緑礬の錬金術師   作:ONE DICE TWENTY

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今回はほのぼの。


第29話 履行の恐れ

 そして、ついにその日がやってくる。

 いや、その日自体は既に各所で起きていたのだろう。それでもその日は、"その日"と後に称される程には──同時過ぎた。

 

「坊主、こんなとこで何してんだ? ……そりゃ、絵か? へぇー、中々上手いじゃねーか」

「おっちゃんこそ何……ああ屋根直してんだ。もしかして俺邪魔?」

「ははっ、別にいいよ。っとと、消臭剤はつけてるが、俺くせぇだろ。大丈夫か坊主」

「大丈夫大丈夫。そういうってことは、おっちゃんゾンビなんだ」

「まーなー。だから、それを生かして高所作業だ。怪我しても縫い合わせりゃくっつくんだ、落ちたら大怪我するやつよかいいだろ?」

 

 なんて、ニカッと笑う──誰か。

 名前は当然知らないし、興味もない。屋根の補修に来たらしい三十代くらいの男性は、トンテンカンと槌を叩く。

 

「坊主は絵を売って生活してるとかか?」

「まさか。俺の絵なんて売れないよ」

「じゃあなんでこんなとこで絵なんか描いてる。やることねーのか?」

「カメラが高価だからだよ」

「だったらなおさら働いて金かせぎゃいいじゃねーか。それで買えよーっと」

「ん-、ほら。カメラって撮ったら魂吸われるっていうじゃん?」

「……オイオイ、坊主の歳でそんな迷信信じてるやついねーって」

「あっはっは──まぁ、そういうこともあるのさ。俺がここに居んのは単純な理由だよ、おっちゃん」

 

 朝日が──昇る。

 水気は随分抜けたらしい。当然だ。心臓と言うポンプが機能していないのだから、足に溜まる水を組み上げることはできない。それは勿論血も同じ。

 様々な手法で保たせられた方だ。様々な手段で、既存の医者が、その見たこともない症状──ゾンビに対し、あの手この手を尽くした。錬金医師もそうだし、錬金術師もそうだったのだろう。

 

 だけど、早々に匙を投げたのは錬金術の知識がある者。これは己の力量では無理だと。

 そして──医者も、言われた通りの処置はしつつも、無理だと悟っていたことだろう。

 

「見納めって奴さ。──この先も人類は増える。ここでガッと減ったって関係ない。アイツはまぁ、それを勿体ないと感じたらしいけれど」

「何言ってんだぁ、坊主ぅ」

 

 屋根の補修のために足を曲げていた。

 だから、その彼の足が、ぼろりと崩れる。ゾンビの大敵は腐ることでも火でもなく──乾くことだ。

 水。渇水。水を飲むという習慣が作れないゾンビは、自分が思っているよりも乾いている。

 入る罅も、いつの間にか無くしていた指も、その乾きが起こす当然の事象。そして同時に──あるものとの接点も無くす。

 

「……あ?」

「おっちゃん。ここで俺に出会えたのは天命みてーなもんだよ。これから先、死よりもつらく苦しいことが起こる。そしてアンタみたいに人気のない場所にきちまった奴は──この先、「約束の日」までそうであり続けなければならない。それは──まぁ、苦痛なんだろう」

「坊主? すまん、目を落としたみてぇだ。気持ち悪いとは思うが、ちょっと拾ってくれないか。──空ばかりが見えて作業にならねえ」

 

 魂は本人の構築式たる血液と反応し、血印としてそこに名を縛る。

 血中の鉄分は鉄板と反応し、血印を精神、鉄板を肉体と誤認することでそこに定着する。アルフォンス・エルリックやバリー・ザ・チョッパー、スライサー兄弟が例だ。

 そして、その鉄板を肉体に埋め込むことで──肉体内の血液、鉄分と連鎖反応を起こし、死体でありながらまるで本人の肉体のように動かすことができる。死体にもまだ神の構築式が残っているからこそできることだ。

 

 だからもし、それが抜けきったら。

 

「坊主?」

「幸運に思えよ、人間。これは珍しいことなんだよ。絵を褒められた程度を代価に命を奪うなんて──フツーなら絶対にやらねえ。けどまぁ、渦中の栗を拾う……おん? 字が違うか。まぁいいや。災禍の中にあってアンタは前を向いていた。その代価に、俺がアンタを逃がすっつーのは悪い話じゃねえ」

