あれからさらに5年の月日が流れた。
俺は順調に成長し、親父と母さんの手伝いをしながら、自分なりの修行を続けていた。
ハドラーが倒れて魔物は大人しくなったとはいえ、辺鄙な村では日常生活の中でも危険が潜んでいる。
薪を集めたり食料を運んだりする途中で、人が怪我をすることも少なくない。
「いやぁ、いつも悪いねぇ」
「おじさんにはいつも果物とか分けてもらってるし、気にしないでよ」
そう言いながら、果物屋のおじさんの腕や足に威力を落としたホイミをかけ、切り傷や擦り傷を丁寧に癒やしていく。
俺の魔法の才は村中に知れ渡っており、こうして村の怪我人の治療や、森に済む危険な動物の撃退に駆り出されるようになった。
底上げされた魔法力のおかげで、威力はすでに中級呪文の域に達しつつあり、最近では隣村からも頼まれることが増え、頼れる若者としての評判も少しずつ広まっていた。
家に帰ると、親父と誰かの話し声が聞こえてくる。
こんな辺鄙な村の武器屋に客が来るのは珍しい。
俺は声をかけながら家に入った。
「親父、ただいまー」
「おう、ポップか。丁度いい所に帰ってきたな。お前に客だ」
カウンターの向こうに立っていたのは、懐かしい顔。
俺の最初の師、アバン先生だった。
「初めましてポップ君。私、こういう者です」
先生はそう言って名刺を差し出した。
【勇者の育成ならおまかせ!! アバン・デ・ジニュアールⅢ世】
相変わらずこの謳い文句はすごい。
勇者を育てるというのは、戦士や魔法使いを育てる以上に途方もない挑戦だ。
魔王から世界を救った勇者だからこそ、こんな肩書きが許される。
「それで、超有名人の勇者アバンが俺に何の用です?スカウトですか?」
「ええ。近隣の村や町で、あなたの噂をお聞きしました。魔法の才能がある少年がいると」
ビンゴだ。俺が少しでも早く見つけてもらうために、隣町や村で精力的に奉仕活動を続けた甲斐があった。
しかし両親はまだ心配そうだ。前回のように頭ごなしに怒鳴ることはないが、簡単には納得しない様子。
「なぁ、親父。母さん。俺、この力を生かしてもっと村の役に立ちたい。先生の修行を受けさせてよ」
普段の素行と真剣な目を見た両親は、お互いに視線を交わす。やがて親父が一息つき、先生に頭を下げた。
「不肖の息子ですが、よろしくお願いします」
「こちらこそ、大事な一人息子さんをお預かりさせて頂きます」
こうして俺は、再び先生の弟子となった。
先生は、修行は明日の朝からだと告げて宿に戻って行った。
過去の俺は通常コースの修行だったし、村から家出同然に先生に付いて行ったが、スペシャルハードコースは1週間で一流の人材を作り上げる為、先生は村に留まり俺に修行を付けてくれるらしい。
「ダイ、今度は絶対にお前の手を離さないからな」
俺は心の中でそう決意し、意識を手放した。
記憶の中のダイは、まだあの太陽のような笑顔を曇らせたままだ。
よく考えたら、1週間で終わるスペシャルハードコースなのにわざわざポップが村を出る必要性を感じなかった為、アバンをランカークスに滞在させるよう改訂しました。