緑礬の錬金術師 作:ONE DICE TWENTY
暖かい火がパチパチと音を立てて燃えている。
暖炉。そこで向かい合う──のではなく、ソファに座る女性と、その女性の膝に座る少年。
ブラッドレイ夫人。そして彼女の子たるセリム・ブラッドレイだ。
「セリム……まだあの人のこと、許せませんか?」
「あれは、お父さんが悪いんです。……お父さんが謝ってくるまで許しません……!」
喧嘩……をしているらしかった。
セリムと、その父。キング・ブラッドレイは。
いつの日からか二人は会話をしなくなり、顔を突き合わせてもお互いに知らんぷり。
ただ。
「ふふふ……あの人が話しかけようとするたび、耳を塞いで逃げてしまうのはあなたの方ではありませんか」
「それは……」
「あの人の、お父さんの頑固さは、私が一番よく知っています。一度こうと決めたら梃子でも動かない。私も良く、あの人とぶつかり合いましたよ」
「お母さんが?」
「ええ。……でも、いつだってあの人は、国の事を、家族の事を第一に考えてくれていました。自分の事、自分のために、という理由で私と喧嘩することはなかった……それが少し寂しくて、拗ねてしまったこともありますけどね」
夫人は柔らかく、そして微笑ましそうに言う。
「会話をしなければ、喧嘩はずーっと続きますよ、セリム。もし……あなたが、少しでもお父さんとの喧嘩をやめたい、と思う心があるのなら……一度、大声を出してもいいから、話し合ってみてほしいの」
「……」
「本当にどうしようもなくなる前に、大喧嘩をして……そうしたら、スッキリすると思うわ」
「……軍人さんに聞きました。お母さんは昔、お父さんを思いっきりビンタした、って」
「あら……あら、ふふふ。誰かしら、それを言ったのは」
「お母さんは話し合いだけじゃ解決できなかったんですか?」
「……若い頃は、そうだったかもしれませんね。あの人の若い頃は……今よりもっと、もっと頑固で……」
懐かしい思い出を、目の前に浮かべているように。
遠くを見て。
「でも、今なら大丈夫。セリム、あなたは賢い子だけど、我儘をあまり言ったことが無いし、私達と喧嘩をしたこともないでしょう? ──あの人が悪いと、そう思うのなら……思いっきりいってやりなさい。大丈夫、意外でしょうけど、お父さんは捲し立てられると弱るんですよ?」
「……わかりました。次にお父さんと顔を合わせたら、外にも聞こえちゃうくらいの大喧嘩をしたいと思います!」
「ええ、その意気よ、セリム」
光が揺れる。暖炉の灯が揺れる。
それが作る影は大きく、揺れて、化け物のようになって──消える。
今はただ、団欒を。
──中央司令部。
そこに──錚々たる顔ぶれが集まっていた。
大総統、キング・ブラッドレイ。彼の横にいるのは真白のローブを着た子供、クロード。
国軍大佐、ロイ・マスタング。車椅子の彼の横にはリザ・ホークアイが立ち、また、その耳には機械鎧が引かれている。
そして──その対面に座るのは。
国家錬金術師殺し、通称
さらにはデビルズネストというダブリスの酒場にいたゴロツキ……でもある
そしてそして。
密入国者、メイ・チャンとヤオ家一行。
「……錚々たるっていうか、カオスの間違いじゃないか? 俺、一般人なんだけど……」
最後にホーエンハイム。
場に満ち溢れる殺気に若干引き気味である。
「改めて。本日は招集に応じて──」
「あぁ、堅苦しい挨拶はいらねぇだろ。それよかそこの大佐サンが何か言いたげだぜ?」
「……マスタング君」
ブラッドレイの言葉をグリードが遮り、軽薄に指をさすのはロイ・マスタング。
彼の眼は──鬼に等しい。
「キング・ブラッドレイ。そして今の声の男。──貴方達は
「……そうだな」
「あぁそうだ」
「
はっきりと、言い切った。
どちらかというと不和を嫌う方のホーエンハイムの胃が痛くなるくらい──空気が重くなる。