「……坊主ぅぅ……お前、俺の眼なんか持ち上げて……返してくれよ、ぉ……」

 

 悲鳴が上がる。

 すすり泣く声が上がる。

 医者連中もわかっていたんだろう。ある程度のタイムリミットが。だから昨夜、最後のお別れ会をして。

 

 朝日が昇ると共に、来た。

 

「あれぇ……? お前の顔、どっかで」

「せめて、陽光にでも包まれて逝け。その方が暖かいだろう」

 

 鉄板の端に指の腹を擦り付けて血を出し、鉄板をまるごと緑礬の花に包む。

 俺の絵を褒めた代価だ。喜んで受けとってくれ。

 

 悲鳴だ。

 あるいは非業か。

 

 横を歩いていた者が、子供が、仕事をしていた奴が。

 一斉に倒れて、動かなくなった。タイムリミット。時間切れ。

 

 緑礬の錬金術師ヴァルネラが蒔いた夢のような悪夢の終わり。

 

 この日、アメストリス全土において──すべてのゾンビが、活動を終了した。

 

 

 

 

 セントラルはあるマンション。

 見た目七階まであるのに階段もエレベーターも六階までしかない不思議な不思議なマンション。

 その七階に何があるのか。 

 

 当然、俺達の隠れ家となっている。

 

「よーっす、戻ったよ。流石に一か月も経つとこの姿でも中々ばれねーな」

「……」

「……」

「何してん」

「……イシュヴァラに祈っていたんだ。たとえ異教徒なる魂でも、その(かいな)が抱いてくれるように、と」

 

 ブラッドレイの決意表明から、けれど一緒に動くのは目立ち過ぎるので、ブラッドレイは軍における不透明な研究所や施設の洗い出しを、俺はまーいつも通り各地を巡って探りを、って感じになった。

 その間ロイ・マスタングはジャン・ハボックとハイマンス・ブレダの目を用いた焔の錬金術の練習、及びリザ・ホークアイらと合流して事情を説明、ロイ・マスタングの世話をマスタング隊全員でやって、だから片時も離れないことで互いを信用できるようにする、という荒業を選択。

 男女が云々はまぁあるだろうが、あいつら軍人だからな。そういうこともあるさ。特にイシュヴァール戦役じゃんなこと言ってらんなかったし。

 

 アレックス・ルイ・アームストロング……つーかアームストロング家は"帰還者扶助の会"なるものを設立。オリヴィエ・ミラ・アームストロングこそブリッグズを離れられなかったものの、アームストロング家の資金力と何よりカリスマもあって、身寄りのないゾンビや家族に拒絶されたゾンビ、また自ら離れてきたゾンビらを住まわせるための住居を建設。

 今さっきそこのゾンビが全員活動終了したのも確認してきたけど、まーその悪臭腐臭を撒き散らすことなく……撒き散らしても同族ならわからない、という特性利用で、ちったぁ泡沫の夢くらいは見れたんでねーの。

 

 んで──エルリック兄弟だ。 

 アイツらの動向のほとんどを俺は知らない。ホーエンハイムの行方もわかっていない。

 だけどほとんど……つまり欠片程度は知っていて、そのうちの一つが。

 

「グラトニーの討伐、ねぇ」

「……エルリック兄弟か」

「おん。本当だとしたら功績なんだけど、伝えてきたのがプライドなのがなんとも」

 

 いやさぁ、前も述べたけど、別に俺はどっちに付くとかはないのよ。

 ブラッドレイと一緒に人造人間(ホムンクルス)を、フラスコの中の小人の秘中の秘とやらを潰すかぁ! なんて言っておいてアレだけどさ、別に仲悪くする気はないわけね。

 

 だからといって日向ぼっこしてる時にいきなり影で包んできて耳元で「エルリック兄弟にグラトニーがやられました。共有だけしておきます」とか言われたらびっくりするって。

 しかも詳細は不明。どこでやったのか、どうやってやったのかわからないまま。原作みたいにプライドがグラトニー食ったのかもわからんときた。

 

