーティスは、俺が腹ァ掻っ捌いたところまで見てるからな。自分の中にあるモンが元俺の臓器だって気付いてて、気付いたままずーっと生活してきたわけだ。違和感はないようにしたけど、それでも感じるものはあったんじゃないかね。
「……」
「……」
「……」
険悪な雰囲気におろおろし始めるシグ・カーティス。
コイツ熊みたいな体格だけど性格ウサギだよな。
「エドワード・エルリック」
「……ッ!」
「と、アルフォンス・エルリック。という兄弟を知っているか?」
エンヴィーもだけど、うん。
煽り甲斐のある相手は良いな。望んでもいない情報を零してくれたりするから。
「……」
「おいおい、そんな警戒すんなって。別に取って食いやしないよ」
「……緑礬の錬金術師、ヴァルネラ」
「お、よーやく喋ってくれる気になったか」
車輪が線路を乗り越える音が響く。
眼光が鋭い。
「アンタ──不老不死っていうのは、本当かい?」
「噂広まり過ぎだろ。んで本当だ。腹掻っ捌いて臓器取り出したって死なないよ」
「その、不老不死」
茶々を入れたのにガン無視された。
イズミ・カーティスは──鋭い眼光で、嘘は許さない、という声で。
「
ほーぉ。
いいね。今まで誰も突いてこなかったところを突いてくる。
だから、真実を答えよう。
「いいや、違う。だが……俺がこの世界に生まれ出でた時、俺の意思の介在しないところで犠牲になった奴はいるはずだ」
「それは、どういう……」
「俺は元から不老不死だよ、イズミ・カーティス。ただ……そうだな。巡ることを死と捉えるのなら、一時的には一度死んだのかもしれない」
汽車が減速する。
ダブリスに到着するのだ。
「そう警戒しなくても、無理に取り立てたりしないよ。気が向いたら返してくれって言っただろ?」
大丈夫大丈夫。
俺は無害だからねー。