「がっはっは──その目と、足。んで部下二人だったか。俺達の姉ちゃんと弟にしてやられたそうじゃねぇか」
「……」
「そうだ。だから貴様らが信用できん。人間ではない貴様らが我々の味方をする理由がわからん」
「あん? 勘違いすんな、味方をする気は無ぇよ」
「ならばここで殺し合うか、
一触即発。
どちらかと言えば常識的な会話ができる方の括りに入れられていたロイ・マスタングが、今や狂戦士だ。それも致し方のないこととはいえ──あのクロードでさえ、何も言わずに舌を出し、変顔をしているほど。それがどれほどかはわからない。
「26人だ」
「……何の数字だ」
「仲間だよ。──全員、軍の実験体で、
「!」
ロイ・マスタングは目が見えていないからわからないだろう。
けれど、だとしても、と。
グリードは威圧するような顔で、言葉を垂らす。
「全員、殺された。軍にな。ゾンビ化に伴う血印の効果実験とやらだ。一昨日軍法会議所でボヤ騒ぎがあっただろ。ありゃ俺達だ。地下から襲撃して、研究データ全部パクってやった。それが、コイツだ」
バサバサとテーブルにそれを投げるグリード。
「中尉」
「はい。私には錬金術はわかりませんが……恐らく本物です。軍の印鑑やサインが見受けられます」
「これは……」
「近づくな、
「……う」
手合わせ錬成を獲得した今、ロイ・マスタングは発火布をつけていなくとも焔の錬金術が使える。
理解さえすれば、紅蓮だろうが豪腕だろうが──あるいは緑礬だろうが。
なんだってできるだろう。
それくらい、彼の頭脳は秀でている。
「信用できないのは俺達も同じダ、ブラッドレイ」
「……密入国者がそれを言うのかね?」
「クロード。なんでアンタこいつとつるんでル! ──フーを切り刻んだのはコイツだロウ!」
「その時は敵だった。今は違う。──これ以上の説明が必要かね?」
「俺はクロードに聞いていル!!」
「んじゃ俺の事はブラッドレイに聞いてくれ」
「……っ!」
ここにも確執があった。
密入国者、ヤオ家の面々。彼らはブラッドレイが信用できない。
「……あの時の老人のことか」
「あ……あア。あの時ハ世話になっタ。俺達はアンタのことも恩人だと思っていル。その……シンは錬丹術に長けた国ダ。この戦いが終わった後、もしアンタの足や目が治らなかったラ……俺達もアンタの治療に付き合ウ。それくらいの恩は返させてくレ」
「……すまないが、信用ができない。今は……シンの皇子。あなたとて無理だ。他国の者というだけで、疑わしい。それも正式な手続きを踏んでいないとあらば」
「ウ……」
が。
「おいおいロイ・マスタング。ちょいと狂犬になり過ぎだよ。
「おイ!?」
「お言葉ですが、クロード医師。──貴方も信用に値しません」
「へぇ? なんぞ先日、俺のためにすんばらしい国を作るだのなんだの言ってた覚えがあるが」
「
「旧知。アイツも長く生きてる。俺も長く生きてる。そんだけだよ」
「……ここではっきりさせてください。クロード医師」
「おん? つーかもう医者やってねーけどな俺」
周囲に放たれていたヘイト、殺気が──全てクロードに向く。ヤオ家に向いていたそれまでも、だ。
けれど、素知らぬ顔で。どこ吹く風で。
「貴方は一体何年生きている。貴方はそもそも何者だ?」
そんな──純粋で、けれど、誰もが知らない問いをかけた。
「代価を払えよ、ロイ・マスタング。俺から何かを奪うならな」
「貴方を信用すること。それが代価です」
「おおっと、つまり俺がここで話さなければお前さんからの信用は得られない、ってことかぁ」
「ちなみにだが俺達からもだ、だ。なげぇ付き合いだが、アンタの正体はなんにもわかってねぇからなぁ。ここらで知っておくのはアリだろ」
「……便乗させてもらう形になるけれど、私達も同じだ。
グリード、
その一斉掃射にクロードはブラッドレイを見るけれど、助け舟はなし。当然ホーエンハイムも無理。