「ああ、そうそう。ほいこれ」

「……助かるよ。すまないな、私達は……余計に目立つようになってしまったようで」

「まー、イシュヴァール人は死にまくったからな。ゾンビと見紛われるのも仕方がないし、だからこそそうではないとわかった時に騒ぎになるのもしゃーない」

 

 そう、刺青の男(スカー)達だ。

 俺と一緒にこのアジトに隠れ潜んでいる彼らは、けれど中々外に出ることができない。

 イシュヴァール人のゾンビが東部に溢れている。そして彼らは──復讐心に燃えている。武僧らが言葉に詰まるほどに、だ。

 民間人のイシュヴァール人であればあるほど、強く、強く、強い憎しみを以て東部を彷徨い歩いている。錬金術師や一般兵、そしてアメストリス人のゾンビ兵もこの鎮圧に参加しているけれど、泥仕合もいい所だ。

 

 そんな光景を見て、けれど──武僧たちの憎しみが大きくなることは無かったらしい。

 

「……一度イシュヴァラの(かいな)に抱かれた以上、この地に戻り、復讐を為すというのは……私たちの教義に反している。たとえ見た目が程近くとも、赤い眼の同胞であっても……私たちがアレを同胞(はらから)と認めることはできない」

「その魂が本物であっても、か」

「ブリッグズの同胞はそうでありながら自ら首を切り落とした。……勿論武僧でない者に同じ事をしろというのが間違っているのはわかっているが、死して教義まで捨てることは……ありえない」

 

 とのことで。

 さしずめ薄めのイシュヴァール戦役の再来といったところか。

 少しずつ減ってきていたイシュヴァール人への偏見もまた増えたし、イシュヴァール人による被害も増えた。殲滅戦を起こしたのがこちらだけに、ゾンビの掃討に躊躇いを見せる兵士もいたとかなんとか。そんなこんなでイシュヴァール人は超目立つから食事の類を俺が買ってきている。金? ブラッドレイブラッドレイ。

 

 で、そんな戦場で──そこで活躍したのが、我らがロイ・マスタングである。

 

 また、だ。

 

 車椅子で戦場に出てきたロイ・マスタングは、容赦なくゾンビを焼いた。

 忌み嫌われ、恨まれ、憎まれ──それでも、と。ロイ・マスタングはジャン・ハボックとハイマンス・ブレダの報告を聞きながら正確な位置に炎を叩き込み──その中の鉄板を叩き壊し、焼き溶かし、拭い去った。

 今の今まで倒れることの無かったゾンビ兵がロイ・マスタングの炎で動かなくなったのだから、当然。

 

 焔の錬金術師は──巷では浄火の錬金術師、なんて呼ばれるようにもなったのだとか。

 それをネタに本人をからかいに行ったら一言目が「帰ってください」で帰らなかったら「帰れ」って言われてそれでも残ろうとしたら燃やされた上にリザ・ホークアイに撃たれた。

 なにもそこまでしなくとも~。

 

「ロイ・マスタング、か」

「憎しみが消えちまったか」

「……どうなのだろうな。あるはずだ。あの時の憎しみは私たちの中にあるはずだ。──だが、教義に背き、戦えない者をも襲う同胞を見て……私を含め、身を乗り出してそれを止めんとする者もいた。それくらいには……私たちはあのゾンビをして"敵対者"だと認識した」

「ま、アメストリス人でさえ戦えない者は殺さないのが信条だったしな、お前ら。アルフォンス・エルリックはぶっ壊したが」

「中身が無いことはわかっていたからな。弟には伝えきれていなかったが。……わからない、というのが事実だ。今。ロイ・マスタングは私達イシュヴァール人を殺した。数多くを殺した。けれど、狂ってしまった同胞を、その醜態をこれ以上晒させることなくイシュヴァラのもとへと送ってくれた。……わからないさ。もう。一つだけわかるのは」

 

 刺青の男(スカー)兄が中央司令部の方を見る。

 

「彼に、私達への感情などなかった、ということだ。……いや、罪悪感はあったのかもしれない。ただ彼の全ては国防のためにあり、彼は守るために私たちを灼いた。……これ以外はわからないし、わかりたくないというべきだろうな」

 

 国家錬金術師、ロイ・マスタング。

 彼に対しての殺意が──揺らいでいる。

 