「あー。まぁいいや。んじゃ要らねえや、お前らの信用」
「……ならば出て行ってくださいますか。信用の出来ない者に聞かせる話ではないでしょう」
「がっはっは、マジかよ! なんだ、正体バラすの嫌なのかよ! ──暴いてみたくなるじゃねえか!」
「……やはり、完全な味方ではないのか」
散々な言われように──まぁ、と。
「生きてる年数くらいはいいよ。ん-、まぁ
窓を開ける。クロードが窓を開けると、そこから冬の冷たい風が入る。
「んじゃ」
「まぁ待てクロード」
「のわ」
フツーに、これからブリーフィングだというのに、「んじゃいらねーや」と出て行こうとした彼を止めたのは、ブラッドレイだった。
彼のローブを引っ張って、部屋の中に引き戻す。
「今ので十分だろう、マスタング君」
「……どういう意味ですか」
「生きている年数と、正体。明かしただろう此奴は」
「前者しか教えてもらっていませんが」
「"邪魔な不老不死"。──これがこの者の正体だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「ああ……君は
「ヴァン・ホーエンハイム。"お父様"の半身。……あなたに認めてもらえるのならば、誇ることも出来よう」
4000年生きている邪魔な不老不死。
それがヴァルネラ、あるいはクロードの正体。
──耐えきれなかったのは、勿論グリードだった。笑う。そして「だろうなぁ」とか「知ってたっつの」とか──まぁ、笑う。
「笑い話ではない! そんなふざけた言葉で──」
「マスタング君──
「!」
「君を呼びつけたのは、私のラストに関する説明不足による不始末と、その件で大きな被害を被った君への補填のつもりだった。──だが、知っての通り敵は狡猾で強大な
「ただしロイ・マスタング。お前の復讐対象二人は俺らが殺すZE☆、ってことな!」
「おいクロード、火に油を注ぐなって……」
ギリ、と奥歯を噛み締める音が響く。
「……申し訳ない。……気が立っていた。これから……同じ敵を倒す者に対する態度ではなかった」
「んがっはっは、別に俺は良いと思うがなぁ。なんせにっくき
「ああ、好きにしろ」
では、これより。
ようやく、本当にようやく──会議が始まる。
まず話し始めたのは
「これを見て欲しい。ロイ・マスタングは……」
「構わない。部下が記憶する。中尉」
「はい。……これは、円、ですか?」
「そうだ」
そこには円が描かれている。しかし、セントラルからは少しずれた円。
「国土錬成陣。だが、これは」
「ああ。本来はここに刻まれるはずだったドラクマの血の紋。だが、それが北にズレたんだ」
それは地図で見れば小さな差異。
だけど、巨大な円への影響力を考えたら──大きな差異。
「これを受けて、おそらく敵はいくつかの血の紋を放棄した。あれらを使うと正円を結べなくなるからだ」
円は錬金術の大切なファクターだ。
それが正円に近ければ近いほど効果は強大になる。
「北のドラクマ、西のペンドルトン、南西のウェルズリ、南のサウスシティ、南東のカメロン、東のリオール。──放棄された紋を除き、これを繋げると──六芒星が完成する」
「六角形もなー」
放棄された血の紋は1799年のソープマン事件、1558年のリヴィエラ事変。そして。
「そんな……イシュヴァールの地も、放棄したと……?」
「私達とて……信じたくはなかったさ。鷹の眼。だが、こう考えるのがもっとも
あれほどの戦いがあって。
あれほどの憎しみあいがあって。
それを無に帰したと。
意味の無かった戦いにしたと。何よりもそれを信じたくないだろうイシュヴァール人たる彼が、それを言い切ったのだ。
「六芒星は地水火風、即ち万象を示す。六角形は自然化、即ち"元に戻す"という効果を孕む。そして今、アメストリス全土にはゾンビ騒動による産物──魂が定着した鉄板が散逸している」
「範囲内の万象を元に戻す。──特に錬金術の効果をな」
「……魂を剥がす気か?」
それにより何が起きるか。
唯一答えを知る──知っていそうなクロードは、ニヤニヤするばかり。
「錬金術の効果を……元に戻す。オイオイ、まさかとは思うが」
「そうだ。君達二人も例外ではないだろう。
「……ブレダとハボックも、か」
だとしたら。
だとしたら、余計にわからない。
「それは敵の
「まぁ、おんなじ親父殿から生まれてるからな。ラストもエンヴィーもプライドも……俺様たちがもとに戻るってんなら、アイツらだって戻るだろうよ」
「元に戻すものを元に戻す効果ならどうだ」
「元に戻すものを元に戻す?」
「ヒューズが見つけてくれた。イーストシティ周辺に張られた、これと全く同じ形の錬成陣だ。こちらに円はないが、何らかの方法でそれが作られていた場合……この中心部にいるものは、国土錬成陣の影響を受けない可能性はないか?」
「……クロード」
「おん?」
「君の体の仕組みに、不老不死に──錬金術は関係あるか?」
「ないよ。今やってみりゃいい。俺のどこを斬ったってぶっ殺したって、錬成反応は出ない」
「ああ、まぁ、そういやそうだな。アンタの再生は俺達のモンとは勝手が違う。つーことは、この錬成でアンタは元に戻らないのか」
「元に戻るも何も、俺これが元だし。ただ一個助言するなら──別に血で描いたってチョークで描いたって、錬成陣は錬成陣だ。血で描くと効果は激増するから、ってだけの話でさ」
そしてもう一つ。
クロードが言わないことが、もう一つ。
言わないでおこう、と思っていたのだろう。口をつぐんだままだった。
だが、触れるものがいた。
「あ、あの……一つ良いですカ?」
メイ・チャンだ。
クロードはちょろ、と舌を出す。
「なにかな」
「私には錬丹術の知識しカありませんガ……たとえ円の中身が不均一でモ、錬丹術は発動しまス。錬金術はどうでしょうカ」
「……そうだな。効果は薄れるが、発動はする。一瞬だけでいいなら円は外側のもので十分だろう」
「つーか、それを使わねえ可能性もあると思うぜ、俺は」
「なに?」
「俺は違うがな、
「我が身を顧みることなく決行する可能性は高いだろうな」
「……つーわけだ」
別にホントの家族ってわけでもねーしな、とはグリードの談。
「それで、結局円はどうなったんダ? お前たちが止めたんじゃないのカ?」
「ああ、地下のはな」
「それ以外に何かあるのカ?」
「月影だろう。日食の……この惑星に落ちる月の本影。それを円に使う気だ」
「お、正解だよロイ・マスタング。だから、本来発動する予定だった国土錬成陣より遅れるはずだ。この錬成陣の発動はな。皆既日食が起きる直後じゃねぇ、起きてから、月の影が移動したその瞬間だ」
だから、あるいは──原作でブラッドレイが負けた瞬間になるんじゃねーかな、なんて。
クロードは嗤う。面白そうに、おかしそうに──何の感情もなく。
「この円は巨大だ。中心はここだろうが、どこで何が起きるかはまだわからん。──つーわけで、ロイ・マスタング。一つ聞いておくことがある」
「……なんですか、クロード医師」
「お前、どっちを殺したい?」
ひゅう、と。
冷たい風が入る。先ほどクロードが出て行こうとしたときの窓が開けっ放しだったのだ。
「お前の復讐対象は二人だ。エンヴィーとラスト。──だが、恐らく二人が共にいることはない。二人とも別々の場所にいるだろう。プライドはセントラルから離れないと思うけどな」
「……どちらも殺しますが、何か」
「それが無理だから言っているんだよ、錬金術師。オマエが片方やって片方も、ってもたついてる間に全部が進んじまう可能性のが高い。どっちかだ。どっちか一つだ。どっちかしか殺せねえなら、どっちを選ぶよ、焔の錬金術師」
迫る。迫る。