「まぁそりゃ勝手にしてくれって感じだがよ。ほれこいつも。──アメストリスのセントラルから上半分におけるゾンビの配置、帰路、経路図だ。いやー、久しぶりに苦労ってモンをしたよ。子供の身体は良いことと悪いことが半々だわ。ま、解析は任せた。いいんだよな?」

「勿論だ。──代価も、理解している」

「おん。じゃあ俺また出かけてくるから」

「ああ」

 

 俺もある程度気付いちゃいたが、いち早く気付いていたのはやっぱりコイツだった。

 刺青の男(スカー)兄。俺と再会するなり、「ゾンビの辿った足跡とドラクマの地図が欲しい」だもん。ドラクマの地図とかどーやって手に入れんねん、とか思ってたけど、ブリッグズ要塞にあった。戦利品だそうで。……国境争いで死体から得たモンを「戦利品」扱いはどうなんだろうと思ったけど、バッカニア大尉がそう言うんだから仕方がない。

 

 あ、ちなみにブリッグズは俺のものになったから、ゴルド・スタイナーにあげた。20年来のプレゼントって奴だ。ちなみに再会はまだしていない。オリヴィエ・ミラ・アームストロングから「お前のものになったのだから~」って話が出た瞬間に譲渡の話もしただけ。

 観光客は所持品少ない方が楽なのサ。

 

 

 そんなこんなが近況。

 グリードらデビルズネストの面々は、その過半数が死んだ。ゾンビになってた上に、血印による洗脳、誤認の実験体にさせられたらしい。メイ・チャンはグリード一行にもう完全に馴染んでいて、アイツ目的忘れてんじゃねーかとか思わないでもないけど、曰く「ブシュダイレンは黒い小人……今のブシュダイレンは白いので、色味で言えばグリードさんの方がそれっぽいでしょう!」だってさ。確かに炭素ツルツルマンの時は黒い。

 

 ヤオ家はフツーに俺の近くにいる。

 けど近づいては来ない。フー爺さんも帰って来たっぽいんだけど近づいてこない。何かを探っているのか、そもそもそんなに関わる気が無いのか。

 俺がブラッドレイとつるんでるのもあるだろうな。フー爺さん瀕死にさせたのブラッドレイだし。

 

 

 んで俺が今何してるかっつーと。

 

「──あー、なっつい。本当に」

 

 クセルクセス遺跡。

 数百年も昔に一夜で滅びた伝説の国にして──故郷!

 

 なんにもねーから帰る気なんて起きなかったけど、ホーエンハイムが行方不明なあたりいるんじゃね? って思って来た。あ、リゼンブールは確認済みね。原作みたいに墓前で死んでんじゃねーかと思ったけどいなかった。

 ちなみにリゼンブールにはエルリック兄弟も来ていたらしい。ウィンリィ・ロックベルは修行中だとか。

 

 ここ、ロックベル夫妻のもとにも「ゾンビの治療依頼」が来ていたらしいけれど、なんと夫妻は全て断ったんだとか。あのロックベル夫妻が治療を断るなんて、まさかこの二人ゾンビか! とか思ったけど違った。

 ただ、「医者としてこれ以上治せるものはない」と──ただそれだけ。

 

 ま、いいんじゃないかな。

 リゼンブールの町医者だ、評判が落ちようがなんだろうが関係ない。田舎だから。

 ただ何故か、そう断って以降ロックベル夫妻のもとで働きたいという看護師が増えたとかなんとか。募集もしていないのに。

 誰だそんな奇特な奴、って思ってチラって覗いたら知ってる看護師連中だったので逃げた。

 悪の錬金術師ヴァルネラはもう死んだのヨ。

 

 

 で、クセルクセスだ。

 話がそれるのはもういい。クセルクセスクセルクセスクセルクセス。クセルクセスクセルクセス。

 

「……砂漠で白ローブって、メジェドみたいだな俺。小さいし」

 

 一歩、また一歩と歩いていくたびに思う。

 この暑さ。砂。崩れかかった建物。水。

 

 ──懐かしさ無いネ~。

 当然である。俺はクセルクセスのちょっと遠い所で生まれてからそのあとほっとんどを牢で過ごしていたのだ。クセルクセスの観光なんかしてないのである!!