ここにいる誰もが知らない──ロイ・マスタングしかわからないダレカを真似た口調で、迫る。
「オマエの部下を殺しただろうラストか、オマエを誘き出して散々煽ったエンヴィーか! それとも──オマエの部下に細工をし、合成までした錬金術師か。どれだ。誰を殺したい、ロイ・マスタング!」
「……」
「そこまでです」
チャキ、と。
ロイの前で、そしてクロードの眉間の近くで音が鳴った。
「オイオイ、リザ・ホークアイ。話し合いの場で銃を抜くとか正気か?」
「私は大佐の護衛です。──貴方という危険人物をこれ以上近づけるわけには行きません」
「──ロイ・マスタング。随分と入れこまれているみたいだが──いいのか?」
まだ、迫る。
銃なんか気にしないとばかりに。
「何がですか、クロード医師」
「今お前は目が見えない。今お前は足が使えない。──もし、リザ・ホークアイに何かあった時──お前はすぐに駆けつけることができない」
「大佐の足手纏いになることはしません」
「何が言いたいのですか、クロード医師」
「いいのか、って聞いてんだよ。あとで返してくれりゃいいから、今治してやるぞ、ってさ」
「……あなたは、やけにそれに拘りますね」
「あっはっは、その方が俺に都合がいいからな」
クロードは──リザの手を掴む。
早業だった。何の前兆もなく手を動かし、それを掴み、自らのこめかみに当てて──引き金を引かせた。
ぱぁん、と乾いた音がして、その頭蓋が弾け飛ぶ。
「……!」
「オイオイ、汚れんだろ。アンタ俺には勿体ねえとか言っておいて、自分はやんのかよ」
「そりゃやるさ」
ぐじゅる、と。
再生する。頭蓋が──水音と共に。脳が吹き飛ばされているのに、彼はしゃべる。
「俺に勿体ないとかねーもん。──ま、作戦決行前までに決めておけよ、ロイ・マスタング。どっちを殺したいか。どっちがより憎いか。どっちが──お前の敵か」
「待つまでもありません。ラストです。エンヴィーは囮でしかなかった。あの雑音のような軽口は、けれど幼稚だ。聞くに堪えないし、聞くに値しない。ですが、ラストは別です」
「おっけー。んじゃグリード、
「……プライドはどうするのかね?」
「んなもんお前が片付けろよブラッドレイ」
「……いいだろう」
初めから思うところはあったのだろう。
キング・ブラッドレイは特に反論もなく頷く。
頷かなかったのは意外にもグリードだった。
「俺はアイツとはやんねぇよ。それよか、さっき言ったな。
「おお、耳聡いなグリード」
「人が悪いなアンタ。誰か見当ついてんなら教えてくれよ。──ソイツが俺様の敵だ」
ふむ、と一度考えて。
「いいよ。つっても、特徴らしい特徴はないよ。金歯の医者。顔は四角い。そんだけ」
「……もっと、ねぇのか。人相書きとか」
「俺の絵で良ければあとであげるよ」
「おう。それでいい」
そして、いつからか場を仕切っていたクロードが最後に指さしたのは、勿論。
「んで、ホーエンハイム」
「……わかっているさ。傘、だろう?」
「おん。手が空かねえならエルリック兄弟にも手伝ってもらいな」
「ああ……頭を下げて、お願いするとするさ」
待つ必要はないが、保険は必要だ。
故に、ホーエンハイムはそれを作りに動く。
その間に。
「俺とシンの人間は
「あ、はいでス」
「……恩もある。大佐サンが許してくれるのなラ、俺達も手を貸そウ」
「……四の五の言ってられんか」
「つーわけで、
「まるで、居場所はわかっている、とでも言いたげだが……」
「ああ、わかってるよ。ラストもエンヴィーもプライドも。なんなら、金歯の医者も。──教えてほしかったら代価を払いな。それが嫌なら自分で見つけなよ、人間」
それだけ言って──出ていくクロード。追従する
そんな彼の背を見て、ブラッドレイがポツりと呟く。
「……今日はやけに人間を嫌っていたように見えたが……何があったか知っている者はいるかね?」
答えはなかった。