 

「今するは逆にアリ」

 

 ホーエンハイム探しも兼ねてるけど、観光中に見つかんなかったらいないでいいだろ。

 

 ということで、クセルクセス観光が始まった。

 

 取り囲まれた。

 

「……驚いた。お主……あの時イシュヴァールの地に来た者か」

「ああ、そうだよ。アンタは確かシャンだったな。はは、姉ちゃんから婆さんに様変わりだ」

「80年を経てそうならない人間がいるか!」

「いるよーここに」

 

 不老不死だけど人間だヨ。

 

「シャン様、お知り合い……ですか?」

「……昔の話じゃ。アメストリスの侵略がそこまで過激ではなかった頃にイシュヴァールの地を訪れた奇特な旅人じゃな」

「あっはっは、そうそう。今行けなくなっちゃったからさー、今度行けるようになったら聖地にも行ってみたいよね」

「ならんわ! ……本当に何も変わっとらんようじゃな。すわ奴の孫かとも思ったが……」

「シャン様、ですが彼は……」

 

 お?

 おお。その反応は。

 

「彼は、恐らく神医ヴァルネラです。ローブの色こそ違いますが、金髪に金の瞳で……ほぼ間違いないかと」

「……なんじゃと? また人違いではないのか?」

「いえ、彼はホーエンハイム殿のように背丈が高くはないので……恐らく。顔も、彼の息子とは違いますし」

 

 おお。

 そっか、ゾンビは乾くと道半ばでぶっ倒れるから、クセルクセス遺跡にはたどり着けなかったのか。

 だからゾンビ騒動が伝わっていないんだここには。そんでもってイシュヴァール戦役時代のイシュヴァール人ばかりだから、悪の錬金術師ヴァルネラではなく、戦場の神医ヴァルネラで止まってるんだ知識が。

 これは……ジェネギャ? いやガラパゴス化か?

 

「──貴方は、神医ヴァルネラであっていますか?」

「あってるよ」

「で──では、お願いがあります。治してほしい方がいて」

「おん?」

 

 と、まぁ。

 そういうわけで、やっぱりっつーかなんつーか。

 

 クセルクセス遺跡が奥の奥。奥の奥の奥の奥で──三角座りして動かなくなったホーエンハイムを見つけるのである。

 ぶつぶつぶつぶつ、「終わった」「フラスコの中の小人は死んだ」「俺は?」「死ねない」「死なない」「みんなを無駄にはできない」「ゾンビ」「すまない」「すまない」「みんなを無駄にした」「トリシャ」「すまない」「エドワード」「アルフォンス」「終わったよ」「でも何も終わっていない」「どうしたらいい」「あとはどうしたらいい」「俺はまた無為の時間を」「誰か」「誰か」──「俺を殺してくれ」って。

 

「──代価を寄越せ、錬金術師。そうしたら殺してやるよ」

 

 だから、彼の目の前に降り立ってやった。

 真白の法衣を靡かせ、金糸の髪とアンバーの瞳を光らせる──子供。はっはっは、俺ってば天使みたいじゃね? 見た目の特徴オンリーで言えば。翼でも生やすか。緑礬で。

 

「が、終わってねーんだわホーエンハイム。もう少し付き合いな」

 

 彼に手を差し伸べ──。

 

 顎から手を通し、襟元を掴んで、背負い、投げる!

 

「魚にもうすぐ死ぬから方向性変えた方が良いって言ったら最凶になっちまってなー。こっちも戦力増強しないとヤバいのさ。俺役に立たねえからな!」

「……ヴァルネラか。放っておいてくれ、もう。俺は……」

「あれ話聞いてた?」

「お前の声は……軽薄過ぎて、耳を通り抜けるんだ……そのくせうるさいから、雑音にしか聞こえない……」

 

 酷過ぎる。

 え、みんなそう思ってたのか!? 今まで出会ったやつもしかして全員そう思ってたの!?

 

 ……まぁいいけども。

 そりゃ貫禄ないって言われるわけだよ。

 

「いいから。このままだと──天気予報にフラスコの中の小人が加わっちまうぜぃ」

「……意味が分からん」

 

 もうすぐ年が明ける。

 さぁさ、準備をしよう。色々な、な?

 

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